〇月×日 晴れ
『お前はあれだ、教養が足りん!せめて毎日文章を書いて字だけでも綺麗に見せる練習しとけ!』
そんなことをおっちゃんに言われ、日記帳を手渡されたので今日から日記を書いてみる。
にしても書くことないなぁ……とりあえず、今までの振り返りでもしてみるか。
俺はジャイアント・オーク。一応転生者だと思う。
というのも俺は死んだときの記憶がない。事故だったのか病気ったのか覚えていないのだ。
しかし、前世では人間という種族で普通に会社でパソコンに向かっていた記憶がある為、転生したと見て間違いはないと思う。それが最後の記憶だし、過労死とかだったのかねぇ…
あの時はびっくりしたよなぁ~…パソコンの前で目を瞑って、目を開けたら周りは岩山だったもん。くっそ混乱したわ…
身体つきもさぁ~前とは比べ物にならないくらい視界が高ったもんで、水場を探して自分の姿を確認したら緑色で上半身全裸の醜い豚顔が見えて気絶しちゃったよねぇ~自分の顔だって認識するまでに5、6回気絶したね。
6回目あたりでようやく転生した事を理解し、豚顔に転生してしまった事にショックを受けた。
こういう転生物ってガチのイケメンかフツメンとは名ばかりのイケメンに転生するってのが相場じゃないんかい!?せっかく転生するならイケメンが良かったよ!そして女の子に囲まれるモテモテ人生送りたかったわ!!何が悲しくて転生先のガチャも失敗せにゃあかんのやぁ…
ショックを受ける俺だが、周りの環境もそれに拍車をかけた。
しばらくして同族の集落を見つけたのだが、俺と同じように醜い豚顔がいっぱいいた。おまけに発情期なのかそこら中で求愛行動みたいなのをとってやがった。
オスもメスも同じような見た目でイチャイチャしている光景とか何の地獄だよ!ああぁぁぁ!?俺の目の前でベロチューするな!マジで吐くから!
そんな感じで戸惑う俺。そんな俺に向かって『イケメンが来たー♡』と言って走って近づいてくるオークの雌共はまさにホラー映画か逃走中の最後の方のような恐怖そのものであった。
ここに居たら食われる!そう直感で感じた俺はめちゃくちゃ逃げた。
逃げて逃げて、オークの雌たちを撒いた頃には見知らぬ森の中であった。
その森の居心地の良さに惹かれ、俺はそのまま住み着いたのであった。
そういえば、冒頭に俺はさらっとジャイアント・オークだと言った。
ジャイアント・オーク。そう、遊戯王のジャイアント・オークだ。
レベル4の悪魔族。攻撃力2200守備力0のデメリット持ちアタッカーだ。
最初の頃は遊戯王のモンスターになったって気が付かなかった。というか遊戯王の中でも影が薄い部類のジャイアント・オークに転生したなんて一発で分かるほうがどうかしてる。
気が付いたきっかけは森に住み始めた頃に、とある人物と出会ったからだ。
俺が水を飲みに湖に行ったときに、“バシャ!”という他の水音が聞こえた。
音の方を見ると、そこには耳の長いエルフの様な見た目の2人組が居た。
片方は緑の鎧を着て剣を持つエルフ。もう片方は青色の肌に緑色の服を着たエルフ。
俺はその2人に見覚えがあった。エルフの剣士とホーリー・エルフだ。
あの時はテンパったな~…『アレ!?遊戯王のモンスターじゃね!?ここ遊戯王世界かよ!?』と頭の中が混乱した。しかし同時に『これはあのブラック・マジシャン・ガールを生で見られるのでは!?』と歓喜もしたなぁ…今となっては懐かしい。
ちなみにエルフ達には最初警戒されていた。そりゃこんな不細工オークが居たら警戒もされるよなぁ…
転生先を初めて知ったり、有名なモンスターに会えた事の興奮などで混乱しすぎたからか、あの時の俺、何をとち狂ったのかその場で自己紹介してそのまま逃げたんだよなぁ…
エルフの剣士もホーリー・エルフも“ポカーン”としてたよ…完全に不審者じゃん俺ぇ…
なるべく印象良くしようと何とか笑顔を作ったけど、今思うとオークの笑い顔とかこれから姫騎士をレ〇プみたいな邪悪な物に決まってんじゃん…絶対逆効果だったよ……
ファーストコンタクトは最悪であったが、今後の為にもエルフ達とは仲良くしておきたかった俺は毎日コツコツと挨拶や世間話を積み重ね、何とかエルフ達の信頼を勝ち取り、ついには近くにあったエルフの集落にすら出入りを許可されるまでに至った。
特に剣士たちとはズッ友だ。
本当にいい奴らなんだよぉ…エルフの剣士は稽古つけてくれるし、ホーリー・エルフはよく手料理御馳走してくれるし…第一印象最悪だったこんな俺にもよくしてくれるなんて、聖人君子たちだよほんと…
他にもヂェミナイ・エルフのお姉さんたちに揶揄われたり、フルエルフと朝までY談したり、ダンシング・エルフの生足に見惚れてたら黒いオーラを纏ったホーリー・エルフに怒られたり……色々と楽しかった。多分生前より充実していた。
しかし同時に、心の中では刺激を欲しがっていた。
せっかく遊戯王の世界に転生したのだ。ブルーアイズの様な有名なモンスターを生で見たい!そしてブラック・マジシャン・ガールを始めとした美少女モンスターと会ってみたい!!
しかし、今のエルフ達との生活を続けていたい気もする…だって至れり尽くせりなんだもん!優しいエルフ達!美味しい森のごはん!柔らかな草のベッド!オークさんもうエルフの森の虜よ!?
…そんな感じで一歩踏み出せないでいたのだが、転機は突然訪れた。
ある日、森の中で力仕事を手伝っていると『なんと恵まれた体格!お前、ワシと一緒にチャンピオンを目指さんか!!』と眼帯をした小鬼―――鬼ゴブリンのおっちゃんに話しかけられたのだ。
鬼ゴブリンのおっちゃんは、とあるジムのトレーナーをしており、各地を周って異種格闘技の選手を探しているらしいのだ。
この森には偶然迷い込んだのだが、力仕事に勤しむ俺に将来性を感じ、思わずスカウトしてしまったとの事だ。
恵まれた体格て……確かに図体はデカくて腕はムキムキだけど、腹筋は割れてないお相撲さん体型だけどいいのか…?
最初は気乗りしなかったが、おっちゃんがめっちゃ煽ててきてその気になってしまったのと、元々森を出るきっかけが欲しかった俺は、最終的におっちゃんの提案に乗り、おっちゃんに弟子入りしたのであった。
もしかしたらブラック・マジシャン・ガールに会えるかもしれない……!
ビバ!弟子入り!!
…そういえば、旅立ちの前日に親友のエルフの剣士に旅立ちの事を話したら『他のエルフ達には私から言っておくから、今夜誰にも言わずに出発しろ!絶対に誰にも言うなよ!!』と強く念押ししてたのは何だったんだろ?
俺としては世話になったみんなに挨拶ぐらいはしたかったんだが、ものすごく真剣な顔をしたエルフの剣士に押し切られる形でそのまま誰にも見送られることなくおっちゃんと出発してしまった。
あれってエルフ達の風習かなんかだったのかなぁ…旅人は見送らない的な?
……世話になったお礼も言えてないし。いつの日か挨拶しに戻るか!それこそ異種格闘技チャンピオンになった時にでも!
そうと決まれば今日はもう眠って明日の試合に備えるか。
デビューしてから全然勝ててないから、そろそろ勝ちてぇなぁ…
おっちゃんはデビューして間もないから気にすんなって言ってくれるけど、やっぱり勝ちたい。
はぁ……いつになったらなれるんだろうなぁ…チャンピオン
我々エルフは醜い。
ふきでもの一つない人形のように不自然に整ってしまった顔
枯れ木の枝の様な細く弱々しい手足
贅肉が全くつかない細い身体
人前に出たらバケモノ扱いされるような身体の特徴はエルフ族には多く見られた。
本当はもっと身体に脂肪を付けたいのだが、いくら食べても太ることはない。これでたくましい筋肉が付けばまだ良いのだが、細い身体に中途半端に筋肉が付く細マッチョ体型になるだけなので逆に気味悪がられる。女はもっと悲惨だ。食事量を増やしても胸や尻にばかりに肉が付き、腹や顔には肉が付かないアンバランスな体型になってしまう為不気味さが増してしまうのだ。
だから我々エルフは人目を憚り、森の奥地へと住処を移した。
醜いもの同士なら、お互いの痛みが分かる。醜い見た目で迫害され続けた私たちは、傷を舐めあって生活するしかなかったのだ。
そんな我々にも、同族以外で親友と呼べる存在が居る。
あの時の出来事は、一生忘れはしないだろう。
それは私が妹のホーリー・エルフと湖へ水を汲みに行った時だ。
いつもと同じ森の景色。いつもと同じ空の色。しかし、湖にはいつもとは違う存在の影があったのだ。
ブヨブヨの豚の様な顔
大木の様に太い腕とでっぷりとはみ出た腹のアンバランス加減はまさに芸術
自分の存在を知らしめているような強い体臭
私はその存在を見た瞬間、かの者はオークであると理解した。
オーク。我々エルフとは違い、美しい見た目を持ったモンスターである。
その美しさから他の種族を見下し、他の種族を誑し込むモンスターである。
まずい。私の頭の中は警笛を鳴らしていた。
我々エルフ族を迫害した者の中にはオークの一族もいた。
せっかく住みやすい環境を見つけたのに、ここでオークに見つかってしまっては、また住処を追われてしまうのではないかと私は恐怖した。
『お兄様…』
妹も不安そうに私の服を引っ張る。
妹の顔は迫害されていた時代を思い出したように強張っおり、うっすらと涙を浮かべていた。
……そうだ、せっかく見つけた安息の地なのだ。他の同族の為にも、妹の為にもこの地を守らなければ…!
すると、オークがこちらに気が付いたようで、私達2人を見て固まっていた。
…どうせ醜いとでも思っているのだろう。だが、これは好機。相手が固まっている内に終わらせる…!
私はオークの首を撥ねるべく腰の剣に手を伸ばした。
『あ、あああああの!初めまして!オデ、この間引っ越してきたオークですぅ!悪いオークじゃないよ!みんな、友達よ!!』
突然背筋を伸ばし、自己紹介を始めたオーク。その光景に私たちは“ポカーン”とするしかなかった。
……なんだ?何故いきなり自己紹介を?
呆気に取られながらも、私はオークの奇行を注意深く観察した。
太陽の様な眩しい笑顔の中には、我々エルフに対する嫌悪感も差別的感情も感じない。
身体が小刻みに震えているが、それは気持ち悪い物を見た悪寒ではなく緊張から来ているものだと雰囲気で感じ取れる。
こちらに対してまったく負の感情を向けてこない。むしろ好意的なものを感じ取れた。
…………まさか、本当に挨拶しただけか?オークが、エルフに?
『えっと…その!……オデはもう水飲んだんで帰りますぅ!ではまたぁ!!』
そう言ってオークは足早に森の奥へと去っていった。
しばらくその方向を見つめる私達。正直情報量が多すぎて何が何だかわからなかった。
『お、お兄様…』
私が立ち尽くしていると、ホーリー・エルフが私の方を見ていることに気が付いた。
その顔には、色々な感情が見え隠れしていた。
不安、恐怖、疑問――――――そして、期待。
私はホーリー・エルフが先ほどのオークが我々を迫害しない、友好的な存在ではないかと期待しているのを察した。
………だが、ありえない。あの美しきオークが我々醜いエルフを迫害しないわけがない。今までもそうだったではないか。
…………しかし、心のどこかで、私も“そうであって欲しい”と期待せずにはいられなかった。
あれからしばらくの時が過ぎた。
あの一件の後からも、我々エルフはあのオークと何度も会うこととなった。
しかし、何度会ってもオークは我々を迫害することなく、普通に接してくれていたのだ。
最初は里の者達も警戒していたが、オークと接している内に、彼が本当に我々に嫌悪感を抱いていないとわかった。
そこから1人、また1人とオークと友好的に接する者が増え始め、いつの間にか里の全員がオークと交友関係を深めており、もはや里の一員の扱いをしていた。
かく言う私自身も、オークの人柄に触れ、過去の迫害の記憶を吹っ切る事が出来たので彼には感謝している。
彼と最初に会った私達兄妹はオークと一番仲が良く、一緒に食事や狩猟にも出かけていた。
そうしている内に、妹がオークに恋心は抱いていることに気が付いた。
まぁ、それも当然の事だろう。他の連中と違って我々を差別しないし、世辞であろうがよくホーリー・エルフに対して『かわいい』等と甘い言葉を吐いていた。
我々エルフが容姿を褒められるなど、天変地異が起きてもあり得ないことだが、今までその経験がなかった妹がオークに惚れるのは必然であった。寝ても覚めても彼の話ばかりする姿はもう完堕ちであった。
というか、里の女エルフは皆、オークに恋心を抱いていた。
ヂェミナイ・エルフの姉妹はどうやって彼に2人一緒に愛してもらうか相談していたし、ダンシング・エルフはどの様な踊りで彼を興奮させ襲ってもらえるか日々研究していた。
他にも、様々な方法でオークを篭絡しようとする女エルフ達の姿に、私達男性エルフは震えあがった。
しかし、彼がエルフの誰かと番の関係になる事については、里の全員が望んでいた。
かく言う私も『もしも妹と結婚したら、義理のお兄さんになるのかぁ~』と心のどこかで浮かれていた。
『剣士~、オデちょっとチャンピオンになるから森から出てくわ~』
そう思っていた矢先、オークから発せられた言葉に私は固まってしまった。
オークの話を詳しく聞くと、とあるゴブリンに格闘家としてスカウトされたので森を離れるとの事であった。
正直ショックだった。このままずっと森で共に生活していくと何の根拠もなしに思っていた。
寂しくなる、考え直せないか等様々な言葉が頭の中を駆け巡った。
しかし、目の前のオークはかけがえのない友だ。背中を押してやりたいという気持ちが大きかったので、そんな言葉は出せなかった。
『そんじゃオデ、みんなにも挨拶してくから~』
そんなオークの言葉を聞いた瞬間、私の背筋は凍った。
里の女エルフ達は、オークにぞっこんである。その執着ときたら、まるでどこかの宗教団体だと思ったこともあったほどだ。
そんな集団に、オークが自分たちから離れると言ったらどうなるだろうか?
号泣、発狂、ストーキング、監禁、既成事実作り、血みどろ争奪戦…混沌とした様々な光景が頭に浮かんだ。
そして、それは冗談でも世迷い事でもなく、本当に起こる可能性があるものだと頭の中で理解していた。
私はオークに『里の者には私から言っておく』と言い包め、森から早く出るように促した。
オークは私達に光をもたらしてくれた。だからこそ、オークを縛り付けておくことはしたくなかったのだ。
オークが森から出て行ってから数週間が経った。
最初の頃は何とか誤魔化せていたが、さすがに里の者達にもオークが何処かへ行ってしまったことに感づかれてしまった。
里の女エルフ達は、毎日毎日血眼になってオークを探している。
光のない目をしながら『オーク~♡どこ行ったの~♡』『隠れてないで出ておいで~♡結婚しよ~♡』と歩き回る様はホラー映画のワンシーンの様であった。
聖なる呪文を扱うはずのホーリー・エルフも『オー君♡オー君♡オー君♡オー君♡オー君♡……』と毎日呪詛のように唱えている。
もし、オークが森へ戻ってきてしまったら……そう考えると、言葉に出来ない恐怖が襲う。
心配は森のエルフ達だけではない。あのオークの事だ、いつの間にか他の女達も無自覚に惚れさせてしまい、更なる修羅場を生んでしまうだろう。
オークよ、どうか無事でいてくれ……
エルフの剣士はにできる事は、遠く離れてしまった友の為に祈る事だけであった。
〇ジャイアント・オーク
憑依転生したオリ主君
鬼ゴブリンと共に異種格闘技チャンピオンを目指している
鈍感の為美醜観念が逆転している事には気が付いていない
〇エルフの剣士
過去に色々な種族から迫害されてきたから色々鬱憤が溜まっていたところを、オークと出会って心が軽くなり、救われた
オークとはズッ友
〇女性エルフ
醜い容姿を罵られていたところをイケメン(笑)オーク君にデッロデロに褒めちぎられ、一緒に過ごしてきた結果、完堕ちしてしまったモンスター達
どうやってオーク君と恋仲になるか画策していた矢先に逃げられてしまい、ヤンヤン度は最大値に到達した模様
遊戯王の女の子書きたかったから書いたゾ
なんで美醜逆転にしたのかは謎です…
気が向いたら続き書くかもね~……
ここまでご拝読ありがとうございました