第7部読みながら流行り物を見てたらふと思い付いたゲテモノでございます。
「やめろおおおおおおおおおおおWRYYYYYYYYYYYY!!!!」
大統領の置き土産が、彼の頭部を破壊していく。
「同じ世界に、同じ人間が複数人存在することは出来ない」
その絶対の法則を破った大統領の
ルーシー・スティールが彼、「平行世界から来たディエゴ」に突き付けた「基本世界のディエゴ」の生首は彼の頭部へ吸い寄せられた。
片脚を失ったディエゴは逃げる事も叶わず、生首と接触し頭部を破壊された。
ひとしきり断末魔を上げた後、首無し死体となり列車の床に横たわるディエゴ。
彼の命も、精神も、ここで絶えると彼自身でさえ死ぬ直前そう悟った。
しかし、大きな誤算が発生した。
◇◆◇◆◇◆
森の中を、歩く姿が3人。
一人は武骨な斧を引っ提げた若き戦士。
一人は年齢と見た目が一致しないエルフの大魔法使い。
一人はそのエルフの弟子の少女。
「場所はどうやらここみたいですね」
「間違いない…この魔力の残滓、つい最近ここで魔族が複数死んでいる」
エルフの大魔法使い、「葬送のフリーレン」率いる3人組は旅の途中、ある噂を耳にした。
『山の中で突然魔族の群れが仲間割れを起こし殺し合いを始めた』
魔族の習性を知る彼らは最初は半信半疑だったが、旅のルート上では結構近くに現場があった為向かってみる事にし、今に至る。
「普通に通りがかった人間の魔法使いとかに殺されたんじゃあねえのか?」
戦斧を身に付けた戦士の男、「シュタルク」は地面をフリーレンと共にぼんやりと見つめながら言う。
「今解析してるけど、魔法を使った痕跡が一切見受けられない」
「では、全員何らかの物理的手段で……?」
フリーレンの隣にいた弟子の少女、「フェルン」も自分で出来る限りの解析を行う。
「その可能性が高いね。理由は分からないけど」
そのまま解析を続けていると、新たな事が分かった。
ここで魔族が殺し合いをしたという可能性は確かに高い。
しかしどうやら一人、生き残りがいるようだ。
「まだそう離れてないかもしれない。ここからは周囲を警戒しながら進もう」
フリーレンの言葉に2人は頷く。
だがそう言った矢先に、フリーレンが近場の草木の影から微弱な魔力を探知した。
生き残りの魔族だと直感でそう思ったフリーレンはそれから何の迷いも無く魔力を感じた方へ杖を向け、
「手応えが無い……逃げられたね」
そこにいた筈の魔族は、まるで最初からいなかったかのようにその場から消えていた。
「どうする?追っかけるか?」
「いや、私が見る限り魔力量も低いしかなり若い魔族みたいだから放っておいても勝手に死ぬでしょ」
3人は追跡を諦め、そのまま旅を続行する事にした。
◇◆◇◆◇◆
彼、「平行世界のディエゴ・ブランドー」は訳も分からず前世の記憶を持ったまま転生を果たした。
ディエゴは想定外に過ぎるこの状況を何とか冷静に分析し情報を整理していった。
一つ、ここは嘗て自分が住んでいた世界ではなく時代も中世中期頃。
二つ、この世界には「魔法」と呼ばれる力が存在し、一般の民衆にまで浸透している。
三つ、自分は人間ではなく人間と敵対している「魔族」という種族の男として産まれた。
重要な情報を並べればだいたいこの通り。
魔族として産まれてきたディエゴはすぐに産みの親に捨てられた。
最初は人間にもよくいるパターンの親かと内心軽蔑したが、それから数年後に直ぐにその意味を理解した。
成長スピードが人間と比べて明らかに早すぎるのだ。
物心がつき、彼が自分自身をディエゴだと認識する頃には既に直立し走れる程にまで成長していた。
それから数年経てばあっという間にディエゴの肉体は20歳前後の健康的な男の見た目に育った。
「どうやら魔族ってヤツは……この位で肉体の成長が止まるみたいだな」
湖の水面に映し出された自身の顔を見てディエゴはそう呟く。
その顔は前世のディエゴの顔と全く同じ。
しかし両側頭部から一対の立派な角が生えていた。
これが魔族と人間の明確な相違点。
もう一つ、この数年の短い間に新たな違いも見つかった。
精神構造の違い。
ディエゴ以外の魔族には、人間のような共感能力や情緒が存在しない。
まるで野生動物が人の言語を話しているかのようにディエゴは感じた。
人の形をして、人の言葉を喋っているのに、人とはかけ離れた存在。
前世の人間としての記憶と人格を引き継いだディエゴは同族と話が噛み合わない事が多く、気味が悪くて仕方がなかった。
そして、ディエゴの行動方針を大きく変えたのは、2年前のあの日。
彼が住んでいた集落の魔族達が、総出で出ていった。
何も聞かされていなかったディエゴは取り敢えず着いて行き、暫く歩き続けて目的地に着いたのか彼らは歩みを止めた。
彼らの目的は、人間の村落の襲撃だった。
全員で襲い掛かり家屋に魔法で火を付け、炙り出された村人達を惨殺した。
中世ではよくある光景だ、とディエゴはその略奪と虐殺の様子を遠巻きに見ていた。
だが直ぐに彼の目は見開かれた。
最初は彼らが死体を一箇所に集めているのを見てまさか弔いでもする気か、と鼻を鳴らしたが、その考えが大きな間違いであったことを直ぐに知る。
彼らは、その死体を手に取ると貪り食い始めたのだ。
まるで肉食獣が仕留めた獲物に食らいつくかのように手足の肉を食いちぎり、腹を割いて中身を引っ張り出し、大量に溢れ出る血を啜った。
「な、なんだこいつら……!?人間を……食ってやがる!!」
魔族達はまるてまそれが当たり前かと言うかのように食事…否、「捕食」を続けている。
「あれが…同族だと…俺と…同じ……!?」
そう、魔族という種族に於いてディエゴだけが人を食べない異端だったのだ。
「違う…!!俺は、あんな化け物共と同じなんかじゃあない!!」
ディエゴは現場から目を背け、そしてその場を走り去った。
「……俺は人間だッ!!」
◇◆◇◆◇◆
ディエゴは逃げた。
ひたすらに走り続けた。
どこか、同族のいない場所を探して。
しかし、逃げる事は出来なかった。
「貴様は秩序を乱す異端者だ。生かす理由は無い」
「人の肉を拒み、人と同じ心を持った貴様は不穏分子だと我々は判断した」
故郷から逃げ出したディエゴは追っ手の同族に既に追い付かれていた。
「クソッ…!!」
10人もの同族に取り囲まれたディエゴは焦燥感で表情を歪める。
彼らは既に攻撃魔法を放つ用意を済ませており放たれるのは炎か雷かまた別の何かか、分からないが無様な死に様を晒すのは時間の問題だった。
―何か…何か手はある筈だッ!!
必死に思考を巡らしていると、彼はある事に気付いた。
それは前世で彼を象徴する力であった「スタンド」だ。
スタンドとは精神エネルギーの具現化。
つまり、前世の記憶と人格を引き継いだ自分なら…。
確証は無い。
失敗すれば恥を晒しながら惨めに消滅する事になるだろう。
「化け物共が…!!俺の道を阻む奴らは、どいつもこいつも「有罪」だッ!!」
それでも、彼は賭けた。
「
そして、「彼だけの5秒間」が始まった。
「WRYYYYYYYYYYYYッッ!!!」