転生執事と水神様   作:フリーナサマカワイイヤッター!

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駄文+不定期投稿ではありますが、楽しんで頂けたら幸いです


序幕

 チリリリリンとベルが鳴り、目を覚ます。ベッド横の音源へと手を伸ばし、上から押し込む。

 

「クーっ……」

 

 体を起こして軽く伸び。正装に着替え、青いメッシュの入った黒髪を整える、いつものモーニングルーティーン。それが済めば、仕事は殆ど始まったようなものだ。

 この世界に転生して長い時が経つ。それでも変わらない日常というのは、平和そうでどこか退屈だ。

 

 

 

 

 ▼

 

 

 

 ドアの一つに二回ノック。ドア越しでは未だに目覚まし時計のベルが鳴り続いており、少し五月蠅い。彼女を起こすには、これくらいが必要なのだから仕方ない話なのだが。

 三回ノックする。ベルは鳴りやまない。

 四回ノックする。ベルが止まることはない。

 

「……ハァ」

 

 彼女は熟睡中だろうが、これも仕事。そう割り切り、ドアを開けて部屋の中へ。

 天蓋を始めとする豪華な装飾があしらわれた部屋、その寝台には自分の主――フリーナ様が眠っている。近づいてみるとスヤスヤと寝息を立てているようで、このまま眺めているのもいいかという思考に一瞬だけ陥ってしまう。無論「一瞬だけ」だ。寝台の真横についたローテーブルの上、そこに置かれた目覚まし時計を止め、手袋越しに体を揺すって起こすことにした。

 

「フリーナ様ー。朝だぞー」

 

「むぅ……あと五分だけ……寝かせてくれ……」

 

「そう言って五分後に起きた試しはないだろ?」

 

「それはそうだがぁ……水神たる僕のスケジュールに茶々を入れるのかー…?」

 

「……はぁ」

 

 彼女の目の前だが、これには思わずため息をつく。別に、こんなやり取りは何回もしてきたことだから気にしてはいないが。

 

「……例の旅人、今度はスメールで騒動を解決したんだってね」

 

「らしいな」

 

 布団から起き上がったフリーナ様。開口一番がソレだ。

 なんでも、五百年もの間幽閉されていた草神が、先日旅人をはじめとする者たちによって賢者たちから解放されたらしい。俺直属の情報機関『イユー・ファントム』*1からそういう報告書が届いたし、スチームバード新聞からも似たような報道が街中を駆けまわっているのだから、確かなことだろう。

 

「……旅人、今度はココに来るのかな」

 

「だろうな」

 

「……『予言』に関わる手がかり、そっちもまだ見つけてないんだよね?」

 

「ああ……生憎、それらしいモノは未だ見つからずだ。あったとしたら、もう伝えてる」

 

「だよね。だとしたら……」

 

「だとしたら?」

 

「旅人が、予言のことをなんとかしてくれるんじゃないかな。なんてね」

 

 弱々しく紡ぐ言葉には、ありそうで無い自信が籠っていた。

 実際、旅人はこれまで四つの国で騒動を解決に導いている。モンドの『龍災』、璃月の『岩神暗殺事件』、稲妻の『目狩り令』、そして今回の『草神幽閉』。『イユー・ファントム』が各国にアンテナを張り続け、旅人が活躍した物事を纏めるとそんな感じだ。どれも自国の力で解決しようとするとどこかで内側から崩壊する可能性を孕んでいた。それを旅人は見事に解決してしまったのだから、フリーナ様が信じるのも無理はない……筈。

 だがしかし。フォンテーヌの予言は、およそ五百年前から伝わる話だ。目の前の彼女がそう告げているのだから間違いない。ヌヴィレットさえも、彼自身がフォンテーヌ人みんなを守り切るのは難しいときている。長いことフリーナ様に仕えている俺だって可能性は探った。しかし、前世の知識をフル活用したところで結局は一部のクロックワーク・マシナリーの発明(生活水準の向上)止まり程度の結果だ。草神を救ったとはいえ、そんな難題を旅人がポンと解決するなんて、ご都合主義にしては程がありすぎる。

 

「旅人が予言を直接的に解決する…なんてことはないと思う」

 

「……キミはそう考えるのかい?」

 

「ああ。だが、旅人がフォンテーヌに来ると()()()()()()。そう考えるのは問題ではないんじゃないか?」

 

「……何か、か」

 

「…にしても、いつになく弱気だな」

 

「仕方ないじゃないか…。キミは知らないだろうけど、僕はキミより何百年も長く嘘をついているんだぞ……」

 

 ――もうすぐ五百年になる。演者にも限界がきているのさ。キミが一番わかることだろう?

 …俺はフリーナ様が長年ついている『嘘』を唯一知っている。嘘がバレれば、共に罪を償うつもりでいるのは勿論だ。ある意味「共犯者」とも言えよう。

 フリーナ様の侍従として。そして一人の友人として。そうするのは、彼女の孤独を少しでも和らげられたらと願ってのことだ。

 

「……さ。すまんが、そろそろ時間だ」

 

「……もう、なのかい?」

 

「これだけは仕方ないだろ」

 

 小さなため息は布団にかかり、部屋へと霧散していく。フリーナ様がこのフォンテーヌという舞台でいつまで立ち続けられるのかは判らない。

 しかし、俺は脇役として陰から彼女を支え続けるだけ――

 

「……よし、行こう。今日も互いに演じていこうじゃないか、イリーン」

 

「ああ」

 

 ――それが、ただ一つの役目なのだから。

*1
原作でいう、フリーナが旅人の情報を得るために使っていた密偵とほぼ同じ。執筆時現在では原作でこのような機関についての描写が無いため、このSSではオリ主直属の情報機関という独自設定。




PVで一目惚れしてたら魔神任務であまりにも心が苦しくなったので。
オリ主の詳細やフリーナ様との関係については追々書く予定です
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