ゆきんこあるけみすと   作:じいて

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全部勢いで書いてるので辻褄合わせで後からひいひい言ってるんですが、遂にタイトルまでもがその犠牲と相成りました。
変身するのはロボじゃないです。ご了承下さい。

↓ゆきんこ研究所(埋め立て予定)
【挿絵表示】



【祝福ロボ、変身!②】

【三】

 

 

人工生命体の錬成は、言うまでも無く錬金術の中でも難易度の高い部類の物だ。

 

”剣の創りし世界”の魔法をあるけみすとの世界で再現するだけの知力を持つゆきんこであれ、一年にも満たない時間の中で生み出せたのはごく短命のものばかりだった。

 

ならば更なる時間を費やせば良いという話なのだが、ここに彼女にも慮外の事態が存在した。

 

人の身を離れた事による精神への影響が想像以上に大きかったのだ。

 

睡眠や食事といった心の休息を摂る事が出来ないゆきんこは、日を追う毎に精神の摩耗を実感する。気がおかしくなって悪霊に果てる日さえ、直ぐにとは言うまいがそう遠くは無いだろうと。

 

そう悟ったゆきんこは少し強引な手段に出た。

 

未熟故に完成品の寿命(クオリティ)が落ちるのであれば、もっと良い素材を使えば良い。

 

人を遥かに超えた生命を持つ、あの災厄の化身を混ぜ込めば良いのだと。

 

 

~~~

 

 

『先ずは造形問題なし、ですね』

 

人と竜の人工生命体(ホムンクルス)の少女が入った培養槽の前で、小さな熊のぬいぐるみが呟く。

 

縫いボタンの瞳に映る液中を揺蕩う少女は、薄水色の髪を揺らめかせながら赤い瞳で虚ろにそちらを見つめ返している。

 

知る者が見れば目を疑う光景だろう。人とは異なる部位を伴っている点を除けばそれは、嘗て”氷姫”と呼ばれていた冒険者の容姿と全く同一なのだから。

 

『……』

 

ぬいぐるみは。否、それに憑依している少女の魂は此処に至るまでの過去を想起する。黒王軍で過ごした忙しい日々に、共和国で暮らした穏やかな日常。そして最期を看取る事も出来なかった、嘗ての故郷の思い出を。

 

『私はあなた達に殺された事を覚えてません。精々ユタから伝え聞いたぐらいです』

 

『だからあんまり思う事は無いんですが……。仕返しの一つぐらいはしても許される立場ではあるんですよね』

 

”今は自分ではない自分”を暫く見つめると、ゆきんこは意を決した様にぬいぐるみの身体から離脱した。

 

『アイツみたいに「返せ」なんて言いません。ただ、私の方からも奪わせて貰いますよ』

 

躊躇いは無い。実体を持たない夢幻の身体は硝子をすり抜けて少女の肉体の内に入り込む。

 

そして数秒の無音の後、少女の瞳に光が宿った。

 

(……抵抗はありませんね。やはり、竜でも赤子の自分であれば自我も薄いものなのでしょうk)

 

「がぼっ!?」

 

一瞬拍子抜けな表情を見せた次の瞬間、ゆきんこは咽た。

 

(ま、まだ呼吸をしちゃいけない事を忘れてました!早く外に出ないと……)

 

ここまで来てみっともない死に方をするなど有り得ない。一刻も早く脱出をせねばと槽の天井を殴り飛ばそうとするが、脱走防止の為に作られた所為もあって壊れなかった。

 

(ええい、邪魔です!【魔力撃】っ!!)

 

魔力を込めた拳の一撃を受け、バガァン!!と大きな音を立てて天井は吹っ飛んだ。

 

「げほげほっ、けほぅ。すー、はー……呼吸が出来るって、素晴らしいです……」

 

培養液を吐き出して久方振りの呼吸を味わうと、ゆきんこは心底疲れた表情で培養槽から這い出たのだった。

 

 

【四】

 

 

憑依に成功して身形を整えた後。ゆきんこが事前に用意していた幾つかの自己検査を終える頃には、既に半日が経過していた。

 

「ふむ、食事は人間と同じ様に可能。ただし量は増加。身体能力・代謝が上がりましたが、見た目以上の生活への影響はほぼ無し」

 

「確かめる術は無いが、後は寿命さえしっかり延びていればほぼ人間と同じ生活が出来る…と」

 

ゆきんこは慣れた様子で検査結果のまとめをさらさらと書き留める。しかし暫くぶりの生身の扱いにまだ慣れないのか筆跡は拙く、年相応の子供が書いたものの様だ。

 

「ふわぁ……ああ、眠気もしっかりありますね。寿命の問題さえしっかり解決していれば肉体はほぼ完璧です。精神も今の所静かなまま、魔法に対する抵抗の様子すら見せてないと」

 

ペンを置いて伸びをして、ゆきんこはぐったりと背もたれに寄りかかった。生身の疲労感にげんなりとしながらもその表情は喜ばし気だ。

 

「後は今後の経過観察と専門家の見解を聞いて、問題無ければと言ったところでしょう。……長かったですねぇ」

 

「帰ったらアイツ、どんな顔をするでしょうか。楽しみです…」

 

一仕事を終えた事でほど良い眠気が迫って来る。少女は久しく覚えの無かった感覚に身を任せ、そのまま意識を手放した。

 

 

~~~

 

 

ゆきんこが眠りに就いた少し後。深夜の黒王軍の通りにて。

 

「あぁ呑んだ呑んだぁ。ひっく」

 

ドンッ

 

「お?っとっとっとっと……いてっ」

 

千鳥足で歩いていた市民の男に小さな人影がぶつかる。体格差にも関わらず何故か当たり負けをした様で、男はそのまま転んでしまった。

 

「おい、ガキぃ!何しやがんだぁ!」

 

苛立つ男の呼び掛けに対し、小さな人影はぴたと立ち止まり振り返る。

 

月灯りに映し出されたその姿は紛う事無くのゆきんこのものだった。赤い瞳がじっと、無表情で男の方を見つめている。

 

「少しは悪そうにしろよなぁ、あぁ?何とか言ったらどうだぁ」

 

「……」

 

彼女は何も言わず、そのまま去ってしまった。

 

「おいぃ!」

 

「ったく、変なガキだったな……」




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