トンヌラ、リュカと   作:117

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005話 子供たちだけの冒険

 

 005話 子供たちだけの冒険

 

 ベラの先導によってこの妖精の村にある、切り株を加工して作ったような家々がある村に足を運ぶオレたち。

 どうやらこの妖精の村は、切り株を使って家を作るのが主流らしい。ポワンと面会した場所も巨大な切り株を加工した館だった。

「ここがよろず屋よ」

 ニコニコ笑顔のベラが案内してくれたのはそのうちの1つの切り株。平屋の屋根の高さで断たれた切り株をくり抜き、居住スペースを確保した切り株は。ドアや窓を取り付けて、悪いながらも採光性を確保していた。そこから中を覗けば、奥の方から不思議な光が溢れている。屋内でもなんらかの光を用意しているのだろう。

(っていうか、切り株ってことはこの上部の木材はどこにいったんだ?)

 思わず全く関係のないところに思考が飛ぶ。立ち枯れた様子がない切り株ということは、当然ながらこれは人為的な目的で伐採された大樹だったのだろう。まさか切り株を作るのが目的だったとは思いにくいし、となると村ができるくらいまでに大量の大樹を切り出した訳である。

 ここまで巨大な木材が必要となるのは、城かもしくは巨船くらいしか活用方法はないと思うのだが。

(天空城の建築にでも使ったのかな?)

 となると有力候補となるのはマスタードラゴンの居城である天空城の素材か。妖精たちもマスタードラゴンの為となれば木材を提供するのも厭はないだろう。

(妖精族がゴールドオーブやシルバーオーブを創り出した辺りにも協力関係が見え隠れするしな)

 答えの出ない疑問はその辺りで終わらせて。真っ先によろず屋に突撃したリュカと、その後ろをキラキラとした瞳で着いていったフローラの後を追う。

 ぼーとしていたオレを微妙な顔で見ていたベラは、少しばかり立ち止まる時間を要したオレの事をなんとも言い難い目で見ていたが、言葉を吞み込んで黙ってオレの後ろからついてきた。

 切り株の中に入れば、そこには簡素な台がいくつか置かれて。その上に雑多な商品を並べたよろず屋らしい店構えが目に映る。リュカやフローラは商品を楽しそうに見て回っていたが、子供が突然入り込んで来て困るのは店主である。

「お、ベラ。いいところに」

 イタズラをしないように見張っていたずんぐりした体格で困り顔のヒゲ男が、次に入ってきたオレの背後にいるベラを見て顔を少しだけ柔らかくした。

「人間の子供たちが入り込んでな、どうしたらいいのか迷っていたんだ。

 っていうか、なんで妖精の村に人間の子供がいるんだよ……」

 やれやれと首を振る、おそらくはよろず屋の店主。確かに一般的に訳の分からない状況に思えたのか、ベラも苦笑しながら答えを返す。

「この子たちは妖精の村の、ひいてはポワン様のお客よ」

「……あんだって?」

「ポワン様はこの子供たちに春風のフルートを奪還する依頼を出されたのよ」

「…………」

 よろず屋の店主は、好奇心を隠そうともせずに商品を見て回るリュカとフローラを見つつ、先ほどオレの事を見ていたベラのように何とも言い難い表情を浮かべた。

「お、おお。そう、か……」

 そしてやはり先ほどのベラのように言いたいことを呑み込んだような歯切れの悪い言葉で返事をした。

 大人なオレには言いたいことはとてもよく分かるが、それよりも何よりも先に突っ込まなければならない事がある。

「ドワーフ、妖精の村に居るじゃん」

 ずんぐりとしたヒゲ面の男を見てそう言う。彼がドワーフではない訳がなく、彼がドワーフではなかったら他にドワーフはいないだろうというような外見だ。

 妖精の村にドワーフはいないと聞いていたオレは耐えきれずにそう零したが、ドワーフの店主は気を悪くした様子もなくオレの呟きを拾い上げた。

「おお。ワシはドワーフのハーフだからな。先代様の時代に追い出されたのは純粋なドワーフよ」

「あ、そうなんだ。じゃあハーフの店主さんたちがドワーフとの仲立ちをすりゃいいんじゃないの?」

 そう問いかけたオレに、今度は難しい顔をするドワーフの店主。

「いや。()()()()()()()()()()()ワシたちは、それはそれで相手から複雑な感情を向けられておる。

 それに汚い言い方になるが、ワシらも妖精の村での生活がある。下手は打てん」

「なるほど」

 その言葉には得心しかなかった。純粋なドワーフたちとの仲立ちを表明すれば、妖精の村の内部からの反発もあるだろうと。親しい者たちから裏切り者のような視線を向けられるのはさぞ苦痛だというのは、オレにも容易にも想像がつく。

 外部から全く無関係の第三者を呼ぶのが最善手だと思わざるを得ない。しがらみのない者たちが成功すればそれはそれで良し、失敗しても切れば良し。

 為政者として間違いのない判断である。

「…………」

 オレの納得の表情をどう思ったのか、ベラがまたもや何かを言いたそうな顔でオレも見やってくるが。内心で色々と思っているが、口には出していない。ならば何も言えないと、もにょもにょとした表情を振り払うようにかき消すベラ。そして真剣な表情でドワーフの店主の方を向く。

「で、依頼の先払いとして、この子たちに旅に役立つものを譲って欲しいと思ってオジャマした訳」

「あい分かった。そういう事ならワシが面倒を見てやろう」

 話の筋から言って料金はポワン様持ちだろう。ここは素直に彼女に感謝をしておく。

 妖精の村を救ってやる当然の報酬だ、などとは思わない。どんな打算や目的があったとしても、受ける恩は恩だ。それには真っ直ぐに感謝を示すのが人の道というものだろう。

 村の外には魔物が出る事を鑑みて、じっくりとオレたち3人の装備を見ていく店主。

「防具がちっとばかり貧相過ぎるな」

 そう言って、店内を歩き回っていくらかの装備を見繕う店主。店内を動き回っていたリュカやフローラは、動き出した店主の動向を注視すべくその背後をついて回る。

 のしのしと歩く店主と、その背後をてこてこと着いて回る2人。オレとベラは入り口の側でその様子を見守る。

(何と言うか……)

「ワシはカモか」

 思わず口にしたその言葉に、隣にいるベラがプッ、と吹き出した。どうやら同じ感想を持ったらしい。

 ふとベラの様子を見れば、彼女も半笑いの表情でオレの事を見ていた。あなたはどう思うのか、そう聞かれている気がした。

 くすりとした笑みを返事としておくと、ベラはにこりと笑って楽しそうにコガモとなった2人の様子を見守る。

 やがて持ち物を見繕った店主は、いくつかを腕に抱えてオレとベラの元にやってくる。もちろんリュカとベラも一緒だ。

「まずは優しい瞳をしたボウズ、お前だ」

「ボク?」

 こてんと首を傾げるリュカに、頷きながら店主が手渡したのは毛皮のフードと皮のよろい。シンプルな防具だが、布の服しか装備していないリュカにとっては一気に守備力があがるだろう。

「ボウズは装備が貧相過ぎる。まずは身を守らなくてはすぐに死んじまう」

「そっか。ありがとう、おじさん」

 にこにこしながら渡された装備を受け取り、その場で身に着けていくリュカ。

 無邪気が過ぎる我が双子の兄に、どこかやりにくそうにワシャワシャと自分の髭を撫でた店主は、次に蒼髪が美しい少女に向き直った。

「お嬢さんの防具はしっかりしているな」

「ええ。お父さまが防具にはお金をかけて下さいましたの」

 さすがはルドマン、愛娘の命を守る防具には金の糸目をつけなかったらしい。目を向ければ確かに使っている衣類の布も頑丈なものだし、要所要所には金属の飾りをつけて守備力を上げている。

 ちなみに我らが父であるパパスは流浪の身であるから金銭に余裕がないのは前提だが、それでもパパス自身が子供を守れば良いという圧倒的な自負を旅の間で何度か感じた事があった。

「そんなお嬢さんは少しばかり非力に見えたから、良い武器を持てばもうちょっと戦える。

 という訳でコレ、妖精のナイフを持っていきな」

「わぁ、おじさま。ありがとうございます」

 ペコリとお辞儀をしたフローラの手に握らされたのは、綺麗で不思議な質感のあるナイフである。ぱっと見、金属かどうかの判断も付きはしない。

 そして最後にオレの事を店主が見た。

「お前さんは、その、なんと言うか大人びているな……」

「ありがとう?」

 純度10割の誉め言葉には聞こえなかった為、疑問符が最後につく受け答えとなった。

 ゴホンと咳払いをした店主は、うろこの盾と一緒に背負い式のカバンをオレに手渡してくる。

「そんなお前さんに旅に必要な道具を防具と一緒に渡しておこう。

 これをなくすと旅が続けられなくなるどころか、途中ですごく困ることになるから注意しろよ」

「ありがとう」

 今度の言葉には疑問符はつかない。

 野宿をするにも火があるかないかで大違いだし、火打石などもオレたちは持っていない。他にも水や食料の手持ちもない。

 そういった諸々を一纏めにした旅の基本セットのようなものを提供して貰えたのは、正直にとてもありがたい話である。

 

 そうしてよろず屋のドワーフ店主に色々と便宜を払ってもらったオレたちは、最後に全員で彼に礼を言ってから切り株を出る。

 雪がそれなりに多く見える妖精の村を歩き、今度は村から外に出るように向かう。

「まず向かうのは南のドワーフさんたちの洞窟ですわね」

 ぽわぽわした雰囲気のまま、フローラがそう口にする。

「どのくらい離れているのかな?」

「子供の足で半日、ってところかしら」

「日が暮れるか暮れないか、微妙なところだな」

 リュカの素朴な問いにベラが答え、そしてそれを受けたオレが天を見ながらそう零す。

 真上に太陽がある現状、日没までに目的地に到着するかは微妙に見えた。

 そんな思いから口にしたオレの言葉を聞いて、しかしベラはくすくすと笑みをこぼす。

「大丈夫よ。妖精の国では日は暮れないから」

「は?」

「夜がないのよ、この国は。だから遮光性が高い切り株の闇で眠るわけ」

 夜がない国と聞いて、納得すると同時に呆れもした。

 確かに夜になる描写がない場所ではあったが。

(ファンタジーが過ぎるだろ……)

 今更ながらに非現実的な話に、オレは呆れたように(かぶり)を振る。

 そんなオレを見つつもリュカが不思議そうに尋ねる。

「じゃあ、いつになったら休めばいいかな? ずっと歩き続けるのは大変だよ?」

「夜がない妖精の国では疲れたなら休むのが基本よ。だからみんな、結構自分勝手に生きているの」

 肩を竦めながら答えるベラ。自分勝手が過ぎて困るわと言わんばかりの様子を見せてくる。が。

(ベラも十分に自分勝手だよ)

 呆れながら心の中で突っ込んでおく。妖精の中では常識人なのかも知れないが、サンタローズの村でイタズラの限りを尽くしたのを知っている身としてはそう思わざるを得ない。

 そんなオレの心は伝わることなく、リュカやフローラとベラの話が弾みながらも、やがて村の外れに辿り着く。

「さ。私が案内できるのはここまで」

「ドワーフの洞窟にまでは着いて来てくれないのか?」

 悪意や嫌味なく、純粋な疑問としてオレが投げかければ。ベラはバツが悪そうに視線を逸らしながら答えを返してきた。

「ドワーフたちにあまり妖精の気配を感じ取らせたくないのよ。私の雰囲気を察するだけで険悪になる可能性があるから」

「そっか。ここまでありがとうね、ベラ」

「後は任せて下さい。わたくしたちが全力で頑張りますから!」

 そんなベラに対して隔意なく返事をするリュカ。そしてフローラも自身の胸の前で両手をギュと握り、善意のみで構成された真剣な顔をベラへと向ける。

 問題を丸投げされて案内もされないというのに、全く妖精たちを責めない子供たち。その言葉にむしろ傷ついた様子を見せるベラ。

 たまにはなじられた方が楽になる時もある。

「大変だねぇ、ベラ」

「……アンタ、性格悪ぅ」

 そこら辺を全部察した上で、やはりオレもベラたち妖精族に厳しい言葉を投げかける気はなかった。

 悪意なく責めなかったリュカたちとは違い、ほんの少しだけのイタズラ心を込めて責めなかったオレをジト目で見てくるベラ。

 しかしすぐ笑顔を浮かべて、右手を顔の横にかざして手をひらひらと振った。

「行ってらっしゃい。リュカ、トンヌラ、そしてフローラ」

「「「行ってきます!!」」」

 オレたち3人の言葉が重なり、子供たちだけの小さな冒険が始まった。

 

 ◇

 

 妖精の村から出た妖精の国は、今までの旅とどこか似ていてしかしやはりどこか違っていた。

「あれ、なんだろ?」

「なんでしょう?」

「なんだろうなぁ?」

 リュカが指さした方を見れば、くるくると渦をまくような不思議な植物が直立していた。

 蔓状の植物が、他の植物に巻き付かないように立っているような。そんな不思議な様子である。

 かと思えば遠くに大きな木が見える。遠近感がおかしくなるような遠い位置にあるあの大樹は、おそらくは妖精の村で切り株になっていたのと同じ種類の木なのだろう。こうやって見ると素直にデカ過ぎると思う。

 かさこそという音がして近くの草むらを見れば、そこにはリスとネズミを合わせたような小動物が数匹顔を出してこちらの様子を伺い、そしてすぐに草むらの中へ戻っていくという光景が見られた。

(くびながイタチを思い出すな)

 ビスタ港からサンタローズの村までの間に遭遇したモンスターの動作に似ていて、思わず連想してしまう。

 そんなオレたちが歩くのは土が露出しただけの道。やはり妖精の村とドワーフの洞窟の間で人通りはあるのだろう、迷わない程度に北から南へしっかりとした道が存在していた。

 悠々と歩きながらドワーフの洞窟を目指すオレたちだが。

「ん?」

「どうしましたの?」

 違和感を感じ取ったリュカが左手の林を見た。きょとんとしたフローラがリュカの様子を伺うが、()()が魔物の襲来の前兆である事を知っているオレはそんな悠長なことはしていられない。

 手に持ったカシの杖を握りしめ、呪文の詠唱を始める。

「我に宿りし猛き魔力よ。焔となりてここに姿を現さん……」

 ブツブツと呟くオレの言葉は2人に届いていると思うが、リュカとフローラの興味は林の方に向いたままだった。

 危険な方から注意を逸らさないのはオレとしても都合がいい。

「「「「ギシャァァァ!!」」」」

「メラッ!!」

 林から飛び出してきた、子供の頭ほどもある青りんごにギョロリとした一つ目と牙の生えた口を兼ね揃えたモンスターであるガップリンが4体飛び出してくる。

 どこか植物の小鬼をイメージさせるヤツラに容赦のない先制攻撃。前もって唱えておいた呪文を先出しし、先頭にいたガップリンに火球を叩きつけた。

「ギシャァァァ!?」

 攻撃を仕掛けた側が即座に喰らう羽目となったメラのカウンターに、驚きながらも為す術なく燃え尽きていく先頭のガップリン。

 そんな仲間の最期を見て呆気に取られたような様子を見せる残り3体のガップリンたちだが、そんな隙を見せて見逃してくれる程に我が兄は甘くない。

 素早く走り込んでガップリンの群れの左側を抑えたリュカは、一番近い位置で呆けていたガップリンにヒノキの棒を叩きつける。

「やっ!」

 ボコンと音を立てながら殴られたガップリンがゴロンと転がる。そしてダメージを受けたモンスターは一回転して態勢を立て直した後、怒りを宿した目でリュカを睨みつけて威嚇をする。

「ガッシャァァ!!」

「来い! ボクは逃げも隠れもしないぞ!」

 その言葉を理解できたかどうかオレには分からないが、ガップリンは噛み付かずに全体重を乗せた体当たりをリュカに見舞う。

 リュカは大きく足を広げて踏ん張り、本当に言葉の通りにその体当たりを真正面から受け止めた。

 貰ったばかりの皮のよろいの頑丈さを生かして、真正面から攻撃を受けきってガップリンの勢いを止める。

 そして攻撃が受けきられたガップリンは動揺した声をあげた。

「ア、アビシャ!?」

「へへ。今度はこっちの番!」

 またもヒノキの棒を振り抜くリュカを見て、オレはひとまず安堵をする。

(リュカは大丈夫そうだな)

 ならば今度は自分の心配だ。残り2体のガップリンがオレとフローラを目掛けて跳ねて来るのを見つつ、フローラを守るように彼女の前に出る。

「あ……」

 ちょっとだけ戸惑ったようなフローラの声が聞こえたが、今はそれどころではない。目の前には2体のモンスターが迫っており、背後には可愛い女の子。

 流石に、引けない。

「さぁて、と!」

 レンジはオレの持つカシの杖の方が優れている。体当たりと噛み付き攻撃しかできない青リンゴの化け物よりかは早く攻撃が当たるというもの。

 左右から襲い掛かるガップリンたちの、右側の敵に向かってカシの杖を突き出す。

 ただただ襲い掛かる事しか考えていなかったそのモンスターは、情けない悲鳴をあげながら後ろに弾き飛ばされた。

「ガッシャ!?」

「ガシャシャ!」

 しかしもう一方のガップリンには勢いをつけてオレに辿り着く。

 牙を剥いて噛み付いてくるそのモンスターだが、オレは冷静にうろこの盾を前に出して攻撃を防ぐ。

 ガツンと牙が当たる衝撃を感じるが、オレにダメージはない。

「やっ!」

 その隙をつき、オレの背後から飛び出したフローラがその妖精のナイフをガップリンの一つ目に突き刺した。

「ギャシャァァ!!」

 一つしかない目を潰されたガップリンは絶叫を上げる。

 視覚を失ったガップリンをそのままにしておくのは哀れが過ぎる、速やかなトドメがむしろ慈悲だろう。

 オレは無言でカシの杖を振り上げて、そして叩き落す。

「ギャ、シュ……」

 そんな声を出して噛み付いてきたガップリンは息絶えた。

 一方、オレに弾き飛ばされたガップリンは次々と仲間が打ち取られていくのを目の当たりにして、雰囲気に怯えが混じる。

 勝てない戦いはやってられない。そう言わんばかりにオレたちに背を向ける。

「逃がさないよ」

 しかし回り込まれてしまった。1体のガップリンを倒したリュカが、いつの間にか逃げ道を塞ぐような場所に立っており、挟み撃ちの形となる。

 逃げるもできない、戦うも死ぬ。戸惑いながら前門のリュカと後門のオレを交互に見るガップリンだが、ヤツが決断を下すよりもこちらの攻撃の方が早い。

「我が身に宿る魔力よ、張り詰めよ。その衝撃を彼の者に知らしめたまえ。

 イオ!」

 オレの更に背後にいたフローラが呪文を完成させ、爆発する魔力を最後のガップリンに向かって放った。

 どう動いていいのか分からないガップリンは回避行動に移るのも遅く、フローラの指先から射出されたそれほど速くない白く輝く小指の先ほどしかないそれを見る事しかできていない。それはあっさりとガップリンの目の前に辿り着くと、甲高い音を立てながら弾けて周囲に衝撃波をまき散らして小規模ながらも破壊の現象を巻き起こす。

 それに巻き込まれたガップリンは、その青リンゴの身体をズタズタに引き裂かれて、果汁を血のように流しながら白目を剥いて息絶える。

 動かないモンスターを見て、ふぅと息を吐くオレ。

「勝ったな」

「「やったぁ~!!」」

 自分たちだけでモンスターを倒せたという実感を得たリュカとフローラの歓声が妖精の大地に響くのだった。

 

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