日本国最後の幸運艦 外伝[大西洋の死闘]   作:刀持ちの烏

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Episode13 戦闘終結

 

~~~アイルランド/ダブリン~~~

 

[ヴァンガード]による砲撃は軍事施設である沿岸のミサイル陣地や、市外のダブリン国際空港に集中し、市街地に被害が出ないよう徹甲弾により行われた。

砲身から射出されたMK.201徹甲弾はかなりの速度で飛翔し、GPS誘導により精密に目標へと弾着した。信管も調節されているため、少量ではあるが爆発による効果も期待できた。

 

第一射はミサイル陣地に行われ、発射機や誘導装置の周辺に命中した。着弾の余波や炸裂により周辺の物体は横転するか破壊され、陣地には残骸と土煙がまき散らされた。

 

空港に行われた第二射は、三本おかれた滑走路の全てに小さな破孔とヒビを発生させた。

 

この攻撃により市内の北アイルランド自由軍は対艦攻撃は不能になり、ダブリン奪還は第二段階に移った。

 

 

 

先ほどまで激しくおこなわれた艦砲射撃は鳴りを潜め、海兵隊による輸送ヘリの上陸が開始された。

 

前後にローターを配置したCH-47[チヌーク]がダブリン湾上空まで侵入し、コンテナ置き場付近でホバリングに入った。

 

「全員突撃!!」

 

着陸と同時に後部のカーゴドアが開かれ、7.62mm×51mm弾を装填したFAL自動小銃やFN軽機関銃を装備した兵士たちが機体を飛び降りた。彼らは直ちに散開し、後続が安心して展開できるように周囲への警戒態勢をとった。

 

部下の報告を聞き、周囲が安全であることを確認した指揮官は、通信手を呼び出し、後続にすでに上陸が可能だということを伝えた。

 

彼らの後方では、すでに主力を乗せた輸送艦たちがその準備を整えていた。

 

 

 

駆逐艦やフリゲートに護衛された輸送艦艇たちは、ダブリンの近くまで接近すると、すぐさま湾内に置かれた岸壁への接岸を開始した。

 

艦内から戦車連隊が保有する戦車や装甲車が次々に揚陸され、特殊軍はすべての上陸部隊の展開を完了させた。

 

艦砲射撃が終了した段階で兵の大半が戦意喪失してしまったことにより、北アイルランド自由軍からの攻撃はほとんど行われず、部隊はすぐさまダブリン中心部への前進を開始した。

 

 

 

マーク・シトロエン大尉の率いるB中隊は、ダブリン市街に設置された道路に沿う形で西へと進んでいた。

 

湯沸し器の近くに置かれていた座席に座っていたシトロエンは一時停車を命じた後、

 

「周囲を確認する」

 

と、言って砲塔上部に置かれたハッチから身を乗り出した。

 

市内は先ほどまで戦闘が行われていたとは思えないほど整然としており、道路を挟んでおかれた商店やビルの外観も破壊されずに残っていた。ただ、いずれの場所にも人は全くおらず、その点がかえって不気味さを感じさせた。

 

とはいえ、今の段階でB中隊は一度も攻撃を受けていないし、いざという状況になったらシトロエンの乗るセンチュリオンMK.15がすぐに反撃するため、恐ろしくなるほど心配になるということはなかった。

 

イギリス特殊陸軍が保有するセンチュリオンMk.15主力戦車は、英連邦各国が第二次世界大戦後から長らく使用してきたセンチュリオンシリーズの決定版とでもいうような車両であった。

砲塔は90式戦車やレオパルト2などの第三世代戦車と同じような形状をしており、前面にはモジュール式の外部複合装甲を装着していたりと、現代戦においてそれなりの防御力を有していた。

さらに、主砲には世界各国でも使われているロイヤルオードナンス105mmライフル砲を装備し、上部には遠隔操作型の12.7mmを設置していた。エンジンも最新式のものに換装しているため、最高速度は60km近くまで出すことが可能となっていた。

 

シトロエンは素早く周囲を確認すると、安心した表情で手に持っていた双眼鏡を下した。

 

見たところ周囲に敵はおらず、そのまま安心して進めるようであった。

 

彼はすぐにB中隊を前進させ、敵に奪取されたダブリン議会のすぐそばまで迫った。

 

それから1時間後、ダブリンは上陸部隊によって制圧された。

 

~~~アイルランド/チャールズタウン~~~

 

ダブリン奪還が完了した頃、静寂を突き破るように20機の攻撃機がアイルランド・ウェスト飛行場上空に侵入した。

自由軍による迎撃はなかった。付近に備え付けられた防空レーダーは、前日に戦闘機が発射した対レーダーミサイルによって破壊されており、すぐさま対応することができなかった。

 

編隊は爆装したジャギュア攻撃機で構成されていた。護衛をしていた12機のトーネードADV戦闘機は上空に待機している。

 

「ハルバード1より全機、目標に向かって攻撃開始」

 

先行していた第一波のジャギュアが爆撃体勢に入り、目標の基地上空へと突撃した。

一番機のパイロットは手元にあるスティックを操作し、剣のように尖った機首を傾けた機体は一時的に上昇、そのまま波に乗るように降下する。

 

「目標確認....投下!」

 

パイロンに吊り下げられた固定具が外れ、6発の1000ポンド爆弾が一気に投下された。

地上に轟音が響き、炸裂と同時に滑走路を無数のクレーターに変えてゆく。

 

「全機突入!!」

 

第2波は爆撃が終わってすぐに攻撃に入った。ブリムストーン空対地ミサイルが待機中のJ-7や構造物を破壊し、地上にある物体をただの残骸にしてしまった。

 

 

 

攻撃が終わった段階でアイルランド・ウェスト飛行場は使用不能、ダブリン攻撃時の被害も合わせると、北アイルランド自由軍は手持ちの航空戦力をすべて喪失した。

 

制空権さえとってしまえばあとは簡単なもので、一時はベルファストまで迫った機甲戦力は近接航空支援と地上部隊による反撃でほとんど壊滅。支援に来ていたアメリカ軍部隊も揚陸艦に乗って撤退してしまった。

 

こうして4月2日、イギリス軍の勝利という形で第二次アイルランド紛争は終結した。

 

~~~カナダ/英国特殊軍情報部北米支部~~~

 

前菜を食べ終えたギルバートは、紙ナプキンで口を吹いてからかぼちゃのポタージュを一口飲んだ。

 

野菜の甘みと、とろみのあるスープが体を内側から温め、彼の気分を落ち着かせてくれた。

 

しばらくして食事を終え、用意したインスタントコーヒーを飲みながら、彼はデスクにしまった書類に目を通した。

 

内容は現在のアメリカ軍についてであった。カナダに赴任して毎日、彼らはこれからの相手となるであろう国の動きに注目していた。

 

今のところ、太平洋では日本による攻撃で伊豆諸島からは撤退。そのまま一時的に活動を控えるようであった。それにより、ある程度の余裕ができた日本はイギリスへと輸送を送ることが可能となっていた。

 

そして、大西洋側でもアイルランドから一部部隊が撤退を行っていたが、部隊そのものは活発に動いていた。太平洋にかなりの戦力を回したとはいえど、世界最大級であるアメリカ軍はこちら側にも結構な戦力を割いていた。

 

書類を読み終えた彼は、背伸びをした後、紙の束をデスクの中へと戻そうとした。

 

「失礼します。支部長、大変です!!」

 

外から音がし、ジェーンが室内に入ってきた。衝撃的なことでも起こったのか、彼女は顔色が悪くなり、少し混乱もしているようであった。

 

「どうしたんだ?」

 

ギルバートは面食らった表情で彼女に聞いた。

 

「これを見てください」

 

ジェーンはそう言って彼に書類を手渡した。

 

その表紙をちらりと見た彼は、思わず目を丸くした。そこには英語でこう書いてあった。

 

 

 

対英戦争計画〈スカーレット〉

 

※実施予定は4月中とし、最悪の場合核の使用も行うこととする。

 

 

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