オラリオで映画を作るのは間違っているだろうか   作:るい

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この前始めて誤字報告を戴きました。ありがとうございます。

今話でようやくシャーリーの目標的なものが明示されます。長かった…………しかも過去編て。



三日前くらいからやっているダンクロのクリスマスイベントで、フィンが「ロキ・ファミリアの文化面を!」みたいなことを言ってて、本作ならシャーリーが担っているな、と変な偶然を感じてしまいました。


人工雪……撮影で必要になる…………雪像……作れる?


002 吟遊詩人シャーリー・ウォルバーグ

 

 

 

 

 とある山奥の村、その中でも更に村はずれな小高い丘の上に一人の少女が佇んでいた。

 つばの広い羽根つき帽に、発育途上の身体には未だオーバーサイズの薄汚れた青い外套。その中で腕に抱えるのは一面の竪琴(リラ)

 少女の風体はまさに、一端の吟遊詩人のそれであった。

 

 少女の腰近くまで伸びた松葉色の長髪が山風に吹かれて左の方向へ緩く流れる。

 風の音と共にザリッという草を踏みしめる音が背後から届き、少女は振り向いた。

 

 白い朝日を反射する、眩い銀髪が視界に入る。

 

「本当に、行くのかい?」

「うん。もう決めた」

 

 丘の上に姿を現したエルフは、山の麓に広がる都市を見下ろして最後の機会を与えるように問いかける。

 彼を一瞥した少女は前へと向き直り、悩むそぶりも見せずに答えた。

 

「あそこは今相当荒れていると聞く。それでも────」

「行く。もうその話はしたよ。荒れているからこそ、誰かが行かないと」

 

 少女の決意は固く、明白な危険を提示されても変わらない答えを告げた。もう彼を見ようともしない鋭い松葉の瞳が、より一層真剣な物になる。

 

「わかったよ。なら…………」

 

 その瞳の鋭さに意思を変えることは不可能だと感じたのか、エルフは呆れたように一度肩をすくめて、胸元に手を入れ一つの小箱を取り出す。

 

「誕生日おめでとうシャーリー。こんな物しかないけれど、どうか許してくれ」

 

 エルフはまるで劇でも演じているかのようにわざとらしく膝をつき、手に持つ小箱を少女へと献上する。

 差し出された小箱に目を丸くさせた少女の視線が突き刺さる。だが直ぐに得心がいったようで、その年に見合わぬ鋭さを放つ端麗な面立ちに柔らかな苦笑を浮かべた。

 

「去年も良いって言ったのに……」

「そう言わないで受け取ってくれ。今まで僕について来てくれたお礼だよ。一月ばかし早いけど、もう会うことも早々ないだろうからさ」

 

 茶番には飽きたのかエルフは従者の振る舞いを止めて立ち上がり、親愛を覗かせる笑顔で少し強めにプレゼントを少女の手のひらへと押しつけた。

 呆れと諦めの入り交じったため息をつき、シャーリーは小箱の包装をゆっくりと開く。包みを剥いだ先に鎮座していた黒塗りの箱の蓋を開け、中に入っていた松葉色をした涙型の装飾品(アクセサリー)を手に取った。

 

「わ、ピアス?また高そうな……旅も結構カツカツなのに」

「餞別代わりだ。少しくらい奮発もするってものさ。それに、水も持たずに旅しようとしていた君の無謀さに比べたら負けるよ」

「いつの話を……」

 

 古い醜態を引き合いに出され、エルフの金遣いに苦言を呈していたシャーリーはダメージを受けて引き下がる。このままの流れではからかわれるし、この耳飾りを受け取らねばこれまでの日々が全て嘘になるようにすら思えた。

 愛用品を崖に落としてから半年ほどは何もつけていなかった穴に、新しく金色の曲がった針が通る。

 

「――――似合う?」

「似合ってるよ」

「そう、良かった…………その……今までありがとね、リュミエール。私、貴方のこと父親みたいに思ってた」

「ああ、僕も娘だと思って接していたよ」

 

 

 普段あまりそういったことを口にしないシャーリーの掛け値無い信頼と好意が含まれた言葉は、リュミエールの胸を撃ち抜いた。目尻に涙を浮かべながら、彼は娘をふんわりと優しく抱き締める。

 時間にしておよそ三年もの間、同じ道を歩き、同じ食事を食べ、同じ苦痛を味わい、同じ喜びを分かち合ってきた片割れとの別れを惜しみ、瞼を閉じる。

 長命種として長い時を生きる彼の人生では、ほんの短い時間でしかない。けれど、少女との旅は彼にとってこれまでになく楽しい時間だった。

 

 二十秒ほどして離れた二人の顔には、明るい笑顔が浮かんでいた。

 

「じゃあ私、行くよ」

「うん。元気でね」

 

 

 リュミエールに見送られ、シャーリーは山を下る。

 彼女の目指す土地は英雄の地。

 怪物を無限に産み出す、謎に包まれた迷宮のある場所。

 天を衝く白い巨塔を中心とした、世界で最も発展した円形都市。

 

 救世を約束されたその都市の名は『オラリオ』と言った。

 

 

 

 

 

 

 

 シャーリー・ウォルバーグがリュミエールに拾われてからの旅は苦難の連続であった。

 

 体力は無く、特技もなく、情熱もなく。ないない尽くしの彼女の旅は、当然ながら好調とは言い難かった。

 町から町、村から村へと長期間の滞在は行わずに移動時間がほとんどを占める吟遊詩人の旅はシャーリーが予期していたほど面白くはなかったのだ。

 

 更に、リュミエールは彼女を足手まといの子供としては扱わなかった。庇護を与えるわけではなく、ただ同行させるだけでもなく、一人前の労働力だと考えていたのである。

 

 ついこないだまで引きこもって生活をしていた少女がいきなり大人と同じだけの働きをしろと言われて、一体どうして出来るだろうか。

 何度も失敗を重ね、その度に反省会。怒髪衝天とはいかず、むしろどこか黒い笑みで淡々と何が悪かったのかを自覚させられる時間は、苦痛で仕方が無かった。

 自らの待遇に不満を覚え、シャーリーは幾度か本気で逃げだそうと思ったこともある。

 「貴方にはついて行けない」と面と向かって言い放ったことさえある。

 だが、いざ出立の日となるとどうにも夜に見るリュミエールの寂しそうな顔を思い出し、一人で行かせる気にもなれずに旅について行ってしまうのだった。

 

 

 そんな時期が一年は続いた頃。

 いい加減に慣れも生じて、シャリーは旅も仕事も苦とは思わなくなってきていた。それどころか、吟遊詩人という職に興味を持ち始めていた。

 

 吟遊詩人とは言ってしまえば物語を唄にして公地で披露することで路銀をもらう、ただそれだけの仕事である。

 観客の飽きもあるため、都市から村、村から町へ河岸を変える必要があるという点では物珍しいが、他の専門職と同様に突き詰めれば終わりはないがやり続けていたら飽きが来るような職業であった。

 

 それでもシャーリーが旅を続けられた理由は果てなく思えるリュミエールの知識量にあった。長命種というだけあって語り継げる唄に際限はなく、ついていれば学べることも多い。

 そんな好条件を捨てられないというのも、彼女が同行を続ける理由の一つだった。

 

 

 

 

 

「どうして歌詞を変えたんですか?」

 

 つい先程まで真っ赤だった景色も闇に染まり、家路へと急ぐ人々さえ通らなくなった時分。ようやく演奏を止め、自前の羽根つき帽に投げ入れられた小銭を回収している吟遊詩人にシャーリーは尋ねる。

 

「覚えていたの?記憶力が良いね」

「一応、これを生業にするつもりなので」

 

 感心の声を上げる師匠に弟子はそっけなく返した。

 他にやることもやりたいこともないからこの道を選んだというのも事実だ。別に強制されたわけでもなく、いつでも辞められる状態にシャーリーはある。

 しかし、やると決めたからには少なくとも一人前と呼べる程度には極める。そんな性分とも呼べるこだわりを持つ彼女は、修行の一環として彼の演奏中は観察に徹していた。

 

 幸い、シャーリーには優れた記憶力と観察力があった。

 細やかな感情表現はともかく、竪琴(リラ)を操る運指や紡がれる歌詞と抑揚であれば数度見聞きすればほぼ完璧に再現できるような、圧倒的な瞬間記憶と身体コントロール。

 凄まじいまでの記憶能力を有するが故に、シャーリーは地域ごとで発生する小さな差異が気にかかっていた。

 

 何もリュミエールとて歌詞をど忘れしたからアドリブでやっているという訳ではないだろう。吟遊詩人(バード)歴僅か一年足らずのシャーリーでさえ師匠の実力くらいは薄ぼんやりと把握している。そんな凡ミスをやらかすような輩ならわざわざ教えを請うために敬語を使っていない。

 リュミエールの持つ膨大な知識と演奏力は、敬意を払うべき物だとシャーリーは考えている。

 

 だからこそ、彼がわざわざ歌詞を変えることが奇妙に思えた。

 河岸が変われば客も変わる。各種族・地域に合わせた歌詞の変更という行為に疑問はない。

 しかし、彼の変え方は歪で不自然だった。

 

 人々に足を止めてもらわねば意味が無いというのに、マイナーと呼ばれる解釈を持ち出して歌う。わざわざエルフの里に出向いてドワーフの英雄の唄を曲目のメインに据える。リクエストをとってもほんの僅かに、しかし物語の主題を根幹から変えるような解釈を歌う。

 まるで理に適っていない。

 

 目的が見えないアレンジに戸惑う日々を、シャーリーはここで解消したかった。

 

 

 少女の真摯な眼差しを受け、リュミエールは噴水の縁に腰掛ける。

 闇夜の中、リュミエールの背の向こう。町の住宅街から発せられる光が彼の銀色の髪を淡く照らす。

 

 闇と光のコントラストにシャーリーが僅かに見惚れている内に吟遊詩人は竪琴(リラ)を手に取り、グリッサンドを奏でた。

 音が途切れたと同時に、女声にも近いアルトが二人だけの広場に響き渡る。

 

 

 

「『英雄は死なず!』勝利の宴でそう叫んだお調子者がいた」

「英雄は苦笑を浮かべてその者を宥めた」

「『私とてお前達と同じように死ぬ。お前は私に何を見ているのだ』」

「彼は英雄に対して盲目であった。憧憬を押しつけ、理想を押しつけ、英雄の個性を放念し英雄であることを義務づけた」

「『嗚呼、貴方は私達のような存在にも寄り添うのか。見たか!これが我らが英雄の度量だ!』」

「愚かな彼は仲間と民草に呼びかける。暗い顔を浮かべる英雄をさておき、彼らは一晩中酒宴を続けた」

「強すぎる光に焼かれた人々は期待という重しを乗せる」

「英雄に任せればどうにでもなると、自分に出来ることは何もないと思考を放棄する」

「故に、彼らは見誤ったのだ。英雄とて神には成れぬ。我々と同じ只人であることを忘却の彼方へと葬った」

「故に、彼らは自らの責を投げ捨てたのだ。己では勝てぬ怪物を全て英雄に任せて日々を暮らした」

「戦いに備えようとも、助力を申し出ようともせずに日々を暮らした」

「英雄は戦う。その善良故に背負った期待を投げ捨てられず、如何に強敵でも逃げること叶わず、怪物を相手に戦い続ける」

「ある日、英雄が怪物に討たれた」

「誰にも看取られない、静かな死であった」

「自己防衛すら怠った生物に世界は容赦をしない。英雄を打ち砕いた怪物は瞬く間に村を、町を、都市を蹂躙した」

「人々は叫ぶ。『英雄はどうしたのだ。全ての怪物を倒すのではないのか。なぜ私達が怪物に貪られている!』」

「かつて英雄を崇めた彼は光を失った目で呟く。『英雄は死なず。いずれ蘇り貴様らを殺しに向かうだろう』」

「男はそのまま怪物に呑まれた。奇しくも、英雄を喰った怪物と同じ腹に収まった」

「怪物は蹂躙の限りを尽くし、次の人里へと向かう」

「朝日が立上る中、この騒動の中で生き残ったのは都市で最も力なき孤児であった」

「弱き者だからこそ、身を隠し、友と助け合い、知恵を回し、数少ないが怪物も討ち、犠牲を払いながらも生をその手に掴んだ」

「彼らと人々は、何が違ったというのだろう。彼らと英雄は、何が違ったというのだろう」

「全てが過ぎ去った今では、その答えを知る者はいない」

 

 

 

 演奏が終わり、広場に再び訪れた静寂を切り裂いてリュミエールは硬い声音で問いを投げる。

 

「この物語は知っていた?」

「シャリザールの悲劇、でしたか?けれど、この物語は」

「そう、英雄譚ではないただの教訓話だ。ある程度の事実には基づいているけれど、ここまで劇的なものではない。英雄と呼べるほどの強者はそこにいなかったし、生き残ったのも孤児だけじゃなかった」

 

 この世界に大穴が生まれ人類を喰らい尽くすように怪物が溢れ出してから、数千年にわたり人と怪物は闘争を繰り返してきた。

 世界のありとあらゆる場所で悲劇が生まれ、英雄が生まれ、そして忘れ去られていく。

 英雄譚に事欠かないこの世界において、創作の悲劇はさして知名度を持つことがない。シャーリーが知っていたのはただ彼女が本の虫だっただけだ。

 

 しかし、リュミエールは自分の行動理念を語るためにわざわざそんなマイナーであり、けれどありふれた物語を紡いだ。

 

「英雄譚ではない教訓話だからこそ僕たち人間をよく表している。シャリザールは、今の下界と同じだ」

 

 作り話になぞらえて下界の現状を語るリュミエールの口調は暗く、宵闇の中微かに見える表情には翳りがあった。

 

「つい一年前のことだ。下界最強は、神時代の象徴は、今代の英雄達は一匹の怪物に敗れた。英雄の地は戦力を失い、取り戻せないままに今も混乱の渦にある。世界全土は活性化した怪物によって少しずつ侵略を受け続けている。

 だけど、この期に及んで僕達は互いを理解しようとはしない。自分でどうにかしようとも協力しようともしない。全てを英雄の地に任せている人がほとんどだ」

 

 世界を歌い回ってきた吟遊詩人は迷いなく下界は死に向かっていると断言する。

 遠目ながら”黒き終末”に【ゼウス・ファミリア】と【ヘラ・ファミリア】が抱える英雄らが敗北する様をその目に焼き付けたリュミエールは、下界の未来が絶望に染まっていることを理解している。

 千年にも及ぶ神時代というぬるま湯に浸かり、人々の思想が他者や世界に無責任なものへと変化……いや、逆行していることを理解している。

 

 けれど、それでも人類の中では永い時を生きるエルフである彼は人類の可能性を、下界の未知を、希望を信じたいと願っていた。

 

「僕がアレに勝機を見いだすことは出来ない。戦いに身を投じた時代を持たず、何か特別な知見があるわけでもないんだから、当たり前だ。

 けれど、浅慮だとは思うけど一つだけ可能性があるとするのならば、かの隻眼の竜には下界全土が協力しなくては勝てないんだ。

 おそらく黒竜は力を回復し、直に動き出す。事実として、衰えていくばかりのはずのモンスターの脅威は年々増している。もう下界に残された時間は少ない。

 ”英雄”だけではダメだった。なら、総力を賭けて挑むしかない。というか、もうそれ以外の選択肢が許されない状況にある。

 なにも全員に戦えというわけじゃない。けど才無き者にも出来ることはある。英雄を支えることは出来る。まだ僕たちには分かり合い、助け合える余地があると思っているんだよ。だから僕はあえて彼らに親しまれていない唄を歌うんだ。

 先の見えないアプローチではあるけどね。僕だって先の閉ざされた未来を憂う人類の一人だから」

 

 最後にちょっと茶化すようにその行動の無謀さに自ら言及して、リュミエールは口を閉じた。

 二人の間を割るように風が流れ、銀と松葉が横になびく。

 

 師匠の理念を聞き遂げたシャーリーは一つ息を吐いて顔を上げる。

 町の光を正面から浴びたその表情は納得のいった晴れやかなものではなく、まだ何かわだかまりの残った陰のあるものだった。

 

「そう、ですか…………」

「不満かな?」

「いえ……実物を見ていない以上想像にしかなりませんが、例の怪物を相手にしたとき理屈の上でそうなるだろうという予想は私にもできました。しかし…………なら、矢面に立つ功労者の影が薄れてしまうのではないか、と勝手ながら不安を持ちました」

「……いや、流石にそうはならないんじゃないかな?」

「黒竜を討ち果たした時は、それで良いんです。皆が功労者であることに変わりはないけれど、誰が最も力を尽くしたかは当事者間に伝わります。けれど、後世になって『皆で力を合わせて倒しました』じゃあまりに戦った人たちが報われない。彼らの道程と研鑽は人類としてひとまとめではなく、正しく評価されるべきだと、そう思ってしまう」

 

 いくつもの努力が報われない終わりを迎えた物語を思い出しながらシャーリーはリュミエールとは合わない、いわば全体俯瞰に対して個人集中的な考えを告げる。だんだんと自分の思想の色が強く混ざり始め、口調も本来の砕けたものに近づいてきている。

 

「何を言うかと思えば…………こんなこと考えて歌い歩いているのは僕だけだよ。心配しなくても他の奴が英雄のことは歌うさ」

「貴方は、自分の影響力を自覚した方が良いと思う。出会ったときにその口で言っていたように、今は吟遊詩人の数が少ない。これだけ多くの場所に行ってもリュミエールほどの実力を備えた人の話は聞かないし、何よりエルフの物語は長く続く。絶対に、貴方の唄が主流になる」

「じゃあ()()()()()?」

「え?」

 

 軽々しく告げられた提言に、シャーリーは加熱していく思考を一度空白に戻された。

 

「君が、僕よりも吟遊詩人として実力をつけて、強い影響力を持って、より多く語り継がれるような唄を歌えば良いんだよ。たった一年足らずであれだけ歌えるようになったんだ。不可能じゃないって僕は思ってるよ。ただ、寿命の話は冒険者にでも成らない限りどうにもできないけど」

「私が、リュミエールよりも歌われる英雄譚を…………」

 

 盲点だった。

 

 というより、修行中のみである彼女は、自分が何か物語を紡ぐことを意識したことがなかった。確かにリュミエールとの旅路で多くの曲目を履修し復習し歌ってきたが、あくまでそれは師匠の真似事でしかなく、自分の味を出した事なんて一度も無かった。

 

 人類史としてはまだ新しい【ゼウス】や【ヘラ】の神時代ですらない、新時代の物語を自分の色をつけて作り繋ぎ運ぶことを初めて考え、それを面白そうだとシャーリーは感じた。

 一人の吟遊詩人として、取り組みたいと心の底から思った。

 

 シャーリー・ウォルバーグはとうの昔に、吟遊詩人になっていた。

 

「それは、良いかも……」

 

 

 こうしてシャーリーの人生をかけた目標は一つの形として定まり、オラリオがリュミエールとの旅の最終目的地と決定づけられた。

 この出来事のおよそ二年後、オラリオの北に位置するベオル山地にたどり着いたシャーリーはリュミエールと別れることとなる。

 

 その後の物語は、またこれから……。

 

 

 

 

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