実はその幼女特級呪霊らしいです。 作:ただの一般呪霊
――寒い
闇夜の中にポツンと一人、横たわっている少女は身を震わせながら意識を失っていた。
どうして少女がこんなところにいるのか、今はまだ知るものはいない。
幾分経っただろうか。
森が突如として騒めきだし、異様な雰囲気が発せられた中で少女は目を覚ました。
――ここ何処?
確か昨日までは病床の上だったはず。
ゆっくりと瞼を上げた少女は朧げな様子で昨日までの記憶を呼び起こした。
彼女は元々先天性奇形腫、産まれもっての脳腫瘍を患っていた。
その為、産まれてから13年間もの時間を病院という施設の中で過ごし育って来たのだが。
気付いたら見知らぬ山奥、そしてあたりに人の気配が無いということはつまり……
「とうとう、捨てられた?」
予想外の方向へと答えを導く少女。
確かに彼女は難病の為か世話をする看護師は日々大変そうに少女の補助をしおり、親は少し腫れ物に触るかのように接していたが。
いっても、難病を取り扱う国立病院の看護師。そして親は子を何より大事に思う為、捨てるという判断に行き着くのは少し考えが早い気もするが。
「取り敢えず、此処を出ないと……」
少女はゆっくりと身体を起き上がらせる。
と同時に少しの違和感を覚えた。
あれ?
私ってこんなに視線低かったっけ?
少女は普段病床の上で過ごしていた為、自分が立った時の視線は余り分からない状態ではあるが。
それでも、違和感を覚えるぐらいには明らかに低い視線に少し戸惑った。
「あー、あー、……やっぱり声も」
――視線だけかと思ったけど声もおかしい。さっきまで気にならなかったけど、明らかに別人の幼い子の声だよね?
先程までは起きたら森の中という特異な状況に頭の整理が必要だった為、然程気にしてはなかった少女だが。
改めて、自分の声の違和感に気づいた。
一体自分はどうなってしまったんだろう。彼女は益々混乱する事となったのだが。
とある仮説が彼女の頭の中で浮かび上がった。
――どうせ死ぬからってひょっとして何かの実験台にされたとか……。
それで、失敗したから隠蔽の為に捨てたとか?
それだったら辻褄が合うし、多分そうだよね?
長い間を病院という名の監獄で過ごした為か。
世間との接触が一切無かった彼女はまたもや奇天烈な発想をし、仮説に至った訳だが。
そもそも、病院からの実験体になる事があるとすれば彼女の脳腫瘍を治す為の特効薬がでた場合だ。それにも、家族や本人の許可を得てからしか投薬はできない。
……まぁ、齢にして13の子供がそこまで考えれないのは仕方ないとは言えるのだが。
「早く移動しないと、病院の人達に殺されるかも……」
どうやら彼女は自分の建てた仮説を信じているようだ。
――私を捨てたってことは、此処の場所は割れている筈だし、そのうち追っても来るも!
変な所で頭は回るようで、早々に森からの脱出。それを目標に動き出す事を決意したようだが。
仮に少女の仮説が正しいのなら、彼女の行動と頭のキレは賞賛に値するだろう。
しかし、忘れてはならない事がある。
……もしも仮に病院側が不正な人体実験をした後に明らかな失敗をした時点で。
普通は山などに捨てずに『処分』する筈なので、その仮説自体間違っているということに。
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何分ぐらい経ったのかな?
適当にだけど、結構歩いた気がするんだけど全然出れる気配がしない。
時間にして約1時間程。
短いとは決して言えない時間と距離を少女は歩き続けていた。一向に見えない出口に、人気のない道。少し不安を覚えつつも出来ることと言ったらひたすらに歩くだけ。
さっきよりも暗くなって来てるよね?
私暗いの苦手なんだけど……。
時間というものは残酷なものだ。
少女の事など気にしないかの様に辺りは一層暗闇へと近づき、周囲を照らすのは月明かりのみとなっていた。目を凝らさないと、道に乱雑に転がっている石や枝は見え辛くなり一段と足元を注意しながら歩みを進めていく彼女だが。
もう疲れたぁ。
こんなに歩いてるのに出れないってことは、歩く方向が逆だったとか?
とうとう体力に限界が来たのか、一度歩くのを辞めてその場に座り込むことにした。
休憩がてらに、少女は一度自分がこのまま歩みを進めるべきかどうかを考える。
手持ちは今のところ何も無いから地図を使う事もできないし、かと言って今歩いてる道が逆だった場合は絶対に出る事できないし。
適当に歩みを進めてはいたものの、此処に来てその歩いている方角が果たして出口に繋がっているのか。もしかしてだが、更に山奥へと進んでいるのでは無いか。少女は不安で一杯になった。
……かと言って、時にして1時間程。せっかく此処まで歩いて来た彼女には今更引き返す手段というものはないに等しいが。
どうしよう、このままこの方角歩くかそれとも横に移動するか。後ろに引き返すのは今更だし。
少女はうーん、と頭を悩ませながら考える。
そして、取り敢えず前に進む事を決めたその時だった。彼女はついているのだろう。何故なら……
――前が少し明るくなった……
ひょっとして誰かが灯りを付けたのかも!
依然として暗闇に呑まれていた山。
少女の前方はその闇が少しだけ柔らいだ。
……考えられることは一つ。
恐らく誰かが灯りを付けたと言うこと。そしてそこに行けば人に会える可能性があるということである。
嬉々として、灯りの方へと走り出す少女。
漸く人に会える!
そしたら出口もわかるし、今晩だけ泊めてもらえるかも!
足早に駆け出した少女。
走り出して数分経った所で目の前に和風の家が見えてきた。屋根は瓦でできており、入り口はスライド式。窓は昔ながらの障子を用いて建てられている様だった。
そして、入口と思わしき引き戸の両脇。
これまた、古風な雰囲気を感じる提灯が入り口より少し高くなるように提灯台に取り付けられていた。
「どなた?」
丁度、提灯に灯りを付けたと思わしき人物。
見た目は少女より少し背が高いぐらいだろうか。前髪を眉上で切り揃え、後はショートヘア程の長さ。白い肌もだが、何より特徴的なのは梅の様な色合いをした赤色をまるで筆から雫を落としたかの様に、その綺麗な白髪を斑点状に染めている所だった。
「あの、私気付いたら山奥にいて……それで明かりがあったからきたんで、すけど」
――うぅ。
人と話すのなんて久しぶりだし、結構詰まっちゃっなぁ。
少女は人肌に触れて少し安堵したのだろう。
先程までの不安そうな顔はなくなり、今は穏やかになっている。だからこそ、目の前の人物をよく見れていなかったのだ。
「そう……じゃあ……」
白髪の髪の女性は笑を浮かべてゆっくりと少女へと近づく。少女も安堵しきっていたのか、ゆっくりと彼女の方へと近づいた。
――優しそうな感じの人だし、ひょっとしたら助けてくれるかも!
……否、近づいてしまった。
白髪の女性と少女が人一人分の程の距離まで近づいた時。先程まで笑顔だった女性は真顔へと戻り、何処から出現させたのだろう。氷で作られたと思わしきクナイを持った腕を上へと振り上げ。
「死ね」
「……え?」
少女へと切りつけた。
――なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでのんでなんでなんでなんで?
少女には何が起こったのか理解が出来なかった。分かることは喉を恐らく切られた事と、目の前の人物に殺されたこと。
そして意識が遠のく中、少女が見たのは何故か『喉を抑える女性』の姿だった。
取り敢えず呪術全盛期編スタートと言うことなんですが。
全盛期って呪術師どれぐらい強いんですか??
手探りで書くしか無いかな……