大会での騒ぎから一夜明けた。
大会で幻覚を見せて不正をおこなった人物は未だ特定されていない。
ヴァイタルフェスティバルは無観客で実施することになり、観客は映像で見るしかない。
また、フェスティバル会場には関係者しか入ることしかできず、報道陣も入れないかなり厳しい規制がなされた。
会場近くには急遽パブリック・ビューイングが設置されることになり、その周辺は活気にあふれている。
蓮太郎は今、控室で試合を待っている。
本来は、今日の午前中に準決勝や決勝をおこない、午後から表彰式を行う予定になっていた。
しかし、事件の影響で明日まで伸びることとなり、かなり面倒なことになってしまった。
そんなことを考えながら、試合の準備をしている。
カートリッジを補充し、弾薬を確認する。
「里見蓮太郎、試合準備をお願いします」
呼ばれた。
今から準々決勝が始まる。
無観客での実施だから、前よりは緊張しないだろう。
立ち上がり、控室をあとにした。
「それでは、準々決勝第一試合を始めます」
いつも通りのコール。
だが、昨日はあった反応が現在はない。
ないことに安心すると同時に、すこし寂しい気がする。
「里見蓮太郎!」
そのままステージに向かい、位置についた。
観客のかわりにカメラが何台も設置されているが、観客の代わりにはならない。
おそらく、パブリックビューイングでは歓声でも上がっているのだろう。
「トリエラ・グエルフィ!」
そのまま相手の名前も呼ばれた。
金髪のツインテールで、武器はショットガン。
ここまでくる実力者なだけに、油断がない。
「試合開始!」
相手はショットガンを構え、距離を一定に保ちながら戦い始めた。
こちらも拳銃で応戦。
銃での打ち合いのため、お互い被弾しないように立ち回る。
久しぶりの撃ち合いなのか、相手に押されている。
とにかく、こちらのフェイントが効かない。
さらに闇雲に突っ込んでも勝ち目は薄いだろう。
そう考え、とにかく被弾しないように立ち回る。
もし、格闘で優位に立てなければそのまま負ける。
だが、銃で勝ち目が見えない以上、やるしかない。
相手の弾切れのタイミングを狙い、接近。
そのままけりを入れたが、ショットガンで防がれた。
それまではいい。
だが、相手はここでショットガンを捨て、ナイフを取り出した。
まさか、ここまで考えが酷似しているとは。
こちらも拳銃とナイフという武装なだけに驚愕。
こちらの喉に無慈悲にナイフが襲ってくる。
それを回避したが、その先にすでにナイフが襲い掛かっていた。
それを腕ごと掴むことで防御。
そのまま膠着状態が訪れる。
その考えは甘かった。
どこにそんな力があるのか、力負けしている。
その考えに至った瞬間、右手に装着された義手のカートリッジを使用。
その勢いのまま、相手を殴りダメージを与えた。
相手は困惑した表情を浮かばせながら立ち上がる。
いくら強いとはいえ、試合でしか戦ってこなかった学生相手に苦戦はすれど勝てるだろう。
その考えが甘かったことを認識するのが遅すぎた。
おそらく、これも修正される。
「驚いた、腕にもあるのね」
やっぱりばれていた。
だが、そんなことはどうでもいい。
今はどうやって勝つかだ。
義眼にある演算装置を起動。
目や熱くなる。
いつもより性能が引き出されている気がする。
もし本当なら、ありがたいことだ。
「同じだね」
そう聞こえた瞬間、相手の攻撃が始まった。
右手にあるナイフからの攻撃を回避。
連撃の終わり際を狙って、カウンターを仕掛けようと、それすらも読まれてる。
途中で不自然な軌道を描いてきた。
この時点で失策だと認めるほかない。
そのまま切りつけられ、その勢いのままけりを入れられる。
オーラが減少した。
おそらく、2回攻撃をくらえばそれでおしまい。
それだけは防がなければ。
ここで演算装置によって、ばかげた結論が導き出される。
壊れたか?
そう結論付けようとしたが、どうせ手段がない。
なら、やるしかない。
蓮太郎はナイフを取り出し、歩みを進める。
相手はそのまま構え、警戒している。
お互いのナイフがあたる距離にまで近づいた。
そのまま蓮太郎はナイフを置いた。
無論、空中に置いたため、ナイフは自由落下する。
その瞬間、トリエラは驚愕の表情を見せる。
明らかに戦闘では見ない行動。
それに驚いている。
だから、通用する。
「焔火扇!」
慣れた手つきで右ストレートを放つ。
その対応に送れたトリエラはそのまま攻撃を直撃。
少し後ろにのけぞっただけだが、ダメージはでかい。
決める!
そのままひじうちし、当てる。
トリエラはその場で倒れこみ、死亡判定。
「勝者!里見蓮太郎!」
勝った。
場合によってはこちらが負けたのだろう。
だが、勝つことができた。
しかし、さすがに疲れがたまった。
早く帰りたい。
明日のために早く帰りたい。
そのまま控室で着替えを済ませ、寮に向かった。
フェスティバルであるが、昨日よりも人がいない。
それに応じて屋台も少なくなっているように感じる。
こればっかりは仕方がない。
「蓮太郎~」
遠くから呼ばれた。
どうやら、ピュラたちに呼ばれた。
「おめでとうございます」
「次は決勝だね」
レンとノーラから嬉しい言葉が聞こえた。
ジョーンやピュラからも褒められ、照れた。
「ありがとう」
そう伝え、蓮太郎は先に帰った。
ピュラたちはヤンの試合を見てから帰るということで、自分だけ帰ることにした。
「やぁ、里見君」
「おめでとう」
「あんた、何してんだ?」
寮に戻る途中、蛭子影胤に出会った。
予想していない人物の登場に慌てたが、すぐに落ち着きを取り戻した。
「あんなことを仕組んだ連中がこのままなにもしない、とは思えなくては」
「自分の役割を全うするためにここにいるだけだ」
この男は以前、自分の存在意義を満たすためにガストレアを呼んだ経験がある。
この世界では、自分の存在意義があるため、そのあいだは信頼できる。
「そうかよ、そいつはありがたいな」
「まぁ、次も頑張り給え」
そのまま別れ、自室に戻った。
試合はスクロールで見ることにしたが、ちょうどヤンの勝利で終わっていた。
この時点で次の対戦相手はヤンに決定した。
まさか入学試験でも戦い、準決勝でも戦うことになるとは。
正直、想像できなかった。
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「お姉ちゃん、おめでとう!」
ルビーが抱き着きながらほめてきた。
これはいつも通りのため、慣れたものだ。
その後、ブレイクやワイスも同様に称賛しており、それがとてもうれしかった。
「次は準決勝ですわね」
「しかも、蓮太郎とはね」
ここでハッとする。
今まで蓮太郎と戦い、勝利したことは一度もない。
似ている戦い方をする両者だが、その練度の差は自分が一番わかっている。
こんな状態で勝てるかどうか、あやしい。
「ヤン?どうかした?」
「蓮太郎にどうやれば勝てるのかな、って考えてた」
やはり不安だ。
蓮太郎に勝てなくても3位決定戦がない関係上、すでに3位以上は確定している。
だが、ここまでくれば勝ちたい。
だけど、その相手は勝てる見込みのない相手。
「確かに、あなたと蓮太郎のあいだには大きな差がありますわ」
ワイスの指摘にブレイクとルビーが反応。
「ちょっとワイス!」がハモる。
だが、そんなことは気にしていない。
「でも、あなたは勝つために鍛錬を欠かさなかった」
「なら、次はあなたが勝つ番になってもいいのでは?」
正直、心が軽くなった。
蓮太郎の戦い方を自分なりに研究し、必要であらば聞いてきた。
ここまでやってきたんだ、勝たねば。
信頼してくくれる仲間のために。
「次は勝つよ、蓮太郎に」
ルビーたちはピュラたちと合流し、寮に戻ることにした。
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その夜。
蓮太郎はチームと一緒に過ごした。
シッカリ寝ようとしたが、途中で起きてしまった。
そのまま二度寝を考えていたが、どうもできなかった。
部屋にいたジョーンやレンと一緒にピュラたちがいる部屋に行くことにした。
「蓮太郎、寝なくて大丈夫?」
「ああ、なんだか寝付けなくてな」
ピュラが反応した。
そのまま少し遊ぶことになり、ノーラがどこからかゲームを始めた。
パーティーゲームとして人生ゲームに近いボードゲームで遊び続けた。
それでも、頭から、あの言葉が離れない。
「あんなことを仕組んだ連中があれだけで終わる気がしない」
この言葉が頭の中で反響する。
常に考えているが、まとまらない。
「蓮太郎、大丈夫か?」
「大丈夫だ。明日のことが不安なだけだ」
ジョーンに心配され、とっさに違う不安を示した。
実際、ヤンには勝ち続けているが、今回も勝てるという保証はない。
最後に戦ったのはいつだったか、それすらも忘れてしまった。
「4対1で勝ったりする蓮太郎でもそんな心配するんですね」
以前、蓮太郎は授業でハンデとして4対1をしたことがあった。
そのハンデでも勝ち続けている。
一度連勝記録は止まってしまったが。
「同じ戦闘スタイルだから、事故が怖くてな」
「噛み合ったりしたらさすがに耐えれる自信はない」
ヤンはかなりの破壊力がある。
それを一撃もらうだけでピンチになる。
「大丈夫よ、いつも通りやればね」
それにうなずき、それからは何とか遊びに集中した。
ボードゲームでは3位となったが、フェスティバルでは1位を目指したい。
そのために明日は勝たねば。
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