トンヌラ、リュカと   作:117

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感想、高評価など。
本当に励みになっております。

最新話を仕上げましたので、どうか楽しんで頂けると幸いです。


004話 春を呼ぶ依頼

 

 004話 春を呼ぶ依頼

 

 リビングにあるテーブルとイス。

 オレの位置からは厨房の入り口が見えて、たまにというには多い頻度でサンチョがオレたちの様子を伺っているのは察することができた。

 子供というものの奔放さをよく知っているのだろう。多分だが、オレが感じる視線以上に入り口には気を配っているはずであり。オレたちが家を出るにせよ、不審者が家にに入ってくるにせよ。通過点となるドアや窓の音には更に敏感なことは想像に難くない。

「妖精のベラかぁ。どんな子なんだろ?」

「ステキな柔らかさを持った女の子でしたわ。とても綺麗で、だけど少しだけやんちゃな瞳の輝きがあって。

 まるでリュカさんみたいでしたわ」

 しかしながら、そこから遠ざかるようにコソコソと地下への階段へと向かう子供たちにはノーマークだったに違いあるまい。

 そもそもとして地下で遊ぶくらいなならばサンチョとしても許容範囲内なのだろう。家の地下室など、そんな危険があるようには普通は思えない。

(普通は、な)

 これから始まる初手からの大冒険を察したオレは、既にやや死んだ目をしているが。

 しかも今回は好奇心旺盛な双子の兄だけでなく、初めてのヤンチャにワクワクが抑えきれないだろう令嬢のお目付け役も兼ねているのである。

 せめて10年後まで訪れることはないだろうと思っていた苦労が、いきなり前倒しでやってきた。

(まあ、今更か)

 心を切り替える。どうせレヌール城の冒険がある事を思えば、リュカに加えた1名の子供は間もなくやってくる予定だったのだ。それが少しだけ早まっただけと割り切ろう。

「ベラって子のお願い事ってなんだろうな?」

 オレの言葉に、楽しさが抑えきれないといった様子のフローラが目をキラキラさせながらオレの顔を覗き込む。

「あら。トンヌラさんも気になるのかしら?」

「そりゃなるよ。妖精のお願いなんて想像つかないからな。サンチョからのお願いなら、ベヒリさんのところから野菜をもらってくるとかも思いつくけど」

「ベヒリさんのお野菜ならわたくしも食べましたわ! 実はわたくし、ニンジンがちょっと苦手なのですけど、ベヒリさんのニンジンは甘くて美味しくいただけましたの」

「ボクもニンジンは苦手なんだけど、ベヒリさんのニンジンなら食べられるかなぁ。ニンジンを食べたらお父さんが褒めてくれるんだ」

「ええ、ええ。きっと美味しく食べられますわ。それにサンチョさんもとってもお料理が上手そうなんですもの。

 わたくしもサンチョさんにお料理を習いたいですわ」

 くんくんとちょっとだけ、はしたなくも鼻を動かしたフローラは、厨房から流れ来る料理の臭いをかいで今晩の夕食に期待を膨らませているようだった。

 それはさておき、こんな話題が変わる会話をしつつも忍び足で地下への階段へ向かう足は止まらないのだから、子供の好奇心というのはどこに飛んでいくのか分からない。

(……ガンバロ)

 萎えかけた気合をもう一度入れ直し、3人で地下へと向かっていく。

 落下防止用の地下への木蓋を外し、ガコッと大きな音を立て、思わず硬直したオレたち3人は反射的に厨房の入り口を見る。が、サンチョが確認にしくる様子はない。やはり地下で遊ぶくらいの()()()()は見逃してくれるようだ。

 そんな大人の配慮には気が付かず、ホっと胸を撫でおろしたリュカとフローラは木蓋を側の床に置いた後、ゆっくりと大人たちにバレないよう地下室への階段を下りていく。それを見ながら地下に降りていく2人に小声で声をかけるオレ。

「後からすぐに行くよ」

 続かないオレに怪訝な顔をした2人にそう言った後、いったん1人でリビングへ戻る。そしてそこから繋がる厨房の入り口から中へ顔を覗かせれば、そこにはジャストタイミングでこちらを見るサンチョ。

「おや、どうしましたか。トンヌラ坊ちゃん」

「オレとリュカ、それからフローラは地下室で遊ぶね」

「……トンヌラ坊ちゃんは大人ですなぁ」

 しみじみと言うサンチョだが、きっと貴方が思う以上に子供です、地下室から妖精の国に行くことは隠しているのだから。

 大人の了解が取れたオレは悠々と取って返し、リビングに置いておいたままのカシの杖を持って地下室へ向かう。

 そして地下へ降りるオレをきょとんとした目で見上げるリュカ。

「トンヌラ、どうしたの?」

「これを持ってきたんだ」

 そう言ってオレの武器であるカシの杖を見せびらかす。

 それを確認したリュカはへにゃんと笑った。

「そっか。トンヌラはそのカシの杖を大事にしているもんね」

「せっかく父さんにねだって貰ったものだからな」

 いくら父さんが王族だとはいえ、長い旅で旅費が潤沢にある訳もない。当然子供のワガママを頻繁に聞ける訳もなく、例えば寄った村で質素な食事をしたりとかはザラにある話。

 そんな中でオレは貴重なオヤツをリュカに譲ったり、ちょっとした手伝いを積極的に行ったりしていた。大人の自制心があるからこそできる事であり、1回だけ真似をしたリュカが即座にイヤになってしまうような事を黙々とやったのだ。

 その代わりに父さんにお願いしたことが、良い武器を見繕って欲しいというもの。リュカはヒノキの棒を腰に差しているが、オレも3ヶ月前まではリュカと同じ立場だった。寄った町で路銀を稼ぐための依頼を父さんがこなした時、オマケで貰えたカシの杖。それは今まで頑張ってきたご褒美だとオレが使っていいことになった。もちろんリュカもそれに嫉妬することなく、我が身のように喜んでくれたのだが。

 その時からオレは暇さえあればカシの杖を振って、身体に馴染ませてきた。全てはこの日、父さんから離れて冒険をする日の為に。

(その為の武器を手放すなんて、本末転倒が過ぎるからな)

 そう思いながら地下室の先へと進む。

 地下室の上の方には地面の縁に開けた穴がいくつもあり、そこから採光できるような造りとなっていて燃料の消費を抑えられるようになっている。

 しかしそれでも薄暗い風景には違いなく、前をズンズンと進むリュカとは違ってフローラは怯えの混じった緩やかな歩調となってきた。

 最後尾にいたオレは、そんな彼女の右手を後ろから優しく握る。

「っ」

「大丈夫、行こうよ」

 ちょっとだけ明るい声色でそう声をかけてあげれば、硬くなっていたフローラの手のひらから、みるみると強張りが抜けていく。

「……ええ、いきましょう。トンヌラさん」

 戻ってきたフローラの声もいくぶんか柔らかかった。

 その直後、聞こえてくる先にいるリュカの声。

「ねぇ、キミがベラ?」

「そうよ。そういうあなたも私の姿が見えるのね?」

 続いて聞こえてきたベラの声に、オレは独りほっと胸を撫でおろした。

(オレもベラの声が聞こえてよかった)

 判定的に妖精が見えるかどうか微妙である、見た目は子供で頭脳は大人なオレ。一人だけ妖精の村に行けない可能性も頭にあったのだが、否定された形になって本当によかった。

 ほんの僅かに足を進めれば、そこには勝気な顔をしたオレたちと歳が変わらないように見える半透明な妖精の姿。

 彼女はオレを、というかフローラを見てニコリと嬉しそうな笑みを浮かべた。

「フローラ、来てくれて嬉しいわ。この男の子たちは?」

「こんにちは、ベラさん。あなたの傍にいるのがリュカさんで、わたくしの傍にいるのがトンヌラさん。

 お友達なの」

「フローラの友達ならボクとも友達だよ。よろしくね、ベラ!」

 同じ年ごろの友達というのに飢えているリュカは、心底嬉しそうにキラキラと瞳を輝かせながらベラの右手を両手で握る。

 出会いがしらに思いっきり懐かれたベラは、どこか居心地が悪そうにポリポリと左の人差し指で自分の頬を掻いた。

「ずいぶんと(なつ)こい子ねぇ。調子狂うわ……」

「ベラ、よろしく」

「対してこっちはずいぶんと淡白な子ねぇ。調子、もっと狂うわ……」

 リュカとオレとの湿度差に戸惑った顔をするベラだが、場を仕切り直すようにゴホンと咳ばらいをする。

「ま、いいわ。ところでフローラのお友達としてここに来てくれたなら、私のお願いを聞いてくれるのよね?」

「もちろん! ボクたちは友達のお願いを聞くために来たんだから」

 楽しそうに言葉を返すリュカに、フローラとオレも頷いて返事をする。

「リュカさんとトンヌラさんも、ベラさんの力になれると思ってきてくれたのですわ」

「情けは人のためならず、ってね」

「……1人だけちょっと怖いわねぇ」

 ジト目でオレを見るベラだが、今回に関しては本当に悪意はないので信じて貰いたい。いやまあオレは基本的に自分を善人だと思っているので、イベントとかでなくとも多少の苦労で他人が苦しみから逃れるならば受けるべきだとも思う。

「ま、いいわ。どうせ他に誰も私は見えなかった訳だし、選択肢もないもんね」

 諦めたように溜息をついたベラは、手に持った木の杖をくるりと回して地下室の天井を指す。

「開けよ妖精の国。誘えよ我らが友を。

 幻が如き大地に我が友を招待したまえ」

 思わず聞こえたキーワードにピクリと反応してしまうオレだが、幸いにしてそれに誰も気がつく事無く、地下室の地面から白く半透明で幻想的な階段が立ち上り。オレたちの家を突き抜けて、どこまでも上へと繋がっていく。

 またもやくるりと杖を翻して袖にしまったベラはどや顔でオレたちの方を見やる。

「さ。まずは妖精の国へ案内するわ。詳しい話は妖精国の女王さまであるポワンさまに聞いてくれないかしら?」

「うん、分かったよ!」

「ものすごくワクワクしてきましたわ!」

 不可思議な光景を目の当たりにしたリュカとフローラは興奮が抑えきれないと言わんばかりの様子。

 そんな彼らを背後に見つつ、オレは苦笑しながら2人を見守る。

「危険がないように気を付けような」

「……やっぱりアンタ一人だけ妙に大人ねぇ」

「失敬な」

 その通りだよ、ベラ。

 

 ◇

 

 とことこと階段を登っていけば、視界は黒からグラデーションを得てやがて白くなり。

 ふと気が付けば、頭上には寒々しい青空と白い雲が広がっていた。

「「「わぁ……」」」

 これにはオレも感嘆の声をあげざるを得ず、3人の驚きの声が綺麗に揃う。視界の端に映るのはようやく満足そうな表情を浮かべるベラの姿。

「やっぱり子供ね」

 大人だってこうなると思うが。

 その感想の言葉は口には出さず、きょろきょろと周囲を見渡す。

 空は見えるが、地面は木の質感。切り出したそれを張り合わせた訳ではなく、巨大な切り株の上に立っているといった方が正しいか。

 左右には階下に降りる階段が作られており、そして眼前には木で拵えた玉座にそれに座ってニコニコとした笑みを浮かべる冠を被った妖精。

「まあ、ステキなお方。わたくしはフローラと申します。よろしくお願いしますわ」

 その人物を目に留めた時、真っ先にフローラが優雅なお辞儀をして礼の形を取る。

 一瞬だけ呆けたオレだが、それを悟られないようにぺこりと玉座に座る妖精に頭を下げた。

「オレはトンヌラ。フローラとベラの友達だ、よろしく頼む」

「ボクはリュカ! トンヌラと双子の兄だよ、よろしくね」

 唯一、頭を下げなかったリュカは右手を上げて元気よく挨拶をした。それら全てが好ましく映ったのか、玉座に座る妖精はくすくす笑いながら右手を己の左胸に添えて、首を傾げるような動作でオレたちに敬意を示す。

「これはかわいらしい戦士さまたちですこと。

 妖精の村に来ていただいたことを歓迎いたしますわ。

 私はポワン、この妖精の村で長を務めている者です。

 ベラ、大儀でした」

「きょ、恐縮です」

 どこかオドオドとしたベラの様子を見て不思議そうな表情をするリュカとフローラ。一方のオレとしては得心するしかない。妖精の村、ひいては春が来なくて困る世界の危機に呼んだ助けが幼い子供たち3人なのだ。ポワンの前に提示したベラとしては叱責を受けるかもと覚悟しただろう。

 だが、妖精についての認識があればこの結果は当然に過ぎる。なにせパパスはもちろん、大人になったリュカさえも外界にて妖精の姿を見る事は叶わないのだ。必然、人間に助けを求めるならば子供という事になる。

 その上で召喚されたのがパパスの息子たちと、天空人の少女である。むしろ望外の大物を呼び寄せたとポワンさまとしてはにっこりだろう。

 まあ、オレたちの正体をどこまでポワンさまが認識しているかは怪しいところだが、人間の子供としては悪くないと思っているのは間違いあるまい。

 たおやかな動きで姿勢を元に戻したポワンさまは、柔らかな微笑を浮かべたままでオレたちに向かって声をかける。

「さて。この度、人間の戦士であるあなたたちにご足労を願ったのは他でもありません」

「ごそくろう?」

「……来ていただいたのは、他でもありません」

 難しい言い回しが理解できなかったリュカは純粋に首を傾げ、ポワンさまは丁寧に言いなおした。

 傍で見守るベラの表情はハラハラである。

 それをを見るオレの心中はニヤニヤである。

(ヤバイ。思ったより楽しいな、このシュチエーション)

 性格の悪いオレの内心はさておき、ポワンさまの話は進む。

「実は私たちの宝である春風のフルートが、北にある氷の館に住む雪の女王によって盗まれてしまったのです」

「それは妖精さんたちにとって、大切なものなのかしら?」

 コテンと首を傾げるフローラに、表情を困ったような笑みに変えるポワンさま。

「ええ、あるいはあなたたち人間にとっても。何せ、冬の終わりに春風のフルートを吹いて冬を終わらせないと、世界はずっと寒いままのですから」

「えー。ボク、寒いのはイヤだよ!」

 旅をしている中で、冬の夜の寒さは堪える事この上ない。オレとしても父さんの腕の中でリュカと仲良く震えていたことを思い出し、ゾクリと悪寒を思い出した。

 ルドマンと共に旅をしていたフローラも心当たりのある辛さなのか、若干顔を青くしている。

「ええ。ですが我ら妖精族は剣を振るうには弱い種族です。

 我らを助けて下さる戦士さまたちに、春風のフルートを取り返して頂きたくお願い申し上げたいのです」

「分かりましたわ、わたくしたちにお任せくださいませ」

「ボクも頑張るよ!」

 フローラが真っ先に声をあげたのが少々意外ながら、リュカも続いて賛同を示す。

 そして場を眺めていて反応が遅れたオレに、その場の全員の視線が集中した。

 それらの視線を受けて、オレはニヤリと笑みを返す。

「友達のお願いは断らないって」

「……ありがとう」

 快諾したオレたちに、ベラが少しだけ涙ぐみながら言葉を返してくる。

 それらをにこやかに見たポワンさまは、柔らかな口調で言葉を続けた。

「かわいい戦士さまたち、私からも御礼申し上げます。

 氷の館は3つのカギでその扉を閉ざしており、戦士さまたちにはまずその3つのカギを集めてきて欲しいのです」

(ちょっと待て。それはオレの知っている話と違う)

 思わず顔が強張ったオレとは対照的に、フンフンと鼻息荒くポワンさまの話に耳を傾け始めるリュカとフローラの姿が目に映るのだった。

 そんなオレはさておいて、話を進めるポワンさま。

「まずは1つ、物理的なカギ。南の洞窟に住むドワーフ、その一族が妖精の大地にある全てのカギを作っているのです。

 彼らに頼んで氷の館を閉じているカギを借り受けなければ中に入れません」

「ポワンさまやベラさんがお願いするのではダメなのですか?」

 フローラの素朴な問いに、悲しそうな顔をするポワン。

「実は先代の村の長とドワーフが折り合い悪く、この村からドワーフたちを追いだしてしまったのです。

 雪の女王が春風のフルートをしまった宝箱のカギを開けられたのも、ドワーフたちの協力あってのことだと思います」

「……それ、妖精が悪いんじゃない?」

 思わず言ってしまったオレだが、それに対して噛み付いてきたのがベラ。プンプンと怒りながらオレの言葉に言い返してくる。

「でも、ポワンさまは方針を変えてまたドワーフたちを村に呼び戻そうとしたわ!

 それなのに村に戻った途端に宝物である春風のフルートを盗む手引きをして、裏切ったのはドワーフなのよ!」

「良いのです、ベラ。これは言わば妖精の村で長を務めた者としての責。ドワーフの怒りも甘んじて受けましょう」

 ですが、と言葉を続けるポワンさま。

「春風のフルートを取り返すのももちろんとして、このままドワーフと仲違いをしてはいけないと私は思っております。

 しかし今回の件も相まって、妖精族とドワーフ族の仲は険悪なものとなってしまいました。そこで人間族であるアナタ達に仲介をしていただきたいのです」

「んー。よく分からないけど、ポワンさまとドワーフのみんなが仲良くなればいいんでしょ?

 うん、ボク頑張るよ!」

 屈託なく笑うリュカに、全員の顔が穏やかになる。ギスギスした者同士の間に立つならば、彼くらいに穏やかな方が良いのでないか思える笑顔だった。

 それを見届けたポワンさまが次のカギを口にする。

「次に必要なのは盗賊の技法、簡単なカギならば開けられてしまう特殊な技術」

「……技術者の方を呼べばよろしいですの?」

 いまいち要領を掴めなかったフローラが難しい顔をする。かくいうオレもリュカも、具体的な方策が掴めずに眉をしかめざるを得ない。

 しかしそんなオレたちの様子を見て、くすくすとポワンさまは笑う。

「いいえ。その技法は、人間界に伝わるものなのです。触れるだけで盗賊の技法とも呼べる技術を得る事ができる奥義書を、はるか昔にとある大盗賊は世界中にバラまいたのです。

 今では盗賊と呼ばれる職業に至るための登竜門とまことしやかに人間界で伝わっています」

「……それを世界中から探さなくていけないのか?」

 先ほどよりも深く眉をしかめたオレに、ポワンさまはゆるやかに首を振って答える。

「いいえ。幸いにしてあなたたちが居たサンタローズの村、その洞窟の中に盗賊の技法は隠されています。

 一度サンタローズの村に戻り、洞窟に眠る盗賊の技法を探し出していただければそれでいいのです」

「宝探しだね!」

 ニコニコとした笑みを浮かべるリュカが一言で表してくれた。

 まあ、そういうことなら話は早い。要するにサンタローズの洞窟を探索すればいいだけの話なのだから。

「そして3つ目」

 ここで初めてポワンさまは表情を消して、真剣な表情でオレたちの事を見る。

 白魚のような左手の指を3つ立てて、この3つ目が一番難しいのだと言外に伝えてくる。

「モンスターの、魔族の許可を得ること」

「え?」

 思わず聞き返したオレに、真剣な顔でポワンさまは言葉を伝える。

「雪の女王はモンスターと盟約を結んでいます。いかに2つのカギを揃えたとして、それだけでは扉は開かない。雪の女王本人か、もしくはその仲間の許可がないと扉が開かない(まじな)いがかけられているのです」

「ポワンさま、それは……」

「……分かります、とても難しい依頼である事は。言葉が通じないモンスターでは話にならず、人語が通じる強力なモンスターを屈服せねばなりません」

(いやそれゴッツ簡単やん)

 思わず心中で関西弁になってしまったオレを許してほしい。要するにレヌール城に住まうおやぶんゴーストをシバいた後に言質を取ればいい話なのだから。

 まあ、この現実の世界でおやぶんゴーストをシバけるかという問題もあるが、それを言い出したらそもそも魔王を倒せるかという話になってくるので深くは考えないでおく。

 オレとしてはとても良い目星がついたという事を喜べばいい。

「――全力を尽くします」

 とてもイイ顔で返事をするオレに、硬い表情を崩してポワンさまが再度微笑みを投げかけてくれる。

「頼もしい少年ですね、トンヌラ。そしてリュカとフローラも」

「うん!」

「ええ!」

 元気よく返事をする少年少女たち。

 その返事を満足そうに受け取ったポワンさまは、傍に控えるベラに話かける。

「我らの願いに答えてくれる戦士さまたちに、我らが何もしないという訳にもいきますまい。

 ベラよ、彼らをこの村のよろず屋に案内し、装備を見繕ってあげるように手筈なさい」

「は。承知いたしました、ポワンさま」

 良い返事を聞いたポワンさまは、筋立ちが通った事を確認した上で指示を出す。

「では、まずはこの村の南に位置するドワーフたちの洞窟に赴いてください。

 我らが妖精の村と、あちらのドワーフの村を仲直りさせる大事な役目。

 頼みましたよ、かわいらしい戦士たちよ」

 




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