シド・カゲノーの許嫁   作:産業革命

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もしオリ主が原作にでるならの妄想
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復讐系ナンバーズ


『竜の魔女』の誕生

 極端な話だが、人間という生き物は2種類に分けられる。

 

 即ち、神によって『選ばれた』かどうかだ。

 

 ~とある神官の発言~

 

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 この世界には『伝説』として語られる物語が数多く存在している。

 

 伝説と一口にいっても内容は様々であり、大半は真偽の程も怪しい御伽噺程度でしかないが、中には本当に実在している(か、していた)モノもあるのが面白いポイントだ。

 有名な伝説でいえば『魔人と三英雄*1』、『赤き月*2』、『黒キ薔薇*3』等々。後は『霧の龍の古都*4』、『海底遺跡』とかだろうか。

 

 そんな数ある伝説の中でも最も新しく、最も奇妙な伝説がミドガル王国とは少しばかり離れた北の地に存在する……

 

 

 ……いや、()()と云うべきだろう。何故なら、その国はもう存在しないのだから。

 

『シャドウガーデン』の設立とほぼ同時期に生まれたその伝説――当時は未曽有の大事件として報道され、当時記録された凄まじい魔力と痕跡から『魔竜事件』とも名付けられたその伝説。

 たった一人でありながら舞台となった国のほぼ全ての民と都市を跡形もなく灰燼に変え、ただの一人の生存者を除いて一国を滅ぼした世紀の大虐殺。

 

 そして、その事件の首謀者と思しき正体不明の人物。世界の歴史に極悪非道の代名詞として名を遺す人物の名を『竜の魔女』と呼んだ。

 

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 ミドガル王国の少し北側に位置し、険しい山々に囲まれた厳冬の国『クラーゲン公国』。

 

 領主の一族である『ブレル公爵家』共々それなりの歴史を誇る国だが、特にこれと言った名産品も資源もなく、周辺国と比べても突出する要素がない凡庸な人間主体の国である。

 それに『公国』と名乗ってはいるが、実際には都市国家程度の領地を保持しているに過ぎず、世界を闇から支配するディアボロス教団にとっては『取るに足らない弱小国』に過ぎなかった。

 

 

 そんな小国であったクラーゲン公国だが、彼の国に対する教団からの認識が突如として一変する事態が起きる。

 

 それは当時のブレル公爵家当主の青年『ユーヤ・ブレル』が『悪魔憑き』を発症した妹『シーナ・ブレル』の教団への引き渡しを拒否した事と、それに対する懲罰と『悪魔憑き』奪取の為に教団が派遣した部隊が壊滅した事である。

 

 懲罰部隊といっても現実の懲罰部隊の様に犯罪者の寄せ集めたものではなく、その役割は教団に反抗した者を粛正する矛としてである。

 それも何時ぞやの人斬り騒動の様にチルドレン3rd(雑兵)数人等という使い捨てではない。教団が誇るネームドの1stを複数名有する総勢100人を揃えた精鋭主力部隊がである。

 

 教団の歴史上稀に見る大損害――但し、シャドウガーデン出現前の被害基準――であり、当時の上層部は驚愕と共に頭を抱えた。

 

 

 教団が今回これ程の被害を出して頭を抱えた理由、それは険峻な山岳地形である事という原因以外に二つの訳あった。

 

 一つは、教団に反旗を翻した公爵とその臣下が稀代の英傑であった事。

 

 若くして公爵に就任したユーヤ・ブレルは正しく『英雄』と呼ぶに相応しい人格と実力の持ち主であり、そして大事なモノ(遺された唯一の家族)の為には文字通り全てを捨てて一人でも戦える人物だった。

 彼の臣下もまた同様だった。時代が時代なら誰もが歴史に名を馳せたと思われるほどの才能と武勇に優れており、裏切り等といった行為が万が一にもあり得ないと断言できる程、彼等彼女らの忠義と友情、それに国民からの信頼も本物であった。

 

 そして二つ目は、取るに足らない小国であると思われたクラ―ゲン公国には、教団や大国の軍事力を根本から覆す最終兵器として古代遺物(アーティファクト)『強欲の瞳*5』が存在した事。

 

 この世界における戦闘の主力は『魔剣士』であるのは周知の事実であり、疑いようもない常識である。

 誰しもが多少の差はあれど魔力の使用を前提とした戦い方をするし、実力者であればある程魔力を当てにして戦う傾向がある。

 

 そして、この傾向は教団の全戦闘員にも当てはまる……というよりも、教団は特に当てはまるといった方が正確だろう。

 戦争の勝敗が魔剣士の質と数で決まる程に重要であるこの世界において、千年以上に及ぶ研鑽を積んだラウンズを始めとした圧倒的なまでの魔剣士の質こそが、教団の強みであり力の源だった。

 

 今までの常識であったその絶対的な優位が、しがない小国如きに失ったのだ。この衝撃に教団は揺れに揺れ、地域担当者の責任問題にまで発展し、遂には問題そっちのけで内輪揉めと派閥争いを始める始末だった。

 

 

 クラーゲン公国の問題は放置できない。これを放置すれば教団への重大な反乱分子になる事が容易に予想できる。

 

 しかし、これ以上人手を割く事は避けたいのも事実。もしこの反乱を鎮圧するのならあまり多いとは言えない人的資源を浪費する事になり、今後の活動に悪影響が出てしまう。

 

 最小限の人員で問題を解決するにはどうすれば良いものか、と教団は考える。勿論、派閥争いも同時進行でだが。

 

 

 

 ――彼女が父親に連れられて現れたのは、そんな時だった。

 

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 そこは良い場所だった。

 

 雄大な山々と透き通った湖に囲まれ、豊かな自然と動物が共存する楽園だった。

 山岳と北国特有の冬の寒さこそ厳しかったが、それに勝るとも劣らない魅力に溢れていた。

 

 

 彼らは良い人達であった。

 

 南の諸国に比べて決して豊かとはいえない暮らしながらも、彼らは何時でも笑顔と活気に満ちていた。

 災害や飢饉等といった何より辛い状況でも、国を、主君を信じて協力してくれた。

 

 

 家族にも恵まれた。

 

 ごく僅かな記憶の中ではあるが、両親は私を深く愛してくれていたのだと思う。

 そんな両親を幼くして事故で失った後に唯一残された血縁者である兄も、私の事を目に入れてもいたくない程大事にしてくれていた。

 

 

 ――しかし、全ては終わった過去の思い出だ。

 

 私の大事な国は、民は、家族は、たった一人に滅ぼされた。

 全てが壊れたあの日、あの時の事を、2年経った今でもよく覚えている。

 

 当然だ、忘れられるはずがない。その為だけに恥を晒して今までも、そしてこれからも生きていくのだから。

 

 

 

 竜の咆哮と同時に、今まで侵略者達を撃退出来た要因である結界が失われた。それと同時に今まで使えた魔力が突然錬れなくなり、私も暴走する魔力を抑えきれなくなった。

 更に竜に乗って城内に黒フードの『魔女』が飛来してきた。今まで通り侵入者を排除する為に奴に立ち向かった兵士達は全て一太刀で切り伏せられ、人によっては突然発火したり破裂して抵抗する間もなく殺されていった。

 

 魔女が求めているモノは言わずとも分かっている。悪魔憑きとなった私だ。少し前の謎の襲撃者達も私を狙っていたし、魔女の進路は間違いなく此処を目指していた。

 それを阻止するために兄たちは戦っていたのだし、そして今までは撃退できていた。

 

 ――でもあれは、あの魔女だけは駄目だ。

 

 一目見るだけでわかる空間を覆う圧倒的な魔力量、戦いに身を置かずとも感じる数多の屍を築いた者のみが漂わせる死臭、決して弱くないだろう兵や将軍達の全力を意に返さない程に隔絶した実力と剣技。

 人の身では逆立ちしても敵わない……いや、逆らってはいけない理外の存在。そう、あれは人間ではなく、『神』とでも呼ぶべき存在に違いなかった。

 

 

 気付けば過去の栄華が嘘の様に思えるほどの鮮血と肉片に塗れた城内を、戦闘による火の手と悲鳴があがるのを背にしながら、私は兄に背負われて逃げていた。

 その間にも近道を作る為だろうと思われる城壁の破壊音が近付いており、逆に人の雰囲気は驚くほどの勢いで消えていった。

 

 

 

 無事に城の最奥の部屋に辿り着き、城外へと続く脱出用の隠し通路を開けようとした次の瞬間の事だ。

 

 この場所に至るまでに多くの戦闘を繰り返したにも関わらず、全くの無傷である魔女が破られた天井から突如姿を現した。

 

______________________

 

 

 ――最初から分かり切っていたではないか。闇に逆らう事がどのような結果をもたらすのか。

 

 最後の最後になって表れた魔女を前に、悪魔憑きによる腐敗で動けない妹を背にした男はそう思った。

 

 

 

 男が教団の存在と悪魔憑きの真相を知ったのは、彼の両親が事故死――但し、本当に事故なのかは怪しい――で他界して直ぐの事だった。

 御伽噺で伝わる魔人ディアボロスの時代に建国されたクラーゲン王国、その末裔にして統治者たるブレル公爵家当主のみに代々受け継がれてきた書物に古代文字で書かれたその真実は、男の世界に対する認識を一変させるのに十分であった。

 

 だからこそ、男はいざという時の為に備えてきた。

 

 有能且つ教団に反発する人材を各国から集め、自身も魔剣士としての実力も世界有数と呼ばれるほどに身に付けるだけでなく、国が封鎖されても困らぬように自給自足体制を発足させた。

 止めには最終兵器としてアーティファクトも用意し、事実教団の実力者ですら打ち負かす戦果を挙げていた。

 

 全ては教団から国と民、そして最愛の妹を守るために。

 

 だが……

 

 

 

「――なんだ。『英雄』とはいえ、この程度か」

 

 結局、この有様だ。護ると誓った国は滅び、導くべき民は殺され、世界でただ一人の妹すら守れず、自身は致命傷を負ってもう長くない。

 妹の悲鳴が聞こえると同時に、最後の賭けであった希望の光が潰えていくと感じた。

 

「……一応聞きましょう。何か言い残す事は?」

 

 きっと期待外れの強さだったのだろう。膝をつく私の目の前にまで近づいてきた魔女は、私に対して失望した事を隠さずそう聞いてきた。

 

 まだ見ぬ同志達よ。私では駄目だった。教団に対抗できるだけの力も、知恵も、何もかもが足らなかったのだ。道半ばの今ここで私は果ててしまう。

 

 だから――

 

 

 

「――教団に伝えておけ。何時の日か必ずや、勇気ある者が貴様らの首を柱に吊るしてやるとな!」

 

 悔し紛れの虚勢とも、負けず嫌いの最後のプライドともとれるその科白に対し、何と魔女は笑みを浮かべてこう言った。

 

「……そう、分かったわ。確かに伝えておきましょう。それに――」

 

 

 

 

 

「――あなたの言う人物像に思い当たる人がいるもの」

 

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 懐かしい、のだと思う。少なくとも最初の決意を思い出す事は出来た。

 

「――…オタ様。起…てくだ……、イ………」

 

 兄は間違っていなかった。それが事実であり、あの魔女も本当の事を言っていた。

 

「……いい加減に起きてください!『イオタ』様!」

 

 そんな思考からよく響く呼び声で目を覚ますと、そこには副官担当である獣人の子が少し不満げな表情をして待っていた。

 それに場所も夢の中で直前までいた今は亡き城内ではなく、私に与えられた見慣れた執務室だった。

 

「ごめんなさい、少し寝てしまって。」

 

「いや、それはいいんですけど……」

 

 そういうと同時に、副官は少し汗でぬれた書類を渡してきた。

 

「アルファ様より指令が届いております」

 

 

 

「――内容はディアボロス教団の最高戦力『竜の魔女』の調査です」

 

____________________

◯イオタ

 

 シャドウガーデンの構成員『ナンバーズ』の幹部『文字付』が一人。担当任務は単騎での強襲と偵察であり、実力は七陰相当。

 種族は悪魔憑きとしては珍しい人間で、美しい青髪と体形の持ち主。何がとは言わないが、スライム率は0%。

 

 旧姓はシーナ・ブレル。由緒正しい公爵家の直系の血を引くお姫様であり、教団による粛清『魔竜事件』唯一の生存者。

 そして事件の主犯『竜の魔女』を見て生き延びた数少ない人物。

 その出自故かガーデン内でも極度の教団絶対殺すウーマンであり、特に亡き兄の仇である魔女に強い執着と憎悪を見せている。

 

*1
原作最初のアレ

*2
無法都市のア(re)

*3
オリアナの(re)

*4
カゲマス(re)

*5
原作とは違う完全版(という設定)。

原作の物と同様の魔力吸収装置と制御装置、それに加えて完全固定式の範囲増幅装置という3つの装置から構成されており、原作で学園を覆う程度であった範囲は国(都市)全域を覆う程にまで拡張されている。全国民は登録済み。




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