リミィ・コマリスキーは強者を求める   作:葵莢

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原作三巻部分
10.夏のリゾートと私の水着


 

 

 ──夏だ。海だ。リゾートだ。

 

 私は現在、テラコマリ閣下を始めとした第七部隊の面々と共に、核領域はフララール州のリゾート地帯へとやってきていた。

 

 といっても、決して隊を挙げてのバカンスだとか、そういう訳ではない。

 

 これは(れっき)とした任務の一環なのである。

 

 きっかけはつい先日のことだった。

 

 ムルナイト帝国、それも閣下宛てに一つの招待状が届いた。

 

 差出人の名はネリア・カニンガム。

 

 “月桃姫”という二つ名でも知られる、ゲラ=アルカ共和国軍八英将の一人だ。

 

 彼女は昨今、政治的な溝が深まりつつあるムルナイト帝国とゲラ=アルカ共和国の関係を憂いており、両国の関係改善を名目としてテラコマリ閣下と我々第七部隊をゲラ=アルカの支配域であるリゾート地へと招待した。

 

 そこで閣下と茶会を開きつつ、両国の融和を図りたいというのが彼女側からの申し出である。

 

 ムルナイト側としては当然罠の可能性を疑った。

 

 けれども皇帝はこの申し出に対し「逆に敵の実力を推し測ってやれ」と実に前のめりな姿勢で閣下のことを送り出したのだった。

 

 つまり、罠の可能性が高いけどそれならそれで全力で突っ込んじまえ! と、そういう方針らしい。

 

 力こそ全てな吸血鬼の国らしい、実にパワー全振りな考え方だ。嫌いじゃない。

 

 

 ……と、そういう訳でこうしてリゾートへと訪れたテラコマリ閣下率いる我々第七部隊(と、なぜかサクナも付き添いで来ている)であるが、現在は部隊全員揃って、この貸し切りビーチにて足止めを食らっている最中だった。

 

 なんでも、招待状を出してきたネリア・カニンガム本人が未だホテルで爆睡したまま起きる気配が無いらしく、彼女が目覚めるまで適当にビーチで時間を潰して待っていてほしい、と。

 

 相手側からそのような通達があったらしい。

 

 ゆえに、我々第七部隊の面々は束の間の休息とともにリゾートを満喫していたのだが、そんな中。

 

 閣下の熱狂的信者である第七部隊の大半の連中はというと──。

 

 

「ヒャッホォォォォォゥ海だァァ水着だァァー!!」

 

「水着姿の閣下だァァァァァ!!」

 

「生きててよかったうおあああああああああああああああああッ!!」

 

「水着コマリン尊いよォォォォォッ……!!」

 

 

 ──と、全力で閣下の水着姿を堪能していたのだった。

 

 例外と呼べるのは私とヨハン、それからベリウスぐらいだろうか。

 

 ヨハンは元から閣下に興味がないし、私やベリウスも、武人や上司としての閣下は尊敬しているが、このバカどものように、まるでアイドルか何かに対するもののごとく閣下の肢体を眺めて熱狂するといった、そんな変態的な感性は持ち合わせていない。

 

 

 ……ただ、そんな変態たちにも一応、所謂(いわゆる)紳士協定のような一定の線引きを守ろうとする心ぐらいはあるらしい。

 

 今だって互いの声も全く届かないような遥かな遠目から歓声を上げているだけで、閣下たち女性陣の姿は豆粒程度にしか見えていない。

 

 さらに、不意に閣下の目線がこちらに向けられたりすれば、奴らは即座にビーチバレーに興じているフリなどをして、全然閣下たちのほうなんて見てませんよ〜、みたいなアピールをしていた。

 

 さすがはプロの変態集団である。

 

 自分たちが変態であることを自覚し、決して女性陣を不快にさせることがないよう完璧な配慮(?)がなされていた。

 

 奴らには奴らなりの矜持や美学のようなものがあるのだな、と。

 

 そのような感想を抱きつつ、私は連中からも少し離れた場所にあるビーチチェアの上に寝そべりながら、ドリンク片手にひっそりと一人くつろいでいた。

 

 

「──いいのかよ、お前はあっちに混ざらなくて」

 

 

 訂正する。

 

 一人ではなかった。

 

 そういえば私と同じパラソルの下にはヨハンの奴もいたのだった。

 

 珍しく今日はまだ死んでない。

 

 ヨハンは私の傍らに立ちながら、不意にそんなことを言ってきた。

 

 この場合、“あっち”というのは言わずもがな、閣下たちの事である。

 

 決して変態集団のほうではない。

 

 私は掛けていたサングラスを頭の上に乗せつつ、視界の奥で楽しそうに水遊びに興じている閣下、ヴィルヘイズ、サクナの三人を眺め、思わず、「はぁ……」と深い溜め息を吐きこぼした。

 

 

「……どうも昔から、ああいう年若い少女たちのキャピキャピしたノリにはついて行けなくてな」

 

「いやお前いくつだよ……。あいつらと年変わんねーだろ」

 

「…………」

 

 

 ……まあ、肉体的にはそうなんだけどな。

 

 けれども精神的には充分おっさんと言える年齢なのだ。

 

 いやまあ……? 心はいつでも二十代真っ盛りの気持ちで日々を謳歌しているけども?

 

 それでもまあ……、あの輪の中に入るのはさすがに色々とキツいものがある……。

 

 とはいえ、こんなむさ苦しい筋肉ダルマたちの中でビーチバレーに興じる気にもなれない。

 

 それゆえ私はこうして一人、ただじっと時が過ぎ去るのを待っているのだ。

 

 だからヨハン。

 

 お前も私のことは放っておいて適当に遊んでていいんだぞ。

 

 ──が、そんな私の気持ちはこの男には一切伝わっていないようで。

 

 

「……にしても」

 

 

 不意にヨハンは私の首から下をジロジロと観察しながら、嘆息混じりの声を漏らした。

 

 

「あいつらに比べて、お前の水着は色気もへったくれもないな……」

 

「…………」

 

 

 言われ、私は自らの装いを確かめるように視線を落とす。

 

 そこには首から下の全身を隈なく覆う紺色のウエットスーツが、何とも言えない存在感を主張していた。

 

 うん、たしかに色気は全く無いな。

 

 だが、余計なお世話である。

 

 

「別にいいだろう。機能性に関してはこれが一番優秀だったんだ」

 

 

 ──そう。

 

 身体のラインすらあまり出ないようなこの厚手のウエットスーツは、少々暑いことにさえ目を瞑れば水着としての性能はかなり高い。

 

 水によく浮くし、その上何やら特殊な素材を使っているとかで、なんと防刃防弾仕様という驚きの付加効果まで付いていた。

 

 まあ、といってもその耐久性自体は気休め程度のものでしかないそうで、戦闘時における実用性はあってないようなものらしい。

 

 あとはアレだな。

 

 胸部がしっかり固定されているので、激しく動いたとしても胸が揺れたりせず、戦闘時でも邪魔にならないという点も高評価だ。

 

 実際、この利点はかなり大きい。

 

 何しろ私は普段から、軍服の下には下着代わりに乳揺れ防止のトレーニング用のスポーツブラを着用しているぐらいだ。

 

 ちなみにパンツも同様にトレーニング用のショートパンツを穿いている。

 

 精神衛生上、これが一番着ていて落ち着くのだ。

 

 胸が成長し始めたばかりの頃なんかは、サラシを巻いてガチガチに固定しようとしたこともあった。

 

 けれどいちいち自分で巻くのも面倒かと思い、試す前に断念してしまった。

 

 ……本当に、なぜ私の胸はこの三年でこんなにも急成長してしまったのだろう。

 

 軍に入った当初はこんなこと気にする必要もなかったというのに。

 

 ……そういえばこの三年の間にミリセントのほうも同じぐらい成長していたな。

 

 以前カオステルに、私とミリセントのスリーサイズが同じとか言われたことが何となく気になって、実は少し前に本人の了承を得て測らせて貰ったことがある。

 

 そうしたら奴の言う通り、身長体重も含め、本当に全身そっくりそのまま同じ数値だった。

 

 まさに奇跡のような一致率である。

 

 しかも顔や身体だけでなく毛髪関係──つむじの位置や巻き方のような、細かい髪質までも同じっぽいからな。

 

 軍と“逆さ月”では食事や生活環境だって違っただろうに、いくら双子とはいえ、ここまで似るものなのだろうか。

 

 それとも一卵性双生児として生まれた吸血鬼というのは、皆こういうものなのか……?

 

 周りに比較対象がいないのでいまいち判断ができない。

 

 激しく謎だ。

 

 

 ──ああそうだ、ミリセントで思い出した。

 

 

「──そういえばこの下には一応、姉さんから借りた水着も着用しているのだったな」

 

「……ッ!?」

 

 

 ウエットスーツを買った際、店員のお姉さんに言われたのだ。

 

 普通は下にビキニタイプのような水着を着るものだと。

 

 だからミリセントに頼んで借りることにした。

 

 どうせ今後必要になる予定もないのだから、借りられるのなら買うよりもそのほうがいいだろう、という判断によるものだったのだが……。

 

 ミリセントから借りたこの水着……どうも私が着るにはデザインが少々可愛らしすぎたというか、なんというか。

 

 色合いだけを見れば深い青色の落ち着いた大人の水着って感じなのだが、デザインがめちゃくちゃフリッフリなのだ。

 

 ちなみに別の水着が良いと頼んでもこれしか貸してくれなかった。

 

 嫌なら裸の上に着ろとまで言われた。

 

 まあどうせ中に着るだけで他人に見せるようなものでもないし別にいいか、と思って最終的には渋々借りた訳だが、普通ならこれを着てビーチという衆目の中を歩いたりするんだよな……。

 

 そう考えるとゾッとする。

 

 前世ではこんなこと全く気にならなかったというのに、今世では女に生まれた影響か、私は昔から人前で肌を晒すことに対して強い抵抗を感じていた。

 

 幼い頃の貴族教育が身についているから、という可能性もある。

 

 ともかく私は、必要以上に人前で地肌や身体のラインを出すのが恥ずかしいのだ。

 

 中身はおっさんのくせして何言ってんだ、という話だが。

 

 だが、これに関しては理屈ではなくこの肉体に染み付いた謂わば習性のようなものなので仕方あるまい。

 

 ……いやでもミリセントのほうは普段からあの露出度の高いドレスを着て平然としているんだよな。

 

 ということは遺伝子や肉体的なものというよりは、精神的な要因がかなり大きいのだろうか。

 

 昔はミリセントももっと恥じらいを持っていたように記憶しているが、“逆さ月”での生活がそれだけ彼女の精神性に影響を与えたということなのだろう。

 

 という訳で現状、惜しげもなく水着姿を披露する閣下たちのような周りの女性陣含め、肌を晒すことに恥じらいをおぼえているのは私というおっさん一人だけ、という事になるな。

 

 ……冷静に考えたら相当キモい気がしてきた。

 

 脱ぐか……? いっそ今日、ここで文字通り一皮剥ける覚悟を決めてみるか?

 

 そう思って私が首元のファスナーに手を掛けようとすると、

 

 

「わあああ! 待て待て早まるな! こんなところで脱ごうとすんじゃねえ!! ほかの奴らに見られたらどうすんだ!?」

 

 

 なぜかヨハンの奴が顔を真っ赤にさせながらものすごく慌てていた。

 

 いやほかの奴らってなんだ。

 

 さらっと自分だけは見ても許されるみたいな言い方をするな。

 

 

「むしろ恥を克服するために脱ぐのだ、見られても構うまい」

 

「構え! とにかくお前まで痴女になるんじゃねえ!!」

 

「痴女とか言うなよ。今なお水着姿の閣下たちに失礼だろ」

 

 

 ……まあ、こいつがそこまで言うのなら今日のところはこのままでいるとしよう。

 

 私の衆目での肌色解禁はお預けだな。

 

 

「……ん、そういえばほかの連中はどこに行った?」

 

「あぁ? ……と、ほんとだ。いつの間にか居なくなってんな」

 

 

 気がついたら先程まで目の前の砂浜で馬鹿騒ぎしていた第七部隊の連中が忽然と姿を消していた。

 

 私は気になって立ち上がり、付近を見回しつつ、何か事情を知らないかと閣下たち女性陣がいるほうへと歩き始める。

 

 ヨハンの奴もなぜか私の後に付いてきた。

 

 そうして、やがて声が届きそうな距離にまで近づいたところで、こちらに気付いた閣下が声をかけてくる。

 

 

「おーい! お前たちもこっちきて遊ぶかー! すごいぞ、なんかこっちすごい綺麗な貝がいてすごいぞー!」

 

 

 なにやら物凄くはしゃいでいらっしゃるご様子の閣下であった。

 

 はしゃぎすぎてか、なぜだか言葉遣いまでおかしくなっていた。

 

 普段の戦場での将軍然とした凛々しい振る舞いからは想像もできないようなそれは無邪気な笑顔を咲かせている閣下。

 

 眩しい。かわいい。浄化される。

 

 

「どうかされたのですか、コマリスキー中尉」

 

「いえ、特に大した事ではないのですが。先程から他の男共の姿が見えませんので、ヴィルヘイズ殿なら何か知っていらっしゃるのではないかと」

 

 

 ヴィルヘイズはテラコマリ閣下の側近として、第七部隊における実質的な副隊長のような立場にある。

 

 閣下に対してなにか報告がある場合も原則として一旦は全て彼女を通さねばならない決まりにもなっているので、部下たちから何か連絡があった場合、真っ先に彼女の耳に伝わっているはずだ。

 

 事実、ヴィルヘイズはすぐに思い当たったように答えた。

 

 

「ああ、それならば先程通信用鉱石に連絡がありましたね。なんでも、コマリ様との水着ツーショット写真を懸け、あちらのホテルを目指してビーチフラッグならぬビーチタワーを始めたようです。本日我々が宿泊予定の夢想楽園に、一番早くタッチした者が勝者らしいですね」

 

「なるほど、そうでしたか」

 

「はあ!? なんだよそれ! あいつらなに人に無断で始めちゃってるんだよ!?」

 

 

 淡々としたヴィルヘイズの説明に、閣下が慌てたように叫ぶ。

 

 閣下のこの反応を見るに本人には完全に無許可らしい。

 

 なにがどうしてそんな話になったのかは知らないが、いつもの暴走ということか。

 

 

「──だ、そうだがヨハン。お前もついでに行ってきたらどうだ?」

 

「はぁ? なんでだよ、僕はこんなちんちくりんの小娘になんか興味な──」

 

 

 ──瞬間。

 

 ヨハンが言い終えるのを待たずして、彼の顳顬(こめかみ)のすぐ真横あたりを、キラリと光を反射させた何かが掠め飛んでいった。

 

 私の肉眼で捉えられた限りだと、今の軌跡はおそらく──。

 

 

「──訂正してください。コマリさんはちんちくりんなんかじゃありません。これが完成形なんです、究極を超えた造形美なんです」

 

 

 彼女、サクナ・メモワールの魔力によって生成された恐ろしく鋭利な氷の(つぶて)だった。

 

 見ればサクナは壮絶な殺気を放ちながら、ヨハンのことを睨め据えている。

 

 今の彼女からは七紅天の名にも全く恥じぬ、凄まじいまでの覇気を感じた。

 

 七紅天闘争からもしばらくが経ち、彼女も将軍として日々成長しているという訳だな。

 

 

「──は、はぇ……?」

 

 

 そしてヨハンはそのあまりの重圧を前に本能的な恐怖が止まらないらしく、ガチガチと奥歯を鳴らして震えていた。

 

 まあ今のは閣下に対し侮辱的な発言をしようとしたお前が悪い。

 

 甘んじて制裁を受けるがいい。

 

 

「ま、待て待てサクナ! 私のために怒ってくれるのは嬉しいけど私は別に気にしてないから! ほら、そんな怖い顔は清楚なサクナには似合わないぞ!」

 

「……っ、はっ! す、すみません私ったら! えへへ、コマリさんのこと悪く言われてつい……」

 

 

 言いながら、ボソリと「……怒りで手元が狂わなければ外さなかったんですけどね」と呟いていたが、なぜか閣下にだけは聞こえていなかったらしく「いつものサクナに戻ってよかったよ」とホッとしたように胸を撫で下ろしていた。

 

 

「……よし! じゃあ気を取り直して、せっかくリミィたちも合流した事だし今度はみんなでできそうな遊びを──」

 

「お待ちください。…………。──コマリ様。遊びの時間は終わりです」

 

「えーっ!? なんでだよ〜! もっと遊ぼうよ〜っ!」

 

「駄々をこねないでください。偵察中のメラコンシー大尉から連絡が入りました。どうやらネリア・カニンガムが起床したようです。そろそろ迎えの人間が来る頃でしょう」

 

 

 そんなヴィルヘイズの言葉に、(しば)しポカンと固まる閣下。

 

 次いで、

 

 

「ど、どうしようヴィル! 心の準備ができてな──いや、こ、心の準備は万端だが万端すぎて武者震いが止まらないぞ……っ!」

 

 

 と、わなわなと身を震わせつつも、私やヨハンと一瞬目が合うや途端にシャキッと姿勢を正し、いつもの風格を取り戻していた。

 

 それにしても閣下は武者震いの頻度が多いな。

 

 部下や親しい人間に対しては誰よりも寛容で心優しい閣下だが、やはり敵を前にすると普段は抑圧された闘争心のようなものが一気に溢れ出してしまうとか、そういうことなのだろうか。

 

 一軍を率いる将としては頼もしい限りである。

 

 

「…………」

 

 

 とか何とか思っていたら、不意に何やらヴィルヘイズのほうからジッと視線を感じた。

 

 彼女は何かを思案するように目を細めると、やがて私とヨハンに向け極めて事務的な口調で告げる。

 

 

「申し訳ありませんがコマリスキー中尉、ヘルダース中尉。ここからは少々頭を使う話し合いになりますので席を外して頂けますか?」 

 

 

 つまりお前ら邪魔だからどっか行け、ということだった。

 

 

「んだとコラァ! それは僕たちがバカだって言いたいのか!?」

 

 

 たまらず叫ぶヨハン。

 

 私はそれを冷静な声で諌める。

 

 

「黙れバカ。本当の事なんだからしょうがないだろバカ」

 

「いやおめぇもそのバカの一人に含まれてんだけどな!?」

 

「…………」

 

 

 ……はぁ、まったく。

 

 何を言っているんだか。

 

 私はお前というバカの目付け役を任されたに過ぎない。

 

 特攻班班長という直属の上司としては当然の役目だ。

 

 そんなこともわからないからこうしてバカだと言われるんだぞ。

 

 

「哀れだな、ヨハン」

 

「てめぇ喧嘩売ってんのか!?」

 

「あの冗談抜きでほんとにやりにくいのでさっさと何処かへ行ってください」

 

「おめぇも心の底から迷惑そうな顔してんじゃねぇよ!? さすがに傷つくぞ!?」

 

「ほら、あまり閣下たちのことを困らせるんじゃない。とっとと行くぞバカ」

 

「なっ、おいやめろ、水着を引っ張んじゃねぇ──!」

 

 

 尚もヴィルヘイズに楯突こうとするヨハンを強引にひっぱり、私は他の第七部隊の連中も向かったという夢想楽園を目指して歩き出す。

 

 

「くそ……、あいつら完全に僕たちのこと舐めてるぞ、お前はいいのかよ」

 

「は? 舐められてるのはお前だけだが? ──とまあそんな当然のことはさておき、此度の任務は頭脳労働組の領分ということなのだろう。我々がいたらきっと何らかの作戦に支障が出るのだ」

 

「けどよぉッ!」

 

「なに、ヴィルヘイズ殿らに任せておけば何も心配はいらんさ。先日の七紅天闘争の件のように、きっとまた我々に相応しい戦いの場を提供してくれることだろう」

 

 

 そう、私にはそんな確信があった。

 

 閣下たちのことだ、此度の茶会もきっと只の友好の場には終わらないのだろう。

 

 必ずや何かを仕掛けるつもりに違いない。

 

 いったい次はどのような戦場を用意してくれるのか、今からとても楽しみだ。

 

 

 

 

 ──そしてこの少し後。

 

 

 夢想楽園は崩壊した。

 

 

 

 

 






……お読みいただきありがとうございます。
いかがだったでしょうか。

三巻部分のエピソードが全て書き終わりましたので本日から投稿していきたいと思います。

それにしてもアニメ最終回の終わり方、とても良かったですね……やはりコマリン百合ハーレムこそ至高……。

本作はヨハンの設定が少し原作とは異なっているので、どうやって原作のように第七部隊を夢想楽園へ差し向けるか悩んでいたのですが、アニメ版がちょうど解決策を提示してくれましたのでそちらの展開を踏襲させて頂きました。
原作ならヨハンの発言が起点となってビーチタワー展開になるんですよね。

次回も明日中には投稿いたします。

それでは、次回もお付き合い頂けましたら幸いです。
今後ともよろしくお願いいたします。
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