曇り時々銃弾、所により爆弾   作:Aベル

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誤字報告ありがとうございます。
遂にエデじょ編。ここまでの話はまあ主人公紹介的なプロローグみたいなものです多分。



#3 エデン条約編
1.招待状


 

 

 恒常的に吹き続ける砂により、今や人が住まなくなって久しい住宅街。かつてそれなりに賑わっていたのだろうが、今は昔の話。その更に外れ、他と同じく寂れた住居に怪しい人影が一つ。その影が玄関扉をノックする若干高い音は、閑散としたゴーストタウンによく響いていた。

 

 

「トマリー、来たよー!よいしょっと、よし!鍵開いてるし入るねー!」

 

 

 寂れた雰囲気にはそぐわない明るい声。まるで施錠されていなかったかのようにして、あっさりと扉を開けた不審な人物は、勝手知ったる家かのように、タブレット片手に部屋に入っていく。我が物顔で堂々と練り歩いているが、当然不法侵入である。

 

 

「あれ?本当に誰もいない?ここで間違いないし。うーん、どこへ行っちゃったんだろう?……あ、ここがトマリの部屋かな」

 

 

 手付かずの部屋も散見される中で、他と比較して、生活の跡が色濃く見られる部屋を発見した先生。部屋を一望して家主の不在を確認した先生は、迷う事なくベッドに近づいていく。そして、何の躊躇いもなく至って自然にベッドの下を覗いた。

 

 

「チッ…何もないかあ。男の子として恥ずかしくないのかな、あの子は」

 

 

 ロマンがないよロマンが、と文句を言いながら今し方漁っていたベッドへと、当然の権利かのように寝転がる。連日の業務に起因する疲労が、立ち上がる気力を失くさせる。欠伸をしたことで、自然に流れて出た涙を拭う。どうやら睡魔に襲われているようだ。

 

 

「あ゛あ゛ー、少しだけ休憩ー」

 

 

 他人様にとても聞かせられない濁った声が出ていたが、誰もいないからなのか、これと言って気にした様子もない。そして、あろう事か、そのまま寝息を立て始めたのだった。やりたい放題である。

 

 

 

 

 

「で?一体何の様ですか?他人様の寝床で、イビキかいて爆睡してたのは一旦置いとくとして」

 

「さ、さすがにイビキなんてかいてなかったでしょ!?」

 

「ついでに歯軋りもしてましたよ?そんな瑣末なことはどうでもいいので、さっさと本題に入って下さい」

 

「……確かに、これ以上は不毛だね、うん。今日トマリのところに来たのは、手紙と伝言を預かっているからなんだ」

 

「ラブレターですか?モテる男は辛いですねえ」

 

「キモっ…それだけは絶対にないから」

 

「怖っ、急にガチギレするじゃないですか」

 

「別に?全く切れてないよ?」

 

 

 ちょっとミレニアムの例の人をリスペクトしただけじゃん。やめなよ、そう言うシンプルな暴言が一番心に突き刺さるのだから。大体いつも和かな先生が、一瞬で真顔になって声のトーンも下がるのは、下手なホラゲーより怖いんですよ。

 

 

 

 

 

「はい、これ」

 

 表情筋が元に戻った先生から、手渡された手紙を見る。待てよ、これは開封してもいい手紙か?本当に大丈夫?封を切った瞬間とか、読み終わった直後に自動的に爆発したりしない?

 

 密かに戦々恐々としながらも、何処かで見たかもしれない円やら逆三角形やらが重なった特徴的なマークの封蝋だ。ペーパーナイフなんて小洒落たものは、生憎持ち合わせていないので、普通のナイフを使う。中身はこれまた、お高そうな便箋が出てきた。

 

 

「香水かな?甘い匂いがするね」

 

 

 隣で俺の手元を覗いている先生の言う通り、手紙からはあまり嗅ぎ慣れない甘い匂いがする。文香だったっけ?無駄に手間暇掛かってるなとしか思わないが。

 

 

「堅苦しい文章ですね。それに遠回しな表現ばかりです。この溢れ出る上流階級感」

 

 

 後、微妙に下に見られてる感も。まあこれに関しては、恐らく思い込みだろうが。貴族とかそう言ういい御身分の奴特有の形式ばった書き方というか、表現というか。言葉で表現し難いが、そう言う雰囲気を感じる。季節の挨拶とかいらないから、要点をわかりやすく書いて頂きたい。

 

 

「トリニティはお嬢様学校だからね。言い方はよくないけど、その印象で間違ってはいないんじゃないかな」

 

「上級国民的な?そう言うの苦手なんですよねぇ」

 

 

 自分の利益になりそうなら取り入って、上手くいかないと殺ることも辞さない。自分の手は汚さない。こっちの立場からすれば、関わるだけ割を食うことが多かったので、いい印象を持てるはずもない。

 

 

 

 

 

「ヒフミのいる学校だよ?」

 

「ヒフミ?……あぁ、あの鳥のリュックの子でしたか。全員あの雰囲気なら平和そうでいいですけどね」

 

「なんでそんな微妙そうな顔しているの?」

 

 

 だって、平和そうなのは雰囲気だけじゃん。あのキモい鳥のグッズのためだけに、平気で危険地帯に一人で行くような奴だぞ。冷静にならなくても、可笑しいだろ。ブラックマーケットの情報にも、無駄に詳しかったらしいし。あんなのもう詐欺だよ詐欺。

 

 あれだろ?ド派手なポケ◯ングッズを身につけたまま犯罪都市に行く女子高生ってことだろ?せめてもう少し目立たないような服装とか、何かしらの対策とかなかったのか?控えめに言って頭のネジが飛んでやがる。

 

 

「この前借りを作ったんだから、しっかり返さないとね!」

 

「そうなんですね、頑張ってください」

 

「じゃあ行こっか!」

 

「俺は他にやることがありますので……」

 

「トリニティまでの道中、付き添ってくれるなら報酬は出すよ?」

 

「…………」

 

 

 

 

 

 気分良さげに隣を歩く先生と一緒にやって来たのはトリニティ自治区。古風かつ洒落た雰囲気の街並みに、人で賑わう店群。やはりアビドスと比べると、全然人の数が違う。先程の発言で気になった点について、改めて問うてみる。

 

 

「そう言えば、手紙以外に伝言も預かってるって言ってませんでした?」

 

「あ、そうそう!伝言はね、手紙に書いてあるお話が終わったら案内するってだけだよ」

 

「ティーパーティー?だったかとはまた別にって事ですか?」

 

「うん、それぞれ別の生徒からだったし」

 

「へぇ……いや、何故そんな重要なことを言わなかったんですか?」 

 

「え、そんなに重要かな?」

 

 

 態々別で案内があるという事は、相応に意味があるはずだ。あるはずなんだが、手紙にも伝言にも肝心な事が抜けているせいで、現状何も分からん。普通に考えれば、別の組織とか派閥からのアクションだろうけど。

 

 それに先生は他人を矢鱈と信頼しすぎる節がある。初対面だった俺への対応が最たる例だ。俺の方で注意しすぎるぐらいが丁度いいだろう。

 

 ヘイローを持たない我々は、キヴォトス人と違って銃弾一発で致命傷足り得るのだから。

 

 

 




一発ぐらいはヘーキヘーキ

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