どうやってもシリアルになる。原因?私にもわからん。
「はあ、はあ……な、何とか逃げ切れた?」
「追手はきていないみたい」
「こ、これからどうする?」
「もうミレニアムプライスへの出品は終わってるんだし、とりあえず結果が出るまではこのまま逃げよう!」
「逃げ切れるとでも思ったか?」
「げっ!?守れ!」
「きゃぁっ!?」
攻撃の前に一声掛けてくれるなんて親切だなあ。おかげで楽勝だったぜ(震え声)!使い勝手がいい代わりに燃費が悪すぎるから、この術を引き摺り出された時点で、状況は全くよろしくない。
銃弾が飛んで来た方向から、メイド服の上にスカジャンを着た柄の悪い少女が歩いて来た。チンピラみたいな風貌だが、アビドスのピンクおじさんやゲヘナの髪長風紀委員長に似た雰囲気を感じる。その後ろで控えているメイド服を着た少女達もきっちり武装している。これは……厳しいか?
「ははっ、やるじゃねえか!あそこから反応してくる奴はなかなかいねぇぞ!」
「それに免じて、この場は見逃してもらえません?」
「はっ、冗談抜かせ!……と言いたいところだが、今は別にてめえに用はない。今回のターゲットとは違う」
そう言ってこちらから視線を外し、先生の方を見る一同。
「私?」
「このチビたちの指揮したのも、差押品管理所を襲撃したのも、あんただったか。……先生って呼べばいいのか?どうりでいちいち判断がよかったはずだぜ」
「何やってんだよ先生」
「アカネが調査した例の『先生』……噂は大袈裟じゃなかったみてえだな」
「チビって、身長はこっちのみんなと同じくらいじゃ……?」
「んなこたねえよ!あたしは3年生だぞ!?あたしの身長に言及した奴らが、最後にはどうなったか教えてやろうか!?」
「……トマリ、出番だよ!」
「地雷の処理ぐらい自分でしてくださいよ」
「……落ち着いて、リーダー」
「なんだか最早新鮮ですね。まだネル先輩に対して、身長の話ができる人がいたなんて」
折角、珍しく話し合いだけで終われそうなのに、不用意に火に油を注ぐんじゃない。見ろよあの顔、興奮の余り髪の毛と似たような色に燃え上がっているぞ。
「フゥー……危うく冷静さを失うところだったが、まずは……そこのデコ出してるアンタ。あの時はよくもあたしを騙してくれたな?」
「ひっ!?す、すみません!」
「俺の後ろに隠れないでもらいたいのだが?」
やめろよ人を盾にするのは。可哀想だと思わないのか?主に俺が。
「やるじゃねえか、褒めてやるぜ!」
「……え?」
「怯えたフリをしてあたしを騙すなんてな。大した演技力だ」
「単純に怯えてただkもがっ」
「い、今は余計なことは言わないでっ!」
「まあそれはいいとして……そっちのバカみたいにでけえ武器持ってるアンタ」
「……?トマリ、呼ばれていますよ?」
「どう考えても俺じゃないが?」
その背負っているものは何だ?どちらかと言うと、俺は
「アンタだよ、アンタ!」
「アリスのことですか?」
「そうだ、てめえには用がある。C&Cに一発食らわせてくれたらしいじゃねえか?ちっと面貸せや」
「あ、アリス、このパターンは知っています。『私にあんなことをしたのは、あなたが初めてよ……』告白イベントですね。チビメイド様はアリスに惚れていると。スチル獲得です」
「コイツ無敵か?」
体は虹色に発光していないけど。それにしても、流石はゲーム開発部。ギャルゲーまで履修していやがる。女子ばっかりのキヴォトスで、需要があるのかは知らないが。
「ふ、ふっざけんなこの野郎!ってか、誰がチビメイド様だ!?ぶっ殺されてえのか!?」
「ひっ…!」
「こ、怖っ!!」
「やめろやめろ、揃いも揃って俺を壁にするな」
俺を間に挟んで会話するなよ。この件に関して、俺は明らかに部外者だろ。
「はあ……誤解してるかもしれねえから言っておくが、別に復讐ってわけじゃねえ」
「え?てっきりその報復できたものだと…」
「あぁ?……怪しい部分はあったが、こっちとしては正当な依頼での出来事だ。そっちはそっちで、あたしらを相手に目標を達成しただけだ。別にそこに恨みはねえが……俄然、興味が湧いてな」
「興味?」
「確認の方が正しいかもしれねえが……さあ、ちょっくら相手してもらおうか?あたしと戦って勝てたら、このまま大人しく引き下がってやる。どうだ、難しい話じゃねえだろ?」
「…………分かりました」
「お、やる気満々と来たか」
「アリスの前にトマリが相手します!前座は任せました!」
「舐めてんのか?自分で相手しろ」
「痛ひでふ!暴力反対でふ!」
調子に乗っているアリスさんの頬を思いっきり引っ張ってやる。甘えた言動を放置しすぎると、際限なく付け上がりそうだったので、実力行使に出させてもらった。この程度で済ませていることに感謝するんだ。
「痛た……一騎討ちのイベント戦闘みたいなものですね、理解しました」
「イベ……なんつった?」
「あの時は狭かったですし、『鏡』を持って帰ると言う使命がありました。ですが、今なら!行きます、魔力充電100%!光よ!!」
「うわぁ……」
「何という威力!?校舎の壁が、こうも簡単に……」
「……やったか?」
「アリスちゃん!そのセリフは無闇に言っちゃダメ!」
「あ、ネル先輩は3年生でした。言い直します。やっつけられましたか?」
「敬語の問題じゃないよ!」
「まだだよ」
先生も気付いているようだ。相手がチャージまでのタイムラグを利用して、アリスさんの攻撃を回避していたことに。しかもスタートラインから、大きく距離を縮められている。
「も、もう一度魔力を充電!」
「遅えっ!」
「きゃぁっ!?」
再装填の間に相手から飛び蹴りを喰らい、充電が中断されてしまう。そのまま至近距離からの撃ち合いに持ち込まれてしまった。規格外の大きさをもつスーパーノヴァを盾にして身を守ってはいるが、反撃出来ずにいる。
「確かにてめえの武器は強いが、発射までにコンマ数秒はかかる。その上、火力が強すぎて相手に接近されたら撃てねえ。爆圧にてめえまで巻き込まれるからな」
防戦一方のアリスさんに対して、相手はせいぜい服が汚れた程度。受けたダメージは皆無と言っていいだろう。この状況からの逆転は厳しいと言わざるを得ない。
「そしてこの間合いであたしに勝てる奴なんざ、キヴォトス全体でもそう多くは……いや、一人もいねえ」
「アリスっ!」
「思った以上にがっかりだったな。この程度で、あいつらがやられたとは到底…ぐっ!?」
「その銃身を、振り回せんのかよ……!」
凄まじい風切り音がした。アリスさんが、滅茶苦茶重たいスーパーノヴァを振り回した音である。それは接近していた相手に、その威力を遺憾無く発揮し、初めて呻き声を上げさせる事に成功した。
「接近戦としては悪くねえ判断だが、この距離ならあたしの方が圧倒的に有利。発射しようにも、あたしに標準を合わせられねえ」
「…………照準は必要ありません。行きます!」
「なっ!?まさか、あたしじゃなくて床に!?正気か!?」
「光よ!!」
アリスさんの放った銃撃により、辺りは煙だらけだ。床に向けて撃ったので、足場の殆どが崩壊しかけている。正直、あれで倒せたかはかなり怪しいところ。それに、他のメイド達から襲われないと言う保証もない。……この混乱に乗じて逃げるのが一番だろう。
「アリスちゃん!」
「に、肉体損傷48%……後退を望みます」
「トマリはアリスを運んであげて!」
「よく頑張った。追撃される前にさっさと逃げちまおう」
肉体損傷48%は半死状態ってこと?何か違うような。