孤児院爆破から1週間が経過した。
今日は朝からピュラと蓮太郎は墓参りに行っていた。
お墓は街のはずれにあり、バスで1時間かかる場所にある。
「誰もいないのね」
「そうだな」
墓にはたくさんの花が置いてあった。
孤児たちは集団埋葬されている。
そこに明らかに100は超えるだろう数の花が置かれていた。
差別がはびこる世界で、こんなにも花が置いてある。
墓参りに訪れるまで、沈んだ空気が2人の間で漂っていた。
事件当初よりかは回復してはきている。
だが、時間の経過で回復できるほど傷は浅くない。
それでも、この光景を見ることでいくらかは回復できたと思う。
「だが、俺たちは覚えていよう」
「それしかない」
蓮太郎が心から思っていることを話し、ピュラは頷いた。
2人だけは覚えていよう。
あそこにいた人たちのことを。
そうして、2人はその場を後にした。
墓には、2本の花が追加で供えられた。
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ルビー達は予定があるらしく、朝早くから外出していた。
ジョーンやレン、ノーラは宿題と今後ある実習に頭を抱えていた。
実習はプロのハンターについてついて回り、学習することになっている。
現場は自分たちで選ぶことができ、どこで何をするのかを考えている途中。
実習の内容は様々であり、近場のグリムの討伐や護衛任務から街の警護などとかなりの数が揃っている。
「どこにしますか?」
「近くでよくない?」
レンの質問にノーラが答えた。
近くの理由はすぐに帰ることができるからとのこと。
それにジョーンも同意し、あとは蓮太郎とピュラの意見を待つだけとなった。
「2人とも大丈夫ですかね」
「蓮太郎は大丈夫そうですが」
「ピュラも大丈夫だよ」
仲間からも心配されているらしい。
見た感じは大丈夫そうだが、本人たちはどうなのかがわからない。
そこが気がかりだ。
最悪の場合も想定しなければならない。
「戻りました」
そこにピュラと蓮太郎が帰ってきた。
2人ともいつも通りの様子。
「お帰り」
「今、近場で探しているところだよ」
ジョーンが現在の状況について伝えた。
そのことに蓮太郎もピュラも賛成し、ひとまずは実習地を決定するまで話し合った。
「次は、実習前におこなわれるダンスパーティだよね」
ダンスパーティはヴァイタルフェスティバルの前に開催されるイベント。
男女一組で踊り、交流を深めることが目的となっている。
このイベントが仲良くなるきっかけとなる場合もあり、かなり人気が高い。
準備はいつも学生が準備することになっている。
「ジョーンはワイスを誘うんでしょ?」
「もちろん!」
「レンや蓮太郎は?」
「僕はノーラと行こうと思います」
「俺は考え中」
ジョーンとレンは予想通り、蓮太郎は不明。
こんな感じだろう。
そのあとは暇つぶしにボードゲームをはじめ、気づいたら外が暗くなっていた。
そのまま解散となり、蓮太郎とピュラ、ジョーンはいつも通り特訓をすることになった。
特訓が始まり、最初にジョーンはピュラからいつも通り教わっていた。
最近は特訓の成果が出始めたのか平均ぐらいには強くなってきた。
今までだと勝てない相手に勝てるようになっていき、誰とでもいい勝負をするようになった。
ただ、蓮太郎とピュラの場合はその限りではない。
二人と対戦したとしても勝ち目はないと思えるくらいにはまだ差がある。
ただ今日はジョーンがおかしい。
ジョーンの様子がいつもと違う。
そのことにピュラが気付いたのか、一度練習自体を止めた。
「そんなにダンスパーティが楽しみ?」
ピュラはダンスパーティが原因と断定したのか、予想したのかわからないが質問してきた。
蓮太郎からしてみればダンスパーティに行く気がないため、今まで忘れていた。
それくらいどうでもいいものだが、人によっては大事なイベントなのだろう。
「正直、かなり楽しみだよ」
「一緒に行けるかどうかはまだわからないけどね」
ジョーンはワイスを誘おうとしているが、それが失敗したときが不安なんだろう。
その気持ちはわかる。
誰でも不安になる。
「そういや、聞き忘れていたけどピュラは誰と行くの?」
「いないわ。そんな相手」
ジョーンはまさかと思ったのか、すぐに否定した。
さらに、もし嘘ならドレスを着て踊るなどと言い始めた。
本当なら、かなり面白い絵面になりそう。
ジョーンのドレス姿…。
吐き気をもよおす可能性があることに気づいたが、さすがにやらないだろう。
最悪の場合、ワイスの相手が女装したジョーンの可能性だって出てくる。
そんなことになればこの世の地獄が具現化する。
その場はそのまま流れ、特訓が再開された。
蓮太郎の戦闘術の特訓が終わり、その場は解散の雰囲気となった。
ジョーンは今からワイスを誘うらしく、足早にそのまま去っていった。
その場には蓮太郎とピュラが残された。
「ピュラ、相手はいないのか」
「ええ、いないわ」
様子を見るに、本当にいないらしい。
蓮太郎はここで決断した。
「なら、俺と行かないか?」
ピュラは驚きを隠せなかった。
「私、あまり踊ったことないわよ」
「同じだ」
2人とも笑いあった。
踊りの経験が少ない2人がペアを組む。
戦闘なら頼もしいのだがダンスとなると話は別。
そんな状態で行けば、笑いものになるのは確実だ。
だが、ピュラをほっとくことはできなかった。
「嬉しい」
「私そんなに友達いなかったの」
友達なら多いとは思わないが何人かはいたはずだ。
実際に入学したときに友達と一緒に歩いていた気がする。
「周りはみんな私の成績しか見てくれなかった」
「だけどあなたは違うわね」
たしかに成績は見ているが、それ以外の所も見ている。
面倒見がいいところや誰にでも優しいところ、誰にでも物事がいえるところなど、あげたらきりがない。
それくらいいい人だ。
「そんな人と行けるなんて、最高!」
ピュラの言葉はすべて本当なんだろう。
それからは2人で踊りの練習を毎日おこなうことにした。
そうすれば少しはましになるだろう。
そうして別れ、自分の部屋に戻っていった。
その後、部屋に戻っている途中に、ルビーが廊下で3人組とぶつかっているところを見た。
蓮太郎は近づいて話を聞いた。
どうやら3人組は迷子になっているらしく、その途中でルビーとぶつかったらしい。
一人は緑髪で褐色の女性で、もう一人は銀髪の青年。
最後の一人は黒髪の女性であった。
3人組はルビーの説明を聞き、その通りにどこかに行ってしまった。
だが、蓮太郎は黒髪の女性に違和感を覚えた。
学生にしては年齢が高いような。
アカデミーって入学するために17歳以上という制限はあるが、上限はないのだろうか。
ないならあの人は年齢はどれくらいなのだろうか。
そんなことを考えていると、ルビーに睨まれていることに気付いた。
「蓮太郎?失礼なこと考えていなかった?」
「カンガエテないよ」
片言になりかなり焦った。
勘が鋭い人が周りにいるのは怖すぎる。
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その日の夜。
学園に潜入したシンダー、エメラルド、ブラック。
書類上はミストラルの学生となっている。
「さっき会った子で赤髪の子、覚えている?」
シンダーの質問に両者は頷いた。
「ルビーって子でしょ」
「トーチウィックのお気に入りの子」
どうやらお気に入りにになっているらしい。
「そう」
「その時にいた黒髪の子は?」
これにはどちらも答えられない。
いくら何でも学生全員を覚えているわけではない。
「知らない人ね」
「あまり強そうには見えなかった」
どうやら本当に情報がないらしい。
学生を全て調べることは不可能であるため、こういったことはあるだろう。
そう納得した。
3人はなにやら話した後、各自眠った。
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次の日。
その日は普通に授業であったが、週末におこなわれるダンスパーティがよく話題に挙がっている。
人気のイベントだからなのか、かなり盛り上がっている。
だが、最近ブレイクがあまり寝ていないそうだ。
ダンスパーティが楽しみで眠れないならどんなに良かったか。
何やら調べ物をし続けているらしく、それで寝ていないらしい。
調べ物の内容を聞こうにもはぐらかされる。
ブレイクは授業に集中できなくなっているため、教授から何度か注意を貰う羽目になった。
成績自体は優秀であるため、罰をもらっていないのがせめてもの救いか。
その原因をルビー達ならなにか知っているのか聞いてみたが、どうもダメだった。
そのチームにダンス会場の準備という仕事が入ってしまった。
あの人ら大丈夫なのか?
蓮太郎も含め、そう考えていた。
蓮太郎たちは準備を手伝いながらブレイクについて聞き出そうとした。
だが、何度聞いてもはぐらかされる。
ヤンが連れてくるといっているが、正直不安だ。
現状はヤンに任せたほうがいいのだろう。
ダンスパーティ当日。
ヤンが宣言通りブレイクを連れてきた。
何があったのかは知らないが、正直来るとは思っていなかった。
その方法を知りたくなった。
一応蓮太郎は始まる前に何度か聞こうとしたがはぐらかされてしまった。
ヤンとブレイク、ワイス、ルビーは準備から運営までを任されているらしく、忙しそうにしている。
レンとノーラのペアは踊り、ワイスとジョーンのペアは踊り疲れたのか、休憩していた。
蓮太郎とピュラのペアも踊っていたが、周りとのレベル差があり、そのまま残りの時間を休むことにした。
「やぁ、楽しんでる?」
ヤンがブラックとエメラルドの2人を見つけ、話しかけていた。
いつの間に仲良くなったんだ?
ヤンは気づいたら友達を増やしているから面白い。
蓮太郎にはできないことである。
周りは踊り、壁際の人らはそれを見ながら食事を楽しんでいる。
そうして、時間が流れた。
ルビーは踊りたくなく、外でくつろいでいる。
外で眺めていると、何やら動く影を見た。
それは屋根の上を移動しており、どこかに向かっている。
ルビーはそれを確認すると、その影を追いかけた。
その後ろには仮面の男もいたがルビーは気づくことはなかった。
その影はCCTタワーと呼ばれる通信施設がある建物に入っていった。
そこで警備している人らはその影によって倒されていった。
警備もそれなりに強いはずだが、簡単に倒されていく。
だが、あとから入ってきた仮面の男によって影は妨害を受ける。
「あなた、只者じゃないね」
「その仮面、見せてくれるとありがたいんだけど」
影(シンダー)が仮面の男と対峙している。
シンダーはそのものが普通ではないことに気付いている。
明らかに強い。
もっと言うならば、人なのかすら怪しい。
「それはできない」
そのままシンダーは強行突破をしてきた。
だが、仮面の男が出す斥力フィールドによって、失敗に終わった。
突破を試みたシンダーは驚きの表情を見せている。
さらに不幸なことに、足音が一つ近づいてくる。
シンダーと仮面の男の戦闘に気付いたルビーが到着したのだ。
シンダーとの戦闘でルビーが邪魔になる可能性を考慮し始めた。
シンダーは入り口をルビー、エベレーターを仮面の男によって封鎖されており、挟まれている。
シンダーの目的はそのタワーの最上階にあるコントロール室なのだろう。
これ以上は危険と判断したのか、シンダーはルビーのほうに突撃し、脱出を試みた。
目に見えぬ速さで突破を試みる。
「邪魔だ!」
シンダーの突撃を防いだところに仮面の男が攻撃を加えた。
わざわざ近づいての格闘。
音もなく近づいたためか、シンダーは気づくのが遅れた。
それをシンダーは防御したが、吹っ飛ばされた。
かなりの勢いだ。
シンダーは防御したのにも関わらず、面白いくらい吹っ飛んでいく。
そのまま壁に激突し、シンダーがうめき声をあげる。
面白いからそのまま吹っ飛んで気絶してくれたらいいのに。
これ以上は不可能と判断したのか、シンダーは壁に穴をあけ、逃走した。
人一人くらい入れる大きさの穴を即座に開けていった。
その場には仮面の男とルビーがいた。
ルビーはすぐにオズピン教授に電話で説明し、仮面の男と向き合った。
「あなた、トーチウィックと戦っていた人?」
仮面の男はおそらく笑っているのだろう。
大げさに反応しながら答えた。
「そうだ」
「あと、私は蛭子影胤だ」
「よろしく」
「ルビーです」
「よろしく」
いうだけ言って蛭子はどこかに消えていった。
あの人は一体何者だろうか。
その疑問がルビーの中に残っている。
そうしてルビーが一人きりとなったタイミングで教授たちが到着した。
そのまま流れるようにグリンダ教授が到着し、怒られた。
どうやら、学生が一人で脅威に立ち向かうなということらしい。
仮面の男の話をしたが、それとこれとは話が別として無意味だった。
そのままオズピン教授から聞き取りをおこなわれ、その日は部屋に戻った。
ヤンやブレイク、ワイスから何があったのかを話し、その日は就寝した。
蓮太郎はルビーから仮面の男について話を聞いた。
蓮太郎らがあったことのある男と特徴が一致した。
だが一体なにものなのか。
まったくわからない。
だが、見覚えはある。
ならそのうち思い出すだろう。
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何もわからないまま、実習の日を迎えた。
蓮太郎たちは街周辺でグリムを狩ることになった。
当日は担当のハンターの指示に従って、行動することになる。
そうして一日目が始まった。
チームでまとまってかる。
一日目はそれだけで終わった。
特に大きなトラブルなどなかった。
二日目も同様にグリムを狩り続けた。
前日よりは危険なところに行くらしいが、やることは変わらない。
特に何もない。
そうして二日目も終わった。
学生がいるからいつも通りの仕事をするわけにもいけないのだろう。
あくまでこれが仕事体験であることを頭では理解しているが、正直つまらない。
もう少し危険なところへ行ってもいいと思うが、そういった驕りがすぐに死と繋がる。
なら今くらいがちょうどいいのかもしれない。
まだまだ動けるため、街を歩くことにした。
各自、お店を見て回っている。
そのとき、爆発音がした。
それもかなり大きい。
振動がここまで来た。
「爆発したぞ」
街の人らが外に出てきた。
様子を見に来たのだろう。
出てきた人は決まって音のしたほうを見る。
ご丁寧に煙まで上がっている。
ここまではいい。
だがそこにグリムを現れた。
おそらく爆発のあったほうからなのだろう。
そうなるとどうなるだろう?
グリムが街に現れると、例外なく街はパニックになる。
今回も当然なった。
あたりは悲鳴と逃げる人の波がすぐに形成された。
逃げようとしても逃げられない。
ならどうするか?
「グリムの排除を」
「爆発のほうから来てない?」
ジョーンが指示を出したが、ピュラが違和感を話した。
確かに、グリムは爆発したほうから来ている。
そこに原因があるのは確かだ。
ここにいる全員が同じように考えている。
「よし!そこに向かうぞ」
ジョーンが先頭になって爆発のほうへ向かった。
途中、グリムを相手しながらだったのですぐに駆け付けることはできなかった。
到着すると、ルビー達がグリムと交戦状態になっており、大量のグリムがそこにはいた。
爆発によって形成された穴からは常に足音が鳴り響いている。
そのすべてがグリムだとは考えたくない。
さらにトーチウィックがそこにいた。
彼が主犯か。
各自、グリムを相手しながら数を減らし続けた。
タワーディフェンスのキャラクターはこんな感じなのだろう。
常に来る敵が多く、疲れが見えてきた。
だがお互いがカバーを取れる位置におり、簡単には倒される状態ではない。
「ごめん、グリムそっちいった」
「こっちで処理しとく」
「ピュラ!飛んでるやつの処理お願い!」
「了解」
お互いがお互いを援護しながら戦っており、疲れていたとしても簡単には敗北する可能性はなかった。
ここまで連携が取れているのはかなり素晴らしいことではないか?
この光景をどこかの人らに見てもらいたいものだ。
そうして数が減っていき、ルビー達がこれを引き起こしたであろうトーチウィックを逮捕したころ。
グリムはほとんどいなくなった。
トーチウィックはちょうど来ていた軍関係者に引き渡されていく。
だが、なにか巨大な何かがやってくる。
足音は一つだがそれでも凄まじい。
常に地震があると思うくらいには振動が激しく、音もかなり大きい。
近くだと思っていたが違った。
少し遠くから?
音のする方向を見ると、サソリ型のグリムがそこにいた。
あまりの巨大さに遠近感が狂ってきた。
もしかして意外と小さい?
そう思いたいが、実際はそうでもない。
そこには焦げ茶色の肌が見え、ところどころ巨大なイボが見える。
頭部は異常なほど巨大化しており、曲がったくちばしが突き出している。
右目が異常なまでに巨大で、左目は極端に小さい。
あれが音の正体だ。
軍のロボット兵士が対処しているが、何もできていない。
地上から射撃し続けているが、効いていない。
空軍も対処しているが、効いていない。
ルビーたちも軍もそれがなんなのかがわからない。
あの正体をこの場でそれを見たことがあるのは、蓮太郎くらいだ。
「ゾディアックガストレア・スコーピオン」
思い出した。
あれは以前、蓮太郎が天の梯子と呼ばれる兵器で倒したはずだ。
それがグリムとなって、ここに現れている。
なぜ?
この光景を見たトーチウィックは笑い続けている。
おそらく彼の予想にはなかったが、それによって目的を達成することができるのだろう。
それにイラついたヤンが殴り、気絶した。
意外とあっけない。
この場にいる全員が満身創痍。
勝てない。
終わりだ。
蓮太郎も同じだ。
ここに天の梯子があればまだなんとかなる。
だが、今回ばかりはそんなものはない。
ここは東京エリアではない。
かといって持ちだすこともできない。
「蓮太郎君!」
上から声がした。
民間人は避難したはずだ。
では、だれか。
降りてきたのは仮面の男、蛭子影胤だった。
「思い出したぞ!」
「君と僕は同じだ!」
「「さぁ、あの怪物を殺そうではないか!!」」
この男は何を言っているのか。
そう思うのが普通だろう。
だが蓮太郎はあのガストレアを見たためか、この男を思い出した。
蛭子影胤。
前回、星々の遺産を使用してこのガストレアを呼び出した張本人で、次の関東会戦で協力した人物。
今回も呼び出したのか。
だが、星々の遺産はない。
となると、今回は自然発生したのか。
それよりも影胤だ。
まさしくジョーカー。
心強い。
「ああ!」
「思い出したさ!くそみたいのなものをな!」
蓮太郎はこの男に対して感情が混ざっている。
あのガストレアを呼びだしたことへの怒り、協力してくれたことへの感謝、死にかけたところに治療してくれたことへの感謝、そのすべてが混ざる。
だが今は協力してくれるだけありがたい。
「では、名乗るぞ」
懐かしい。
以前は一方的に名乗っていたが、今回は違う。
「元陸上自衛隊東部方面隊」
「787機械化特殊部隊」
「新人類創造計画」
「蛭子影胤」
「元陸上自衛隊、東部方面隊」
「787機械化特殊部隊」
「新人類創造計画!」
「里見蓮太郎!」
2人はお互いを意志を確認すると、すぐさま走り出した。
最強の矛と盾、2人がいれば勝てる。
あのグリムにだって…。
ピュラが蓮太郎を止めようとしたが、できなかった。
レンやジョーン、ブレイクらが顔を見合わせ、二人の言葉を理解しようと試みている。
その中でピュラだけが小さく「行かないで」とこぼしていた。
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蓮太郎の後ろに影胤が付く。
後ろの足音を感じながら走り続ける。
2人でスコーピオンの前に到着した。
そのスコーピオンは二人の来訪を予期していたのか、歓迎の咆哮をあげた。
地平線まで響くであろう勢い。
それが開戦の合図となった。
スコーピオンは即座に攻撃。
触手を平行に薙ぎ払う。
そこらへんにあった残骸を全てはじきながらの攻撃。
それを影胤のイマジナリーギミックで防御。
空中に瓦礫が留まる。
その隙を蓮太郎が攻撃する。
勢いよく飛び出し、地面付近にあるイボを攻撃。
「焔火扇!」
蓮太郎渾身の右ストレート。
だが効いているのかがわからない。
イボは破壊されたが、そこから体液が流れ出していない。
今度は蓮太郎に攻撃が集中した。
見える範囲のすべての触手が蓮太郎にまっすぐ襲い掛かる。
無駄のない攻撃に見えた。
「ホームレス・リーパー」
影胤が鎌状のものを飛ばして攻撃。
切れ込みを作ることに成功した。
そこに蓮太郎が一撃をいれ、触手の切断に成功する。
地面に轟音を立て触手が落ちた。
その衝撃に目を細める。
「最強の矛なのに切れ込みすら入れられないのかい?」
「うるせぇ!」
まだまだ冗談を言い合う余裕はあるらしい。
敵の攻撃を各自でよけ、同時に発砲。
隣から発砲音が聞こえるとともに蓮太郎の肩にするどい反動が来る。
一部に傷をつけることに成功した。
このとき、発射された銃弾はこの世界のものである。
それでも効果があるなら、このグリムはゾディアックとは別物だ。
やはりあの時にスコーピオンは死んでいた。
そのまま攻撃していると、空から戦闘機が攻撃を仕掛けている。
ミサイルによって爆発音が鳴り響く。
その衝撃は蓮太郎たちにも届く。
グリムは触手で戦闘機を迎撃しようとしている。
空中の攻撃にグリムが対処するあいだに2人は自由に攻撃することができた。
こちらに来る触手が確実に減り続けている。
動きながら何度も攻撃を続けた。
だが、ここで不幸が起こる。
グリムが陸軍に攻撃をし、陸軍の戦車はそれを跳ね返したが、それが蓮太郎の脇腹に命中。
脇腹がなくなる。
そのまま出血。
蓮太郎はその場で倒れ、動けなくなった。
そこにピュラたちが到着。
ピュラが守りながら蓮太郎を運んでいるが、かなり厳しい。
血が流れ続けている。
影胤もなんとか近づこうとするが、それも難しい。
触手によって阻まれている。
ーーーーーーーーーーーーーーー
蓮太郎は薄れゆく意識の中、頭になにか浮かんできた。
少女だ。
ツインテールが特徴的な少女だ。
その少女が自分の顔を見て、涙を流し続けている。
なぜ涙を流し続けているのか?
そのまま自分の体を見る。
見るとそこには影胤と二刀の持っている少女の二人がいた。
ああ、そうか。
この時も脇腹をやられたのかぁ。
ならその時に死んでいるはずだ。
ならこの時はどうしたのか?
気合で復活?違う。
相打ち覚悟?違う。
なら…、なんだ?
『できれば使うなよ』
突然声が響いた。
室戸菫医師だ。
そうか、AGV試験薬か!
これは室戸菫という人物がガストレア大戦中に作り出した人間の再生能力を瞬間的に飛躍させる薬だ。
その効果はどんな再生能力も真っ青になるくらいだ。
20%でガストレアになることを除けば最高の薬となっただろう。
だが今はそんな薬はない。
だが幻覚なのか、自分の手元にそれがあり、そのすべてを打ち込んでいる。
ーーーーーーーーーーーーーーー
心臓が突然跳ね上がり、現実に戻される。
まだ終わっていない。
動け!
動くんだよ!
「また私から消えないで!」
ピュラだ。
少女とピュラの見分けがつかなくなっていた。
さすがにダメージが大きいか。
レンのセンブランスで存在感を消し、察知できなくなっている。
そのあいだになんとか遠ざけようとするが、難しい。
だが、存在感を消してくれるだけありがたい。
蓮太郎はあの日と同じような感覚でセンブランスを発動させた。
おなかのあたりが熱くなる。
目が赤くなりかける。
体が膨張するような感覚に襲われる。
全身の骨が異様な音を立てながら鳴る。
体がけいれんし、経験したことのないような寒気がする。
だが、耐える。
以前も耐えたように。
脇腹が再生される。
その様子は…そこにいた全員が驚愕するほどに…。
内臓も同様に。
その様子を見たメンバーは何を思ったのだろう。
瀕死からの再生。
奇跡ではなく、再生への軌跡。
蓮太郎は立ち上がり、そのままスコーピオンに向かっていった。
それを見た影胤はエンドレススクリームを発動した。
斥力フィールドで作られた槍がスコーピオンに突き刺さる。
グリムの注意が影胤に固定される。
触手がすべて影胤に集まる。
『里見君!今だ!』
センブランスの能力で体は治癒している。
今ならいける。
決める!
そのままカートリッジを起動し、接近。
「「「隠禅・哭汀 全弾撃発(アンリミテッドバースト)!!!」」」
蓮太郎の持つすべてのカートリッジを起動。
そのままスコーピオンの頭めがけて攻撃。
頭を破り、内部に侵入。
それでも速度は遅くならない。
そのまま貫通し、スコーピオンは倒れた。
その後、動くことはなかった。
周りはスコーピオン撃破に湧き上がっているのを、薄れゆく意識の中実感した。
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蓮太郎が目覚めたのは、病室であった。
右手と右足はバラニウムの義足が姿をあらわしており、横には椅子に座って寝ているピュラがいた。
「おーい、起きてる?」
蓮太郎がピュラを起こそうとした。
その声を聞いた瞬間、ピュラが即座に蓮太郎に抱き着いてきた。
その顔には涙が溜まっていた。
「勝手に行かないでよ」
「すまん」
すぐさま、レンやノーラ、ジョーンが現れ、蓮太郎の無事を祝いあった。
とにかく騒ぎすぎて看護師に怒られるぐらいには。
その後すぐに医者がやってきた。
医者曰く、
「あの状態でなぜ生きているのかわからない」
「あなたの体のなかに未発見の生物が死体で発見した」
「あなたの体について解剖したい」
この医者の狂いにはどうも懐かしさがある。
もし室戸菫医師といわれても納得はするかもしれない。
医者が看護師によって回収されたあと、
「あのさ、それはなに?」
「あと、新人類創造計画ってなに?」
ジョーンが今一番気になっているであろうことを聞いてきた。
おそらく、全員同じだろう。
かといって説明してもいいものなのか?
蓮太郎は左手で頭を少し掻いた後、隠し事はよくないと思い、話すことにした。
「これは義手と義足」
「中に推進力を生み出すカートリッジがあって、その勢いを利用して移動することができる」
「あと新人類創造経過は、化け物に対処するために作られたサイボーグっていえばわかるかな?」
これで説明は大丈夫なのか?
一応説明で話していないことはあるが、ゆっくり話していこう。
正直説明が苦手でうまいこと伝わっていないと思う。
あと自分の世界のことを説明するのは苦手だ。
「蓮太郎がサイボーグであっても、蓮太郎であることは変わらないでしょ?」
「なら、問題ないじゃない」
ピュラの意見に全員が賛同した。
蓮太郎はいい人でチームを組めたことに感謝した。
いつも自分の周りは恵まれている。
事件はトーチウィックの逮捕とスコーピオンの撃破によって終結した。
調べは続いているが、背後の組織がまったくわからない。
トーチウィックも黙秘を貫いている。
最後に出たグリムについても未だ調査中とのこと。
影胤からも話を聞きたかったが、すでに消えているらしい。
彼のハンターライセンスを調べ、そこに記載されている電話番号に電話しようとしたが、繋がらないらしい。
だが、ヴァイタルフェスティバルのためにそろそろ動き出さなければならない。
そのためにも、まずは退院しなければ。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
ここまで、元のストーリーに色々内容を追加したような話となっています。
そろそろオリジナルストーリーを作りたいんですが、なかなか難しい。
そのうち書くでしょキット。
それでは、さようなら