曇り時々銃弾、所により爆弾   作:Aベル

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#1 対策委員会編
1.私は帰って来た(勘違い)


 

 

 

 ここまでの道のりは決して楽じゃなかった。長かった。本当に長かったんだ。

 

 だが俺は多くの困難の果てに成し遂げたんだ。ついに帰れるんだ。娯楽も倫理観も衛生観念もないようなカスみたいな世界とは今日でさよならだ。

 

 光り輝く錬成陣に歩を進める。切望した未来が遂に…!

 

 

 

 

 高層ビルが其処彼処に立ち並び、アスファルトで舗装された道路はまさに都会の風景。

 

 久々に見る現代の建物群!街行く人達の俺にはよくわからん現代風のファッション!現代的通り越して近未来的な頭の上の輪っか!ちょっと待て、何だこれ?地上に天使でも舞い降りたのか?

 

 だが今はそんなことはどうでもいいのだ。気にしている暇はない。何故なら俺は現状、帰還に感動する間もなく、窮地に陥っているのだから。

 

 

「学生でそんな危険物扱うのはいかんでしょう!?」

 

「怪しい奴め!どこ所属だ!言え!」

 

「ただの迷子ですって!?」

 

「こんなところに迷い込む訳ないだろ!」

 

「知らんてそんなの!」

 

 

 流れ弾が飛んで来そうな戦闘地帯でリスタートとか終わってんな!?チクショウ、漸く現代っぽい世界に帰って来たんだ。こんなところでやられてたまるか!

 

 ここは対話で平和的解決するべき!ラブアンドピース!やっぱ平和が一番だよね!相手も同じ人の子、無用な争いは避けたいに決まっている!

 

 

「へへへ…。いやいや私は怪しくないですよ。ただの一般市民ですよ」

 

「地面がいきなり光ったかと思えば、前触れもなく現れたやつが一般人な訳あるか!捕えろ!」

 

「銃火器の使用は禁止カードっスよね!?」

 

 

 流石にポーズだけで撃たれんやろ……うおっ、危ねっ!?捕えろ(ただし生死は問わない)ってコト!?幾ら何でも余所者に厳し過ぎやせんか!?

 

 近くにあった大破している自動車を遮蔽物として利用することで、敵の射線上から外れる様に逃げる。更に身を隠して、追手と自分の中間付近にお手製の煙玉を投げ込む。銃弾なんて当たったら、一溜まりもありません。だから、煙幕を使って目眩しする必要があったんですね。

 

 距離さえ空けてしまえばこっちのものだ。できる限り遠くに離れてしまおう。まだ追って来てはいるが、見失うのも時間の問題だろう。

 

 そういえばあの珍妙な格好は、一体なんなのだろう。いやまあ、ヘルメットとどんな原理で浮いているかわからないような頭の輪っかとか、中々イカれたセンスしているとは思うけど。げっ、前方に引率の先生らしき人物と学生のグループが……。

 

 

「そこの学生さん方、逃げてください!」

 

「……詳しい状況はわからないけど、どうやら助けた方が良さそうだね。みんな、準備はいい?」

 

「ん、先生の判断ならそうする」

 

「うへ〜今日は人がよく追われているねー」

 

「あわわ……助けないと…」

 

 

 何やら前方の集団も戦闘の用意を始め出した。ヘルメットを被っていなくても銃火器の類は所持してるのな。それにしても挟み撃ちとか俺なんか悪いことしたかなあ!?

 

 ちょうど中間ぐらいにあった脇道に身を隠す。いよいよ追い詰められたか。この世界でどこまで通用するか未知数だから、できれば使いたくなかったんだが仕方がない。

 

 時間がなさすぎるので超簡略化した形にはなるが『かくれんぼの術』を完成させる。相手に見つかりにくくするだけの初歩中の初歩の術だが、如何せん何もかも足りていない状況なのでこれに頼る他なかった。

 

 袋小路から様子を窺うとすぐ近くまで敵は迫ってきている。銃撃戦については、どのぐらいの距離から交戦開始するかなんて知らないので、とにかく射線に入らないように逃げる。しかし、予想外なことが起きた。

 

 

 

「チッ……人数が多い!一旦引くぞ!」

 

「あっ!あいつら逃げるつもりよ!」

 

「待った!追撃より追われてた男の子を確認しないと」

 

「それもそうだね〜」

 

 

 これは不味い。『かくれんぼの術』は正確に言うと相手に注目されにくくなる術式だ。影の薄い幻のシックスマンが使うようなミスディレクションに、その性質は近い。まああっちは万能過ぎるが、こっちはそんなに使い勝手がいいものでもない。スポーツ漫画の能力に大体負けてる異世界の魔術(笑)。色々あるが、要するに普通に注目されたら無力だ。

 

 

「!?いつの間にそこに!?」

 

「え、いや、さっきからずっといた……かも?」

 

「さっきは向こうの裏道に入って行ったわよね!?」

 

「ハハッ、気のせいですよ……多分

 

「今多分って言ったわよね!?」

 

「まあまあセリカちゃん。それよりもお怪我はなかったですか?」

 

「お陰様で助かりました。ありがとうございました。では私はこれで…」

 

「何か事情があるようだね。良かったら話してほしい。力になれるかもしれないから」

 

「……………」

 

 

 

 

 

 

 

「指先から火が……」

 

「あははー、アニメみたいです☆」

 

「信じられない…」

 

「にわかには信じ難いですけど……。実物を見せられますと……」

 

 

 見た目は中々にファンタジーしてるからな。俺も初見では感動したし。実際に使ってみると案外、マジカルって言うよりも、ロジカルな面も多いけど。

 

 

「俺からすれば実弾が飛び交っている方が、非日常的なんですがそれは…」

 

 

 俺やだよ、喧嘩に銃火器持ち出すのが日常の世界とか。しかもヘイロー?とやらがあれば、銃弾が痛いだけで済むとかずるくない?なんなら先生を除く『キヴォトス』の住民はなくても平気らしい。現代ファンタジーじゃん。だが、だからと言ってお手軽にドンパチしないで頂きたい。

 

 

 

「助けたついでにー。協力をしてほしいんだけどいい?」

 

「うーん……そこは内容次第で」

 

 緩い喋り方をしたピンクのロング髪のこの子は、小鳥遊さんだったはず。一番幼く見えるが先生を除いて最年長で、オレンジと青色のオッドアイ。で、一人称がおじさんの昼行灯っぽい人。キャラ盛りすぎか?

 

 

「ちょっとそこで銀行強盗をねー」

 

「犯人を捕まえてほしいってことですか?あんまり役に立ちそうにないですけど…」

 

「その逆。銀行強盗するサポートをしてほしい」

 

「……?」

 

「あ、あはは……とんでもない集団に出逢ってしまったって顔してますね…」

 

 

 唯一周りと異なる制服を着た少女、阿慈谷さんが苦笑いする。その目が逝っちゃってる鳥のバッグは今時の流行りなのか?女子高生の流行りは複雑怪奇。趣味嗜好は十人十色なので、触れないでおこう。それにしてもきも……いや、何でもない。

 

 銀行強盗って君達本気で言ってるのか?新しい世界でチンピラの次にエンカウントしたのが、強盗団とかハードラック過ぎない?まあ世紀末一歩手前みたいな治安してそうだし、もしかするとそれがこの世界の普通なのかもしれないが……。

 

 

「えっと、詳しく説明しますと…」

 

 

 

 

 

 赤い眼鏡をかけたホログラムに映し出された少女、奥空さんから事の経緯を聞かせてもらう。ちなみにこの子も普通の人と見せかけて、耳が尖っているのでエルフとかの可能性が高い。種族は勝手な予想で、本人に聞いた訳ではないけど。

 

 

「……要するに闇銀行の重要書類を強奪するのが目的ってことですか?」

 

「大体あってる」

 

「なるほど……」

 

 

 いや分からんわ。100億歩譲ってそれしか選択肢がないのかもしれないが、それでも俺はやりたくねーよ。そんな超弩級のリスクなんて負いたくない。普通に断ろ……ん?

 

 

「あの…背中に硬いものが当たっているんですが…?」

 

「当ててるのよってね〜」

 

 

 やだこの子ったら見た目に反して大胆。男として一生に一度は言われてみたいセリフなんだろうが、こんな形で聞きたくはなかったなあそのセリフ!

 

 

「うへ〜おじさん達の顔見られちゃったからねー。……協力、してくれるよね?」

 

「ウッソだろおい!?あなた、先生なら生徒の凶行止めてくださいよ!?」

 

「あはは、ごめんね?」

 

 

 こいつ、可愛い顔してやることがおっかない。おい、誰でもいいからおじさんのパワハラ止めろよ。労基に訴えたら勝てる案件じゃないか。見てるだけで止めないならあんたらも同罪だかんな!

 

 

「…………サポートだけですからね?後、やるからには絶対成功させてくださいね?」

 

「ん、交渉成立」

 

「よし、それじゃあ早速…」

 

 

 そう言うと各々が頭に番号の付いたレスラーが着けるようなマスクを被り始めた。一人だけ準備していなかったのか、穴を空けた紙袋だったが。そしてそのまま銀行に向けて歩き出した。いやちょっと待てい!

 

 

「え?その格好で行くんですか?正気?」

 

「……?完璧な変装だけど?」

 

「いやいやいやいや……本気で言ってます?」

 

 

 何言ってるんだコイツ?みたいな顔やめてもらえる?そんなコンビニに入るぐらいのノリで銀行強盗しないでいただけます?と言うか誰からもツッコミが入らないのもおかしいがすぎる。計画性とか危機感とか、そう言うものをお持ちでない?

 

 

「…早速ですが全員、そこに整列して…」

 

 

 

 

 

 

 

「これ本当に効果あるんですか…?」

 

「認識阻害はある程度知っている間柄なら、割と貫通するので過信しないようにしてください。時間と手間をかければ強固にはできますが、それをしてしまいますと仲間を認識できなくなって、フレンドリーファイアがオチなので。それとマスクが破れたら、顔隠している意味ないじゃないですか」

 

 

 認識阻害はまあ銀行内に知り合いがいたら怪しいが……。話を聞いている限りでは、まあ大丈夫だろう。防具強化もまあないよりはマシだろう。手持ちがないからどうにもならないが、制服のまま行くのはやっぱりどうかしてると思う。それ以上にアレな奴もいるが。

 

 

「先生もです。何当たり前のようにノーガードで行こうとしてるんですか。このお面と上着貸すので、つけてください」

 

「ありが……流石にこのお面はつけたくないかなあ……」

 

「この期に及んで贅沢言わないでください。恨むなら自分の準備不足の方にしてください」

 

 

 両装備ともに頑丈で、しかも祝福付きの代物だ。特にお面は管理の難しさと見た目にさえ目を瞑れば、超優秀な防具である。こっちで役立つかは知らないけど。貴重品を貸し出しているのだから、寧ろ感謝してほしいものだ。

 

 

「ほら、術式の効果時間も長くはないですから、さっさと成功させてきてください」

 

「心配してくれるんだ〜見た目より優しいねー」

 

「やかましい」

 

 

 今の発言にそんな要素あった?と言うかマジで成功させてください。あんた達が捕まったら芋蔓式に俺まで逮捕されるのは目に見えてるから。正直、不安しかない。

 

 

「それじゃあ先生。例のセリフを」

 

「うん!……銀行を襲うよ!」

 

「はいっ!出発です☆」

 

「では6号さんは逃走経路の確保をお願いします」

 

「あ、一応俺にもコードネームあるんですね」

 

 

 




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