【共和国に住もう!①】
【一】
間も無く初雪を迎える時分。欠伸が出る程平和なアルケミの国・ウィンバルトに、街中を足早に歩く冒険者達の姿が在った。
「なあ、本当にまだ歩くのか?そろそろ……」
「まだまだコイ~」
片やどでかい斧槍を背に負い、肩にメロンパン(?)を乗せた黒髪の女。
「そろそろ住宅街抜けるんですが。次もまた変なとこだったら承知せんです」
片や氷精の如く愛らしい見た目の、ただし角翼尾を伴った少女。コッコッと石畳を同時に鳴らしながら、両者は髪を靡かせゆく。
からり、枯れ葉の転がる音がした。そよりと流れる風はとうに潮の香りも薄く、ただ肌寒さのみを伝えている。
氷精の少女が視線を上げれば見慣れた木組みの家々を過ぎ、澄んだ空を仰いだ。
「良い天気ですね」
「全くだ」
首を竦める斧槍の女はしかし、表情に僅かな期待を滲ませている。長年住んだ街の未だ知らぬ一面を想って内心胸を躍らせているのだ。
それを見て氷精の少女もほくそ笑んだ。
(まあ、偶にはこういうのも良いでしょう。しかし、どうしてこうなりましたかね……)
空を仰ぎ、記憶を辿る。発端は今朝の事だった───
◇
室内にて、古びた木のテーブルを挟んで少女と女が向かい合っている。
「今更な話ですがこの家、狭くないです?」
「本当に今更な話だな」
山と積まれた白パン、そしてボウルいっぱいのシチューをもりもり平らげつつ、合間に少女は続ける。
「私達、元は異世界から来たボンボンな訳じゃないですか」
「そりゃマーに苦心して貧相な暮らしをしてた最初の頃を思えば十分快適ですよ、でもでもですね」
力説が続く。ろくろを回すような身振り手振りに伴って、翼がはさはさと静かに揺れる。
室内屋外関係無く桃色薄着の女は、シチューを啜りながらそれを半目で傍観していた。
「はいはい。まあ気持ちは分らんでも無いがな」
「でしょう?」
「でもウチにはおカネが有りませんわよ」
女は冷淡に、しかし深い哀しみを湛えた遠い目をして告げる。
こればっかりは仕方が無い。別世界からアルケミに来た冒険者は少なくないが、生活水準の違いに苦しむ人はみな一様にこの悩みは持っているに違い無いだろう。
「ふっふっふ」
「…?」
薄着女の考えは正しい。実際長い同居生活の中で女はこの一言で幾度となく膝を折ったり折らせたりした筈なのだ。ただ───ギャラクティック・冒険者には狙いが有った。
「今日の私は抜かり有りませんよ。見なさいオマエ、この街中で拾った変なチラシを!!」
「何だと……!?」
そのチラシにはこうあった。朱くドでかく、目立つ文字で……
【/pr 納税無し、社会保険料無し、勤労の義務無し。今なら住居費も無しの、美しい国ウィンバルト──】
と。
<出演>
メロンパン(?) コインちゃん
冒険者*2 作者
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