トンヌラ、リュカと   作:117

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003話 サンタローズの村にて・1

 

 003話 サンタローズの村にて・1

 

 ビスタ港から、父さんが現在拠点にしているサンタローズの村まで約半日。

 この大陸で唯一といっていいビスタ港から最も近い村であるサンタローズに拠点を築き、新しき村長としてその地位を確立している父さんは流石である。人々を魅了するカリスマがあり、そして剣士としても治世者としても一流との言葉がよく似合う。

「ボク、覚えているよ! サンチョが美味しいご飯を作ってくれるんだよね!」

「おお、リュカはサンチョを覚えているか。トンヌラはどうだ?」

「もちろん覚えているよ。サンチョさんの食事なら、シチューが一番好きだよ」

「そうかそうか。父さんもサンチョのシチューは大好きだ。サンチョの料理はなんでも旨いが、シチューはやはり格別だな」

 半日も歩き続けなければならないとなれば、6歳の子供には飽きがくるし何よりも辛い。そこで昔話とこれから向かう村の話を織り交ぜて子供たちの興味を引く父さんは流石である。

「サンチョ、シチュー作っているかなぁ?」

「わっはっはっは。いくらサンチョとて、毎日シチューを作る訳にもいくまい。今日の夕飯がなんなのかは着いてからのお楽しみだな」

 そういう父さんだが、ビスタ港を出たのは今朝のことである。サンタローズの村に着くのは昼過ぎになるか。そこから急げばシチューの支度も間に合うだろう。

 今現在、オレたちが歩いているのは林間の平野。両脇には生い茂った林が鬱蒼としつつ、更に遠くには山々がそびえ立っている。そんな中、おそらくは旅人によって踏みしめられて道になっているのだろう草が生えていないだけの道を3人きりで歩き続けている。

「あ」

 と、リュカが左前にある草むらに注意を向ける。即座に意識を戦闘モードに切り替える父さんとオレ。父さんは背負った剣の柄に手をかけているし、オレは手に持っていたカシの杖を握りなおす。

 すぐにガサゴソと音を立てながら、草むらからくびながイタチがひょっこりと顔を出す。遭遇したモンスターが、器用に草むらに胴体を隠しながら顔だけを覗かせている。

「…………」

「「「…………」」」

 どこか気まずい沈黙。様子をうかがっているくびながイタチはリュカにオレに父さんと順繰りと見渡した後、何事もなかったかのように草むらに首を戻してガサゴソという音を立てながら遠ざかっていく。

 モンスターとて生き物――とはいえないモノも少なくないが、ともかくとして負ける戦いを好むはずもなく。主に父さんを見て勝ち目がないことを悟ったのか、ごくごく自然に戦闘になりかねない場から立ち去って行った。

「イタチさん、いっちゃった……」

 どこか寂しそうに言うリュカだが、オレはもちろん父さんもそんなほのぼのとした気分にはなれないだろう。モンスターはその邪心を祓わない限り、どこまでいってもモンスター。人を傷つけることを悦びとする邪悪な存在である。このまま見逃せば、いつかきっと他の人間に害を及ぼす。

 とはいえ、たかが1匹のモンスターを追って道を外れるのも愚策だ。少なくとも6歳の双子を連れ立った親がする行為ではない。

「くびながイタチもワシたちの足音が気になったのかも知れぬな。

 さ、それはさておきこちらも旅を急ぐか」

 しれっとした様子で父さんがそう口にして先に歩き出す。

 リュカがどこかモンスターに親しみを感じていると、オレだけではなく父さんも悟っているだろう。人を襲うモンスターに親近感を持つのは、この世界の人間として決して良い行いとは言えない。最悪、モンスターの仲間として人々の世界から弾かれる。

(それでも良しというか、様子見を続けているのは母さんの影響があるからか……)

 父さんが決して口にしないオレたちの母、マーサ。母さんは魔物と心を通わす異能があったことを父さんは知っているはずだ。

 その異能を受け継いだリュカを淀んだ目で見ることなど、父さんにできるはずがないのだろう。

(そこはオレの役目かな)

 リュカが人々に排斥される可能性は、カボチ村の例をあげることなく当たり前に存在する。本来は人々の天敵であるはずのモンスターを仲間にするとなれば、頼もしいと見るか疑わしいと見るかの天秤がどちらに傾くは決して分からない。当たり前に敵意を抱く人の方がむしろ自然ともいえる。

 だが、オレはどんな時でもリュカの味方になる。当たり前すぎる話だ。リュカが勇者の父親になるかという以前の問題。

(リュカとオレは双子だからな)

 オレは絶対にリュカを裏切らない。そしてリュカも絶対にオレを裏切らない。それはオレの中で確定している事実。

 だが、それでも。

(……リュカは厳しい人生を送ることになる)

 それをオレは知識として知っている。

 リュカが人質にとられたせいで父さんは嬲り殺され、そして10年にも及ぶ奴隷生活を強いられることになる。

 そこから抜け出してようやく愛しい人と結婚しても、子供が出来たと同時に家族と長い離別の時を強いられる。

 それらを見過ごすことは、流石にリュカへの裏切りとなるだろう。オレ個人としてもリュカにそんな目に遭って欲しくないのはもちろん、父さんにだって死んでほしくない。

 だが、どうすればそれを防げる? どうすればリュカや父さんへ裏切らないと胸を張って言える?

(オレは、オレがすべきことは……)

 ぐるぐると、ここ最近ずっと考えていることが頭をめぐる。

「お、サンタローズの村が見えたぞ!」

「ホント!? ボクにはまだ見えないよ?」

「はっはっは。父さんの方が背が高いからな。そら、こうしてやれば見えるか?」

 父さんの声に我に返れば、リュカを肩車している父さんの姿が目に入った。普通の、ただ仲の良い親子の姿。

「トンヌラ、お前も見るか? さっきから静かだし、疲れているのだろう? 目的地が見えれば疲れも吹っ飛ぶというものだ」

 リュカを下した後、オレにそんな声をかけてくる父さん。様子がおかしいのは父さんにはお見通しだったらしい。

 苦笑が浮かぶよりも先に、父さんに甘えられるという機会に喜びの笑みが顔に浮かぶ。

「うん、オレも!」

「そうかそうか。よいしょ、と」

 そう言いながらオレを肩車する父さん。

 ほんの1メートルちょっとしか違わないのに、青い空は近くなって遠くの村がよく見える。

「……サンタローズの村、だね」

「うむ、あとちょっとの距離だ。

 頑張ろうぞ。リュカ、トンヌラ」

 万感の思いを込めたオレの言葉を素直に受け取った父さんは、オレを肩から下して少しの距離を歩くように促してくる。

 新しい場所に着けるというワクワクと、疲れた体を休められるという期待感。それがオレとリュカの疲れを吹き飛ばし、残りの道を楽しみながら歩き終えられるのだった。

 

 ◇

 

 村の入り口に着いた時から、村中が歓迎モードだった。

 まず門番の戦士は厳めしい顔を即座にほころばせて父さんに歓迎の言葉を告げる。

「やあやあやあ、パパスさん! 無事でなにより!」

「ビーン、お前も息災で何よりだ。ワシが留守にした半年で何か変わったことはなかったか?」

「はっはっは。酒場でより美味い酒を仕入れるようになりましたなぁ。おかげで女房の機嫌が悪いのなんの。

 入りびたる拙者が悪いのですがな」

「よしよし、その愚痴は近いうちにその酒場で美味い酒を飲みながらゆっくり聞こう。オヌシの奥方も、ワシと一緒なら目をつぶってくれるだろう」

「流石パパスさん、話が分かる」

 そういって悪い笑みを浮かべる大人たちだが、ビーンと呼ばれた門番はオレとリュカのことをちらりと見る。

 小さい子供が旅をしてきたのである、疲れていないはずがない。それを察した彼はすっと道を開けて父さんとオレたちが村に入る道をつくってくれる。

 それと同時、すぅ…と大きく息を吸って、村中に響き渡る大声をあげた。

 

「おお~い、パパスさんが帰ってきたぞぉ!!」

 

 大きくない村とはいえ、こんな歓迎のされ方は普通ない。普通の話をすれば、どんな善人も嫌う人はいるものである。もしも父さんを嫌う人がサンタローズの村に1人でもいれば、こんな村中に響き渡る大声を発するはずがない。父さんを嫌う人がいたとしたら、その人にとって不快な声に他ならないのだから。

 そんな心配をせずに村中に父さんの帰還を知らせられる大声こそが、父さんがこのサンタローズの村で築き上げてきた信頼の証拠に他ならない。

 それを証明するように、サンチョが待つサンタローズの我が家に着くまでの僅かな距離で、多くの人に声をかけられた。

 家事をしていたであろうおばさんが、家の窓からひょっこりと顔を出しながら声をかけてくる。

「まあ、本当にパパスさんだよ。今回の旅はどうだったんだい?」

「良い見分を得られたよ。オヌシの息子は元気か、エレエ?」

「ウチの坊主はやんちゃ過ぎて困っちゃうねぇ。パパスさんみたいになるんだって、棒切れを剣みたいに振り回してばかりだよ」

「はっはっは、元気でよろしい。ならばワシは近いうちに勉学の大事さを伝えるとしようか」

「そうしておくれ。私としてはいつ死ぬか分からない戦士になるよりも、どこかで学者先生になる方が嬉しいんだけどねぇ」

 畑で鍬を振るっていた青年が手を止めてこちらに笑いかけてくる。

「ようようパパスちゃん、息災かい? 今度こそ飲み比べでオレちゃんが勝ってやるからよぅ!」

「ベヒリも懲りんな。飲み比べでワシに勝てるはずがなかろうに」

「うっせいじゃんよ! じゃあ他に何で勝てるっていうんだよ!」

「オヌシの育てたジャガイモは他の誰が育てるよりも旨いではないか」

「パパスちゃんは口も上手いねぇ! 昨日サンチョちゃんに届けたばかりだから、今夜はオレちゃんのジャガイモを美味しくいただいちゃってよぅ!」

「楽しみにしていよう」

 遠くからシスターが息を切らせながら駆けてくる。

「わぁ、本当にパパスさんだ!」

「シャーティ、シスターになったのにお転婆はなおらんのか?」

「ええ、これが私の持ち味ですから!」

「胸を張って言うことではなかろうに。神父さまに迷惑はかけておらんか?」

「これっぽっちも!!!!」

「…………かけていそうだな」

 和気藹々としながら村を練り歩いた後、やがて一つの家に辿り着く。

 ぱっと見は普通の家。実際に普通の家。

 ただ、その出入口に一人の恰幅のいい男がニコニコとした笑顔で神妙にオレやリュカ、何より父さんの事を待ちわびていた。

「お帰りなさいませ、旦那様」

「今帰ったぞ、サンチョ」

「帰ったぞ、サンチョ!」

「ただいま、サンチョ」

 ワクワクとしたリュカは父さんの口調を真似して、オレは毎日帰るような気やすさで。一日千秋の思いで待っていたであろうサンチョに挨拶をする。

 そんなオレたちを見て、ただでさえ肉付きのせいで細い目を更に細めて微笑むサンチョ。

「おうおう、リュカ坊ちゃまもトンヌラ坊ちゃまも大きくなられて。このサンチョ、感激ですぞ」

「サンチョ、今夜のご飯はなに? シチュー!?」

 そんなサンチョの感慨に全く取り合わず、我が双子の兄であるリュカは既に減り始めたであろうお腹を気にしながら今晩の献立に意識を向ける。

 リュカの期待を感じたであろうサンチョは、一瞬だけ視線を外す。虚空を見るその鋭い視線は、冷静に冷徹に頭の中で今夜の献立をどうするかの計算をしているようにオレには見えた。

 そして即座に心からの笑みを顔に浮かべると、無邪気な笑顔を見せているリュカに向かって驚きの表情を浮かべるサンチョ。

「おおっ! 今夜はたまたまシチューにしようと思っていましたところです。リュカ坊ちゃんは鋭いですなぁ」

「だってボクが食べたかったからね!」

「よかったな、リュカ。今夜はサンチョのシチューが食べられるぞ」

 そんな召使いの様子を父さんが見逃すとは思えないが、いちいち指摘するのが良い(あるじ)では決してない。というか、この状況で色々と指摘する(あるじ)はただただイヤな(あるじ)である。当然、父さんがそんな器であるはずもない。

 オレも王族の一員、というか。精神が大人であるからしてこの流れに乗っかっておく。

「うん、オレもサンチョのシチューが楽しみだったんだ。今夜に食べられるなんて嬉しいよ」

「……トンヌラ坊ちゃんは大人ですなぁ」

 どうやら見透かされたらしい。感嘆の様相を見せるサンチョを見て、オレとしてもそれを見透かしてしまう。

 大人と大人のおべっか使いは、なんか楽しくない。

 ちょっとむなしい空気がオレとサンチョの間に流れる中、ふと背後から足音が聞こえる。大人のそれと、子供のそれ。

「ああ、ご足労いただいて申し訳ない。こちらからお伺いするつもりでしたのに」

 顔をそちらに向けていたサンチョはにこやかなビジネスフェイスをオレたちの背後へと向ける。

 それと同時、父さんとリュカとオレは後ろを向く。果たしてそこには1人の男と、その娘らしき可愛らしい美少女がいた。

 男は旅慣れた引き締まった体で剣を腰に差しており、そして一目で上等な布と分かるそれで作られた服をまとっていた。更に細部には品がよく高級そうなアクセサリーを身に着けており、羽振りがいいことがよく分かる。ついでに言うなら頭髪の方はやや残念で、自分から潔く剃っているのかスキンヘッドである。ほんの少しだけ見える生えた頭髪は、こちらからは側面しか見えずに前面上面は太陽の光を反射して輝いていた。

 更に彼が連れている少女はオレたちと同じくらいの年頃。煌めくような蒼い髪を惜しげもなく宙に流し、清楚な白い服を身に纏いながら。恥じらって父親であろう偉丈夫の後ろに隠れつつ、ちらちらとオレやリュカの事を見つめている。

「あなたがサンタローズで名高いパパス殿ですな?

 私はここから遠いサラボナという町を拠点に商売をしているルドマンという者」

 その単語に、完全にオレの思考回路はフリーズした。

 だって、いきなりここで。ルドマンが登場するなんて予想の範疇の外。しかも彼がルドマンだとすれば、傍にいる美しい蒼髪の少女の名前も分かるというもの。

「そしてこちらは我が娘であるフローラ。

 これ、フローラ。挨拶をなさい」

「こ、こんにちは。わたくしはフローラと申します」

 父親の後ろに隠れたまま、照れたままにペコリと頭を下げるフローラ。

 それを確認した父さんは、スッとほんの少しだけ目を細めた。

「豪商ルドマンといえば、我らを乗せて貰ったストレンジャー号の船主……」

 たまたま父さんの傍に居たオレだけがかろうじて声を拾えた小さな声。気のせいかと思えるような僅かな言葉の後、いつも通りの快活な声が我らが父の口から発される。

「おお、それはそれは遠くからサンタローズの村までようこそ!

 歓迎いたしますぞ」

「……サラボナの位置を把握している。更にパパスという名前はグランバニアの、ふむ」

 今度は風に流れて聞こえてきた。父さんやリュカはもちろんルドマンの傍にいたフローラにも聞こえていないだろう。

 偶々の位置にいたオレにだけ聞こえた、ルドマンの推察の声。

 直後、真剣なそれが嘘のようににこやかな声をあげるルドマン。

「いやいや、我らはしがない行商人。過分な歓待をしていただいたと恐縮しております」

「行き擦り合うも他生の縁、とも申します。どうでしょう、今夜は我が家で夕食など召し上がっては?」

「おお、それは願ってもいない!」

 両方の本音が聞こえたオレにとってはどこか白々しい会話を聞きつつ、おそらくは双方にとって望外の密談が為されそうな雰囲気が醸し出されつつある。

 きょとんとしたリュカとフローラはどこか不思議そうな顔で、父さんに利益ありと踏んだサンチョは素知らぬ顔で狡猾に話を進める。

「ではルドマン様、フローラ様。我が家でどうぞお暖まり下さいませ。

 今夜はこのサンチョが腕を振るってシチューを作らさせていただきます」

 

 ◇

 

「…ずはストレンジャー号…乗せていただいて…謝いたしま…」

「…グラ……ニ…国…パパ…のお役に…」

「……説の、天…勇者。その装備…」

「…ふ…。その見…りは…」

 2階で内容が把握できるオレとしては怪しすぎる会話をしている父親たちと、台所で大急ぎでシチューを作っているサンチョ。

 忙しい大人たちとは対照的に、オレとリュカとフローラの3人はリビングの椅子に座らされて、リンゴジュースを出されたまま放置されている。

(ヒマ)

 いっさいの容赦なく、精神は大人のオレが思うくらいである。好奇心旺盛な真正の子供であるリュカやフローラが耐えられるはずもない。

「ねぇ」

 リュカがフローラの声をかければ、フローラも楽しそうな何かを期待してリュカの方を見る。

「ボクの名前はリュカって言うんだ」

「オレの名前はトンヌラ」

「リュカさんにトンヌラさん。わたくしはフローラと申します。よろしくお願いいたしますわ」

 ふわっとした笑みを浮かべながらフローラが挨拶をする。それににこやかな笑みを浮かべるリュカ。

「暇、だねぇ」

「暇、だなぁ」

「暇、ですわ」

 全員の意見が一致した。それを確認したリュカは、悪びれる様子もなく楽しそうな笑顔で次の言葉を口にする。

「ねぇ。ここに居ても暇だし、みんなでどこかに遊びに行かない?」

「いいですわね。わたくし、実はお友達と会う約束をしているのです。リュカさんとトンヌラさんもきっと仲良くなれますわ」

 小さな声でヒソヒソと、大人にバレないようにイタズラをたくらむ2人。ちなみにもちろんだが、大人たちからはこの家から出ないように言われている。

 もちろんオレとしても監視が外れた子供がそんな言葉を聞くわけがないと分かってはいるが。危険がないように、好奇心が爆発したリュカとフローラを見張るのがオレの役割なのだろう。

 そして怒られる時はオレも一緒に平等に。ぶっちゃけ損な役回りである。それにどこか諦めた感情を抱きながら、それに合わせた微笑を浮かべて口にする。

「この家から出るなって言われているんだけどなぁ」

 フローラが友達と会う約束をしているというなら、言いつけを破らなければならない。

 そう思いつつも口にした言葉は、意外にもフローラによって否定された。

「あら、大丈夫ですわ。会う約束をしているのはたまたまこの家の地下ですもの」

「え?」

 思わずオレの口からそんな声が漏れた。ここは腐ってもグランバニア国王の寝床である。たとえ子供とて、いやどんなイタズラをするか分からない子供も含めて召使であるサンチョがその侵入を容易く許すとは思えない。

 そんな意味が溢れたオレの言葉だったが、フローラはずいとオレとリュカに顔を寄せて、上気した表情で爛々とした瞳を輝かせて、そしてヒソヒソ声で口にする。

「わたくし、この村で妖精さんとお友達になったの。

 名前はベラさんって言って、わたくしにお願い事があるんですって。

 この家の地下で待ってるって。

 ね、妖精さんのお願い事なんてステキでしょ?

 一緒に行きましょう?」

 

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