曇り時々銃弾、所により爆弾   作:Aベル

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アビドス編は早足気味かも


2.はじめての銀行強盗

 

「……お、来たきた」

 

「ひー、走った走ったー」

 

「よし、大成功ね!」

 

「…?先生がいなくないですか?」

 

「え?…あれ?」

 

「ま、待ってー!?」

 

 

 先頭集団から大差をつけられて、息も絶え絶えに歩きと変わらないようなペースで走ってくる先生。それに気づいて慌ててフォローに回る面々。いや気づいてなかったんかい、あんたら。

 

 

「ゼェ…最近、運動、してなゴホッ……」

 

「汗やばいですよ先生。ほら、タオルどうぞ」

 

「ありがとう……」

 

「あ、すぐに立ち止まらずにゆっくり歩きましょう」

 

「む、無理〜」

 

「うわ、ばっちいからこっちにもたれないで下さい」

 

 

 そういう事は他の誰かにお願いしていただきたい。まあ先生も若いのだろうが、流石に学生の体力には勝てなかったようだ。道端の草を食べたときみたいな顔色になっている。

 

 仕方ないので、背中に先生をくっつけたまま歩く。……なんかさっきより息が荒くなってない?しばらくして先生が落ち着いたところで、早速戦果の確認をするようだ。

 

 

「シロコちゃん、集金記録の書類はちゃんとあるよね?」

 

「う、うん……バッグの中に」

 

 

 小鳥遊さんの問いかけに対してやけにまごついた様子の砂狼さん。書類だけが入っているにしてはやけに大きくなったカバン。この人やらかしたのか?

 

 

「へ!?札束!?」

 

「ええぇっ!?シロコ先輩、現金盗んじゃったの!?」

 

「ち、違う。……目当ての書類はちゃんとある。このお金は銀行の人達が勘違いしただけで……」

 

「……ざっと1億ぐらいはあるね」

 

「うへ、本当に5分で1億稼いじゃったよー」

 

 

 呑気な言い方とは裏腹に、微妙に嬉しくなさそうに見えるのは気のせいだろうか?まあこんな大金を盗んだとなれば、銀行側も黙ってはいないだろうから、ある意味当然の反応かもしれない。

 

 

「やったあ!何ぼーっとしてるの!運ぶわよ!」

 

「え、えぇ!?そのお金、使うつもりですか!?」

 

「アヤネちゃん、なんで?借金返さなきゃ!」

 

「そんなことしたら、本当に犯罪だよセリカちゃん!」

 

 

 現金を銀行からここまで持ってきてしまった時点でアウトだと思いますがそれは。恐らく、倫理的な話を言いたいのだろう。まあ言いたいことは分からんでもない。それにしてもコイツ、全く躊躇がない。

 

 

「で、先生はどう思います?」

 

「大人として、できるだけ生徒の意見を尊重するつもりだよ」

 

「うわ、玉虫色の回答……大人ですね」

 

「その言い方はちょっと酷いんじゃないかな!?」

 

 

 回答の迂遠さと言うか、お茶を濁すとまでは言わないが釈然としない物言いがまさにね。大人の話術って奴?よく言えば放任主義、悪く言えば無責任なのかもしれない。

 

 

「はいはい私が悪うございました」

 

「それ反省してないよね!?」 

 

 

 当然のこと。何を当たり前のことを言っているんだ、この人は。俺の発言の何処に反省する要素があるのか。

 

 

「そんなことより、いつまで背中に張り付いているつもりですか?」

 

「えー?それならおんぶしてよ」

 

「図々しさの化身ですか?勝手に乗らないでください。ちょ、暴れないで下さいって、元気じゃないですかアンタ!」

 

「むふー、いい景色だね」

 

「暑苦しいんですけど」

 

 

 さっきまで本当に疲れていたのか怪しいぐらい手足でがっちりホールドされている。今更だけどこの人距離感バグってない?俺たちさっき初めて会ったばっかりだよな?コミュ強はこれがニュートラルなのか?

 

 

「ちょっとあんた達は何やっているのよ!真面目にしてなさいよ!」

 

「セリカちゃんの言う通りですよ!」

 

「先生、言われてますよ」

 

「あんたもよ!」

 

 

 こっちに飛び火してて草。俺が怒られるのはなんか違くない?連帯責任?あ、そう。お前がそう思うんならそうなんだろう……お前ん中ではな!勿論、口には出さない。ところで、先生はともかく俺はほぼ部外者みたいなものだからもう居なくなってもよくない?

 

 

「ん、私も乗せるべき」

 

「え?シロコさん!?」

 

「ミ゛ッ!」

 

 

 躊躇なく飛び乗ってきやがったぞコイツ!君、俺が遊んでいると勘違いしてないか?

 

 

「カエルが潰れたような音が出ましたね……」

 

「んーカエルというよりセミ?」

 

「でもちゃんと持ち堪えててすごいです☆」

 

 

 まだだ、まだ耐えられる……!別に後ろから倒れてしまってもいいのだが、それをしてしまうと敗北感があって腹立たしいからできればやりたくない。

 

 

「そんな面白そうなこと、おじさんも混ぜてよ〜」

 

「ニ゛ィッ!?」

 

「あわわわ、潰れちゃいますって!?」

 

「た、耐えてるわ……」

 

「ギッ、ギブギブ!?こっちが潰れちゃう!」

 

「あらら、先生の方が先にダメになっちゃいましたね♣︎」

 

 

 いくら小柄な方とは言え3人はキツイ。と言うか君達、なんか重要な話してなかった?悪乗りしてる場合じゃなくない?

 

 その後の話し合いで、結局持ってきてしまったお金については使わない方針に決めたようだ。それなら遠慮なく俺が預かっておいて……ん?

 

 

「あ!どこ行くのトマリ!」

 

「ちょっと気になることがありまして。恐らくですが……こっちに誰か向かってきてますよ」

 

「え!?」

 

「…!?追手のマーケットガード!?」

 

「いえ、これは……便利屋のアルさん!?」

 

「便利屋だがなんだか知らないですけど、一応変装しておいた方がいいのでは?」

 

 

 その一言で皆、慌ててマスクを被る。念のためにいつでも戦闘に移れるように、武器の準備もしている。この辺りの行動は銃社会だからなのか、しっかりしていて抜かりないのは流石である。

 

 所属と名前がわかっているらしいので少なくとも知り合いだとは思うが、武装するってことは味方ではないのだろう。どういう繋がりかは知らないが。

 

 

「はあ、ふう……ま、待って!私は敵じゃないから!!」

 

「「「……」」」

 

 追いかけてきたのは、2本のツノの装飾?と大物感のある派手なコートが特徴の赤髪の少女だった。外見だけなら、威厳のある敵役みたいに見えるが振る舞いや雰囲気で台無しになっている。動作がコミカルというかなんというか。多分あれだ。見た目を厳つくして優位に立つ的な戦略。昆虫とかによくあるやつ。

 

 強盗団は身を寄せ合ってヒソヒソ話をしているが、俺からは距離が開いているため、よく聞こえない。よし、今の内にもっと遠くに行っておこう。

 

 普通の話し声ですら完全に聞こえない位置まできたが、盛大に何も始まらない。寧ろ両者は友好的というか楽しそうというか。赤髪の子のリアクションがいちいち大きいので、見ていて飽きない。なんかこう、いい感じな雰囲気だったので、俺は気付かれない内にその場から離れるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 愉快な仲間たちと(独断で)離れた翌日のこと。この辺り一体には店も目印もないので、砂の吹き荒れる街を当てもなく彷徨っていた。本当に何もないのなこの街。

 

 

「あ、トマリ!勝手に居なくなっちゃダメだよ!探したんだから」

 

「先生。奇遇ですね」

 

「……トマリ、大丈夫?顔色悪いよ?」

 

「えっと……ちょっと何か食べ物貰えませんか?昨日から何も食べてなくて…」

 

「えっ!?近くにラーメン屋があるから行こっか。ご馳走するよ」

 

「あなたが神か……!」

 

「ふふ、もっと私を讃えるといい」

 

 

 先生に後光が差して見える……俺、先生の事誤解してたよ。勝手に綺麗なリーデットとか思っててごめん。久々の現代飯に心躍らせて先生に着いて行くと、目的地には割とすぐに到着した。

 

 

「柴関ラーメン?」

 

「そう!大将の人柄も良いし、何よりここのラーメンは絶品だよ!あと、セリカのバイト先でもある」

 

「なるほど」

 

 

 セリカって誰だっけ?……ああ、確か黒髪ツインテっ子だったか。まあそんなことは何でもいいや。奢りで食う飯なら何でもな!

 

 店前で立ち話も営業妨害なだけなので一歩踏み出したその刹那━━

 

 ラーメン屋は爆ぜた。

 

 

「のわぁーー!?」

 

 

 咄嗟に身を固めたが爆発の威力が強過ぎたため、彼方此方に怪我を負ってしまった。もうやだこの世界。なんでいきなり店が爆発すんの?爆発オチなんてサイテー!爆発するのは、リア充だけにしていただきたい。

 

 少し待って煙がある程度晴れたので、先生の安否確認を優先する。まあスーパーキヴォトス人ならこの程度の事、ピンピンしてるはず……先生ー!?

 

 何故か先生は虫の息だった。……あっ、そうか!先生はヘイローを持たない外の世界の人?だったかそう言えば。いや、今はそんな事より応急処置だ!

 

 虎の子の傷薬を使うが、如何せんさっきまで死んでもおかしくない状態だったのだ。それでも多少は呼吸が安定したが、このままでは長く保たないだろう。これだけではまだまだ足りない。

 

 自身の血をインクにして術を組んでいく。不幸にして材料には事欠かないので、遠慮なく描き続ける。複雑な模様ではあるが、勝手知ったる描き慣れたそれだ。澱みなく、違えることなく完成させる。そして、今持っている触媒を配置して準備完了。

 

 

「ふう……」

 

 

 正直やりたくない。やりたくないが、やるしかない。準備不足な現状でどこまでできるかはわからないが、やらないよりは絶対にマシである。と言うか今この状況で何もしなかったら罪悪感で夢に出そうだから。……あ。

 

 

「………」

 

 

 無言で使う触媒を入れ替え、組んでいた術を書き変える。手癖で馴染み深いものを使おうとしたが、ぶっつけ本番でする以上は成功率の高そうなものを選ぶべきだ。まあその分こっちの負担もデカくなるんですけどね!

 

 

「いっ…てぇな!?チクショウめがっ…!」

 

 

 今回発動させた『痛み分けの術』は厳密には異なるが、大体名前のままの効果である。そして普通に治すより遥かに成功率が高い(なお代償は考えないものとする)。基本的には、代償や制限が大きいほど効果が出やすくなる傾向があるので、最適解だろう。

 

 時間経過で自分の身体に傷が、代わりに先生の容態が安定していくのが分かる。そう言う術だから仕方ないが、痛いものは痛い。ラーメン食べに来ただけなのに、どうしてこうなった?

 

 

「うぅ……」

 

「これで一安心でs「先生!!」」

 

「あんた達、よくもこんな……!」

 

「……許さない」

 

「!?」

 

 

 ここでアビドスの生徒達がエントリー。ボロボロになった先生の姿を見て怒り心頭のご様子だ。爆発から、全然時間が経っていないぞ?

 

 

「トマリさん!先生は無事ですか!」

 

「今処置が終わったところです。直に目を覚ますでしょう」

 

「ホッ……」

 

「よかった……」

 

 

 その場にいる全員が安堵の表情を浮かべる。もう少し時間は掛かるだろうが、恐らく大丈夫だろう。

 

 それにしても、便利屋とアビドスの関係がさっぱり分からない。元々面識はあったっぽいし、一方的に訳も聞かずに、一触即発の雰囲気になっていると言うことは敵対関係だった?複雑怪奇な両グループ間の関係性に疑問符を浮かべている間に、そのまま話が進み、どうやら喧嘩が始まるようだ。実弾を使って。

 

 おい馬鹿やめろ。他所でやってほしいんだが?ここに傷病者とか弱い一般人がいるのだが?慌てて先生を背負ってその場から離脱する。

 

 いよいよ始まるか、といったところで突然、それは起きた。最初にやって来たのはけたたましい爆音。直後、小さな瓦礫や埃を伴った爆風にさらされる。また爆発!?勘弁してくれ!?

 

 

「砲撃です!!3kmの距離に擲弾兵を確認!50mm迫撃砲です!これは………ゲヘナの風紀委員会です!規模は一個中隊!」

 

「風紀委員会…!」

 

「風紀委員会?一個中隊?」

 

 

 何それ知らない。まずゲヘナって何?何の組織だ?一個中隊って何人ぐらいいるんだっけ?軍事用語とか知らんて。

 

 

「うちの風紀の連中が来た!早く隠れよう!」

 

 便利屋のクールな子が他のメンバーに喚起している。つまり、この人達は風紀委員会に追われているってことか。なら風紀委員会は味方……な訳ないか。奴等はアビドスも巻き添えにしてるし。

 

 

「次弾来ます!」

 

 

 は?ちょ待てや!?

 

 

 

 

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