水筒には白湯を入れる刀持ちの烏です。
ついに輸送船団をめぐる対潜戦闘はクライマックスに入ります。
〜〜〜[ジェイムズ]から40km先の地点/潜水艦[ティブロン]〜〜〜
[ジェイムズ]から発射されたアスロック対潜ミサイルは目標上空に到達すると、パラシュートを開いて落下した。
切り離された先端の短魚雷が[ティブロン]を追尾する。
「艦長、ソナーの探針音が聞こえます。おそらく魚雷だと思われます」
「面舵45°、回頭と同時に1番2番からデコイ発射。回避するんだ」
足下で揺れが生じて艦が回頭を始めた。同時に部下の復唱も聞こえる。
「イエス・サー、面舵45°」
「1番2番注水完了、デコイ発射!」
[ティブロン]の魚雷発射管から魚雷が射出される。
これはデコイ(囮魚雷)と呼ばれるもので、艦のスクリュー音や反射音に似た音を出し続けることによって魚雷を引きつける兵装だ。
[ティブロン]から打ち出されたデコイは、しばらくすると3つの羽のようなものを傘を開くように広げ、海中で直立になる。
分離した短魚雷はどんどんと近づいてくる。
1発が軌道を変えデコイに食いついた。艦の周りを旋回するように回っている。短魚雷だからすぐに推進剤が切れるはずだ。
だが、もう1発は[ティブロン]へと近づいていく。
この情報はもちろん[ティブロン]艦内にも知れ渡っていた。
「魚雷1発がデコイに食いつきました。ですがもう1発が変わらず接近!!」
「舵戻せ、回避運動を取れ」
「間に合いません!!」
クソ、こうなったらやむを得んか。
[ティブロン]艦長は咄嗟に命じる。
「衝撃に備え!!」
彼を含む全員が地面に伏せた。艦内の照明が暗転し、もみくちゃに揺さぶられる。
「損害確認だ。応急作業急げ!!」
彼はすぐに被害報告を聞く。
すぐに照明が直り、周囲から被害報告が来る。艦内通路で一部浸水が発生しているようだった。すでに乗員が対処しているらしい。
畜生、いいように痛めつけてくれるじゃないか。[ティブロン]艦長はそう思って顔をしかめる。
幸いなことに特に航行には支障はないようだった。すぐに被害そのものも復旧した。
さてこれからどうするか、と彼は考える。
そろそろ敵のポーキュパイン対潜ロケットの射程内に入るほどの距離に入ろうとしていた。ポーキュパイン対潜ミサイルは有効深度200mの小型対潜ロケットだ。
原子力潜水艦などの深度を深く取れる艦艇ならあまり効果はないが、最高深度が150mしかない[ティブロン]のような艦艇なら十分な脅威となり得る装備だ。いくら性能を上げたとはいえ、水上船体型の[ティブロン]では涙滴型や葉巻型の潜水艦に追いつこうとするには限界があった。
すぐに魚雷発射しよう、と彼は決断した。どのみち敵は対潜ミサイルを撃ってくる。ならば先に攻撃してしまえばいい、それから急速潜航して現場を離脱すれば良いだろう。
彼は再び魚雷発射管注水を命じた。
〜〜〜同/フリゲート艦[ジェイムズ]〜〜〜
「命中音聞こえました。ですが、さほど大きくないため敵は依然として健在だと思われます」
「気を抜くなよ。すぐに魚雷が来るぞ」
シェルビーは表情を変えずに命じる。おそらくこの攻撃で敵はもう逃げれないと悟ったはずだ。ならば諦めてそのままこっちに来るだろう。
すぐに彼の考えを裏付けるような報告が聞こえた。
「発射管注水音聞こえました!!」
「面舵一杯、[ヴィクター]には敵潜を回り込ませるように命じろ。敵を囲ってやるんだ」
後方にいる[ヴィクター]が急速に回頭を始め、それに呼応するように[ジェイムズ]も艦首を右に傾けた。
〜〜〜船団の後方50km先の地点/潜水艦[シーパンサー]〜〜〜
「現在本艦は敵の後方にきました。敵2隻はうまいこと[ティブロン]が引き付けています。船団の護衛は2隻しか残っていません」
「よーしいい調子だ。本艦はこのまま輸送艦を相手に専念するぞ」
「了解です艦長、任務が終わったら一緒に居酒屋にでも行きましょう」
トーマスはおいおい、それじゃあ帰れなくなりそうじゃないか。と思いほくそ笑みながらコンソールを眺めた。
確かに、今のところ作戦はうまくいっていた。[ティブロン]は損傷こそ受けたが依然として戦闘を続行できている。
そろそろかな、と感じたトーマスは水測員にたずねた。
「現在の敵の陣容は?」
「本艦より前方、方位0-3-0に護衛艦、船団中央、方位2-9-0に輸送艦がいます。現在の距離は4000」
「よろしい」
彼は決断した。
「電池群回路解除」
「回路解除」
スクリューが回転をやめ、速力が低下する。
「MK48魚雷、全門発射用意。1番、2番には護衛艦。3、4番には輸送艦の音紋をセットしろ。1、2番は無線誘導で、3、4番は有線誘導で行う」
報告と命令が次々と発せられる。
「プログラム入力、音響探針データインプットよし」
「現在の距離3800、接近します」
「1、2番発射管注水、距離3500で発射しろ」
副長はコンソールを眺める。各発射管の注水表示は全て点灯していた。
「ツリム異常ありません。魚雷発射用意完了」
「電池群繋げ、発射管前扉解放、1番2番発射!!」
〜〜〜同/フリゲート艦[ベッドフォード]〜〜〜
「魚雷発射音聞こえました。本艦より右舷130°、数は2、本船団に向かって急速に接近します」
「来たか。対潜戦闘用意、取り舵一杯。位置的に今の魚雷は[ダッチ]に対処させろ。本艦もすぐに向かう」
「サー」
イアンは魚雷の向かう方向に双眼鏡を構えた。見たところすぐに[ダッチ]は行動を開始しているようで、今のところはまだ[ダッチ]だけでも対応できそうだった。
すぐに報告が入る。
「[ダッチ]がデコイ発射しました。すでに回避行動に移っています」
「よろしい」
彼は確認すると、軽く頷いて別の方向へと視線を移そうとした。
突如として報告が入った。
「さらに魚雷発射音探知!!目標は…輸送艦と思われます!!」
しまったと彼は魚雷の方向へと視線を戻した。おそらく敵は最初の魚雷を囮にして、今本命と思われる輸送艦への魚雷を発射したのだ。こちらの注意を逸らすために。
彼は悔しそうに唇を噛んだ。[ベッドフォード]の現在の位置は、残念ながら攻撃、迎撃するのに適した位置ではなかった。
さらなる報告が入ってきた。
「[ダッチ]が回頭を開始しました!!進路を魚雷の方向に変更しています」
「なんだと?」
彼は不思議そうな表情になる。確かに[ダッチ]は魚雷の方向に近い場所ではあるが、距離的にデコイを発射するほど時間があるわけではない。
彼はそれまでのことを瞬時に理解すると、[ダッチ]の方向へと目を移した。彼は何も言わなかった。
〜〜〜同/潜水艦[シーパンサー]〜〜〜
「艦長、敵の護衛艦一隻がこっちに向かってきます」
「身を挺して輸送艦を守るつもりか…」
勇敢なやつだな、トーマスは思った。だが魚雷2発も喰らってはフリゲートクラスであればまず耐えられないだろう。よほど運が良くても大破はするはずだ。
いや待て。
彼は何かを感じ取った。敵は本当に魚雷から輸送艦を守るためだけに動いているのか?全速で向かわなくても輸送艦を守ることはできるはずだ。いや、むしろ速力を落とした方が相対速度で押し寄せてくる海水を少しは軽減できる。ではなぜやつは全速で向かっているのだ?
彼は素早く副長に聞いた。
「副長、正面にいる敵艦との距離はどれだけだ?」
「現在の距離は…1000を切っています」
彼は瞬時に理解した。同時に水測員の焦った報告が聞こえる。
「海上に2つの着水音!!おそらく対潜ロケットによる攻撃と思われます!!」
「急速潜航!!ベント開け。下げ舵一杯…」
突如照明が暗くなりあちこちが壊れる音がした。いくつかの悲鳴も聞こえる。
やられた。おそらく敵が攻撃してきたのはポーキュパイン対潜ロケットによる攻撃だろう。弾頭自体は小型だから被害は軽微で済むだろう。
彼の思った通り、艦の損害は発射管付近に浸水があったものの被害そのものは軽かった。任務も続行できるはずだ。
彼がそう思いかけた時だった。
「[ティブロン]より通信、現在敵の対潜弾攻撃により司令塔付近を損傷。状態は中破。これ以上の戦闘の続行は難しいものと判断す」
やられたか。トーマスは小さく舌打ちした。
これ以上作戦を続行すればこっちは大丈夫でも[ティブロン]は危険な状態になってしまうだろう。作戦目標こそ果たせなかったとはいえ護衛艦一隻を奢ったんだ。それで十分だろう。
「やむを得ん。本艦と[ティブロン]はすぐさま本海域を離脱する」
[シーパンサー]は再び機関を始動した。戦闘が終わったのは10時30分を回ろうとした時だった。
戦車の名前だと何がいい?
-
モントゴメリー
-
トライアンフ
-
ヴェネラブル
-
ブラックタイガー