黒き希望を手繰り寄せて   作:みりんはお酒

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第4話


チームをまとめる者たちよ

蓮太郎がいるチームは穏やかに過ごしてきた。

周りの評価も同様であり、さらに戦闘面でも頭2つ抜けているという認識もされ始めてきた。

この前の授業の件もあるだろう。

バランスが崩壊しているという声もたまに聞こえてくる。

よって、チームワークもよく、実力もあるという認識が広まっている。

それ自体は素直にうれしく思う。

以前なら高校生のガキが仕事に首を突っ込むなといったことを言われてもおかしくはなかった。

そのため、このような評価をもらうのは今まで経験したことがなく、とてもうれしい。

だが、ルビー達のチームは不穏な空気が流れていた。

ワイスが自分こそがリーダーにふさわしいと主張し続けている。

実際にあの中でリーダーにふさわしいのは誰かと聞かれれば正直なところわからない。

過ごした時間がもう少し長ければいいのだが、そんなに時間は経過していない。

 

「あなたに言われなくても、わかってますわ」

 

「私はワイスが心配で…」

 

「そんな心配無用ですわ」

「むしろ邪魔ですわ」

 

今この瞬間も喧嘩している。

喧嘩については最初は仲介に入ろうとしていたが、最近は放置気味になっている。

 

事の発端は以前蓮太郎とピュラが戦った授業での出来事。

今日はグリムと戦闘してもらうということでワイスが志願した。

そのときはあのステージにグリムが連れてこられ、開始とともに解放。

それが始まりの合図となった。

その戦闘中にルビーが色々指示をしたということにワイスが不満を持ち、今に至るわけである。

正直、指示中は正直嫌がられるからこうなることは予想できた。

とはいってもルビーにだって悪気はなさそうだと思う。

かといって戦闘中に指示されるのはあまり気持ち胃の良いものではない。

 

「あなた、少しは私のこと信頼してみては?」

 

ワイスが離れていった。

ワイスからしてみれば、自分は頼りないからこういわれていると思ったようだ。

ワイスの実力ならある程度のグリムに後れを取ることはない。

蓮太郎から見てもそれは確実だろう。

それにワイスとコミュニケーションをとっていたがどうもプライドが過剰に高いように感じた。

其れも相まってかなりストレスになっている。

早歩きで遠くなっているワイスを見ながらそう考えていた。

ルビーもそのままどこかへ行き、そこにはヤンとブレイクが取り残された。

二人とも災難だなぁ。

どうにかしたいけど、どうにもできない。

かといって放置もできない。

蓮太郎はある人物のもとへと向かった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「どうする?」

 

「さぁ?」

 

正直、両者お手上げであった。

ブレイクもヤンも今まで関係を改善しようと努力はしてきた。

だがすべてで失敗してきた。

あと何を試していないのか、それを考えるくらいには追い詰められている。

このままいけば、チーム崩壊になるかもしれない。

そのために何とかしたいが何をすればいいのか、まったくわからなかった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ルビーはアカデミーの庭にある椅子で座りこんでいた。

 

「リーダー失格だ~」

 

ワイスを怒らせてしまったルビーは近くに誰もいないことを確認し、独り言を漏らした。

指示したことが悪かったのはわかった。

あれは心配したからやったことだが、まさかあそこまで怒っていたとは…。

明確に失敗した。

こんな自分がリーダーでいいのだろうか?

蓮太郎のチームみたく結束力があるチームにしていきたかった。

だが今の現状はどうだろうか?

結束どころか崩壊に近づいている。

これならいっそのことリーダーを他に人にしたほうがいいのではないか…。

 

「どうした?ルビー」

 

ルビーが声のしたほうに顔をあげると、そこにはオズピン教授がいた。

自分の失敗を他人に相談したいが、ヤンやブレイクに負担がかかっている以上、あまり相談するのは気が引けた。

ならオズピン教授になら…。

都合がいい気がするが、頼らない手はない。

正直に話すことにした。

 

「オズピン教授!実は…」

 

ルビーはトラブルについてすべて話した。

自分がよかれと思ってやったことで、怒らせてしまったこと。

自分が本当にチームリーダーにふさわしいが不安になっていること。

オズピン教授がそれを静かに聞き、咀嚼した。

 

「そうだな、まずは分かり合うことから始めたらどうかね?」

 

分かり合う?

チームメンバーについて一度自分の中で考えてみた。

ヤンはともかくブレイクやワイスについては深く想像することができない。

それどころか好きな食べ物や趣味でさえも知らない。

あまりにも知らなすぎる。

 

「チームメンバーだし、衝突することはあるだろう」

「だからお互いのことを知る必要がある」

 

ルビーはそのことを怠っていたことを自覚した。

他人から指摘されないと気づかないことはある。

主観的に見ても自分の間違いに気づかないこともあるため、こうして相談することで客観的に他人を見る機会ができた。

 

「あと、自分なりに努力はしているのかい」

「努力していけば必ずやチームメンバーは信頼してくるよ」

 

ルビーとしては努力はしているつもりだが、勉強面ではあまりしていなかった。

勉強が苦手だが、それから逃げることはできない。

あとでだれかに教えてもらおう。

また、お互いを知る努力ということもしていなかった。

ワイスのことで知っていることは、お嬢様でレイピアを使っているぐらい。

好きな食べ物ですら知らなかった。

その程度でリーダーが務まるだろうか?

だが、ルビーとしては口に出せただけ、すっきりできた。

それに加え、できそうなアドバイスをもらえたことは幸運だろう。

ならばすぐにでも実施したほうがいい。

 

「ありがとうございます!オズピン教授!」

「一度話し合ってきます!」

 

そういうと、ルビーはどこかに消えていった。

先ほどの態度はどこへ行ったのか、いつもの調子を取り戻していた。

 

オズピン教授が小さくなっていくルビーを見届け、柱の裏にいる蓮太郎に声をかけた。

 

「これでいいかい、里見君」

 

柱の裏から蓮太郎が出てきた。

先ほど、蓮太郎はオズピン教授を呼んできて、相談に乗ってもらうためにここまで連れてきた。

ルビーの様子を見ると、うまくいったのだろう。

 

「ああ、助かる」

 

オズピン教授に感謝の言葉をかけた。

自分でできないことならそれができそうな人物に相談し、やってもらうほうがいい。

 

「君からの頼み事だしな」

「だが、自分から言わないのか?」

 

その指摘はもっともだが、蓮太郎はやらなかった。

自分も何回か相談に乗ろうとしたが、なかなか相談されなかった。

迷惑をかけまいとしていたのだろうが、この程度で迷惑とは思わない。

そう蓮太郎が考えていても、ルビーの視点からだとそうはならないのだろう。

 

「自分から伝えられたらいいんだけどよ、」

「どうも言葉にするのが難しくてな」

 

「言葉は伝えなければ、通じないよ」

 

オズピン教授はそう言い残し、去っていった。

 

「わかってるけどよ…」

 

頭の中でオズピンの声が響く。

それが何度も頭の中で再生され、深く突き刺さる。

 

----------------------

 

一方、ワイスは不満を言い続けながら、歩いている。

その足音はいつもより大きく、通りかかる人が全員振り向いている。

そんなことはお構いなしに歩き続ける。

とにかく、ルビーは相応しくないだの、交換すべきだの、独り言を言い続けている。

不満を言い始めて未だ途切れることはない。

 

「なんなんですの、あの子は」

「蓮太郎かピュラと交換してほしいくらいですわ」

 

そうして廊下を歩いていると、教授を見つけた。

ひげが特徴的なピーター教授だ。

 

「ピーター教授!少々お話が」

 

「どうしたのかね?」

 

ワイスはチームリーダーには自分がふさわしいことを説明した。

ルビーは信頼してくれない、口出しする、まとめる力がないなど、散々ないいようであった。

それ引き換え、自分のことはほめ続ける。

それはどこからそんな語彙力を身に着けたのか、教授が知りたくなるくらいにはまくし立てた。

 

「なるほど、言いたいことはわかった」

「だが、まだまだ始まったばかりだ」

「リーダーについてもっと知ろうとすれば、おのずとわかることだろう」

「もう少し、落ち着いて物事を見たらどうかね?」

 

だが、ワイスの主張は退けられた。

自分が絶対的に正しいと思っていただけに衝撃は計り知れない。

たしかにまだ始まったばかりだが、これ以上時間をかけたところで無駄にする気がしていた。

ワイスは感謝の言葉を述べ、その場を去った。

未だ納得はしていない様子で。

 

それでも、教授のアドバイスには一度従うことにした。

その夜、ワイスはルビーのもとを訪れていた。

自分で入れたコーヒーをもって、ルビーがいる2段ベットの2段目へ向かった。

この2段ベットはひもなどで固定されてはいるが、正直心もとない作りではある。

見ると、ルビーは授業の復習をしているようで、こちらには気づいていない。

意外とルビーも努力をしていたことを初めて知った。

確かに、教授の言う通り、まだ時期尚早なのかもしれない。

 

「ルビー、ちょっといいかしら?」

 

「ワイス!どうしたの?」

 

ルビーはワイスに気づかずに勉強していた。

それほど集中していたのだろう。

 

「先ほどはごめんなさいね」

「コーヒー飲むかしら?」

 

「ありがとう!砂糖も多めに入れといてくれるかな?」

 

「いいですわよ」

 

なんだかんだ、関係は改善の兆しを見せた。

その後、両者とも自分のことについて話始め、ついには夜通し話しとおした。

自分の趣味、両親、食べ物、何でも話した。

先ほどのぎくしゃくした関係はどこへ行ったのか。

その結果、昨日のぎくしゃくしていたとは思えないぐらい良好な関係になっていた。

二人とも授業中に居眠りして、グリンダ教授にお仕置きをもらったこと以外は順調だろう。

 

午前の授業が終わった。

お昼時になり、現在は食堂でチームそろって昼食をとっている。

 

「二人そろって、お仕置きくらってんだwww」

 

ノーラがツボに入ったようで、笑い声が途切れない。

笑いすぎて机をたたき始めた。

笑い声と台パンの音が食堂の中で反響する。

その大きさにほとんどの生徒はノーラのほうを向いている。

他の人らも呆れ半分、苦笑い半分の様子。

 

「まったく、午後の授業ではやらかさないでよ」

 

ヤンが注意をし、ルビーもワイス反省しているようであった。

どちらも頭を抱えている。

蓮太郎はどちらも一応反省していると感じた。

ルビーとワイスは罰として追加の課題を命じられた。

課題は授業内容とそれに関連する本を3冊読み、5000字以上でまとめろとのこと。

しかも、3日後までに。

きつすぎる気がするが、蓮太郎にはどうすることもできない。

 

「そういや、ノーラは寝ているのに怒られてないよね」

 

「だって私、どの授業で寝るとまずいか知っているからね」

「メリハリをつけているから大丈夫!」

 

ジョーンがどこが大丈夫なんだともらしたが、まったくもってその通り。

全員、ジョーンの意見に賛同していた。

蓮太郎は以前は授業中に寝ることが多いが、最近は授業が楽しくなってきている。

それなのにノーラは小テストで平均より上をキープしているんだから不思議。

睡眠学習とか本当にあるのかな。

 

午後一番の授業は歴史であった。

教壇にはウーブレック教授の姿があった。

 

「みなさん!今日は80年前の戦争についてですよ」

 

80年前の戦争とは今の4か国が2つに別れて、おこなった世界大戦のことである。

 

「その中で、今日はファウナスの反逆について取り上げますよ」

 

解説が始まった。

ファウナスの反乱は、世界各地で見られており、ファウナスの地位向上となったきっかけでもある。

その中でも、一番大きかった反乱について話があった。

 

「ファウナスはミストラルで大規模な反乱をしたことは知っていると思う」

「では誰か、その時期について説明できるものは?」

 

ワイスが挙手をして、説明した。

 

「ミストラルでは当時、ヴェイルに向けて夏におこなわれる反抗作戦の準備をしていましたわ」

「そのため、ヴェイルに向かうために軍の7割が各地の軍港に集結していました」

「そのタイミングでファウナスが反乱を起こしましたわ」

 

正解だと言わんばかりに称賛した。

 

「素晴らしい!」

「では、その時に発生したもう一つの重大なことはなんだ?」

 

次はレンが手を挙げた。

 

「ミストラルの反乱とともに、ヴェイルでも反乱がありました」

「この奇妙な一致は奇跡の反乱として呼ばれ、世界的に珍しいものとなっています」

 

正解だとして称賛された。

 

「そう!ミストラルの反乱とヴェイルの反乱のずれは5時間だといわれている」

「だが、事前に連絡を取り合った形跡がない。さらに協力していたという形跡さえもない」

 

この反乱はお互いが連絡を取り合わずに起こしている。

それでもここまで時間のずれがないのはさすがにおかしい。

そのため、この奇妙な一致はなぜ起きたのか、それが未だ解明されていない。

 

「それほどまでに連携が取れているため、各国は戦争どころではなくなった」

「では、これを主導したといわれる人物を知っているか」

 

今回は誰も手を挙げることはなかった。

こんな細かいことまで知っている人は少ないため、手を挙げる人はいない。

普通、こんなことを知っているのは歴史好きくらいだ。

 

「そうだな、里見」

「君が答えたまえ」

 

蓮太郎が指名された。

どうしてこんなときに限って指名されるのか。

 

「ミストラル側はリクとシュビィ」

「ヴェイル側は空と白だったと思うぜ」

 

正解するとは思っていなかったのか、驚いていた。

こんなことは学校で教わることはなく、触れても軽く。

 

「正解だ」

「良く知っているな」

 

これは入学前のオズピンの教育による賜物であった。

オズピンはとにかく細かいところまで教え込むので正直勉強しているときは意味がないとして覚える気はなかった。

だが結局は回数を重ねるごとにこうした細かい知識も自然と覚えていった。

これが意外と役に立ったことに蓮太郎も驚いていた。

 

「そうだ」

「この人らによってファウナスの地位は向上したといっても過言ではない」

「それくらい素晴らしい人だ」

「ここテストに出すぞ」

 

この一言に全員、手を動かした。

テストに出すといわれれば、自然とそうなる。

 

「この人らは人間であるが、ファウナスの身体的特徴について理解していた」

「そのため、それに合わせて部隊編成を組み、防衛に徹した」

 

防衛では、自然の要塞のほかにトラップを仕込み、起動したら襲うという形を何度も取っていた。

また、反乱は武器が不足する場合があるが、彼らは常に武器を鹵獲することができたため、安定して戦うことができた。

それくらい、完成された戦い方をしていた。

 

「人間側は夜襲を中心に仕掛けたが、夜目が効くファウナスを哨戒にしたことで人間の攻撃をすべてはねのけた」

「人間側はなんとかして鎮圧しようとしたが、そのすべてで失敗した」

「このままいけばファウナスの国を作れるくらいには」

 

だが、そううまくいくわけではない。

一時期は国ができるくらいには制圧範囲を広げていたがそれまでだった。

 

「実際は、ファウナスの地位を約束したため、反乱軍は縮小していった」

「さらに指導者がいなくなったことで戦いづらくなり、最終的には人間と地位を同じにするという条件で停戦が実現した。」

 

その後、反乱したファウナスたちは無罪となり、軍と協力関係になった。

そのときの経験はすさまじい衝撃を与え、軍関係者も自分から学びに行くほどだったという。

 

次の授業でも、蓮太郎は指名された。

グリムについての授業で、またも難問であった。

難問というよりはマニア向けの問題。

 

「このグリムは体の一部を発光させ、様子を見に来た人を襲うグリムだ」

「では、それと同時にこのグリムはあることをするが、わかる人はいるか?」

 

蓮太郎は自分から手を挙げた。

 

「甘い匂いを発する」

 

これも正解した。

こんなもの、生物オタクである蓮太郎であるからこそ、答えられた。

蓮太郎はファーブル昆虫記が昔から好きで、その影響で生物関係はマニアといわれても違和感がないくらいの知識量はある。

教授も答えられる人がいることに感心し、蓮太郎の評価をあげた。

授業後、蓮太郎の頭の良さに驚き、ルビー達が集まってきた。

 

「蓮太郎って意外と頭がいいんだね」

 

「ちょっと意外かも」

 

「死んだ魚のような目をしているのにね」

 

「いやー、なんか言った?」

 

ルビーとブレイクの誉め言葉のあとにあったノーラの発言を見逃すことはなかった。

流石にまずいと思ったのか、ノーラが珍しく謝罪した。

これらはオズピンの教育の賜物である。

それがなくても生物関係なら何とかなるが、それ以外はどうしようもない。

 

「そういや、ジョーンは?」

 

蓮太郎がジョーンがいないことに気付いたのか、質問を投げた。

最近はジョーンを見る機会が少なくなっているように思う。

 

「それが、最近はカーディンたちとつるむようになっていて」

 

驚きを隠せなかった。

正直、カーディンたちとは仲がいいわけではない。

これは蓮太郎個人であり、ジョーンの場合は違うらしい。

そのため、他人の交友関係に口を挟む気はないので気にしないようにしたが、無理そうだった。

 

「ジョーン、全然楽しくなさそうだよね」

 

「パシられているように感じるよね」

 

ノーラの発言にブレイクが補足説明を施した。

一体どういうことだ?

普通、仲がいいならそのようなことにはならない。

となると、明らかになにかありそう。

それなら、話は別だ。

 

「ちょっとジョーンの様子を見てくる」

 

蓮太郎はそのまま教室を出た。

ジョーンを探し走り回ると、少しして廊下にちょうどジョーンとカーディンたちがいた。

 

「ジョーン、最近どうしたんだ?」

「チームのみんなも心配しているよ」

 

だが、ジョーンの発言に真意を疑わざる負えなかった。

 

「ほっといてくれ」

 

頭に?が浮かんだ。

いつもはこんなことをいう人ではない。

頼りなさそうなところはあるが、それくらいだ。

 

「何言ってんだよ、お前楽しそうに見えねぇじゃねぇか」

 

「いいからほっといてくれ!」

 

蓮太郎はあっけにとられ、カーディンたちはそのままどこかに行ってしまった。

そのままみんなのところに戻り、事の顛末を話した。

全員、なにがあったのかを理解し、その後もジョーンに何度も話しかけたが、語ろうとはしない。

ルビーたちからも聞き出そうとしてみたがダメそうだ。

さらには、チームでいる時間が減り、カーディンたちといる時間が増えてきた。

こんな人ではないと思っていたのに。

 

そんなある日、課外活動があった。

場所はフォーエバーフォール。

名前の通りの場所である。

目的地に着くと、グリンダ教授から内容について話が合った。

 

「みなさん、今日はチームに一つ、瓶を渡しますのでそこに樹液を詰めてください」

「ですが、ここにもグリムがいますのでチーム単位で行動してください」

「集合は17時とします。」

 

話が終わり次第、各チームが行動を開始したが、ジョーンだけがカーディンたちと行動を共にした。

流石にピュラやレン、ノーラは残念がっていた。

蓮太郎らは後をつけることを提案したが、課題が先として却下された。

そのまま落ちている落ち葉を踏みながら奥へ入っていく。

 

採取も問題なく終わり、時間があまった。

その時間については特になにするか聞いていないので、全員で話しながらゆっくり戻ることにした。

普段通りの会話だが、ジョーンの話題に意図的に触れないようにしているのか、どこか不自然さがあった。

その後ろに課題が終わったであろうカーディンたちがいた。

カーディンたちはジョーンに何かを指示しているようで時折瓶を押し付けている。

 

それを見た蓮太郎は後ろでカーディンたちがなんかしていることに気づいた。

何を言っているのか、まったくわからないが大体のことは予想できる。

おそらく、瓶を投げるのだろう。

それもピュラに。

カーディンらは普段からピュラのことが気に入らないらしい。

そのため、こうして嫌がらせをしてくることはあったが、直接的にはしてこなかった。

それが今回はジョーンを使ってやらせようとしている。

きたない奴らだ。

 

もし蜜入りの瓶を投げ、誰かにかかればいろいろよってくる。

熊や蜂なんかだろうが、何であれ対処に時間がかかる。

さらにべたつきによって服を台無しにされることも考えられる。

そのため蓮太郎はピュラの横に着き、後ろを警戒しながら歩いた。

投げられたら、それを掴むために。

 

警戒し始めて何分たったのだろうか、ジョーンが投げないことにイラついたのか、態度に示すようになった。

カーディンたちはジョーンをせかし始めた。

そんなに急がせるなら自分で投げればいいのに。

根性がないのか、ビビっているのか。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ジョーンは考えている。

何をしようとしているんだジョーン!

こんなことをするためにここに入ったんじゃない!

仲間を傷つけるくらいならカーディンたちに反撃しよう。

僕はこんなことになるまで、何もできなかった無能だ。

だが、仲間を傷つける卑怯者にはなりたくはない。

 

「やらない」

 

ここで蓮太郎は後ろの異変に気付いた。

様子が変わった。

カーディンたちの声が強まった。

 

「なに言ってんだ?」

「間違えてんなぁ~」

 

カーディンがジョーンを殴り続け、それに気づいたピュラたちは止めようとした。

その場にいた全員で走り続けた。

周りに落ち葉の踏む音が鳴り響く。

 

だが、そこに一つまったく違う方向から落ち葉を踏む音が聞こえる。

グリムがやってきた。

アーサだ。それもかなり大きい。

 

「巨大なアーサだ!!」

 

チームCRDLはカーディンを残し、逃走した。

チームが聞いて呆れる。

あんな状況で見捨てるか普通。

そんな状態のチームなど聞いたことがない。

 

カーディンは恐怖に支配されており、逃げることもできなかった。

ここでカーディンが死亡したとしても不思議ではない。

アーサがカーディンを攻撃。

アーサの腕はかなり太く、それが横に薙ぎ払うような形で振っている。

だが、ジョーンが盾で防御した。

その後もアーサは同じような攻撃を続けた。

周りには風を切る音が何度も響き渡る。

大きな爪でとにかく攻撃し続けていた。

ジョーンはとにかく防御に徹していたがジリ貧であった。

明らかに負ける。

このまま見ていれば二人はあの世で再開することになるだろう。

 

「私、教授呼んでくる!」

 

「私たちは加勢してくる」

 

ノーラが教授を呼びに行き、他の人らで加勢することになった。

今すぐ行かなければ二人が危ない。

だが、ピュラが様子を見ないかと提案してきた。

そんなことをすれば、ジョーンとカーディンは死亡するだろう。

それだけは避けたい。

全員反対したが、ピュラが必死にお願いしてきたこともあり、そうすることにした。

 

一方、ジョーンはアーサの攻撃をなんとか防いでいた。

じり貧で終わるかと思ったが、まだ粘る。

盾を右に左に動かしながら基本姿勢を維持し続け、守り続けた。

今までならもう吹っ飛ばされていてもおかしくはない。

驚異的な粘りだ。

 

だが、我慢できなかったのか、反撃を試みた。

右手に握ってある剣を地面すれすれから持ちあげるように切り付けようとする。

明らかにアーサの攻撃のほうが早い。

アーサの腕がジョーンのすぐ横にある。

1秒もたたぬうちにジョーンは吹っ飛ばされることだろう。

盾での防御は絶望的。

それを理解した蓮太郎はすぐに飛び出した。

確実に間に合わない。

だから追撃を避けるためにすぐに行動。

 

だが、蓮太郎はピュラの能力の凄さを改めて実感した。

ここでピュラがセンブランスでジョーンの盾を無理やり動かし、理を曲げた。

アーサの腕は盾に当たり、そのまま上に跳ね上がる。

そのままジョーンの一閃はアーサの首を飛ばし、カーディンに振り返った。

 

「助かったよ」

 

カーディンはジョーンに腕を前に出した。

 

「もう二度と手を出すな」

「チームにも、友達にも」

 

ジョーンの睨みに圧倒されたのか、ひるんでいた。

ジョーンのにらみにひるむなら、カーディンはビビりで間違いない。

 

カーディンの腕をつかんだジョーンはそのまま勢いよくひき、カーディンを立たせる。

 

蓮太郎たちはその様子を見て、安心していた。

ジョーンはこれからもう一度やっていけるだろう。

 

その後、やってきたグリンダ教授にすべてを話、カーディンのチームは謹慎処分をくらった。

あんなことをしたのだから当然だ。

 

その夜、ピュラと蓮太郎をジョーンが呼び出した。

 

「あのさ、こんなことを言える立場にいないのはわかっている」

「だけど、もう一度このチームでやっていきたいんだ」

「だから、お願いだ!」

「特訓をつけてくれ」

 

蓮太郎は覚悟していたとはいえ、すぐに承諾することができなかった。

あんな態度を示したのだから当然だろう。

特訓で絞り続けることも考えたが、この人物にあまり時間を割く気はない。

ピュラも同じだろうと顔を見ると、ジョーンを突き飛ばしていた。

あまりに突然のことに、呆然とするしかなかった。

 

「そんな姿勢じゃだめ」

「ほら立って」

 

ピュラは教えることに積極的だった。

ピュラ、一体どんだけ人がいいんだ。

だが蓮太郎はそれほど大人ではない。

蓮太郎は何があったのかを聞いた。

 

「ジョーン、何があったんだ?」

「それをチームのみんなに話してくれ」

「特訓とかはそれからだ」

 

「わかったよ」

「こうなったのも俺の責任だし」

 

ジョーンらは一度部屋に戻り、自分が不正入学をしたことを自白した。

最初は驚きを隠せなかったが、少しずつ飲み込んでいった。

実力は確かに劣るが、それは蓮太郎の基準での話だ。

正直、このアカデミーの合格基準はわかっていないため、その話を聞くまでは、推薦とかで入っただろうと考えていた。

きっと何かを成し遂げて入学の許可がおりたのだろうと。

それでも弱すぎる気はしていた。

 

反応は多種多様だが最後にはこれから何とかしようということでまとまった。

ピュラに至っては、これから強くしていけばいいとまで発言している。

いい人過ぎない?

 

その後、ピュラからは戦闘での武器の扱い方や基本姿勢を習い始めた。

蓮太郎からは天童式戦闘術を習い始めた。

ピュラも格闘術には興味があったようで、ジョーンと一緒に習い始めることになった。

蓮太郎は最初、2人教えることに不安を覚えていたが、最終的には腹をくくった。

そうして、チームがまたまとまり始めた。

これから、やり直していくのだろう。




ここまで読んでいただきありがとうございました。
また次回もよろしくお願いします。
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