リミィ・コマリスキーは強者を求める   作:葵莢

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08.仮面の軍勢と私の掃討

 

 

 

 『七紅天闘争』開催のお報せ  

 

 皇帝陛下の勅令により第八回七紅天闘争を開催する  

 

 

 ●開催情報

 

 ・日時……七月一日  午前九時 ~正午

 

 ・場所……核領域・メトリオ州古戦場

 

 ・参加者…ペトローズ・カラマリア七紅天大将軍

 

      ヘルデウス・ヘブン七紅天大将軍

 

      フレーテ・マスカレール七紅天大将軍

 

      デルピュネー七紅天大将軍

 

      オディロン・メタル七紅天大将軍

 

      サクナ・メモワール七紅天大将軍

 

      テラコマリ・ガンデスブラッド七紅天大将軍

 

 

  ●ルール    

 

 ・各将軍が率いるべき軍勢は百名までとする

 

 ・本大会は基本的にフィールド内“古城”の頂上に設置された“紅玉”の奪い合い    

 

 ・闘争終了時に“紅玉”を所持していた者が優勝者となる    

 

 ・なお今回は優勝者以外の順位を決める必要があるためポイント制を採用する    

 

 ・ポイント獲得条件は以下の通り

 

 自軍が敵軍の兵士を一人殺害する──1P

 

 自軍が七紅天を殺害する──50P

 

 

 ●備考    

 

 ・最下位の将軍は七紅天を退任する    

 

 ・優勝者には皇帝陛下から褒賞が下賜される

 

 ・異論のある方はフレーテ・マスカレールまで

 

 ・異論は認めません

 

 

 

 

 

 

 

 

 ♢♢♢♢♢

 

 

 

「──七紅天闘争。腕が鳴りますね閣下」

 

「ウン、ソウダネ」

 

 

 ──先日行われた七紅天会議から数日が経った今日。

 

 即ち、七紅天闘争の開催日当日。

 

 核領域城塞都市フォール郊外の古戦場にて、私は高まる期待に胸を膨らませつつ隣に立つ閣下へと話しかけた。

 

 私は会議の場には出席できなかったのでいったい何がどうなって閣下の進退を決める話し合いから、七紅天全員による殺し合いを開催することになったのか、その経緯については全く分からない。

 

 けれどそんなことはどうでもよかった。

 

 私は内なる歓喜に震えていた。

 

 これはいったいなんたる僥倖か。

 

 なんと私好みの展開なのだろう。

 

 閣下以外の七紅天全員と戦える機会だなんて、私にとってはご褒美でしかない。

 

 まあサクナ・メモワールとヘルデウス・ヘブンについては閣下と同盟を結んでいるらしいので表立って敵対はできないのだが、デルピュネー、フレーテ・マスカレール、オディロン・メタルの軍に関しては好きにやり合っていいとのお達しだ。

 

 閣下を差し置いて七紅天最強などと呼ばれている第一部隊のペトローズ・カラマリアが不参加なのもとても残念だったが、それについては他の連中で我慢することにしよう。

 

 ……ああでもそういえば、私にはサクナ・メモワールの動きを監視するという任務も課せられているのだった。

 

 あれから閣下、ヴィルヘイズ、サクナ、そして私の四人で何日か宮殿内の夜間パトロールを行ったりしていたが、少なくともその際、サクナはなにも怪しい動きは見せていなかったように思う。

 

 単に私の目が節穴なだけの可能性もあるが、やっぱりあんな気弱そうな子が“逆さ月”の一員だなんてなにかの間違いなんじゃなかろうか。

 

 今となってはそんな気さえしていた。

 

 ──そうだ、“逆さ月”といえば、ミリセントは元気にしているだろうか。

 

 ここしばらくは軍務終わりに件の夜間パトロールが入っていたせいで、ブルーナイト邸にも全く顔を出せずにいた。

 

 ゆえにミリセントとも、もう何日も会えていない。

 

 武術の鍛錬のほうは毎日続けてくれていると思うのだが、あれからミリセントの元には口封じを目論む“逆さ月”の暗殺者が何人も押しかけてきて大変だったのだ。

 

 まあ全員ミリセントによって返り討ちに遭い、皆殺しにされたからいいものの、テロ組織を抜けるというのもやはりそう簡単な事ではないらしい。

 

 そんなことを考えていると、不意に閣下が何かに気づいたようにヴィルヘイズへと訊ねた。

 

 

「ねえヴィル、うちのやつらどうしたの? 寝坊かな」

 

「寝坊ではありません」

 

 

 ヴィルヘイズは閣下の問いかけに淡々と応じる。

 

 

「此度のルールでは百名までしか闘争に参加することができません。よって部下を選別する必要がありました。そこで私は第七部隊の連中を集めてこう言ったのです──『ガンデスブラッド閣下は強い者から順に百名を選出するおつもりです。強い者は名乗りでてください』と」

 

「そんなことを言った覚えはないが正論だな。強いやつこそ参加すべきだ。……で、どうなったの?」

 

「全員が名乗りでました」

 

「う、うむ。容易に想像がつくな……」

 

「そして殺し合いが勃発しました」

 

「なんで!?」

 

「彼らは誰がいちばん強いのかを実際に戦って決めようとしたのです。そして五百人中、四百七十人が死にました」

 

「アホだろ!!」

 

「ここにいるのは生き残った三十人です。ただしこの三十人も大半が負傷しています」

 

「アホすぎるだろ!!」

 

「ご安心ください閣下。私は無傷です」

 

「お前の心配はしてないよ! そもそも元はと言えばこうなったのはお前のせいでもあるんだからお前は強制参加に決まってるだろ!」

 

「ちなみにヨハンは死にました」

 

「あいつはいつも死んでるな!!」

 

 

 そう言って、閣下の身体が急にぷるぷると震え始める。

 

 武者震いだろうか。

 

 

「まずい。まずいぞ……これは本当に死ぬ気がしてきた……」

 

「ええ。死ぬ気で七紅天どもを皆殺しにしてやりましょう」

 

「皆殺しにしちゃダメなんだよ……。サクナとヘルデウスとは同盟を結んだって言ってるだろ」

 

「しかし同盟を結んだところで最終的に争う事に変わりはありません。ならば敵になる前にさっさと殺しておいたほうが──」

 

「同盟の意味が皆無!」

 

 

 そんな会話を繰り広げつつ、カオステルなども混じえて今回のルールや方針を話し合っていると、不意にヴィルヘイズの持っていた通信用魔鉱石に反応があった。

 

 これはこの世界における携帯電話のようなものだ。

 

 通話モードとスピーカーモードの切り替えなんかもできる。

 

 

「フレーテ・マスカレールより通信が入っています」

 

 

 ヴィルヘイズはそう告げると閣下に魔鉱石を手渡した。

 

 

『あらテラコマリ・ガンデスブラッドさん! ご機嫌はいかがかしら?』

 

 

 閣下はそれをなぜかスピーカーモードで流していた。

 

 これでは私や他の部下たちにも丸聞こえなのだが大丈夫なのだろうか。

 

 

『逃げなかったことだけは褒めて差し上げますわ! ですがあなたの噓まみれな経歴もこれでおしまい。テラコマリ・ガンデスブラッドの名前は世紀の詐欺師として全世界に知れ渡ることになるでしょう!』

 

 

 先日の怯えた態度が嘘のようにフレーテは意気揚々と閣下のことを挑発する。

 

 なんて命知らずなのだろう。

 

 閣下が本気を出せば一秒も経たずにすり潰されるだろうに。

 

 

『あら? あらあら? どうして無反応なんですの? もしかして怖くなっちゃった? ぶるぶる震えて何も言えなくなっちゃった? あっはっはっは! あなたが私に頭を下げて誠心誠意の命乞いをするのなら手加減をしてあげてもいいですけれど!?』

 

 

 それにしても絶好調だな。

 

 ところで後ろで聞いている隊員たちの顔がみるみる内に修羅の形相に豹変していっているのだが、これはどう収拾をつけるつもりなのだろう。

 

 

『命乞いはできない? それはそうでしょうねえ! 実力もないくせにプライドだけは無駄に高いガンデスブラッドさんですものね! ならば全力でかかってきなさい! 部下たちをアゴで使って私に差し向ければいいですわ! 先日は油断して遅れを取りましたけれど、今日はそうはいきません! 所詮第七部隊など野蛮人の集まりですもの! 我々第三部隊の精鋭にかかれば瞬殺ですわ! あっはっはっはっは! あっはっはっはっ』

 

「ほう、つまり先日は全く本気ではなかった、と……。ふふ。それは楽しみですねぇ、フレーテ殿。ならば此度は是が非でも、本気のあなたと拳を交えてみたく思います」

 

『ひぃぃッ!! 出たぁ!!』

 

 

 ──ブチッ。

 

 通信が切られてしまった。

 

 どうやら割と本気で怯えられているらしい。

 

 やっぱり調子に乗って腹パンしまくったのがいけなかったのだろうか。

 

 あの時はフレーテの反応があまりにも良くてついつい興が乗ってしまったのだ。

 

 その事については我ながらほんの少しだけ反省している。

 

 次はしっかり顎を揺らして落としてやろう。

 

 

「──閣下。出撃しても構いませんか?」

 

 

 通信が切れるや、カオステルが静かな声音で閣下に問う。

 

 

「……う、うん。頑張ってくれ」 

 

 

 閣下の許可が下りると、カオステルを始めとした総勢三十名の精鋭たちはその瞳に沸々とした静かな闘志を燃やし、一瞬の静寂の後──一斉に感情を爆発させるのだった。

 

 

「「「「フレーテ・マスカレールを殺せええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええッッ!!」」」」

 

 

 そうして彼らは突撃した。

 

 フレーテ率いる第三部隊が陣取る地点へと、脇目も振らず爆走していった。

 

 取り残された閣下はポツリとつぶやく。

 

 

「大将の私を放置して全軍突撃って、おかしくないか……?」

 

「まあ第七部隊ですから」

 

 

 というわけで、この場に残ったのはテラコマリ閣下とヴィルヘイズ、そして私と、閣下の騎獣であるブーケファロスの三人(プラス)一頭のみとなった。

 

 

「さて閣下。のっけからこんなことになってしまいましたが、作戦はいかがいたしますか?」

 

「と、とりあえずサクナと合流しよう! 作戦を考えるのはそれからだ!」

 

「しかしコマリ様。第七部隊と第六部隊の初期位置は離れています。メモワール殿のところへ行くにはすぐ隣の市街地に布陣しているデルピュネー軍を突破しなければなりません」

 

「ほう、デルピュネー軍ですか」

 

「……? どうした、リミィ?」

 

「いえ、私は以前、第四部隊に所属しておりましたもので。少しばかり思い入れがあるのです」

 

 

 まあとはいってもデルピュネーとも他の隊員たちとも別に大した交流があった訳ではないがな。

 

 よく隊列を無視して敵陣に特攻を仕掛け、そのたびにお叱りを受けていた程度の間柄だ。

 

 そういえば彼女(彼?)ともまだまともに手合わせしたことが無いんだよなぁ。

 

 噂では軍学校在籍時にフレーテ・マスカレールと共に当時の七紅天に決闘を挑んで倒したとか、そういった伝説は残されているらしいが、私自身はその活躍をあまり目にしたことはない。

 

 何故なら私は戦場ではいつも敵兵のことしか見ていないからだ。

 

 特に第四部隊にいた頃はエンタメ戦争というこの世界独自の文化に触れたばかりで、戦場で色んな技を試せる事がとにかく楽しく、味方の活躍になんて欠片ほどの興味も持っていなかった。

 

 最低限、凝血魔法という珍しい魔法を得意とし、ナイフ使いであることぐらいはわかっているのだが、それ以外の手の内はほとんど知らないのが現状だ。

 

 その実力を含めどんな技を使ってくるのか、とても興味があった。

 

 可能なら是非とも戦ってみたい。

 

 

「閣下。デルピュネー軍を突破するのでしたら、私に任せて頂けませんか?」

 

「え……? リミィ一人にか? さすがにそれは……」

 

「問題ありません。デルピュネー殿はともかく、隊員たちの練度についてはよく知っていますから。一人一人の実力なら第七部隊の連中のほうが上です」

 

「そ、そうか……。まあリミィだしな。この前も無茶苦茶やってたし……。わかった、任せたぞ!」

 

「はっ!」

 

 

 さて、そうと決まれば早速デルピュネーの元へ突撃──、

 

 

「……まずいです」

 

 

 ……しようと思ったら、円柱の上から双眼鏡で敵の動きを観察していたヴィルヘイズが何やら苦渋の声を漏らしていた。

 

 

「何がまずいんだ?」

 

「デルピュネーの軍団がものすごい勢いでこちらに攻めてきています」

 

「はああああああ!?」

 

「確実にコマリ様を殺す気ですねあれは。仮面の奥から復讐心を感じます」

 

「復讐心? 意味がわからんぞ」

 

「覚えていらっしゃらないのですか? コマリ様はデルピュネー殿を殺したことになっているのですよ?」

 

「冤罪だよ!」

 

「ふむ。事情はよくわかりませんが、こちらに向かって来ているのなら好都合です。私がここで迎え打ちましょう」

 

「お願いできますか、コマリスキー中尉」

 

「無論です。しかし閣下たちはどうなさるのですか?」

 

「私たちはこのまま反対方向に進んでフレーテ軍のほうへ回り込みます。第七部隊の連中もいますしメモワール殿も向かっているはずです」

 

「承知致しました。──では閣下、ご武運を」

 

「……うん! リミィもやばくなったらいつでも逃げていいからな! 無茶して死んだりするなよ!」

 

 

 そう言って閣下はヴィルヘイズと共にブーケファロスへと跨り、戦場へと駆け出していった。

 

 私の身まで案じて下さるとは、相変わらず部下思いの優しい方だ。

 

 

「…………」

 

 

 さて、何はともあれこれで一人だ。

 

 ここからは誰に気兼ねすることもなく、思う存分やり合える。

 

 相対するは仮面の軍勢、デルピュネー率いる第四部隊の精鋭百名。

 

 私はその場に静止したまま、じっとその時を待った。

 

 やがて肉眼で捉えることのできる距離にまで奴らが迫ってくるのを確認したところで──。

 

 

「────ッ」

 

 

 私は一直線に駆け出した。

 

 そうして彼らの先陣を走る、異国風の仮面を被った性別不詳の吸血鬼デルピュネーを目掛け、瞬時に加速する。

 

 瞬く間にデルピュネーのすぐ真正面まで肉薄すると、私は──。 

 

 

「──ッ!!」

 

「──がはッ……!?」

 

 

 ──魔力を限界まで練り上げてブーストした脚力でもって、その華奢な体躯を遥か後方の彼方へと思い切り蹴り飛ばしたのだった。

 

 ……申し訳ないが、ひとまずデルピュネーには少しの間席を外してもらうことにしたのだ。

 

 デルピュネーがこちらに戻ってくる前に、まずは邪魔な雑兵たちから片付ける。

 

 デルピュネー率いる第四部隊は高練度の魔法部隊。

 

 ならば私も、たまには魔法を使って相手をしてみるとしよう。

 

 対多人数戦ならそちらのほうが手っ取り早いしな。

 

 

「─────!」

 

 

 指揮役を失った仮面の軍勢は暫しの間指揮系統が乱れ、混乱状態にあったが、すぐに態勢を整え各々呪文の詠唱を始めた。

 

 私はその詠唱が終わるよりも先に、両手の十本の指先に魔力を込め、彼らのほうへ向けて狙いを定める。

 

 私の許容魔力量、及び魔法適性はミリセントと全くの同一。

 

 即ち、ミリセントが使える魔法は全て私にも使えるし、尚且つ同じ威力を発揮させることも可能だ。

 

 というわけで、まずは小手調べといこう。

 

 

「──初級光撃魔法【魔弾】──」

 

 

 私がそう呟くと同時、彼らに向けていた十本の指、その全ての先端から凄まじい速度で青色の輝きを放つ光の(つぶて)が斉射された。

 

 私の指より放たれた【魔弾】は仮面の軍勢の全身を次々と的確に撃ち抜いていく。

 

 【魔弾】によって敵の動きが封じられているうちに、私は続け様に今度は両手の掌の先を彼らに向け、再び魔力を練った。

 

 【魔弾】以外の光撃魔法を使うのはかなり久々となるが、特に発動に支障はなさそうだ。

 

 ならばここはいっそ景気良く、出し惜しみ無しに放つとしよう。

 

 

「──上級光撃魔法【背教の邪光】──」

 

 

 私の手元に出現した魔法陣から、青色の魔力で編み上げられた超高熱量のレーザー光線が照射された。

 

 これだけでも、連中を焼くには充分すぎるほどの威力。

 

 だが、まだ終わりではない。

 

 対集団戦ならばもう一つ、とっておきの魔法がある。

 

 そうして私は、最後の魔法を展開した。

 

 

「────」

 

 

 ──此なるは、私が持ち得る全身全霊。

 

 正真正銘の最大火力。

 

 充分に魔力を練り上げ、この魔法に秘められた本来の威力を余すことなく解放する。

 

 焼き払え──。

 

 

「──特級光撃魔法【滅教の邪焜】──!」

 

 

 ──瞬間。

 

 先程のレーザー照射を遥かに超えた膨大なる魔力の奔流が、容赦なく仮面の軍勢を呑み込んだのだった──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ♢♢♢♢♢

 

 

 

 

 ──デルピュネーが再び先程の戦場に戻って来た頃には、全てが終わっていた。

 

 眼下に広がるのはおよそ百名にも及ぶ焼死体の群れ。

 

 それらは全て、自らが率いる第四部隊の部下たちの変わり果てた姿だった。

 

 みな等しくその身を魔力によって焼かれ、地に伏している。

 

 デルピュネーは半ば呆然となりながらも、仮面の奥から忌々しげにとある一点を見つめた。

 

 黒く焼け焦げた部下たちの残骸が死屍累々と転がっている中、たった一人、デルピュネーのことを待ち構えていたかのように佇む一人の吸血鬼。

 

 男物の真紅の軍服をその身に纏った、青髪の少女。

 

 かつては仮面でその顔を隠していたために、素顔を見たのはこれが初めてのことだ。

 

 ──だが、わかる。

 

 こんなことができる雑兵など、デルピュネーの知る限りたった一人しかいない。

 

 この女の名は──。

 

 

「──リミィ・コマリスキー……」

 

 

 それは以前デルピュネーの隊に所属していた部下の名だった。

 

 かつて第四部隊の中で最も強く、最もイカれた兵士として名を馳せた当時のトップルーキー。

 

 その少女は、デルピュネーの敵意を受けながらも、ただ悠然と構えを取りながら告げる。

 

 

「お久しぶりです。デルピュネー閣下」

 

「そこをどけ、リミィ。私は、テラコマリ・ガンデスブラッドに用がある」

 

「でしたらどうぞ、その武力でもってこの身を押し退け、先にお進みください。──全力なる勝負を私は望みます」

 

「……そうか。ならば仕方ない。──無理やりにでも押し通らせてもらおう」

 

 

 言い終わるや、デルピュネーの全身から膨大な魔力が解き放たれた。

 

 七紅天の名に恥じぬ、驚異的なまでの魔力の猛り。

 

 そのままデルピュネーは手にしたナイフで、何の躊躇もなく己の左手首を切り裂く。

 

 その切り裂いた手首から噴出する血液は、やがて一つの生命を吹き込まれたかのように蠢き出した。

 

 

「── 特級凝血魔法・【アルティメット屍山血河】──」

 

 

 此処に。

 

 仮面の吸血鬼が操りし凝血魔法、その本領が発揮されようとしていた──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






……お読みいただきありがとうございます。
いかがだったでしょうか。

前回の七紅天会議直前の場面から一気に七紅天闘争まで時間が飛びましたが、その間に起こったイベントについては完全に原作通りでリミィはほぼ一切関わっていないという認識でお願い致します。

次話のデルピュネー戦をもって、本作の原作二巻部分におけるエピソードはラストとなります。
二巻部分は全部で四話と一巻部分よりも話数は一つ少なくなっていますが、文字数的にはほぼ同じぐらいの量です。

次話も明日中には投稿致します。

それでは次話もお付き合い頂けましたら幸いです。
今後ともよろしくお願いいたします。
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