美醜逆転!?ジャイアント・オークさん!   作:生牡蠣

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ピケクラ視点やで~


ピケル クラン

あの日、私達は運命の出会いをした。

 

『魔法王国の二大醜姫』

それが私達姉妹に着けられた蔑称だ。

魔法王国の時期女王として産まれた私達だが、その醜い姿から城内はもちろん、国民からも落胆の声が聞かれた。

『悲報・俺らの時期女王、ブサイクすぎるwww』『今から跡継ぎが心配なんだがw』『もう終わりだよこの国…』なんて言われるのも珍しくはなかった。

私達は生まれながらにハンデを背負っていた。だからこそ、私達は魔法の勉学や修行に精を出した。

周りではイケメンがどうとか、色恋がどうとか盛り上がる年頃の子も多かったが、そんなことはどうでもいい。私たちには魔法さえあればいいのだ。

いつか立派な王となり、国を治めるために

 

しかし、現実は私達に大きな壁をして立ちはだかった

魔法修行も順調に進み、現王(お父様)から最終試練としてとある者の頭に乗っている風船を割るというものが出されたのだ。

私達は最初『なんだその変な試練は…?』と訝しく思ったのだが、その者を見た瞬間、私達は戦慄した。

 

試練の相手が、とんでもなくイケメンだったのだ。

 

一目見た瞬間から、高鳴る胸の鼓動と熱くなる顔に脳がうまく回らず、気が付いたら試練は終わっていた。姉妹2人とも、固まって動けず制限時間を迎えるという形で。

イケメンに全く耐性のない、処女(童貞)丸出しの反応に見物人たちは腹を抱えて笑っていたのが妙に脳に残っていた。

試練の後、国民はさらに落胆し、城の大臣たちも醜女が王にならなくてよかったと安堵していた。

今思えば、私達に女王になられると都合の悪い大臣たちが仕込んだ姑息な試練だったのかもしれない。

しかし、それよりショックだったのは、私たち自身が結局雄を求めるいやしい雌と解からせられたことだった。

いくら色恋に興味がないように振舞っても、自分たちには無理と心に言い聞かせても、心はどこまでも雄からの愛を求めてしまっている。

しかし、私達は醜く、雄からの愛なんてこれからも得ることは出来ないだろう。

そんな私達に、イケメンへの耐性を付けろなんて到底無理な話。

それを理解した瞬間、私達の未来は完全に閉ざされてしまった。

 

お父様は再試練も可能と言ってくれていたが、私達はすっかり諦めてしまい国から逃げるように去っていった。

行く当てもなく、街の中を俯きながら2人で歩く。

周りからバカにするような失笑も聞こえたが、もう何も感じなかった。

いっそこのまま、誰も知らない場所で姉妹揃って消えてしまおうか…

 

その時、私達の手が何者かに引っ張られた。

 

馬のいななく声や『気を付けろバカヤロー!』という罵声も聞こえ、引かれそうになったところを助けられたことに気がついた。

誰が助けてくれたのだろうと顔を上げ、2人揃って思考停止する。

 

私達を助けたのは、今まで見たことのないくらいにイケメンの豚男(オーク)だったからだ

 

『何が気を付けろだ!この子達に謝れよこんちきしょー!』と馬車に向かって叫んでいるオークの顔に、私達は心奪われた。

こんなイケメンのオークさんが、自分たちの命を救い、お手々まで握ってくれている。まるでおとぎ話のお姫様にでもなったかのような錯覚を覚えた。

手から伝わってくるオークさんの感触、熱が心地よく、心がこれまでにない程の幸福感で包まれた。

あぁ…自分たちは今日の為に生まれてきたのだと本気で信じた。

 

しばらくすると『あぁ!ごめん、ずっと握られてて不快だったよね!!』とオークは私達の手を離した。

あっ…そのまま握ってくれててもいいのに……

未練たらたらでオークさんのお手々を見ながらも、オークさんと色々話ができ、仲良くなることが出来た。

話していてわかったのだが、オークさんは私達を見た目で差別しない、普通に接してくれる優しい人だった。

それどころか、私達の事を女の子として扱ってくれるような言動もあり、その度に心の奥がポカポカして、幸せな気持ちになった。

 

『あの…良かったら、一緒に街を見て周りませんか?』

 

心が緩んでいたからか、ピケルがそんなことを言ってしまった。

『まずい!』とクランは冷や汗流し、ピケルも『やってしまった!』と後悔した。

いくら相手が聖人でも、こんな醜い女と街を歩くなんて恥さらしな事、いい顔をするわけがない。

『何勘違いしてんだ処女(童貞)がっ!魔女狩りされろッ!!』と罵倒されても文句は言えない。

あぁ…せっかく素敵な出会いだったのになぁ…この聖人も流石に気持ち悪がって――

 

 

 

『えっ!?マジでいいの!?ぜひお願いするわ!!』

 

 

 

マジで聖人かよやったああぁぁぁぁぁ!!!!!!

 

2人はオークの見えないところで幸運を噛み締めるようガッツポーズをした。

 

それからオークさんと街を歩き回った時間は、まさに夢の様であった。

ソフトクリームの食べさせ合いでドサクサに紛れて間接キスをしたり、買い物の時にはぐれないようにという名目で再び手を繋いだりなど、今まで感じた事のない程の至福の時間を過ごせた。

あぁ…今までの辛かった人生は、今日のための布石だったんだ……!

道中、私達がオークさんと手を繋いで歩いているのを見て思わず2度見したり、『あのオーク可哀そう…』と小声で言われたりもしたが、そんなことはもう気にならなかった。

お前たちなんぞ、オークさんと比べたらその辺の小石。せいぜい言ってろバーカ!

 

日が段々と落ちていき、辺りが暗くなってきた

オークさんとの時間も終わりかと悲しい気持ちになった時、最後にオークさんは私達が街を落ち込んだ様子で歩いていた事を心配してくれた。そこまで気にかけてくれるとか神か…多分三幻神の隠されたもう一柱とかだよ絶対。

オークさんの好意に甘え、話を聞いてもらった(王位継承等外部に漏れたらまずいことは伏せた)

今思い出しても少し気が滅入るが、今日一日オークさんと過ごすことが出来てほとんど吹っ切れていた。

……たとえ今後王位継承ができなくても、それだけが生き方じゃない。他の道を探すのも悪くないだろう。

……例えばオークさんのお嫁さんとか…ははっ、なんてね…

話が終わった後、オークさんは少し考えるそぶりを見せ、やがて何かを決心したかのような表情になり、私達に2枚の紙切れを手渡してきた。

これは……格闘技のチケット?

なんでも、オークさんは明日、格闘技の試合に出るらしいのだ。

その試合に勝って、勝利を私達に捧げるとの事らしい。

 

『オデ、バカだから、2人を元気づける方法思いつかない……だから、明日の試合で初勝利できれば、2人にも元気分けられるかなって……』

 

恥ずかしそうに頬を染めながら頭を掻くオークさんの可愛らしい姿を脳内フォルダに収めながら、私達姉妹は同時に思った。

 

格闘技試合に出るオークさんとか、絶対かっこいいやん…!

 

リングの上で勇敢に戦うオークさんの姿を想像するだけで、鼻血が出そうになる。

私達2人に、試合を見に行かないという選択肢はなかった。

 

オークさんと明日の試合を見に行く約束をして別れた後、その日は身体の奥底から高ぶる熱を抑えるために、互いにベッドで己を慰めた…

 

 

 

 

 

『さぁ、試合も大詰め!初勝利宣言をしたオーク選手だが、既にボロボロだー!対するテラ選手はまだ余裕がある様子!これは決したかー!?』

 

“ワーッ!”と騒がしい観客席の一席に座り、私達は固唾を飲んで試合を見守っていた。

試合が始まる前に、オークさんについて他の観客に聞き取りをしたのだが、なんとオークさんは本当に今まで勝った事のない、はっきり言って最弱の選手という評価らしいのだ。

現に、試合が始まってからいてのペースに飲まれ、オークさんは“ぜぇ…ぜぇ…”と肩で息をしており、体力の消耗が激しいのが一目でわかる程に疲れている。

昨日、あんなに良くしてくれた人が満身創痍で佇んでいるのは、見ているだけで辛かった。

 

『はっはー!もうギブアップしろよオークさんよぉ~♪どーせ今日も勝てねぇんだ、諦めて田舎帰んな!』

 

対戦相手のテラが、オークを煽る様に挑発する。

その姿を見て、クランは鞭を構えそうになるが、何とか暴れ出しそうな腕を抑える。ここで自分が手を出してしまったら、それはオークを侮辱することにもなる。自分たちにできる事は、オークの勝利を信じる事だけなのだ…

 

 

――――オークさんッ!

 

 

2人が祈る様に手を合わせた時、リングの上のオークさんと目が合った。

すると、暗く濁っていたオークさんの目に、光が戻るのを確かに見た。

 

『そ、うだ…オデは負けらんねぇ……ピケルちゃん、クランちゃんと、約束したんだ…勝利をプレゼントするって……だからっ、負けられねぇ……負けられねぇんだよおぉぉぉ!!』

 

 

そう叫んで、オークは棍棒を振り下ろした。

その時、オークがバランスを崩して、そのままテラへと倒れ込んだ。

 

『ちょっ!?それは避けられ――――』

 

テラは棍棒を避ける準備はしていたが、オークそのものが倒れ込んでくることは予想していなかったらしく、避けることが出来ずにそのままオークにのしかかられる形になった。

しばらくオークの下でバタバタと藻掻いていたテラであったが、段々とその動きが弱弱しくなっていき、やがて完全に動かなくなった。

しばらく静寂に包まれる会場、そして―――

 

 

『…決着うぅぅぅぅぅぅ!!勝者はオークッ!念願の初勝利だアァァァァ!!』

 

 

会場から、歓声が上がった。

 

 

『オークぅ!わしは嬉しいぞ『ピケルちゃーん!クランちゃーん!』どわっ!?』

 

試合が終わった後、オークさんは鬼ゴブリンのおじさんを押しのけて真っ先に私達の所へ来てくれた。

 

『オークさん、初勝利おめでとうございます!』

 

ピケルはオークの初勝利を満面の笑みで称賛した。

 

『いやぁ…多分オデだけだったら諦めてた。でも、2人の顔が見えて、約束守んないとと思って、そしたら力が沸いてきて…あははっ、2人に元気を分けようと思ったのに、逆にまた元気貰っちゃったね……』

 

オークさんは照れながらそう言って頬を掻いた。

……ううん、オークさん。私達は貴方の姿を見てちゃんと元気を貰ったよ。

勝利だけじゃない。私達姉妹の為に、何かしようと頑張ってくれて、励ましてくれたオークさんに、私達は救われたんだよ。

本当に感謝しても、しきれないよ。

 

……でもねオークさん、それと同時に許せないこともあるの。

私達は胸に手を当てる、オークさんと出会った時から感じていた、心臓から伝わってくる、激しくも心地のいい鼓動。それと同時に湧いてくる“キュンキュン♡”とした全身に電撃が走るような切ない感覚。そして、お腹の下の方が、オークさんを求めている感覚。

それが何なのか、2人は本能的に解っていた。

恋愛小説のような、周りの女の子達が当たり前のように経験している甘い経験。とっくの昔に諦めたと思ってたんだけど、やっぱり捨てれずに胸の奥底に持っていたこの願望。

ずっと、ず~~っと抑えていたこの感情を開放したのは、オークさんなんだよ?……責任、取って貰わなくちゃ♡

私達は、示し合わせもなしに同じタイミングで目を合わせた。

 

そこには、同じように真っ黒で、熱の籠った目が合った。

 

……あはっ♡流石姉妹、言葉は無くても考える事は一緒だね♡

 

『オークさん、私達、また挑戦する!オークさんの試合を見てまた挑戦しようって言う勇気が湧いてきたの、私達も諦めずに挑戦するよ!』

 

『おぉ!そう言ってもらえると嬉しいな、応援してるよ!』

 

ふふっ、オークさんならそう言ってくれると思った。

でも、それだけじゃ足りない。

 

『オークさん、私達必ず目標を達成します』

『そうしたら、またオークさんに会いに来ます』

 

 

だから、その時は―――

 

 

 

 

 

『『私達を、オークさんのお嫁さんにしてください』』

 

 

オークさんは、少し驚きながらも『ははっ、もう少し大きくなって、その気持ちが変わってなければ喜んで』と言ってくれた。

もしかしなくても、オークさんにとっては私達の告白は幼い子どもの『パパと結婚する』と同じように捉えられたのだろう。

しかし、今はそれでいい。私達が今後オークさん以外の雄に靡くことは絶対にない。

それに、言質は取った。オークさんは誠実な人、約束さえしてしまえば彼も簡単には逃げられないだろう。……まぁ、逃がす気はないのだけど♡

ふふっ、オークさん♡

 

 

『『楽しみにしてますね♡』』

 

 

その後、鬼ゴブリンの好意で祝勝会にピケクラ姉妹もお呼ばれさせてもらい、楽しい時間を過ごした。

……余談だが、オークは覚えていないのだが、ピケクラ姉妹にたっぷりと酒を飲まされ、酔った所で好きな女性のタイプや性癖など、あらゆることを聞きだされたのであった…

 

 

 

 

 

 

オークと別れた数日後、ピケルとクランは魔法王国に帰り、すぐに再試練を王に懇願した。

国民や大臣たちは、あれだけの醜態をさらしたのによくもまぁノコノコ帰ってきたものだ。どうせもう一度挑戦しても無駄だろうにと2人を冷たい目で見ていた。

しかし、彼らの予想は大きく外れることになる。

 

再試練が始まった瞬間、ピケルとクランは同時にイケメンの頭の風船を割ったのだ。

この間はイケメン男に緊張して動けなかった2人が、なんの感情もない様な顔でイケメンを瞬殺する光景は、王を含めた観客を大いに驚かせた。

さらに驚くことは続く。姉妹が正式に王位継承権を得た後、現王の元で公務等を学ぶことになったのだが、その際には子どもとは思えない程のカリスマ性を発揮し、国民や大臣たちの信頼を勝ち取ったのだ。

もう、彼女達が女王になる事を反対する者は、国の中にはいなくなっていた。

 

しかし、そんな2人を不安そうに見ている存在もいた。

2人の側近である白羊執事と黒兎執事である。

昔から彼女達を見てきた2人は、数日で見違えるように変わった2人の心境の変化が何か悪い物の影響なのかもしれないと心配し、姉妹に何かあったのか聞いてみた。

すると、信じられない答えが返ってきた。

 

 

『早く立派な大人のレディになって、最愛の夫を迎えに行きたいの』

 

 

その言葉を聞いた執事たちは、信じられない様な目で彼女達を見た。

王女姉妹は、お世辞にも女性の魅力があるとは言えない。いや、まったくないと言ってもいいだろう。

彼女達も、その事を理解して男性とはあまり関わらないようにしているのも執事達は知っていた。

しかし、王女姉妹が最愛の夫というワードを言った時、執事たちは姉妹が雌の顔になっているのを確かに見てしまった。

その顔に恐怖と不気味さを感じながらも、執事たちは女王たちが本気でいっているのだと察してしまったのだ。

あの醜い姉妹に想いを寄せられ、求婚される男がいる。その光景を浮かべるだけで同じ男として同情してしまう。

おまけに、彼女たちは今まで男性から避けられていたのが反動となり、その想いもとても深く、重いものになっていると想像するのは容易かった。それこそ、王という立場を最大限利用して件の男性を手に入れようとするだろう。

 

何だか件の男性には悪い様な気がしてきたが、ピケクラ姉妹が王位を継承するのは執事たちも嬉しい。

ピケクラ姉妹は素質もあるようだし、残酷な事だが、男性一人の犠牲で魔法王国の安泰が約束されるならそれはそれでいい様な気がしてきた……

 

 

魔法王国の為です。犠牲になって下さい、名も知らぬ男性よ……

 

 

執事たちは心の中で、姿も見たことのない不幸な男性に手を合わせるのであった…

 




この世界線では”王女の試練”のタラコ唇君はイケメン扱いされそう(KONAMI感)

幼女でこの重さなら、結婚適齢期のモンスター達はどうなってしまうんでしょうねぇ(ニッコリ)
次はどのモンスターちゃんをオーク君と引き合わせようかな~
アマゾネスにドラゴンメイド、蟲惑魔にエクソシスター…ネタが豊富で迷い箸しちゃいますねぇ!


ここまでご拝読ありがとうございました

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