精神崩壊?どういうことだ?
頭の中に疑問が反復する。
だが答えは出ない。
当然だ。
そんなことを言われたとしても、「はいそうですか」とはならない。
答えが出ないのはここにいる全員も同じだろう。
全員が愕然としている。
そんな様子を見てか、ジンは戻っていった。
周りは相変わらず吹雪いている。
「とりあえず、どこかしのげる場所を探そう」
クロウの提案にとりあえず同意する。
移動の準備をし、移動を開始しても頭の中で疑問が反復する。
一体何があった?
セイラムは不死ではあるが精神はそうではなかった?
かといった人間の何倍も生きてきたセイラムが突然精神崩壊するとは思えない。
なら、今後どうするか?
答えのない疑問が次々と出てくる。
「…ねぇ、ねぇ」
「ねぇ!」
大声のするほうに顔を向ける。
声の主はルビーのようだ。
「蓮太郎、大丈夫?」
「…ああ、大丈夫だ」
心の整理は未だできていない。
どれくらい歩いただろうか。
どんなに歩いたとしても木々が見えるくらいで家らしい家もない。
いっそのことかまくらでも作ろうか。
そんなことを考え始めたとき、視線に違和感を感じた。
先のほうに木々でも雪でもない、何かが見える。
そちらのほうに近づいてみると、まぁまぁ大きな家があった。
その家を中心にして周辺に小屋や倉庫、家があり、これを後何個か用意すれば立派な集落ができるくらいには大きかった。
「よぉーし、ここでしのごう」
クロウの言葉に待ってましたと言わんばかりに全員が一番大きな建物に向かっていく。
その家は2階建てで横に広く、屋根が赤かった。
だが、人の気配は一切しない。
今では廃墟になったのだろうか。
「すみませーん、誰かいませんか?」
ヤンが確認しているが、やはり人はいない。
そのままドアを破壊し、家の中に入る。
中には埃はあれど、まぁまぁきれいだった。
各自、部屋の様子を探りにいき、蓮太郎も入り口横の居間に入る。
そこには暖炉や本棚、ソファーなどがあり、簡易的な装飾が施されていた。
本棚には本がなく、暖炉には木々が少しあるだけだった。
部屋の中に何かないか探しているが、特に見つからない。
「ちょっとこっちきて!」
ブレイクだ。
2階は確かブレイクとヤンがいたはず。
何か見つけたのか、すぐに階段を使って上へ向かう。
続々と2階に上がっていき、全員が集合した。
「これを見て」
ヤンに促されるままそれらを見る。
そこには2冊の本と表札らしきものがあった。
1冊は日記のようで、タイトルなどはない。
もう1冊はグリムの調査記録があった。
表札には「障がい者福祉公社」という文字が記載されていた。
「障がい者福祉公社は以前アトラスにあった公社ですわ」
「今は名前を変えて活動を続けてますけど、健全な組織だと思いますわ」
ワイスが解説してくれたおかげで多少理解したが疑問点が残る。
なぜ、アトラスの公社が他国に支社を置いているのか。
その疑問はクロウも持ったらしく、ワイスに聞くとすぐに答えが返ってきた。
「この組織は他国に支社を置こうしていた時期がありました」
「実際に置かれて活動し、違う国同士で交流なんかもありましたわ」
そんな感じなのだろう。
では、落ちていた日記のほうはどうだろうか。
中を見てみると、特に違和感のない内容があった。
今日は外で遊んだや星を見たなど、内容は日常的だ。
だがこの日記に違和感を感じる。
内容に変なところはない。
だが、直感が告げている。
『この日記には何かがある』
蓮太郎以外がグリムの調査記録や障がい者福祉公社について考えをめぐらす中、蓮太郎だけはその日記を読み続けていた。
「蓮太郎?何かあった?」
「いや、何もなかった」
結局最後まで読んだが、違和感などなく、ただ日常を記録しているような印象だけが残った。
とりあえず持ってもう少し読み込んでいくことにする。
今日は吹雪で先に行けないので、ここに泊まることになった。
蓮太郎は1階の小さな角部屋でオスカーと寝ることになった。
その部屋にはベッドなどなかったが、疲れていたのですぐに眠ることができた。
「時間だな」
今はまだ深夜だが、時間を決めて周囲の警戒をすることになっている。
蓮太郎は眠い目をこすりながら起き上がり、装備を持って部屋を出る。
そのまま2階に上がった。
「もう交代?」
「それじゃおやすみ~」
ヤンと入れ替わり、用意された椅子に座って外を見る。
相変わらず吹雪いているが、昼間よりは収まっている。
この調子なら朝には出発できそうだ。
そんなことを考えながら周囲を見渡す。
思えば、今までいろんなことがあった。
突然この世界にいたと思えばアカデミーに入学し、普通に青春を過ごしていた。
だが困難が現れ、絶対にできないような経験もした。
そんな中でも力強い仲間たちがいたおかげでここまでこれた。
なら、進み続けても問題ないだろう。
そうして時間となり、クロウと交代。
そのまま部屋に戻り、眠った。
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朝。
日の光を感じて起床。
外を見ると、見事に吹雪は収まっており、すぐに出発できそうだ。
蓮太郎が起きて少しすると全員が起きてきて、緊急用の非常食を食べ始める。
それも食べ終わると、ヤンのバイクにつけるようの荷台を作成し、接続。
問題がないことを確認し、出発。
道中、グリムが出てきたが即座に撃退し続けた。
そうして走り続けること1時間。
山の頂上に到着したとき、目の前に街が広がっていた。
奥には海岸があり、さらに海軍の基地もある。
ここまでくれば、あとは簡単。
そのまま進み、アーガスに到着した。
「おーーーーい!」
懐かしいノーラの声が聞こえてくる。
こちらを見つけたのか、走ってきてダイブ。
ルビーに抱き着いた。
本人は困惑半分、嬉しさ半分といったところだ。
そのままレンやジョーンとも再会した。
「皆さん無事で…よかった」
レンが涙目になっているのは意外だったが、それだけ心配させたのだろう。
これからはあまりこうしたことはないほうがいい。
「基地にはいったの?」
ルビーの問いかけにレンやジョーンが気まずそうな雰囲気を出す。
おそらく好意的な返答を貰うことができなかったのだろう。
「それなんですが…」
「不在だといわれて会えてないんです」
不在…?
なら代理のものを、と思うのだが、何か事情があるのだろうか?
道中、今まであったことを話しながらそのアトラス軍の基地に向かうことにした。
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アトラス軍の基地の前に到着。
門の横にある詰め所にクロウが話をつけにいっている。
その基地はあまりにも立派だった。
基地には数多くの航空機があり、さらに倉庫が巨大だ。
あの中に一つ村があってもおかしくはない。
さらに船が多数浮かべられており、アトラス軍の軍事力を見せつけられる。
「よぉーし、お前ら」
「行くぞ」
どうやら許可が降りたようだ。
そのまま案内された通りに中に入り、この基地のトップがいる場所に入ることができた。
「皆さん、初めまして」
「先日こちらに配属となりました、最高司令官のマンシュタインです」
そう挨拶してきた人物は50代くらいだろうか、威圧感を感じる。
髭はないが、顔は渋く、目が鋭い。
生粋の軍人のようであった。
そのまま各自あいさつし、本題に入る。
こちらはアトラスへの入国と知恵のレリックの保存を要求。
マンシュタインは話の分かる人物であるらしく、入国と保存のために尽力してくれるという回答を受けた。
あまりにもうまくいきすぎている。
少し不安になった。
そのまま今後の日程について話し合われた。
「あの方はとても優秀であったと聞いておりますわ」
今は宿替わりとしているジョーンの姉の家にいる。
「私と同じ貴族の生まれですけど、軍人となり、自らの実力でここまで来た」
「私はあの人を尊敬していますわ」
マンシュタインという人物はかなり実力を伴った軍人という蓮太郎の印象と違いはない。
その後のワイスの話によると、模擬演習で勝ち続け、実践でもほぼ負けなし。
そのため、軍部の中でも次期将軍候補とみられている。
さらに性格もよく、怪我した部下に見舞いをしたり、家族の記念日などではなるべく時間通りに帰れるようにしているようだ。
「それなら大丈夫だな」
それなら大丈夫だろう。
とりあえず今日の結果がわかるまでは休息としよう。