曇り時々銃弾、所により爆弾   作:Aベル

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誤字報告ありがとうございます。
作品の雰囲気的にはアレですけど、ナギちゃん・トマリくん視点では割と命の危機です



9.二手

 

 

 ここに来て敵の増援(推定)である。戦闘要員ではないことが不幸中の幸いか?いや、全くそんな事はないのが今までの経験から理解できる。まあ先生だからなあ……。ただ、相手が先生だからこそ、この選択肢が取れるだろう。

 

 

(しかしナギサ様、これは逆にチャンスです)

 

(え?……どういうことですか?)

 

(確かに戦力差は終わってますけど、先生になら交渉の余地があるかと)

 

 

 

 先生は全ての生徒の味方を自称するイカれ……聖人様である。特定の学園に所属していない俺にはともかく、生徒会と言う重役であれど一生徒でもあるナギサさんなら、先生の庇護の対象に決まっている。それは敵対している今でも変わらない事だろう。先生のこれまでの言動から考えても、もし仮に投稿したとしても最悪の事態にまでは至らないだろう。

 

 

 

(いや、でも……)

 

(正直このまま戦うよりも、希望はあるかと。ナギサさんの交渉に俺の命運も掛かっています……頑張ってください!)

 

(ちょっと、そういうこと言わないでくださいよ!?)

 

(まあ最悪何とかする算段はあるので大丈夫です)

 

 

 

 そう嘯いてナギサさんを地面に降ろす。縋るような目で見るんじゃない。お話はあなたの得意分野でしょうが。俺にそういう事は期待しないでいただきたい。

 

 交渉決裂したらどうするかって?うるせえ、それを今から考えるんだよ。逆転の一手なんて短時間で思いつく訳ないだろバーカ!一番バカなのは見栄を張った俺だよ畜生!確かに必要な事だったとは思うけど!

 

 

 

(でも……うぅ……)

 

(…………)

 

「えっと……それで、二人とも一緒に来てくれるかな?」

 

「ぁ……ぅ……」

 

 

 

 ナギサさんは、その場から動けないでいた。……いや、まあ無理もない。自分が死にそうな目に遭っている事に加えて更に、他人の生命まで掛かっているのだ。年端も行かない少女に求める責任としては、余りにも過剰である。寧ろ責める方が酷である。…………仕方ない、か。

 

 

 

「…………すみません、先生。どうかナギサ様の事、許してあげてください」

 

「なっ!?」

 

「ど、土下座……」

 

 

 

 床に正座をして、手のひらと額を地面につける。由緒正しき命乞いこと、ジャパニーズ土下座である。頭を下げるだけで生存確率が上がるなら、使わない選択肢はない。プライド?誇りで腹は膨れないんだよなあ。絵に描いた餅はどう頑張っても食べられはしまい。室内だから服が土で汚れないのでマシな方。

 

 

 

 

「えっと……」

 

「……ちなみになんですが、もしもダメだと言ったら?」

 

「その時はそうですね…………これで、どうですか!?」

 

「っ!?避けてアズサッ、ハナコ!?」

 

「え?きゃあっ!?」

 

「なっ!?」

 

 

 死角から出現させた巨大な手で、戦闘要員である2人を拘束する。『魔人の腕』は地面から手を生やす術だ。奇襲として使うには、魔法陣から手を出現させるまでに結構なタイムラグがあるため心許無い。何かしようとしているのが、手に取るようにバレてしまう。

 

 だからこその土下座である。注目を集めるのには打って付けの所作である。そして相手にバレないように術を発動させるのは基本。実は対象に手を突くことがトリガーの一つであるため、土下座ハンドはある意味ではベストな使い方なまである。まあ他の使い所もあるにはあるが。

 

 

「正真正銘、奥の手ですねっ!?」

 

「物理的に手を出すのはちょっと違わないかな!?」

 

「ナギサ様、今の内に逃げてください!」

 

「え……ト、トマリさんも一緒に……」

 

「バッカ、手が離せないんで早く!」

 

「あ、ぇ……で、できません……」

 

 

 そう言ってその場にへたり込んでしまった。こんな時に限って、いやそりゃあ仕方ない事だろうけどさ!?不味い、想像以上にナギサさんは精神的にキてるぞ、これ。どうしてこんなになるまで追い詰めたのですか?

 

 と言うか、もう長くは持たないがどうする!?こうなったら強行突破するしかn「ちょ、ちょっと待って!?誤解だよトマリ!?」…………誤解?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやあ、まさかナギサ様の保護が目的とは。それにしてはやってる事が真逆じゃないっすか。分かるかそんな事」

 

 

 俺が着いた時には既に、アズサさんがナギサさんに向けて銃を突き付けてたし。どう見ても襲撃現場だったのでは?そんなことする必要性もない上、アズサさんは連中と同じガスマスク装着してたから。もし先生が居なかったら、絶対信用してなかったぞ。何ならまだ若干疑っている部分もあるんだが?

 

 

「あはは……まあそうだね…」

 

「ヒッ…!?」

 

「痛い痛い痛いですってナギサ様。思いっきりいい所に力入ってますって」

 

 

 襲撃事件が余程トラウマになったのか、近くから離れようとしなくなってしまった。いつでもどこでも俺を盾にできる構えである。いやまあ確かに護衛としては正しいのかもしれないけどさ。何だろうね、この釈然としない気持ちは。

 

 

 

「何はともあれ、目標は達成しました。それに、思わぬ収穫もありましたし♡」

 

「おう、こっち見ないでもらえます?何かもう、色々と怖いので」

 

「あらあら♡怖がらなくてもいいのですよ?」

 

「俺が、と言うのもありますけど、それよりナギサ様の方が心配なんですけど」

 

 

 だってナギサさん、俺を挟んで浦和さんの事、めっちゃ睨みつけてるじゃないですか。何したらここまで恨まれるんですか貴女。あ、やっぱり怖いのか隠れた。

 

 

 

 

 

「ふふっ♡ではアズサちゃん、ここからは敵の誘導をお願い出来ますか?」

 

「了解。これでまだどこかに居る『本当のトリニティの裏切者』に嘘の情報が流れるはず……?ハナコの仮説通りであれば、アリウスも急ぐに違いない」

 

「はい、私の推測通りなら、まだ確証はないものの……『本当の裏切り者』については、個人的にはほぼ確信がありますし」

 

「ハ、ハナコさん……その『本当の裏切り者』というのが誰なのか、教えてもらえませんか?」

 

 

 浦和さんと関わる恐怖を押してまで、ナギサさんはそう尋ねた。確かに気になる所だ。正体に自信がありそうな様子だし、何よりその人物に用心する意味でも知っておきたい。特に俺なんかはここまで、情報収集を怠っていたので尚更である。

 

 

「そうですね……いえ、証拠がある訳ではないので、控えさせて貰います。余計な混乱を招くでしょうし。……特にナギサさんには」

 

「それならせめて、俺だけでも聞いていいですか?」

 

「うーん…………そこまで言うなら、分かりました♡少し耳を貸してください」

 

 

 少しの間、思案した様子だったが、話してくれるみたいなので耳を寄せる。今し方知った事だが、浦和さんはこんなでもトリニティが誇る天才だったとか。人間性はともかくとして。そんな人物の推測なら、ある程度信用していいだろう。人間性はともかくとして!……何か怪しい表情をしているのが気に掛かるが。

 

 

「その裏切り者は……」

 

「…………」

 

「ふぅ〜〜♡」

 

「いっ!?……何しやがんだオメーはよぉ!?」

 

「きゃあ〜♡」

 

「お、落ち着いてトマリ!?気持ちはわかるけどっ!?」

 

 

 逃げる浦和さんを追いかけようとした所で、慌てた先生のインターセプトが入った。出会ってからずっと、ちょっかいばっか掛けて来やがってよぉ。これが天才の余裕って奴ですか?

 

 

「うふふ♡……ところでアズサちゃん。アリウスの兵力がどれぐらいか分かりますか?正確に言うと、どれくらい持つのか把握したいのですが」

 

「詳細はわからない。けど、どれほどの相手だったとしてもかなり時間は稼げるはず。このために毎晩、学園の周辺にトラップやら塹壕やらを作っておいたから。そこに誘導しつつ、ゲリラ戦で時間を稼ぐ」

 

「良ければトマリさんにも参加してもらいますが」

 

「えっ」

 

「いや、連携が難しいから一人で行く。それに、先生や桐藤ナギサに万が一があってはならない。護衛に回ってもらおう」

 

 

 実際問題、トラップの位置の共有やバディとの連携がなっていないとなると、いっそのこと一人の方がやり易いのは分かる。アズサさんはこういうのに手慣れているみたいだから、安心して任せられる。それを既に体感した身としてはな!

 

 

「じゃあ、一旦ここで。後で合流地点で会おう」

 

「はい、また後ほど!」

 

「アズサも気をつけてね!」

 

 

 話は纏まり、当初の予定通りアズサさん単独で動くようだ。必要最低限の情報しか与えられていないので、作戦の全貌はわからないが、自分達は体育館に向かうとの事。そこで残りの補修授業部のメンバーと合流するのだとか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、やっと来たわね!?」

 

「皆さん、こっちです!……あれっ、トマリさんじゃないですか!?何故ここに!?」

 

「どうも、ヒフミさんにコハルさん。まあナギサ様の護衛っすね、はい」

 

「ひ、ヒフミさん……」

 

 

 無事に体育館に辿り着いた自分達を迎えたのは、ヒフミさんとコハルさんである。二人とも、不測の事態に備えてしっかり武装している。ヒフミさんの姿を見るなり、何やらナギサさんの様子がおかしくなったのが気になるが。

 

 

「あはは……えっと、大丈夫ですか?ナギサ様?」

 

「ごふっ……」

 

「な、ナギサ様っ!?」

 

「ナギサ様が死んだ!この人でなし!」

 

「ええ!?わ、私が悪いんですか!?」

 

「それは知らない」

 

 

 





トラップ発動!ナギサ様は⚫︎ぬ

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