曇り時々銃弾、所により爆弾   作:Aベル

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ミカは面食い(偏見)



2.ティーパーティー(×2)

 

 

 

 トリニティ総合学園に向かう道中でも、当然のように騒動に巻き込まれたが、トリニティ自警団の協力のお陰で楽に切り抜けられた。先生とも交流があるらしい団員の守月さんはパトロールの途中だったらしい。そのついでに、学園まで案内して貰える事になった。いやー、今日は運が良い。

 

 

「え、自警団って非公認の部活なんですね」

 

「トリニティも色々起きますから。正義実現委員会では対応できない事件も多いのです」

 

 

 正義実現委員会と言うのは、トリニティにおける公的な治安維持組織らしい。ただし、生徒会であるティーパーティーの指揮下にあるので、政治的な柵も多く、中々動いてくれない場合もよくあるのだとか。文民統制が機能している証左でもあるが、トラブルの頻発するような治安において、現場で即断即決即実行する事を必要とするケースがあり過ぎるのだろう。何も彼も世紀末みてえな治安が悪い。

 

 

「無事に着きましたね。それでは、先生方もまたお会いしましょう」

 

「ありがとね!スズミも気をつけてね!」

 

 

 

 

 

「こちらにお願いします」

 

「うん、ありがとね」

 

 

 案内された扉を開けると其処は、トリニティの景観を見渡すのに打ってつけのテラスだった。敷地が広大なため、ガイドが無しではどこへ進んでいるかあやふやになるんだよな。

 

 中央には無駄にでかい、と言うより長いテーブル。机上にはケーキスタンドに飾られた値が張りそうなお茶菓子達や、何処か気品のあるティーポットがずらりと並んでいる。先生を呼び出した張本人達は、そんな場所にいた。

 

 

「こんにちは、先生。それにトマリさん。お会いするのは初めてですね」

 

「こんにちは」

 

「今、紅茶を淹れますので良ければそちらの席にお掛けください」

 

 

 着席を促されたので、先生に倣い、素直に位置に着く。挨拶をくれた子は、手慣れた所作で黙々と紅茶を入れると、こちらに差し出してくれた。紅茶の善し悪しなんて知らないが、嗅ぎ慣れない甘い匂いがする。

 

 部屋に居るのは、初めに挨拶をくれたクリーム色っぽい長髪の子と、その近くに座っているピンク髪の子の2人だけらしい。両者とも大きな白い翼を持っているのが特徴的だ。寝るときとかどうするんだろうか?それはさておき、ティーパーティーは3人体制じゃなかった?

 

 

「それでは改めまして。私はティーパーティーのホスト、桐藤ナギサと申します。そして、こちらが……」

 

「同じくティーパーティーの聖園ミカだよ!よろしくね?」

 

「うん、よろしくね」

 

 

 何やら楽しそうな笑みを浮かべている聖園さん。先生をマジマジと見つめている瞳からは、まるで観察する様な、何処か値踏みする様な意図を感じる。俺の事?アウトオブ眼中じゃない?

 

 

「へー、これが噂の先生かー。あんまり私達と変わらない感じなんだね?」

 

 

 先生を何か異形の生物だと思っていたのか?……いや、あり得るな。住人が二足歩行の動物やロボばっかりだからな。足が8本あったとしても、案外不思議ではないのかもしれない。

 

 

「なるほどー……うん、私は結構良いと思う!そっちの子はなんか普通だね!噂ほどのインパクトはないっていうかそんな感じ!ナギちゃん的にはどう?」

 

「……ミカさん、初対面でそういった話はあまり礼儀がなっていませんよ。愛が溢れるのは結構ですが、時と場所は選びましょうね」

 

「うぅん、それはまぁ確かに……」

 

 

 先生と比べたら普通の顔だし、その評価でも適切だろう。あまり興味を持たれないのも理解できる。ただそれはそれとして、シンプルに無礼だが。誰が100人いたら、100人が振り向かない顔だって?事実だな、うん。まあ今はそんな事より、巷で流布されているらしい俺の噂について聞きたいんだが。

 

 

「二人とも、ごめんね?とりあえず、これからよろしくって事で!」

 

「こちらこそよろしくね!」

 

 

 友好的な雰囲気で始まったが、正直何で俺が呼ばれたのかはよく分からない。詳細は直接会って話す(意訳)としか書かれてなかったし。まあ、恐らく先生のついでみたいなものだろう。

 

 

 

 

 

 姦しく進むお喋りを聞き流し、用意されているケーキを頂く。流石お嬢様学校、デザートが美味い。これは偏見かもしれないが。三人で話が進んでいるのだから、わざわざ俺が出しゃばるものでもないだろう。

 

 という訳で特に会話に参加する事なく、目の前に鎮座していた大振りのシュークリームを胃に収めた。続いて目に付いたのは、ケーキスタンドの上段を飾っている、白いクリームが綺麗なのの字を描いているロールケーキ。ターゲットまでの距離が若干空いていたので身を乗り出した、その時に事件は起こった。

 

 

「――あぁ、もう五月蠅いですね!?」

 

「ひぇっ…」

 

 

 度重なる聖園さんの茶々に、遂に耐え切れなくなった桐藤さんが、テーブルを叩いて立ち上がる。その音と宙を舞ったお菓子から、相当な力を込めて叩いたのが窺える。相当ご立腹である。これにはさしもの聖園さんも、顔を青ざめさせている。

 

 

「今、私が説明をしているんですよ!?それなのにさっきからずっと!横からぶつぶつぶつぶつと…!どうしても黙れないのでしたら、その小さな口にロールケーキをぶち込みますよっ!?」

 

「はあ…はあ…」

 

「……」

 

「……」

 

「もがもが」

 

 

 それは目の前で跳ねたロールケーキを口でキャッチした俺を見ての発言か?取り繕っているけど、笑いを堪えているのバレてるぞ先生。ロールケーキに罪は無い。

 

 

「……あら。私ったら何という言葉遣いを……失礼しました、皆さん」

 

「いやー、怖い怖い」

 

「あはは…」

 

「むぐ……いいタイミングですし、そろそろ本題に入りませんか?」

 

「それもそうですね。……まず私達が先生にお願いしたいのは、簡単な事です」

 

「簡単だけれど、重要な事だよ」

 

「はい、その通りです」

 

 

 そこで一旦話を区切り、ティーカップに口を付ける桐藤さん。

 

 

「――補習授業部の、顧問になって頂けませんか?」

 

「補習授業部?」

 

 

 あ、これ俺関係ないやつだわ。そういえば先生の先生らしいところ見たことなかったなと思う。部活の名前から、どう考えても成績不振の子達の勉強を教えるってことだろ?そもそも補修授業が部活なのか疑問だけど。このマカロン……フレーバーは分からんが、サクサクした食感で美味い。なんかお高貴な味がする。

 

 

 

 

 

 先生とティーパーティーの二人で話は進んでいく。主に桐藤さんが説明して、聖園さんがちょっとした補足、先生が相槌を打つと言った形だ。途中、『エデン条約』やら『シャーレの超法規的な権限』だとか聞き慣れない不穏そうなワードが出てきたが、内容を知らないから何とも言えない。シャーレは先生の所属機関だが、何か凄そうな権限持っていたのか。あと、BDで学習するから先生がいないって、治安は世紀末の癖に妙な所で近未来すぎないか?

 

 

「いかがでしょう、先生?助けが必要な生徒たちに、手を差し伸べていただけませんか?」

 

「私にできることであれば、喜んで」

 

 

 おお、ノータイムで返答したな。まあ先生なら断らなさそうだとは思っていたが。

 

 

「やった!ありがとー先生!」

 

「……ふふっ、きっと断らないでしょうとは思っていましたが。ありがとうございます。……では、こちらを」

 

 

 そう言って先生に何やら書類を手渡す桐藤さん。内容は履歴書のような……ああなるほど、対象生徒の名簿か。

 

 

「ふーん……ん?」

 

「どうしました?」

 

「いやー、これ……見覚えのある顔がありましたんで、つい」

 

「あはは……確かにね…」

 

 

 阿慈谷さん?ショッピングしている場合じゃなくない?知り合いが成績不振で追試受けているのを見るのって、微妙な気持ちにならないか?普段から点数取れなさそうなやつなら、まあ残当だとしか思わないが。あの様子なら、補修授業部入りも何か斜め下の理由だろ。

 

 

 

 

 

「詳しい内容については、また追ってご連絡致します。他に気になる点はございませんか?」

 

「そうだね……じゃあ、エデン条約って何?」

 

「えぇ!?先生知らないんですか!?」

 

「トマリは知っているの?」

 

「知ってる訳ないじゃないですか」

 

「ムカつく顔だなぁ……」

 

 

 逆に何故俺が知っていると思ったのか、コレガワカラナイ。名前的に重要そうだったから、先生なら把握してるものかと思っていた。エデン……旧約聖書の楽園を表すが、ネーミングから漂うそこはかとない嫌な予感。まあ俺には関係ないこと。

 

 

「その説明には時間がかかってしまいますので、また後日お話ししますね。一応、内部機密でもありますので。それに、補修授業部の件とはそれほど関係ないことですので」

 

「わかったよ。そういえば、ティーパーティーの3人目の生徒会長はどうしたの?」

 

「それは……」

 

 

 空いた席を見ながら問いかけた先生の言葉に、目を伏せる聖園さんと桐藤さんの両名。まあ確かに気になるよな。

 

 

「セイアちゃんは今、トリニティにいないの。入院中で……」

 

「本来であれば、今のホストはそのセイアさんだったのですが……そういった事情で不在の為、私がホストを務めているところです」

 

「元々ティーパーティーのホストは、順番でやるものだからね」

 

「そっか……早く良くなると良いね」

 

 

 キヴォトス人に入院の概念があったのは驚きだが、それについては一旦置いておこう。派閥のトップなら、こう言う場ではその代理とかが出席しないものなのかね?その派閥の勢力が二人のそれと比べて小さいのか。はたまた、今回の話の内容はそれほど重要ではないのかもしれない。内内の話はよく分からん。

 

 

 

 

 

 

「ありがとう。今聞きたい事のはこれぐらいかな」

 

「わかりました。また何かあれば聞いてください。それでは準備が整い次第、先生にはトリニティ総合学園に派遣という形で来ていただくことにできればと。……先生のご協力に感謝します、これで一安心です」

 

「じゃっ、またね先生!また会えるかどうかは分からないけどっ」

 

「そうですね。特に今は忙しい時期ですし、ティーパーティーの生徒会長が、こうしてまた直ぐに集まれるとも限りませんから」

 

「ふふっ、やっぱり忙しいんだ?でも先生のお陰でナギちゃんの顔も見られたし、良かった良かった!」

 

「はい、私もですよ。ミカさん」

 

 

 二人は幼馴染みだったっけか。別分派のトップが仲良しなのはどうなのか……まさか結託してセイアさんとやらを襲った線も?いや、流石に飛躍しすぎか。陰謀論、よくない。いろめがねは特性だけでいい。

 

 

「では、これからよろしくお願いいたしますね、先生。私もティーパーティーのホストとして、先生をエスコートいたしますので」

 

「うん──よろしくね」

 

 

 双方、円満な結果に落ち着いたようだ。さて、話はまとまったし帰r「では、次はトマリさんのお話ですね」ゑ?

 

 

「俺個人にも何かあるんですか?」

 

「……?手紙を先生に預けたはずですが?」

 

「確かにもらいましたけど……」

 

「じゃあ、私は補習授業部の生徒たちと会ってくるね」

 

「えぇ、案内も用意しています」

 

 そう言ってさっさと部屋を出て行く先生と、それを見送るお二方。先生の退出までの流れが妙にスムーズだ。まるで事前に示し合わせていたみたいじゃないか。

 

 

「では改めまして。まずは紅茶のおかわりをどうぞ」

 

 

 





目をつけられたくないから大人しくしていたらしい
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