日本国最後の幸運艦 外伝[大西洋の死闘]   作:刀持ちの烏

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Episode11 猛撃の矢

 

〜〜〜アイリッシュ海/第5空母打撃群〜〜〜

 

最初に命中したのは輪形陣の左翼に位置していた駆逐艦[マージーサイト]であった。この艦は旧式でありながらも、近代化改装によってシーダート及び114mm速射砲、20mm CIWSを装備され、総合的に見ればそれなりの対空能力を持っていた。

だが、今回の相手はマッハ5で突っ込んでくる小型のミサイルであった。20mmの雨を潜り抜けたそれは艦の舷側を突き破り、そのまま内部で信管を作動させた。

煙突やCIC等が集中していた船体中央部は、大爆発により破片を散らして吹き飛ぶと同時に、施されていたアルミニウム合金に手のつけられないほどの火災を発生させた。艦橋を含む上部構造物が松明のように燃え盛り、全体へと広がってゆく。

そして、乗員たちがその火災に対応している間にもう1発が艦橋に命中し、さらに被害範囲を拡大させた。これにより、[マージーサイト]は艦としての機能を失い、中央から折れて海面へと没していった。

 

さらに、[マージーサイト]撃沈によってできた防空の穴をつき、3発が[アーク・ロイヤル]へと命中した。

1発目は艦橋直下の舷側を突き破り、格納庫甲板に置かれたF-4に命中、そのまま爆発した。発生した火災は消火剤により食い止められたが、有爆などで格納庫内や飛行甲板は手のつけられないほどの損害を負った。

さらに残りの2発が艦橋に命中。構造物を丸ごと吹き飛ばし、[アークロイヤル]の指揮設備を破壊しつくてしまった。

この時点で、格納庫直下のCICにいたウッド少将も火災と爆発により戦死してしまった。

 

 

 

[アナン]艦橋にいたローレンスはその光景を見て思わず、

 

「まさか....空母が」

 

と、呻いた。理解するより速く事態が悪化してしまったため、正直言って彼は現実を受け止めきれなかった。

なにせ、2隻が攻撃を受けたのはわずか3秒の間だったのだ。受けたと認識するにはあまりにも速すぎる。

 

あれは日本の初戦で護衛艦[ちくご]に対して使用されたミサイルだ。チラッと見ただけでもかなり小型なことや、低速で接近してくる様子、一撃で艦に致命傷を与えるほどの威力など、かなりの共通点がある。

 

確信した彼は心を落ち着け、必死に考えを巡らせた。

 

今回ミサイルが命中した箇所は、炎上している部位を見るに煙突や艦橋付近、いずれも艦の弱点とされる部位ばかり狙っている。

とはいえ少し見ただけだから正確とは言えないが、おそらく本体はかなり小型だ。

ならば誘導装置は別にあり、本体の誘導能力はあまり高くないと考えられる。とすれば、本体に妨害をかければうまく対処できるはずだ。

 

よし、と頷いたローレンスはすぐにCICに連絡しようと動いた。

 

 

 

「なにか、対策はないのか....」

 

CICにいる[アナン]艦長は、あのミサイルに対して頭を抱えて悩んでいた。

近くにいる部下たちも、どうすればといった表情だ。

 

そんな時、レーダー員から報告が入った。

 

ダブリンから高速熱原体が発射。うち5発がマッハ5で接近中です!!」

 

「第2波が来たか....対空戦闘だ!!すぐに配置につけ」

 

言ったみたはいいものの、どうすればいいか....真剣な表情をしながら艦長は考えた。いくら[アナン]が防空巡洋艦とはいえど、撃ち落とせるのは通常の対艦ミサイルまでが限界だ。マッハ5で飛翔する物体を迎撃できる可能性は低い。

 

そう彼が悩んでいる時、艦橋から通信が入った。ローレンスからであった。

 

『艦橋からCICへ。今飛来している対艦ミサイルについて意見具申よろしいでしょうか?』

 

「構わんが....何か対策を思いついたのか?」

 

通信越しでローレンスははい、と言った。心なしか口調がどこか焦っているように感じられる。

 

『マッハ5で飛来するミサイルの命中箇所は艦橋やCIC、いずれも艦の弱点ばかりを狙っています。しかし、少し見ただけではありますが弾体はかなり小型です。なので、これは本体だけでなく、外部の誘導装置を介して誘導している可能性が高いです』

 

「なるほど」

 

たしかになと艦長は思った。外部で誘導されるならばこのような精度は理解できる。

 

『となれば、ECM(妨害電波)や対空火器をただばら撒くだけでなく、同時に発砲して砲弾の爆風で船体を隠してしまうのが効果に繋がるのではないかと。そうなれば多数の熱源とECMで、本体との連携の撹乱ができます』

 

ローレンスの言葉に艦長は頷いた。

 

「よし、了解した。意見具申感謝する。すぐに艦を射撃可能な位置につけてくれ」

 

『イエス・サー、すぐ配置につけます』

 

それを聞いた艦長はすぐに通信を切った。彼は心の底でうまくいきますようにと祈った。通常の攻撃が効果ない以上、彼らこの対策手段に賭けるしかなかった。

 

 

 

 

第2波の対艦ミサイルは先ほど使われなかった分のハープーンと虎の子であるマッハ5のミサイルで構成されていた。

 

ある程度接近した段階で、第5空母打撃群の残存艦たちは対空戦闘を開始する。

各艦のVLSから対空ミサイルが放たれ、残ったものも速射砲で撃ち落とされていく。だが、マッハ5のミサイルはさらに近づく。

 

ミサイルがCIWSの射程距離まで接近した段階で、[アナン]や各艦は砲とECMによる対抗手段を実施した。

 

[アナン]が装備する114mmCIWSや各艦の114mm主砲が仰角を上げ、号令と共に発砲する。

砲弾の爆発が無数に発生し、一定の範囲を黒煙が覆い尽くされた。

 

その対抗手段は万全とはいえなかったものの、一定の効果を発揮したといえた。

[アナン]を狙った3発のうち、1発目は混乱して明後日の方向へと飛んでいき、2発目も至近に落ちて少しの浸水を発生させるだけに終わった。3発目は舷側へと命中したが、CICや艦橋などは比較的無事で、なんとか中破程度で済みそうであった。

残る2発のうち、1発は運悪くフリゲート艦[リンスター]に命中してしまったが、必死の対空射撃によりなんとかもう1発は落とすことができた。

 

結果的に、ミサイル第2波攻撃に対して第5空母打撃群はその被害を最小限にすることができたといえた。

 

 

 

『左舷第1ボイラー室、なんとか室内への浸水を防げました。ボイラーも無事です』

 

『こちら左舷煙突付近。 CIWS1機とマストが一部破壊されましたが、それ以外は無事です。火災もすでに鎮火しました』

 

「こちらCIC、了解した。引き続き復旧作業を行なってくれ」

 

艦艇の無事を確認した艦長は、思わず安堵の表情をした。同時に、内心でローレンスへの感謝の言葉を述べる。

これで敵は[アナン]ら艦艇たちへの攻撃を諦めるだろう。まだ第1戦艦戦闘群が迫っており、地上での戦闘もある以上、そちらへ攻撃を振り分ける方を優先するはずだ。

 

とはいえ、護衛艦が2隻撃沈され旗艦の空母が大破している現状、第5空母打撃群はほぼ戦闘能力を失っており、近くの軍港へと退避する以外なかった。

 

[アナン]ら各艦は空母を護衛しながらリヴァプールへと向かっていった。

 

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