日本国最後の幸運艦 外伝[大西洋の死闘]   作:刀持ちの烏

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Episode12 [ヴァンガード]初陣

 

〜〜〜アイリッシュ海/第1戦艦戦闘群〜〜〜

 

「なんですって!第5空母打撃群が....」

 

あまりにも唐突に入ってきた情報に、ナオキは思わず耳を疑った。

いくら本格的な戦闘が行われているとはいえ、近年の戦闘で空母がここまで痛めつけられるのは彼からしたらかなり衝撃的であった。

 

「うーん、これで航空戦力がなくなったか....」

 

ブッシュもどうしたもんかと言った表情で後頭部をかいた。ナオキと違って目に見えてわかるほどではないが彼もこの結果には驚いている。

 

こうして艦隊に動揺が広がる中、[ヴァンガード]から通信が入った。

 

『[ヴァンガード]より全艦へ。これより本艦及び[ロイヤル・サブリン]、[ヴィル・デ・パリス]を分離させ、敵も票への艦砲射撃を開始する。なお、残存している艦艇は[シュロップシャー]の指揮のもと輸送艦艇を護衛せよ』

 

それを聞いて、ブッシュは感心したような表情をした。

 

敵がいまだに戦闘機やミサイルを持っている以上、このまま第1戦艦戦闘群が接近してしまえば輸送艦に被害が及ぶのは確実だ。それらを無力化するためには直接目標を攻撃する必要があった。

 

そのため、艦砲射撃が強力な[ヴァンガード]を対空能力が高いロイヤル・サブリン級2隻で護衛してしまえば、一個編隊の攻撃ならばうまく戦えるだろうし、残存艦艇に護衛を続けさせているから輸送艦艇が危険ということはない。

 

とはいえ、わずか三隻で敵根拠地まで向かっていくいうのはなかなか度胸のあることであり、この混乱する状況でうまく判断できたといえる。

 

「[ヴァンガード]の艦長、なかなかのやり手だな」

 

彼は小さな声でそうつぶやいた。

 

 

 

(そろそろ来るかしら....)

 

[ヴァンガード]のCIC内にいたステファニーは、緊張した表情をしながら待ち構えていた。

 

彼女は、敵の規模的にこれ以上あのミサイルを撃ってくることはないだろうと踏んで3隻を分派させたが、うまくいったのかわからない現状は賭けの部分も大きかった。

 

そんな時、後方からレーダー員の声がした。

 

「捜索レーダーに感あり!!敵戦闘機一個編隊がこちらへと接近してきます」

 

(よし、こっちの思い通りにいった)

 

彼女は自分のアテが当たったことに内心喜びつつも、油断せずに命じた。

 

「各艦対空戦闘用意。全兵装使用自由!!」

 

同時に各部署から復唱が響く。

 

「了解、各艦対空戦闘用意、全兵装使用自由」

 

「主砲および副砲、近接砲弾用意」

 

「CIWS、AAWモードに移行」

 

「全砲門近接砲弾装填完了」

 

「[ロイヤル・ソヴリン]および[ヴィル・デ・パリス]、対空戦闘用意完了」

 

「VLS異常なし、全門発射可能」

 

「続けて第1駆逐戦隊及び第3フリゲート隊、対空戦闘用意完了」

 

「本艦対空戦闘用意よし。全艦対空戦闘用意完了」

 

彼女は満足げに頷くと、すぐさまレーダー手に聞いた。

 

「現在の敵編隊の位置は?」

 

「はっ、あと数秒で対空ミサイルの射程に入ります」

 

「了解。全艦、対空ミサイルの射程に入り次第攻撃を開始!!」

 

数秒後、第1戦艦戦闘群は対空ミサイルによる攻撃を開始した。

 

〜〜〜アイリッシュ海上空/北アイルランド自由軍飛行隊〜〜〜

 

第1戦艦戦闘群の迎撃を命じられた編隊長の大尉は、出撃前からずっと不機嫌な表情をしていた。飛行隊内でも明るい顔をしていると言われている彼の表情は、今や不快そうな色が浮かぶほど渋顔になっている。

 

「せっかく新型ミサイルまで使ったのに、空母一隻さえ撃沈できないとはなぁ…」

 

全機に突撃態勢に入るよう命じた後、はぁ、と彼はため息をつき、計器類がつまったJ-7の狭苦しいコクピットの中で毒づいた。

 

ソニックアローの攻撃は、[イーグル]を中心とした空母群を撤退させしめた。だが、残念なことに[イーグル]を撃沈させるには至らなかった。これはそのため、司令部は戦果を焦ってしまい、彼の編隊に敵艦隊の全滅を命じていた。

 

正直言って、彼自身全滅自体は不可能ではないとは思っていた。彼の乗るJ-7に10発つけられているマーベリックは対艦ミサイルと比べると威力は低いが、信頼性や性能に不足のあるものではない。それに、彼の編隊は12機1個中隊が2個の24機なので、全体でそれを240発装備。正直並の艦隊を攻撃するならオーヴァーキルとしか思えぬほどの攻撃となる。

 

だが戦艦というのは、米朝戦争の前例からもわかるようにやたら硬い。[長門]は短魚雷とミサイル3発を喰らって母港に戻れているし、[霧島]もかなり頑丈なことで知られている艦である。いくらミサイルの数が多いといえど、撃沈するにはなかなか骨が折れそうな気がしていた。

 

「まぁ、俺たちの相手は、時代遅れの戦艦に旧式の護衛艦たちだからな。流石に撃沈して帰れるだろ」

 

彼は自分を安心させるようにそう呟いた。

 

「そういや、あの戦艦の方は半年ぐらい改装されてたなんて聞いてたんだけど…大丈夫すかね?」

 

先ほどの発言を聞いた後部座席員が、不安そうに言う。

 

「ふん、そんなすぐに変わらんよ。所詮旧式は旧式だ」

 

彼は自らの操縦桿を持ちながら鼻を鳴らし、そのまま機体を加速させた。

 

もちろん、改装後のヴァンガードが以前の倍以上強化されていること自体に彼は気づいていなかった。

 

〜〜〜アイリッシュ海/第1戦艦戦闘群〜〜〜

 

対空兵装の中で一番最初に使用されたのは、[ロイヤル・ソヴリン]及び[ヴィル・デ・パリス]が搭載するシーダート艦対空ミサイルと[ヴァンガード]のMK.113艦対空砲弾であった。艦尾に搭載された連装ランチャーが指定の方向へと角度と方位を合わせ、白煙をあげながら目標へと向かった。

 

数々の改修により精度が向上していたシーダートと、タングステン弾が大量に詰まったMK.113は、編隊に先行していた12機を近接信管により撃墜。無数のJ-7を海の藻屑に変えた。

 

残りの機体はレーダーを逃れるために海面付近まで降下し、そのまま[ヴァンガード]の船体にロックオンを行った。

 

すぐに翼下のミサイルが発射され、艦隊へと誘導されていく。

 

 

 

「敵編隊より熱源体が分離。こちらに接近します」

 

「RAM及びCIWS射撃開始。艦隊へ一発たりと近づけるな」

 

砲雷長の号令とともに船体中央に設置された火器が火を吹き、火山のような弾幕が[ヴァンガード]に発生した。

 

上空に無数の黒煙と小さな爆発が発生し、放たれたマーベリックや機体が迎撃されていった。

 

そのうち2発が中央部に命中したが、CIWSを一基破壊しただけで損害自体は軽微で済み、バイタルパートにも異常なかった。

 

 

 

「本艦に近づく目標なし、全対空目標消失しました」

 

「了解。対空戦闘用具納め」

 

ディスプレイに映った対空目標が消え、CIC内の声が緊張から安堵のものへと変わった。ステファニーも思わず顔の表情を緩める。

 

これで本艦への攻撃は終了した。敵は予備のミサイルを持っているでしょうが、すぐに発射できることはないでしょう。

 

「砲術長。右砲戦。CIC指示の目標。撃ち方はじめ!!」

 

砲術長の掛け声とともに[ヴァンガード]は艦砲射撃を開始した。

 

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