とりあえずブラックブレットの新刊が出るまで書こうと思いましたけど、その前に終わりそうですね。
やっとの思いでミストラルに到着した。
ミストラルはヴェイルの隣国で、町並みは東アジアのような光景で、日本や韓国、中国が混ざり合っている。
斜面のような場所に建物を建てており、それが下まで続いている。
あちこちに自然を見ることができ、自然との共生をテーマにしていると説明されても納得がいく。
「私も初めてでね」
「ここでの生活も少々楽しみなのだよ」
影胤も蓮太郎と同じく初めてなようで、仮面の上からでも楽しみにしていたことがわかる。
さっきから落ち着きがないような気がする。
「行こう、影胤」
「仲間が待ってる」
二人は上のほうにいるらしい仲間たちのもとに向かっていった。
向かっている途中でも人は絶えることがなく、活気にあふれている。
落ち着いたらこの街を観光してみたい。
そんなことを考えながら移動した。
「ここだ」
蓮太郎たちはみんなが滞在しているらしい場所に到着した。
大きめの宿で、和風な旅館の見た目だ。
旅館といってもオズピンの別荘らしく、それを貸してもらっているだけにすぎない。
中にはレンやジョーン、ヤンなどがいるらしく、ピュラは肩の負傷のためここにはいない。
またブレイクも実家でもう少し過ごすらしくいない。
それ以外は全員いるんだから以前とあまり変わらない。影胤がいることを除けば。
「すみません」
ドアをノックし、応答を待つ。
早くあけてみんなと会いたい、そんな気持ちが先走る。
ドアがあくと、なぜかクロウがいた。
「どちら…蓮太郎か!」
「クロウ!なぜ?」
両者目が合い、時間が止まる。
まさか、クロウがいるとは。
一体どうなってんだ?
「あ!蓮太郎!入って」
ルビーの呼びかけに時間が動き出す。
固まった二人は中に入り、あいさつしていく。
あるものは抱き着き、あるものは握手で済ませ、あるものはお辞儀をしあう。
なぜここにほとんどが集まっているのか、不思議だった。
聞いて回ると、ルビーやジョーン、ノーラ、レンは家でじっとしていられず、ここに来た。
ヤンは自分の母親に会うために向かい、そのついでにルビーのところまでつないでもらっていた。
ワイスは実家から逃走し途中捕まった。
脱出しようとしたところにヤンがいたため、なんだかんだで一緒に行くことになった。
変に噛み合っている。
絶対予定をあわせただろ!
そう思ったが、ひっこめることにした。
こんなことを言ったところでどうしようもない。
「そういや、なんで影胤がいるんだ?」
当然の疑問がヤンから飛んできた。
理由を説明すると、納得してくれた。
この中で初対面のクロウには怪しまれたが、他の意見を無視することができず、押し切られた。
その夜。
蓮太郎や影胤が到着したことで、新しく入ったメンバーを含めて親睦を深めようということになった。
「どうも、オスカーです」
「蛭子影胤」
オスカーと名乗った少年は明らかに幼い。
顔にそばかすがあり、身長も低い。
「あと、中にオズピンがいます」
何を言ってんだこの少年は?
だが、それが真実だということを知る。
突然オスカーの体から光が発せらる。
次の瞬間、オズピンの声を聞いた。
あきらかに本物だ。一体どういうことだ?
転生したのか、あの少年に。
これらの予想がすべて本当だという事をルビーから聞いた。
もはや何でもあり。
きっとこれからもこういうことが続くのだろう。
その後は各自いろんなことがあったらしく、それで話を盛り上げていた。
ルビーたちはでかいグリムやシンダーの協力者?と戦ったらしく、それを延々と話していた。
ヤンはワイスはあまり話さなかったが、特に気にはしてない。
一通り話した後、影胤が質問攻めにあった。
どこ出身なのか、今まで何をしていたのか、新人類創造計画とはなにか、などたくさんの質問が飛んできた。
それらをうまく対応しながら、ごまかすところはごまかすのはさすがといったところだろう。
新人類創造計画の話はあまり聞こえのいいものではない。
その後疲れたのか、そのまま就寝となった。
次の日。
この日は朝にクロウが影胤の実力を知りたいとか言い出し、戦うことになった。
クロウの攻撃をすべてイマジナリーギミックで防ぎ続け、引き分けとなった。
予想はしていたが、やっぱりあれを突破するには高い破壊力が必要だ。
クロウは嬉しそうに影胤の手を握っていた。
どうやら、味方になってくれるハンターを探してたが、誰もいなかったことで落ち込んでいた。
そこに影胤が加わったことで、元気になったとのこと。
その後、オズピンによる特訓が始まった。
各自弱点を克服するためにつきっきりで教わることになり、蓮太郎も例外ではなかった。
夜には全員が疲れてなにもする気にはなれなかった。
オスカーもまた同様であった。
唯一動けるのは影胤とクロウだけだ。
「動いたらどうだ?」
あおってやがるな、クロウ。
クロウのあおりを適当に流し、少しづつ移動を開始した。
夕飯のあと、蓮太郎はクロウに呼び出された。
「どうだ蓮太郎。慣れたか?」
「おかげさまでな」
「そいつは良かった」
久しぶりに会う時の定型文の会話。
それが少しうれしかった。
「影胤の仮面の下、見たこと有るか?」
「ない」
以前、仮面を外したところを見たことがあるが、それだけだ。
あれ、そもそもいつ見たんだっけ?
頭が混乱しだしたが、なにかの拍子で見たのだろうと無理やり納得した。
「あと聞いたよ。お前さんの体、義手や義足があるんだってね」
おそらくルビーから聞いたのだろう。
そんなことを今更否定する気はない。
かるく頷いた。
「こんなことを聞くのもどうかと思うが、その、どうしてそんな体になったんだ?」
誤魔化すか。
事故にあっただの、病気でこうなったなどいろいろやりようはある。
だが、この世界での恩人たるクロウに嘘をつく気はなかった。
「昔、屋敷に化け物がでたんだ」
「そのときに人をかばってやられた」
「…そうか。悪いな、こんなこと聞いて」
「構わないさ」
そのときになぜ化け物がいたのか、いまだ原因はわかっていない。
この世界にいる限りはその犯人と巡り合わす機会などないだろう。
「ありがとな、いろいろ答えてもらって」
「大丈夫だ」
「それじゃ、俺は部屋に戻ってる」
そのままクロウは部屋に戻っていった。
蓮太郎も同じように部屋に戻っていった。
翌日。
「蓮太郎!ちょっといい?」
ヤンからだ。
朝早くからどうしたんだ?
行くと影胤もいた。
「あなたたちはなんでそんなに強いの?」
影胤と2人して顔を合わせる。
さて、なんて答えようか。
ここまで考えたが、ふと思った。
影胤はなんで新人類創造計画を受け入れたのか。
そして、どうやってそんなに強くなったのか。
少し気になった。
それは後で聞くことにして、今はこの質問をどうしようか。
「そうだな、いつも死地にいっているからだろうね」
影胤が答えた。
一体何を話すのか、仮面の上からではわからない。
「我々はね、自分より大きいやつらと戦い続けていたんだ」
「人々を守るためにね」
「そのためなら喜んで死に近づいてきた」
影胤らしい回答だ。
そのためにガストレアを誘き寄せたのは許せないが。
「だがね、もっと効率的な手段があることに気付かれたんだ」
「そしたらみんなそっちに行ってね」
「自分たちなんてもとから存在しなかったものとして扱われた」
ヤンの顔が暗くなる。
効率的な手段はおそらく赤い目をした少女のことだろう。
「それでもね、形を変えて自分たちを必要としてくれた」
「だけど、戦地から離れると人々はおろかになる」
「自分たちの平和がどうやって作られているのかを理解しなくなる」
「楽天主義が蔓延するようになる」
苦い体験だ。
赤い目をしているというだけで差別がおこなわれる。
生まれた瞬間、赤い目なら捨てられる。
一時期赤子を川で出産することがはやったときは川が赤子の死体で埋まっていたことがあった。
そんな世界、二度とごめんだ。
「その結果差別が横行し、自分たちのパートナーを含む、身体的特徴をもった子が受けることになった」
「そんな世界、なくなってしまえばいいだろう?」
ヤンが静かに頷く。
この世界でも、ファウナスたちを差別する奴らがいる。
だが、自分たちのいた世界はこちらの差別よりははるかにひどい。
バラニウムの銃弾で撃たれてもお金がなければ治療できないほどに。
「そんな経験をしていたら、ここまで強くなった」
影胤が言い終わると、質問があるかどうかを尋ねた。
ヤンは少しずつ顔をあげ、影胤の顔を見た。
「効率的な手段ってなに?」
ここで蓮太郎が口を開く。
影胤が言いかけた言葉をつなぐ。
「呪われた子供たちだ」
この時点では、ヤンは頭に?マークが浮かんでいた。
だが、それもすぐに終わる。
「化け物のウィルスに感染した子供のことだ」
「その子供は身体的な能力や超人的な回復力を持っている」
「その反面、治癒能力や力を解放することで寿命が大きく縮むことになる」
「なにそれ?子供を戦わせたとか言わないよね!」
ヤンの語尾が強くなる。
この世界なら当然の反応だ。
それを無視して続ける。
「そうだ。戦わせた」
「しかも、大半が孤児だ」
ヤンのこぶしが握られ、震えている。
「ねぇ、まさかあなたたちも戦わせたの?」
「そうだ」
ヤンのこぶしが顔に飛んでくる。
蓮太郎の前で止まったが、その勢いは凄まじい。
「なんで平然としていられるの?」
「それが日常だからだ」
影胤が割って入る。
「戦争に負けだすと、どこの国も狂いだす」
「その狂気は浸透しだす」
「それがたとえ非人道的行為であってもためらわなくらいにはな」
「その状態で生活が回復でもすれば、たちまち戦争の日常と平時の日常が近くなる」
人間は理論だけでは生活できない。
呪われた子供たちがガストレアではないのをわかっているが、崩壊させたやつらの血が入っているとなると拒否反応が出る。
もし、戦争が遠ければもう少しはマシだったのだろう。
だが、現実は違った。
「そこで暮らしていた我々はもうすでに狂っていた」
「今までもそうであったように」
「これからもそうであるように」
ヤンは落ち着きを取り戻した。
そのまま深く深呼吸をし、口を開く。
「なんかごめんね」
「変なことを聞いて」
「大丈夫だ」
「問題ない」
ヤンはそのままどこかに行き、影胤もまた後ろを向いて話しかける。
「君たち、盗み聞きとは感心しないな」
後ろからルビーやジョーン、レンが出てきた。
途中から気付いていたが、無視していた。
影胤と同じことをしていたようだ。
「これが我々だ」
「どう思うか自由だ」
「少し考えてみるといい」
そう言い放ち、影胤は自室へと戻っていった。
そこに蓮太郎が残された。
「少し体を動かすか」
そうつぶやき、外に出た。
外の天気は晴天でまぶしかった。
すでにノーラがクロウと訓練をしており、その隣で体を動かした。
狂っているか…。
自分は正気なのか、狂っているのか。
まったくわからない。
だが、この世界で今のところやることは、人々を守ること。
ただそれだけだ。
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