別の話と纏める予定でしたが、中途半端に長くなったので投下
大魔王との激闘を辛くも制し、無事に生き残る事ができた。次にエンカウントしたとき?その時の俺が頑張るから問題なし!ただし、その代償もまた大きかった……
「ここは何処?私は……それは違うな」
絶賛迷子中である。ミレニアムのタワーは建物内とは思えないような広さを誇る。その上、似たような景色が結構続くのだ。慣れていなければ、迷うことも仕方ないだろう。近くに案内図もなさそうなので、次に出会った人にでも自分の現在地と案内をお願いするかね。
そう暢気に考えていると、幸運な事に、早速第一村人発見。更に都合良く、こちらから話しかける前に、相手方からやって来てくれた。
「んー?あー!モモとミドが言ってた人だ。ヴェリタスに何の用?」
「特に要はないですけど、聞きたい事が……ここは何処ですか?」
「え?ここはヴェリタスの部室の前だよ?ねえねえ今、暇?もし暇だったら、ヴェリタスに遊びに来てよ!TSC2の開発者側の話も聞きたいし!」
どうせこっちはユウカさんに追われている身だ。真っ直ぐゲーム開発部の部室に帰ったところで、恐らく待ち伏せされていることだろう。それなら、いなくなるまでここで時間を潰させてもらうのが、賢い選択に違いない。
「よし、じゃあこっちだよ」
部室に入れてもらうと挨拶、自己紹介もそこそこに早速TSC2の話題に入る。ちなみに今現在、室内にいるのは3人。部長は基本的に留守にしていて、副部長の各務さんは外回りで不在との事。
部活の名称はヴェリタスで、(自称)ホワイトハッカー集団らしい。確かに部室内は、サーバーやらモニターやらが並んでいて、部屋自体も空調が効いていて涼しいのでそれっぽい。
「何処までストーリー進んだ?」
「裏ボスまで攻略完了。もうアップロードされてから3日も経ってるから」
「えぇ……裏ボスといえば、あの面倒臭い出現条件まで乗り越えたのか……」
「こう見えてゲームは上手い方だからね。作中でも、隠し条件のヒントはそれなりに多かったし」
「それなりに時間は掛かったけどね!」
ラスボスはまあ少し頑張れば、大体の人はクリアできであろう難易度だったが、裏ボスについては相当頑張らないと厳しい筈なんだが。これなら、ユズさんの案を採用するべきだったか?原案では、ラスボスの難易度が今の裏ボスレベルで、裏ボスがほぼやり込み要素になっていたが。
「この会話とか、聖槍伝説のパクリだよね」
「ここの展開はファイナル・ファンタジアっぽい」
「失礼な。パクリじゃない、オマージュだ。ついでに言うとリスペクトでもある」
そう言う文句はシナリオライターに言ってくれ給え。俺の関わった部分なんて、そう大して多くないから。キヴォトスで発売されているゲームした事ないから、その辺りの事情は分からんぞ。
「興味本位で聞くのですが、このゲームの没案とか没設定とかありますか?」
「あ、それはちょっと聞いてみたいかも」
「何かあったっけ……あ、パーティが全滅した時のペナルティに元々はアイテムロストもあったんだが、廃止にしたぞ」
「うわ、結構だるいやつじゃん。なくなってよかった」
「そう。まあ廃止になった理由はグリッチの元になるからなんだけどな」
大雑把に説明すると、アイテムを何も所持していない状態でかつ、特定のイベントでゲームオーバーになった時に、持ち物のカウントが何故かマイナス1のままになる。その状態のまま別のグリッチを利用して、新しいアイテムを手に入れると、何もないけどそこにアイテムがある状態になるのだ。俗に言う『無』を取得する事ができてしまう。
一応言っておくと、そもそもアイテムを何も所持していない状態になる事自体、通常プレイでは意図的に操作しないとあり得ない事である。だから、仮にこのままアップロードしていたとしても大きな問題にはならない筈なんだ。まあ世の中には、変な奴はいっぱいいるからなあ。同じ状況になる可能性は0ではないだろう。何かRTA界隈で有用そうな技を潰してしまったな。このゲームでRTAを走る変態が現れるかは知らない。
「後は、裏ボスの最後で唐突に音ゲーを入れるって案も出てたな」
「それは最早音ゲーじゃなくて理不尽ゲーになるパターンでは?」
「そうとも言う」
普通に中止になったが。画面を暗転させるとか、会話中にボタンを押させるとか。音ゲーというよりは、リズムゲーというべきかもしれない。開発中止になった理由は、音ゲーに致命的な要素である遅延がどうしても発生してしまったからだ。そのクオリティでは、我等がユズ部長は納得しなかったのだ。
音ゲー用の曲作りについて(理不尽にも)任されていたが、そう言う訳で白紙になった。本当に、本当にありがとうございました。
他にもデモプレイ中にアリスさんの頭がエラーしたり、シナリオが思いつかないモモイさんによるボイコットが起きたり、結構な珍事件が勃発していたが、その辺りはゲーム開発部の当人達に聞いてみてほしい。現場は中々に混沌としていたから。
混沌具合なら、ハレさんのデスク周りも相当である。何故なら、デスクを圧迫するほどのエナジードリンクの空き缶達が、軒を連ねているのだから。
「この大量のエナジードリンクを1人で全部飲んだのか?」
「そうだね。でも、今日はまだ3本目だから少ない方だよ?多い時は10本とかの日もあるし」
「Oh...糖尿病まっしぐら。少しずつでいいから飲む量減らすべ」
「エナジードリンクなしでの作業なんて考えられないけど……うーん…………考えとく」
前向きに検討するとか善処するみたいな返事。ついさっき会ったばかりの奴に言われても響かないのは理解できる。だからこういう事は先生に丸投げ安定なんですね。俺からは忠告はしたんで、後は任せた。
「そう言えば、トマリって方向音痴なの?さっき迷子になってたけど」
「これには深い理由が……ある訳でもないな、うん。実はユウカさんから逃げていたら、ここに辿り着いたんだよ。そろそろ大丈夫かな?」
「ああ、だからユウカさんが来てたんですね」
「ゑ?」
思わず入口の方を振り返ろうとした直前で、誰かに肩を掴まれる。その手は見覚えのある黒い手袋をしていた。これは……詰みじゃな?出入り口に背を向けたのは、迂闊だったなあ……
「そう言うこと。トマリ、アンタはここでは珍しい容姿なんだから、目撃情報を追えば居場所なんて特定できるのよ。さあ、観念することね」
「急募、ここから巻き返す方法」
「無理!諦めよう!」
「デスヨネー」
知ってた。わあ、綺麗な笑顔だなあ。笑うという行為は本来攻撃的なものであり(以下略
ところで皆さん、いつの間に冷房強くしたんです?寒いとは思えないのに、全身に鳥肌が立ってきたんですが?
引き摺られて行った先で、大きな雷が落ちたのは最早言うまでもない。畜生、やっぱり俺だけ怒られるのは納得いかねえ。
キャンプいいっすね