黒き希望を手繰り寄せて   作:みりんはお酒

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第3話ですね。なんだかんだ毎日投稿しています。


黒と黄金の舞

チーム決めの次の日。

アカデミー最初の授業があった。

荷物はすでにまとめてあり、チーム全員でまとまって教室へ向かっていた。

教室に到着するまで約5分ほどで着くそうだが、新入生はよく迷うから早めに行きなさいという助言をくれた先輩に感謝する事態になりかける。

このアカデミーはとにかく広い。

さらに建物内も複雑で、利便性など考えられていないに違いない。

だが前日に疲れ果てながら教室までの道のりを確認したために多少迷いはしたが時間までには到着しそうだ。

 

「最初の授業は確か戦闘についてですよね」

 

「そうだよ!実際に指名されて戦うってさ」

「ハンターらしいよ」

 

レンが確認で聞き、ノーラが興奮気味に答えた。

事前情報として対人戦をすることは知っているが、それ以上のことはわかっていない。

授業の一つに戦闘についての授業があるのはハンター育成を目指すからだろう。

珍しいが違和感は感じない。

 

アカデミーの最初の1週間は他と違う。

アカデミーの授業は最初の1週間は体験授業となっており、その期間なら何度でも履修を組みなおすことができる。

これならイメージと違うからという理由で履修登録を変更できる。

この制度自体はかなり好印象だ。

無論、次の授業のように必修があり、それ以外の時間にはなる。

1年生は必修で固められているので、あまり自由度はないがそれは来年度以降に期待するしかない。

また、体験授業の期間が終了すると、それ以降の変更は原則できない。

やむにやまれぬ理由があるなら取り消しはできるが登録はできないとのこと。

 

教室に着くと、教壇と机のあいだに広いスペースがあった。

机は広いスペースを囲うように丸くなっており、教壇は少し高い位置にある。

ステージのような場所で障害物の類はない。

ステージの上には大きめのモニターが設置されており、今は電源がついていないので真っ暗になっている。

 

おそらく、あのスペースで戦うのだろう。

そんなことを考えながら、授業準備をしていた。

しかし、あのスペースと机にはこれいった仕切りなどはない。

危険だと思うが、最悪机の下に隠れればいいか。

そう思い、机の下を覗くとそこには薄い木の板が一枚しかなかった。

こんなもので安全が確保できるのかと不安になったが、大丈夫だろう、たぶん。

そんなことを考えていると、授業が始まった。

 

「やぁ、諸君。ピーター・ポートだ」

 

教室の前には立派な髭を持つ教授がいた。

よく見ると、初日に話した教授であった。

あの教授がこの授業の担当とは…。

絶対面白いからとかの理由で多少の危険は無視するだろう。

それで事故でも起きたら最悪だが、さすがにないと思いたい。

 

「この授業では、主に戦闘について私から教える」

「相手がグリムであろうと人間であろうと関係ない」

 

対人戦はやると聞いていたが、グリムともやるのか。

どうやって用意しているのかが気になる。

そもそもグリムをここに持ってきてもあの中に収まる気がしないがたぶん外でやるでしょう。

万が一グリムがこっちにくれば対処すればいいだけだ。

新入生とはいえ、数で抑え込めるはず。

 

その後教授が授業内容や評価について話し始めた。

周りの生徒も気になるのだろうか、静かに聞いている。

蓮太郎も静かに聞き、メモを取る。

 

「授業内容は、生徒から2人こちらから選び、戦ってもらう」

「ただし、挙手の場合もある」

「その内容で成績を決める」

「戦闘後は私からフィードバックをする」

「積極的な参加をすれば、評価は上がるからそのつもりで」

 

純粋な戦闘で決まるらしい。

一体何回戦うことになるのだろう。

授業は全部で15回、一回の授業でやるのは計3回。

単純計算で45回の戦闘をこの授業でやることになる。

そしてここには80名ほどがこの授業を受けている。

全部が対人戦だとしても40戦やることになる。

なら一人一回くらいなのか?

これは時間が最大までかかり続けた場合の想定のため、多少はずれるだろうけど。

 

「では、初回ではあるが、早速やってもらおう」

「そうだな…」

 

教授はおそらくスクロールに記載されている名簿を見ながら考えているのだろう。

こういうときに大体当てられることが多いところが怖いところだ。

こんなところで悪運は使いたくない。

 

「入学成績1位と2位に戦ってもらおうかな」

 

ここで嫌な予感がした。

多分大丈夫。

そう信じたい。

 

「ピュラ・ニコス!前に」

 

一人目にピュラ・ニコスが選ばれた。

チームの全員が声をかけ、蓮太郎も「頑張れよ」と声をかけた。

ピュラは恥ずかしそうに前に行った。

そうしてピュラが前に到着してみんなに向かって一礼。

その動作のきれいさにやり慣れている感じがした。

次の指名のため教授がスクロールを操作し始めた。

ここで蓮太郎の嫌な予感があたった。

 

「次に、里見蓮太郎!前に」

 

二人目に自分が選ばれてしまった。

チームメンバーは笑いあっていたが、こちらからすれば災難だ。

ピュラは大会で優勝するほどの実力者。

さらに聞いたところによると大会を連覇しているらしい。

この相手と戦うとなるとかなりきつい勝負になりそうだ。

そう思うと気分が乗らない。

前に行っている途中、周りの話題はどちらが勝つかで持ちきりだった。

とはいっても、ピュラが勝つという意見が多いように思う。

当然だ。

自分は何も結果を残していないのに対し、結果を残し続けているピュラ。

どちらが勝つか常識的に考えてピュラになるだろう。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ヤン、どっちが勝つと思う?」

 

この中で蓮太郎と戦闘経験があるヤンにブレイクが聞いてきた。

いまさらだがルビー達は蓮太郎の前の席に座っている。

隣のルビーは今にも眠りそうで、ワイスは自分の答えを待っている。

 

「正直わかんない」

「あのときは攻撃を当てることすらできなかったしね」

 

ここでルビーやブレイク、ワイスが驚いた。

ルビーが突然跳ね上がり、こちらに顔を向けてくる。

その顔は驚愕で満ちている。

チームメンバーはすでにヤンの戦闘技術を知っており、高く評価されている。

そのヤンが一撃すら入れられないことに驚いているのだろう。

そんなことは思っていなかったらしい。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「それでは、ルールを説明する」

「銃火器の使用は禁止」

「勝敗はモニターに映し出されるオーラの残量が規定値を下回ったものを敗北とする」

 

銃火器を使わないなら生徒を保護する必要はあまりないだろう。

それならあの保護のなさはうなずける。

だがここで問題がある。

蓮太郎には天童式戦闘術があるが銃が使えないと幅が狭まる。

この時点で蓮太郎はナイフと己の肉体で戦うことになった。

相手は槍と盾で完全武装している。

 

「時間制限を15分とし、オーバーした場合は引き分けとする」

「それでは」

 

『『『はじめ!!!!』』』

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

『どっちが勝つと思う?』

 

『どうせピュラだろ?』

『ていうか里見?っていう人、武器の類なんもないぜ』

 

『ドンマイ過ぎるwww』

 

後ろから男子の声が聞こえてくる。

この教室で授業を受けているみんなそう思っているだろう。

それは私もだ。

一度左側に座っているあの人たちのチームメンバーを見てみると、真剣に前に向いている。

あの人たちなら予想がついていているのではと思い聞きたかったが、それは難しい。

ルールを聞いた後もほとんどがピュラの勝利だろうと周りは考えていた。

ピュラは槍と盾を構え、里見君?は武器を持たずに素手で構えている。

格闘術はあまり人気がないし、やろうとする人はあまりいない。

対人戦なら強いが、対グリムだと最弱といってもいいくらいだ。

やるとしても武器を仕込んだり専用の装備を付ける。

だが里見君は何もつけていない。

そんな状況で勝てるのか。

腰にナイフがあるのは見えるが、焼け石に水だろう。

実際、蓮太郎の勝利を想定している人は一桁といわれても不思議ではない。

周りから見れば蓮太郎は拳銃以外はナイフと素手しかなく、武器差があると思われたからだ。

だが、実際は違うことを私を含めたここにいる全員が知ることになる

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

蓮太郎が開始と同時に突撃。

いつでも移動できるように全力では近づかない。

ピュラがそれに対応するために槍を構えたところで蓮太郎が横にスライドした。

その勢いのまま、取り出したナイフを一振り。

ピュラが間一髪で盾で防いだが、ナイフが弾かれてしまった。

そのままナイフは宙に浮き、最前列の机の上に突き刺さる。

そこに座っていた人が驚いていた。

 

その隙を逃すまいとピュラが槍を高速で、何回も突いてきた。

槍は蓮太郎の体のあるところにはすべて出現していると思うくらいには、かなりの手数だ。

一部顔をかすめたくらいで被害を抑える。

顔から血がにじみ出るが問題はない。

それを蓮太郎が近距離でほとんどかわすと距離をとり、仕切り直しとなった。

そのまま二人は油断なく構え続けている。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「すごい…」

 

教室の誰かがこぼした。

この一瞬を誰が理解できただろうか。

戦闘成績の主席と次席の見る世界の違いにほとんどの人が気付き始めた。

もしやいい勝負にはなるのではないか、そう思う人が増え始めていった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

蓮太郎はピュラに近づこうとしたが、槍で距離を保たれてしまう。

どんなにフェイントをいれ近づこうとするが、そのすべてを潰される。

先ほどのやり取りで接近戦は不利だろうと考えたのだろう。

とにかくリーチ差を活かして間合いを維持し続けている。

通常なら厄介なのだがどこか法則性があるように思う。

なら、それでいい。

静かに義眼にある演算装置を起動しようか迷ったが、ここで使うのは大人げないかと思い思いとどまる。

ここでその力を頼らずに勝てばもっと成長できるだろう。

そのまま観察し、自分の頭と体でリズムを覚える。

少しづつ掴めてきた。

やはり人間がやる以上、作為的になるのは仕方がない。

あとは罠がないかもう一度見直す。

 

学習が終わったとき、ピュラの槍を蓮太郎が掴んでいた。

自分の顔めがけて飛んできた槍は首を倒したことで空を切る。

そのタイミングで柄を左手で掴み、自由を奪う。

ピュラは目を丸くした。

おそらく初めての経験なのだろう。

もしくはその前に倒していたとか。

ならこの瞬間を逃す気はない。

 

そのまま、槍を後ろに引き、右ストレートを顔めがけて攻撃した。

ピュラは突然のことに思考が停止していたが、すぐに修正する。

蓮太郎の攻撃を盾で防いだが、距離をとるために槍を手放した。

 

槍をなくしたピュラと格闘戦に持ち込んだ蓮太郎。

この状況下でピュラの勝利を信じている人はどれくらいいるだろうか。

生徒はピュラが負けるかもしれない、という期待感に満ちていた。

ピュラを昔から知っている人だけがまだ諦めていなかったように思う。

こんな状況、何度もあった。

そのたびに乗り越えてきたのだ。

そう思っているに違いない。

だが、蓮太郎だけが異なる認識をしていた。

 

二人のあいだには微妙な間が流れていた。

ピュラはともかく、蓮太郎が攻撃をしない。

それどころか接近をしない。

観客は異様な空間を感じ取っていた。

 

蓮太郎はこの槍を手放してもいいが、、そうするとおそらく回収される。その予感があった。

これは最初の攻撃でナイフが盾に吸い込まれたような感覚を味わった蓮太郎にしかわからない。

さらに言うと、蓮太郎だから気づいた。

腕に金属の義手がある蓮太郎は他人が気付かないような微弱な磁力に気付いていた。

もしかしてピュラのセンブランスは磁力に何か関係があるのか?

こんなことなら聞いとけばよかった。

だがそんな後悔をしている暇はない。

 

「行くぞ」

 

蓮太郎が人知れずもらすと頭をフル回転させ始めた。

さぁどうしようか。

槍を手放し、ピュラが回収するまでに多少のタイムラグがあるはずだ。

その間に一撃を入れる。

そうすれば勝てる可能性がある。

勝てなくても槍を回収する暇を作らなければ大丈夫なはずだ。

ならやるしかない。

 

槍を掴んだ手を脱力させる。

そのまま空中に置くように静かに手を放す。

槍を手放す。

槍は自由落下していく。

最高速でピュラのほうに突っ込む。

それを同時におこない、光となって突っ込んだ。

とにかく、ここで決定打を与えなければ!

 

「速い」

 

ピュラがそうもらしたように聞こえた。

見ると盾の防御を諦め、横に回避している。

それと同時に槍をセンブランス(ピュラの場合は極性)で回収を試みたらしい。

右手が不自然に動いている。

だが、そんなことは予想している。

移動位置を予測して動きを修正。横にスライドした。

蓮太郎とピュラは正面で向かい合っている。

ピュラの顔が驚愕に染まる。

回避不能。

当てる!

目で見ることができない速度で放たれた攻撃はピュラの腹にあたり、少し吹っ飛んだ。

ステージからは出なかったが、ダメージは入っているようで、オーラ残量が減少していた。

足取りは少しおぼつかない。

確実に効いてる。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

周りはピュラの劣勢に驚いており、面くらっていた。

あのピュラが負けるかも。

大会を連覇しているあのピュラが。

その雰囲気は生徒を飲み込んだ。

もはや蓮太郎の勝ち目が薄いなど考えている人間はもういない。

そこには今までなかった雰囲気が形成され始めていた。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

蓮太郎の追撃をかろうじて回避して、武器の回収を終わらせる。

強い。

ピュラはそう思うしかなかった。

武器の回収には成功したが、かなりまずい。

盾の防御は今までは金属製でできている相手の武器を極性を利用して盾に吸い寄せていた。

気づかれない程度にやっていたのできっと誰も気づいていないだろう。

だが蓮太郎は素手だ。

素手に金属は当然だがない。

なら今までのやり方は通じない。

 

久しぶりの勝てなさそうな相手。

現状では勝てない相手。

どんな手段を講じても、一撃すら入らなそうな相手。

普通、諦めそうなシチュエーションだ。

だが。

 

「面白いじゃない」

 

ピュラは違った。

理性で抑えていた本心が表れ始めた。

その暴力的なまでの野生が。

そのまま低く構え、攻撃の体制をとる。

ピュラの攻撃が始まった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

蓮太郎は反撃を予想していなかった。

そのためピュラの反撃に驚きながらも回避し、終わらせるために反撃をした。

それをピュラが防ぎ、反撃。

お互い反撃の応酬が始まり、少しずつオーラが削り始めた。

周りから見れば、黒と黄金の舞であり、見ていて美しかったという感想を後から聞くほど、ここはすごかったのだろう。

本人たちからすれば必死なのでそんなことは思っていなかった。

だが、それも終わり。

無情にもタイマーが鳴り、終了した。

 

『『『この勝負、引き分け!!!』』』

 

ルール上は引き分けであったが、教室は湧いていた。

それも当然だ。

ピュラをあそこまで追い詰めたのだから。

一部はピュラの調子が悪かっただけだとか擁護していたが、そんなことはどうでもいい。

ルール上は引き分けだが、オーラの残量から見て、その後続いていれば勝利していたのは蓮太郎だ。

蓮太郎自身はとにかく武器を取り上げたりといろいろやっていたが勝ちきれなかった。

途中でフェイントはもちろん、武器の強奪や相手の弱点にとことん攻め続けていた。

それも正々堂々を好む人から罵声を浴びせられたとしても。

 

「みなさん、興奮しているのはわかるが落ち着いて」

「今の戦いは兵士対戦士の戦いといえるだろう」

 

授業が再開された。

蓮太郎とピュラは試合後、汗をぬぐうためにシャワーを浴びに行った。

この授業は戦いが終わればシャワーに行けるという点はありがたい。

あの短時間でもかなりの汗をかいた。

ピュラが終わり次第すぐに行き、自分も呼吸を整えてから行った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「兵士はどんな手を使ってでも、勝ちに行く」

「キモイや汚いが誉め言葉となるくらいには」

「だが、戦士は違う」

「正面切って戦い、力の差を見せつける」

「それが戦士だ」

 

正直教授の話は聞いていなかった。

それくらい生徒が興奮した試合であった。

無論教授も興奮しているのか、語気が強まる。

それくらいクオリティの高い試合であった。

その後、通常は2回目の戦闘をする予定だったが、流石にやりずらいだろう。

ということで、教授はチームメンバーで感想でもしていて欲しいといってすべての時間をあてた。

教授は生徒の周りを歩き続け話を聞いている。

 

「やばくない、今の」

 

「やばいよね」

 

「蓮太郎ってあんなに強かったんだ」

 

ルビーがヤンに同意を求め、ジョーンが衝撃からいまだ回復していなかった。

語彙力など軽く吹っ飛ぶくらいには。

それくらいの威力がある。

今まで見たことのない戦闘なのだから当然か。

 

「あんなチート級の二人がこのチームにいるんですか」

 

「そうすると、そのチーム強すぎません?」

 

レンがその事実を受け入れられず、ワイスが不満をもらした。

実際、強い。

最高で最強といわれてもおかしくはない。

もしチーム戦をするなら、絶対にやりたくない。

何ならチームで二人と戦っても勝てるかどうか怪しい。

敵にするのは一番ダメな二人となった。

 

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更衣室内のシャワー室で、壁を殴る音が聞こえた。

音の主はピュラだ。

今まで負けなしだっただけに、かなり悔しい。

武器を取られること自体は初めてではない。

今まで何回もあった。

だがそれらをすべて解決し、すぐに撃破してきた。

にもかかわらず今回はすぐに解決できずにさらに負けかける。

いや、負けたといっていい。

シャワーを止めていないにも関わらず、無言で座り込む。

室内にはシャワーの音も響いた。

 

蓮太郎もまた、更衣室にいた。

目立ちたくないため、戻りたくなくここに居座ることにしている。

今戻れば質問攻めにあうのは確実だ。

 

そのまま、先ほどの戦闘について考えていた。

もし銃が使えたなら、どれくらいで勝負が決まっていたのだろう。

銃が使えればなんていうことを考えていたが、それでも勝てたのか。

また、義手や義足にあるカートリッジを使用できればどんなに楽だっただろう。

だが、それを使ったとしても勝ち切ることは難しい。

もし磁力を使うセンブランスなら銃弾すら軌道をずらすことができるかもしれない。

今回引き分けになったのはピュラが格闘に不慣れだったからだ。

常に武器がある環境で、もし武器を落としたとしてもセンブランスで回収できただろう。

それによって、今回引き分けにすることができた。

 

授業の終わる15分前に流石に戻らないといけないと思い、最初に蓮太郎が帰ってきた。

10分後、ピュラも帰ってきて、そのまま二人を称賛する声がどこからもなく聞こえてきた。

 

そうして授業が終わり、全員で次の必修授業へ向かった。

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今日の授業がすべて終わり、蓮太郎は一人で廊下を歩いていた。

ルビー達はいまだ興奮しており、そのままトレーニングへ向かった。

ピュラは疲れがあり、すぐに部屋に戻った。

蓮太郎は売店で飲み物を買い、自室に戻っていた。

戻るために長い廊下を歩いているときに自分のことを見てくる人間がたまにいた。

その視線の意味はまったくわからない。

 

「里見さんですか」

 

後ろから声をかけられた。

見ると男女合わせて4人おり、こちらを睨んでいる。

まったく心当たりがないにもかかわらず。

 

「今日はたまたまですよ」

 

「そうだ、偶然だ」

 

「奇跡よ」

 

「調子が悪いだけだ」

 

全員、そんなことを言っていたが、おそらく今日のピュラ戦だろう。

あれで調子が悪いとかなら、とんでもない化け物だ。

各自言いたいことを言ったのか、すぐにどこかに消えた。

これに何の意味があるのか?

 

「なんだったんだ今の?」

 

正直どうでもよかった。

そのままベッドに突っ込み、眠った。

 

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平日の授業が終わった夜、休みにみんなで買い物をすることになった。

各々買うものがあるらしく、それなら全員で行こうということになった。

 

次の日。

午前中に各自買い物を済ませ、午後はみんなでどこかに行くことにしている。

蓮太郎はレン、ジョーンと一緒に買い物をした。

途中までは一緒だったが、行きたい店がそれぞれ近くにある。

一度別れることになり、また集合することになった。

別れた後、目的地に行くために道なりに歩き続ける。

蓮太郎は弾丸と予備の拳銃を買いに行った。

店に着くと、仮面をかぶった赤い服にシルクハットを身に着けた男性を見かけた。

 

「やぁ、こんにちは」

 

「こんにちは」

 

目があったから挨拶をしたが、それ以上はなかった。

 

「常連さん、いらっしゃい」

「そういや、二人とも常連なのに初めましてなんですよね」

 

どうやら、仮面の男も常連らしい。

お店に常連が複数人いたとしても不思議ではない。

 

そんなことはどうでもいい。

そのまま必要なものを買い、店を出た。

仮面の男に見覚えがあったが、思い出すことはなかった。

あの見た目の人間を初めて見たとは思えない。

外でジョーンとレンを待って、来た道を戻りだした。

 

全員の買い物が終わり、みんなで昼食をとっていた。

食べ放題付きの焼き肉があるお店にいた。

 

「やっぱバイクは最強よ」

「今からでもとれるし、どうよ」

 

ヤンがバイク仲間を増やそうとバイクの良さを伝えていたが、どうやら刺さらなかったらしい。

ここではバイクの免許は17歳以上からとれるため、みんなに進めている。

現在、バイクの免許を持っているのはヤンだけであるため、おそらくバイク仲間が欲しいのだろう。

一緒にバイクに乗ってどこかに行くのも悪くはない。

むしろ楽しいだろう。

だが、全員微妙な反応であった。

蓮太郎も東京エリアにいたころは、登下校で自転車を使用していたが、本音を言うと、車かバイクが欲しかった。

だが、金もなく免許もとれないため諦めていた。

ここではアカデミーの敷地内に寮があるため、移動がそこまで苦ではなく、そんなことはもう考えていなかった。

バイクの趣味もありだなと思ったが、当分はしなくていいかな?

 

「そういや、蓮太郎」

「袖大丈夫そう?」

 

「ああ、大丈夫だ」

 

袖はゆとりがあまりないが、万が一を考えてのことなのだろう。

気遣いはありがたいが、義手であることは気づかれたくない。

義手は偽装できているが、万が一のこともある。

そうして、楽しい昼はすぐに過ぎてしまった。

 

「蓮太郎~」

「ピュラ~」

 

店を出るとすぐにヤンが話しかけてきた。

 

「君ら、特待生でしょ?」

「なら、お金余っているよね?」

 

実際、特待生ではある。

さらに言うと、ピュラはともかく蓮太郎は免許代+性能のいいバイクを買えるくらいのお金がある。

役所からもらったお金はかなり多いのに加え、特待生のため学費と寮の費用は免除、さらに毎月お金を支給するという手厚い待遇を受けている。

そのため、お金がたまる一方だ。

使ったとしても飲食代と銃の維持費くらい。

だが、バイクを買う気にはなれなかった。

結果、どちらにも断られた。

ヤンは落ち込んでいたが、その姿が少し面白かった。

また見たいと思ったがさすがにそれは無理か。

 

午後はみんなで楽しく過ごした。

ゲームセンターでエアホッケーをしたり、デザートを食べたりと充実した一日を送った。

流石に、ラーメンは別腹ということでみんなでラーメンを食べようと提案したノーラをみんなで止めたが。

しかもそのラーメンが次郎系というもので今食べても確実に残すことになる。

 

「今度みんなで遊園地行こうよ」

 

「賛成」

 

「いいね」

 

「行きましょ」

 

ルビーの提案にブレイク、ヤン、ワイスが賛成した。

他の人らも賛成し、今度行くことになった。

いつかはまだ決まっていないが、そのうち行くことになるだろう。

 

夜になった。

今日は遊んだため、疲れてすぐに寝ることができるだろう。

だが、蓮太郎は寝れない。

寝ようとして目をつぶっても仮面の男が頭に浮かぶ。

気分転換に夜風にあたることを考え、外に出た。

 

3階にあるちょっとした外にある空間で夜風にあたろうと考え、そこに向かうと、先客がいた。

ピュラだった。

 

「ピュラ」

「寝れなかったのか?」

 

「蓮太郎」

「そうね」

 

ピュラは蓮太郎に気付くと、こちらに向かって、まじめな顔をした。

 

「不幸が顔に張り付いてる?」

 

「うるせぇな」

 

憎まれ口を言い合うぐらいには、仲良くなっていた。

だが、そんな雰囲気はおしまい。

ピュラがまじめな顔をして、聞いてきた。

 

「なんでそんなに強いの?」

「しかも武器なしで」

「大会でも見たことないのに」

 

ピュラの指摘は最もだ。

蓮太郎くらい強ければ、どこかの大会で名前くらいは聞くはずだからだ。

だがそんなことはなかった。

異世界から来たのだから当然か。

本当のことを話すか、誤魔化すか、そんなことを考えていた。

だが、誤魔化す気にはなれず、本当のことを話した。

 

「気づいたらこの世界にいたんだよ」

「前いた世界の記憶はあるが、正直わからないこともある」

 

こんなことを信じるわけがない。

自分は異世界から来ましたと言っているからだ。

こんなことを言えば冗談だと受け止められても仕方がない。

だが、ピュラは信じた。

 

「なら、大会で見ないのも当然ね」

 

「信じるのか!今の話を」

 

「ええ、信じるわ」

「だってあなた、不幸の擬人化でしょ?」

「なら、あり得るわ」

 

何を言っているんだということを態度で示そうと思ったが、諦めた。

 

「ありがとう」

 

突然、ピュラが語り始めた。

 

「私ね、友達がいなかったの」

「周りの人達はいい人なんだけど、実績しか見てくれなかったの」

「でも、チームのみんなは私のことを知ろうとしてくれる」

「本当の友達になれた」

「ありがとう」

 

「こちらこそだ」

 

「あと、あなたに引き分けたことで自分のことをもっと知れた」

「ありがとう」

 

「あんたみたいな人がいなきゃ俺は孤独だったよ」

「礼をいうのはこっちだ」

 

それ以上の言葉は不要といわんばかりに二人のあいだには穏やかな空間が流れた。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。
誤字報告、感想お待ちしております。
それでは、さようなら
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