時を5秒間止める魔法   作:COTOKITI JP

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我が心と行動に一点の曇りなし。

全て初投稿だ。


ある筈の無い物①

 

《ヒンメルの死から28年後》

 

 

フリーレン一行がグラナト伯爵領に着く少し前のことだった。

 

「やっぱりあの魔族、少し気になるな」

 

「どうされましたか、フリーレン様?」

 

馬車での移動の途中、フリーレンは顎に手を当てながら唐突に呟いた。

 

彼女が思い起こしたのは、ここに来る前に通りがかった村の外れで仲間割れを起こしたという魔族。

 

「…あの時、魔力探知である程度の距離は測ってたんだけど私が魔法を撃った瞬間に一瞬で距離が離れていったんだ」

 

「一瞬?」

 

戦斧の手入れをしていたシュタルクが顔を上げる。

 

「うん、本当に一瞬だったんだ。超スピードだとか、幻覚とかじゃあ断じてない…まるで最初からそこにいなかったみたいに…」

 

「瞬間移動の魔法とかじゃあねえのか?」

 

「それができる程の魔力量はアレから感じなかったよ。だから不思議なんだ」

 

場合によってはこれは厄介な事になるかもしれない、とフリーレンは内心取り逃したのを少しだけ後悔した。  

 

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

《グラナト伯爵領》

 

 

「クソッ、衛兵が矢鱈多いな…!」

 

ローブで頭部まですっぽり覆い隠した格好の男が街中を歩く。

 

ディエゴは、物資の調達と「ある物」を求めてここに来ていた。

 

「確か、この書店だったか」

 

彼の求める物はこの世界に於ける「魔導書」と呼ばれる書物。

 

便利な民間魔法から戦闘に特化した魔法まで様々なものを書き記したそれを彼は探していた。

 

彼にはスタンドパワーがある。

 

しかし魔法が一般的な攻撃手段の一つに数えられるこの世界で、スタンドに依存する事は危険だとディエゴは判断したのだ。

 

群れの中で孤立気味だったディエゴはロクに魔法の鍛錬など積んでいないので、基本的な魔法を多少使う事しか出来なかった。

 

恐らく並の人間の魔法使いにもスタンド無しでは負けるだろうと、そう考えたディエゴは新たに魔法を学び直す事にした。

 

「火球や石礫を数発撃てるだけでは話にならん。バリエーションを増やしたい所だが……」

 

書店の扉を開け、魔導書の棚に直行すると早速吟味を始める。

 

客はこの時間帯にはほとんど居なく、彼とあともう一人分の足音が狭い店内に静かに響いた。

 

探していた攻撃魔法に関する魔導書は棚の少し上の段に民間魔法の魔導書と共に並んでいた。

 

ディエゴは取り敢えず適当な物を見てみようと思い手を伸ばす。

 

その時、伸ばした手が他人の手と接触した。

 

「ム…」

 

「あっ」

 

彼と同じように上の段に爪先立ちで精一杯背伸びをして手を伸ばしていたのは、背の低いエルフの女だった。

 

杖を持っているあたり魔法使いだろう。

 

―何だこのエルフの女…何処かで見覚えがあるぞ…?

 

「すまない、邪魔したな」

 

「いや…」

 

正体を悟られたくないディエゴは適当な攻撃と防御魔法に関する魔導書を2冊手に取ると受付で代金を支払い、フードを深く被り直しながらそそくさと店を出ていった。

 

その後ろ姿をエルフの魔法使い、「フリーレン」は静かに見つめていた。

 

人ならざるものを見るような冷たい目で。

 

 

◇◆◇◆◇◆

 

 

 

 

魔導書を手に入れたディエゴは事前に取っておいた宿へ向かって直行する。

 

道端のあちこちにいる衛兵が目を光らせる中、帰路へつくが同時に異変を感じていた。

 

―あのエルフの女……俺の後ろから着いて来てやがる…。

 

最初は道が被っただけかとも思ったが、念の為道中で無駄に回り道などをしてみたが彼女はそのまま着いて来ていた。

 

―出来うる限りの魔力の隠蔽は行っているはずだ…まさかバレる筈が…!

 

ただ無表情でディエゴの歩調に合わせて歩みを進める。

 

距離は一定に保たれ、明らかにこちらを意識して行動していることが分かる。

 

―どうする、ここで走り出したらゾルトラークを撃たれるかもしれない……街中での戦闘はどうにか避けたいが…。

 

そう思いながら早歩きで宿に向かっていたディエゴだったが、その歩みは唐突に止まる。

 

目に映ったのは多くの護衛の兵士を連れながら通りを歩く貴族らしき装いの男達。

 

先頭の2人が何かを話しながら歩いているが、それよりも気になったのは容姿の方だった。

 

片方はここの領主だが、問題はもう片方の男。

 

立派な角を持った魔族だ。

 

しかも配下の魔族まで連れて堂々と人間の街の通りを歩いているのだ。

 

その光景に呆然としていた時、魔族の男の方がこちらを向いた。

 

しかし見ているのはディエゴよりも、その背後だと直ぐに気付き振り返る。

 

「…なっ!?」

 

するとそこには、こちらに向けて杖を構え今にもゾルトラークをブッ放しそうな女エルフの姿があった。

 

「き、貴様ァッ!!」

 

ゾルトラークに対抗出来る防御魔法など持ち合わせていないディエゴはやむを得ずザ・ワールドを呼び出そうとするが、彼女がゾルトラークを放つ前に近くにいた衛兵に拘束された。

 

「あっいた!!」

 

「フリーレン様!」

 

今度は女エルフの仲間なのか、見知らぬ男女が走り寄ってくる。

 

「ぐッ!何をするッ放せ!」

 

魔族と女エルフが何かを話している中、ディエゴまで拘束され連行された。

 

 

 

 

 

連れていかれる際、女エルフと魔族はディエゴをじっと見つめていた。

 

「…アレもお前の配下か?」

 

「知らんな。しかし、「野良」が紛れ込んでいるとは気付かなかった…」

 




ちなみに最後のシーンでフリーレンちゃんさんは射線上にディエゴとリュグナーを重ねてちゃっかりダブルキル狙ってました。

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