「ヘイブンアカデミーの学長に会わねぇか?」
クロウの提案により、ヘイブンアカデミーの学長に会いに行くことになった。
ヘイブンの学長は今まで見たことはないがオズピンの協力者のため、たぶん信頼できる人だろう。
「ヤン?大丈夫か」
「大丈夫」
昨日のことを気にしているのだろう、調子が悪そうに見えた。
価値観が違うのでこういうことは起きるだろうからいち早くこの世界の常識にあわせていきたい。
こうして歩くこと数分、アカデミー前についた。
ヘイブン・アカデミーは街並みと同じように和風でありながら中華の要素もあるよくわからない建物だった。
アカデミーのため周りに施設が建てられており、そのすべてが似たような形をしている。
ひときわ大きい建物に入り、学長がいる所を目指した。
だが、何かがおかしい。
アカデミーは長期休暇の時期に入っているため、生徒がいないのは当然だ。
だが、職員の姿すら見えないのはどういうことだ?
アカデミーが長期休暇になっても職員がいないのはおかしい。
全員が武器を構え、室内を進んでいく。
緊張が走る。
もしかしてすでに襲撃を受けていた?
だが。そんな様子はなかった。
建物が破壊されているわけではない。
学長室のまえに到着したときまで損害が見られる部分がなかった。
ドンという大きな音とともにドアを蹴破り、全員で中に入る。
「どうしたんだ?みんなそろって」
そこには学長であるレオナルド・ライオンハートがいた。
ただそこに突っ立っていた。
「直前の連絡だけで来たのは誤る」
「だが職員が誰もいないのはどういうことだ?」
「最近下のほうで面倒なことになってな」
「新興宗教がどうやらなにかしようとしてるらしく、その対応で人がいなくなっているんだよ」
ミストラルの下のほうはお世辞にも治安がいいとはいえない。
闇市が存在し、そこでは盗品であっても売買がおこなわれている。
近年はその規模を縮小しているが、いまだ根絶には至ってない。
「新興宗教ってのはあれか、ヴェイル親衛隊と同じような組織か」
以前、孤児院を爆破したハイドのことが頭に浮かぶ。
ハイドはヴェイル親衛隊の人で、今は死亡している。
そこからヴェイル親衛隊の親であるレムナント評議会に行けると思っていた。
「それがそうじゃないらしい」
「ケモナー同好会だそうだ」
ネームセンスはどうにかならないのか。
だが、話を聞いていくとどうも違うらしい。
曰く、ファウナスこそが選ばれた生命であり、この世界を統べる存在である。
ファウナス中心の世界を構築することが目的とのこと。
彼らは80年前の戦争で革命した組織の系譜をたどっているとは主張しているが、それは明らかな嘘である。
「状況はわかった」
「だが、ここの地下には重要なものがあるんだ」
「それを守る人員まで出すのは違うんじゃないか」
ヘイブン・アカデミーには知恵のレリックという重要なものが隠されている。
それを守るための人員は確かに必要だ。
人的資源の配分が間違っているという主張は通っている。
「そうしなければならないほど情報がないんだ」
「わかってくれ」
ライオンハートは頭を下げていた。
それを見たクロウは渋々といった様子で引き下がった。
「帰るぞ」
これがきっかけとなり、一度帰ることにした。
「ねぇ、ケモナー同好会って何?」
「あんな大層な主義を掲げる前はかわいいが正義だの、ケモミミこそ正義だので騒いでいたただの同好会だったんだ」
クロウが帰り道の道中で説明し始めた。
「元々はヘイブン・アカデミーの同好会の一つだったんだ」
「それが時代が流れ、一般常識とするべく普及活動を始めた」
「その過程で過激になっていき、今に至るというわけだ」
ただの同好会がそうはならないだろうという道筋をたどっている。
おそらく、自分の思想を押し付けて受け入れられないとなって暴れだしたのだろう。
もしこうなら、頭が残念だ。
帰宅後、今後について話し合いがおこなわれた。
レリックを守る案や下層へ行き問題を解決する案があがった。
「ライオンハートの様子、おかしかったな」
オズピンによると、今までやるべきことを放置しているとのこと。
早く教えて欲しかった気がするが、どうでもいい。
そう割り切ることにした。
「彼の裏切りも考慮しなければならないかもしれないな」
裏切るのでやってませんでしたなんて言わないだろうが、それが原因でも不思議ではない。
ひそかに裏切った可能性も捨てきれない。
そのため、情報をあまり与えたくはない。
「話を戻すが、下層へは私だけで行くのはどうだろうか」
影胤が自分一人で調査をすると主張した。
確かに、影胤なら一人でも大丈夫だろう。
そう簡単に後れを取ることは考えられない。
「お前さんなら大丈夫だろう」
「だが、万が一がある。蓮太郎と一緒に行動してくれ」
「そしたら俺はレリックを守り、他は訓練でもしていてくれ」
影胤と行動?正直やりたくないが、決まったならやるしかない。
相変わらず何考えているのかがわからないその仮面を見ながら、明日の行動について考えた。
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「ピュラさん、体調はどうですか」
「おかげさまでよくなってますよ」
ここはアトラス領にある病院。
ピュラは肩を射抜かれ、入院している。
正直暇だし、体がなまるが仕方がない。
早く強くなって、蓮太郎と共闘したい。
その焦りは暇な時間中は常に意識してしまう。
病室にお見舞いに来るのは親と親戚くらいだ。
それも毎日というわけではない。
誰にも仕事や学校があるのだから当然だ。
「友達は誰も来ないのね」
アトラス出身はワイスだけだが、アカデミーに入る前の友達さえも来ない。
何度か向こうから心配されて連絡を取ったが、それ以降何もない。
やはり、友達は自分の実績だけを見て近づいてきたのだろう。
こうなると、変に居心地が悪い。
自分が育った国にいるのに。
すぐそばにある自分の武器を触りながら、暇を潰す。
どうせなら、孤独な天才より人多き平凡が良かった。
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「さて里見君。調査でもしようじゃないか」
今日から影胤と下層で調査することになった。
下層は上層とは異なり、殺伐とした雰囲気を漂わせている。
気づいたら武器がとられかねない、そんな環境だ。
「外周区を思い出すな」
「あそこよりはましだろうけどね」
つい外周区と比べ、少しでもマシな場所だと思ってしまった。
早く同好会を探し、潰さなければ。
そのまま歩き続けたが何にも情報がなかった。
どうしようもないので、2人で酒場に入ることにした。
周りでは、胡散臭そうな話をするやつらがそこら中にいた。
すでに突っ込みたくなるような話もあり、どこも変わらないんだなとちょっと関心した。
だが、肝心の同好会についての話はない。
言葉を変えて伝えるなど、手段はとろうと思えばとれる。
「里見君。あそこを見なさい」
影胤に言われ、視線を移動させた。
そこには男2人が話していて、テーブルの上には何やら酒場で使い額ではないお金らしきものが置いてあった。
この世界でも現金決済はできるのか?
情報化が進み、現金を使えない生活をしてきたが、下層はまだそこまでではないのか?
「あとをつけるぞ」
「わかった」
影胤は何かを感じたのか、あとをつけていった。
そのまま後をつけること数分、地下に潜っていった。
同じように潜ると、中には15人ほどがいた。
全員が男で、そのうち半分は同じ服装をしていた。
浴衣というと間違っているような気がするが、それに近い服装だ。
そのまま2人で潜入し、何かが起きるまで待った。
「君たち、新人かい?」
後ろから声をかけられた。
反射的にそうですと答えると、その男は嬉しそうな顔をした。
「同志が増えるのはいいよなぁ」
「目覚めてくれてありがとう!」
正直不安だが、まぁいい。
「我々はね、ケモミミや尻尾が好きなもの同士がここで語り合う場所だよ」
「新人らしいし、ここでの飲食はおごってあげるよ」
「ありがとうございます」
思っているより健全な場所なのか。
となると、そこまで危険な組織ではないかもしれない。
そう考えながら開始まで待ち続けた。
その間、前のほうで耳がいいや尻尾がいいなどの会話が聞こえた。
けもなーからすればこの世界は最高だろう。
街を歩いているだけで今まで想像の世界だったのが現実となるのだから。
そのまま会が開始し、終始ケモミミの魅力や尻尾の魅力を語り続けた。
それだけで2時間が経過し、そのまま解散となった。
「なかなかに刺激的な場所だったね」
「そこまで悪い組織ではないかもな」
どちらもそこまで悪影響がある組織だとは考えていなかった。