曇り時々銃弾、所により爆弾   作:Aベル

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主人公の名前はトマリ君です。読み返したら自己紹介してなかったのに気づいたので


3.襲来

 

 あっぶねえ……防壁が間に合わなかったら、先生共々天に召されててもおかしくなかったぞ…。本気でタマ取りに来てやがるよあいつら。

 

 

「…っ!先生!トマリ!無事!?」

 

「今のところは大丈夫です、今のところは。それよりですね…」

 

「便利屋の皆さん、ここは協力して打倒風紀委員会ってことで一つ…!」

 

「ちょっと待ちなさい!そいつらは柴関ラーメンを爆破したのよ!?協力なんてできる訳…!」

 

 

 まあそうなるよな、うん。感情としてはそうだよな。わかるわかる。ただ逃げるにしても戦うにしても、人数差に加えて先生の護衛まで必要になるのだ。況してや一番の実力者であるおじさんも不在なのだ。戦力は少しでも補うべきだ。それに……

 

 

「いや、多分……あれは誤爆させちゃって、そのまま言い出せずに見栄を張ったんだと思う」

 

「はあ!?」

 

「私たちを狙っていたなら、アビドス生が揃っていないあのタイミングで爆発させるのもおかしい。それに…」

 

 

 砂狼さんは話を区切り、未だに目を覚さない先生の方を見やる。

 

 

「冷静に考えれば、いくら無法者の便利屋でも、外の世界の人であるシャーレの先生を殺そうとまではしないはず」

 

「ってことは罠を準備しているときに間違えて爆破させて、たまたま近くに先生がいたってこと?…ほんとに何やってんのよアイツらは…」

 

 

 猛る黒見さんを砂狼さんが冷静かつ論理的に諭す。いい流れだ。

 

 ルール無用のキヴォトスでも殺人は流石に重罪らしい。なら銃火器の使用も禁止にしろやと言いたい。銃弾を弾く人体……ドワーフとか獣人とか、もはやそう言う人族的なカテゴライズじゃないのか?まあそれはそれとして。

 

 

「という事で、一旦協同戦線って事でOK?」

 

「私達としては都合が良いけど…」

 

「よしっ!便利屋!風紀委員会の奴らを叩くわよ!」

 

「トマリは先生をお願い」

 

「話が早い…」

 

「当然よっ!だって私たちはアウトローの便利y」

 

「長くなりそうなので巻きでお願いします」

 

「口上ぐらい言わせなさいよっ!?」

 

「や、これはしゃーないです」

 

 

 時間がないから名乗り口上はキャンセルだ。決して巫山戯てなどいないのだ。だから、許さない許さないとブツブツ呟いてるヤベー奴も、白目剥いて愉快な顔を晒している本人もスルーして簡単な準備を済ませる。

 

 

「視界を晴らすので各々の得意な位置を目指してください………今!」

 

 

 合図と同時に細工して押し留めていた砂塵を勢いよく解放する。戦闘開始の狼煙ついでに砂による目潰しを狙った姑息な一手だ。前列への嫌がらせ程度だったが、このメンバーには十分な時間だったらしい。

 

 手始めに十六夜さんの軽機関銃による一斉掃射が景気良く風紀委員を蹴散らしていく。やられる方は堪ったもんじゃないだろうが、見る分にはサイコーである。これならなんとかなるんじゃないか?

 

 

 

 

 

 駄目でした。やっぱ戦いは数だよ!最初の方は順調だった。だが、段々と戦況が傾き始めて、そしてと言った具合だ。

 

 先生が再起してからは一気に押し返しましたがね!大人の力ってスゲー!先生のお陰でネックだった連携面が、目に見えてよくなってからは一気に片付いた。と言うよりあっちの眼鏡を掛けた赤タイツの子が無理矢理中止させたようにも見えた。

 

 

「アビドス対策委員会の奥空アヤネです。所属をお願いします」

 

「それは…」

 

「それは私から答えさせていただきます」

 

「アコちゃん?」

 

「アコ行政官…」

 

 

 指揮を取っていたリーダー格の銀髪っ子達と話していると、突如ホログラム的な通信が入った。曰く、通信相手は風紀委員会のNo.2?らしい。首輪もあれだがその横乳の露出は多分そういう癖なのだろう。そう言えば今更だけど、何なのそのSFチックな超技術?みんな当たり前みたいな顔しているが全然慣れない。

 

 長々と話しが始まったが要するに風紀委員会の目的は先生の身柄の確保であり、邪魔な便利屋を潰すのはほぼほぼ建前ってな訳だ。話し振りからするに捕まったら少なくともトリニティ?との条約まで監禁ルートっぽいな。なるほどつまり…

 

 

「全部先生が悪いってことですね」

 

「なんでそんな結論になるかな!?」

 

「冗談ですって。2割ぐらいは」

 

「やっぱり冗談じゃないよね!?」

 

 

 何もかも怪しい身分の先生が疑われて当然である。風紀委員会に初手爆撃されたことも、ラーメンを食い損ねたことも、世の中の不況も明日の天気も全部先生が悪いに違いない。

 

 先生が文句言っている間に、それぞれの会話は進んでいた。便利屋曰く、風紀委員長が来たら勝ち目がないとのこと。相手側もこちらの弱点を把握したとか言い出して、いざ開戦の目前で気付いた。

 

 

「さあ、行きましょうか。風紀委員会、攻撃を──」

 

「あのーすみません?皆さんちょっといいですか?」

 

「何ですかこんなときに!と言うかスルーしてましたけど貴方は何なのですか!さっきからふざけた顔ばかりして!」

 

 

 え?俺そんな風に思われてたの?一応、さっき先生に吹っ掛けたけどそれ以外は真面目にしてなかった?いや待て、顔は仕方なくない?

 

 

「その服装で言われても……そん「なんですって!?」ああもう鬱陶しい…」

 

 

 ギャーギャー喧しいなこの変質者。牛乳でも飲んで落ち着いたら?煽っていいのは煽られる覚悟がある奴だけだろ。癇癪を起こすホログラムを無視して話を進めさせてもらおう。

 

 

「風紀委員長って言うのは白い長髪で紫色の目をした小柄な子であってます?」

 

「ええそうですが…」

 

「それがどうしたって言うですか!?」

 

 

 ヒス起こして頭回らないのか?会ったこともない風紀委員長の特徴をこの場で問い出した時点で察しがつくだろう?

 

 

「それらしき人が其処に居るんスけど…」

 

「「「え!?」」」

 

 

 誰も気づかなかったってマジ?何かスゲー禍々しいオーラが出ている様に見えてたし、割と前からこっちに向かってきてたぞ?

 

 

「……アコ。この状況、きちんと説明して」

 

 

 え、何あれ怖…。

 

 

「そ、その…これはえっと、便利屋を捕まえようと…」

 

「便利屋なんてどこにいるの?今はシャーレとアビドスと対峙しているようにしか見えないけど」

 

「え?便利屋ならそこに………いない!?いつの間に!?さっきまでそこにいたはずなのに…!?」

 

 

 誰もいないところ指差してて草ァ!確かに手は回したが、撤退までの判断が早い!この規模の組織相手に逃げ果せているのは手練れなのもあるだろうが、その場の判断力が大きいんだろうなあ。

 

 

「う……またあの変な格好をした男がやっt…こっちもいない!?」

 

「あれ?私のメイン盾が消えた!?」

 

「さっきまでそこにいたわよね…?」

 

 

 おいまず先生の発言に誰かツッコミ入れてくれよ。役割としてはまあ間違っちゃいないんだろうけど、もうちょっと言い方何とかならなかったのか?

 

 当たり前だが身を隠しているだけである。一応、先生のフォローが出来る位置取りにはいるが。

 

 

「い、委員長、全て説明します」

 

「いや、もういい。だいたいわかった」

 

「委員長…」

 

「こういう政治的なことは『万魔殿』のタヌキたちにでも任せればいい。詳しい話は後で聞くから、通信を切って謹慎していなさい」

 

「……はい」

 

 

 沈痛な面持ちの横乳がいなくなり、その場には気まずい静寂が訪れた。これで解決、ではないからな。仕方ないね。そんな中、砂狼さんが口を開いた。

 

 

「じゃあ、あらためて…」

 

「えぇ、そうですね」

 

「話s「やろうか」…どうして!?」

 

 

 キヴォトス人、血の気が多すぎ問題。対話で解決できそうな流れじゃんどう見ても。先生もビックリしてるよ。なおこの後、奥空さんの制止で対話する方針に舵を切った模様。

 

 話し合いを陰から眺める最中、ついでに先生の容態も、もう一度確認する。ある程度回復はしているが念の為である。折角苦労して助けたのに水の泡になるのも癪だからだ。

 

 対談は佳境に差し掛かっているが中々雰囲気が悪い。

 

 

「此方に不手際があった事は認める……けれど、そちらが風紀委員会の公務を妨害したのも事実。違う?」

 

 

 流れ変わったわ、これ。風紀委員長の発言で現場の空気が急変する。アビドス側も譲る気がないのは明白である。まあ普通に戦ったら風紀委員に軍配が上がるのは間違いないのだがどうするのか。

 

 

「それはそうかも。だから?」

 

「それで?」

 

「私たちの意見は変わりませんよ?」

 

 

 強気すぎない?ここまでする理由は俺には分からないが、(元々なかったかもしれない)義理は果たしたので後は交戦しようが関わる気は毛頭ない。当然である。こっちは一発でも被弾したら致命傷になり得るのだから。

 

 

「ちょっと待ってください!?うぅ……こんな時にホシノ先輩がいてくれたら…!」

 

「……?アビドスのホシノって…もしかして、小鳥遊ホシノ…?」

 

「はい?…その通りですがどうして知っているのですか…?」

 

「うへ~、こいつはまた何があったんだか、凄い事になっているじゃ~ん」 

 

「ホ、ホシノ先輩!」

 

 

 先ほどから遠くから歩いて来ているのが見えていたおじさんが、いつもののんびりした足取りでこちらに合流した。その事実にアビドスのメンバーは安堵の笑みを浮かべている。風紀委員長の発言からどうやらその存在は知っている様だが?

 

 

「ごめんごめん。ちょっと昼寝しててね〜、少し遅れちゃった」

 

「……!?」

 

「先生…?」

 

 

 傷だらけの先生を見た小鳥遊さんの動きが止まる。それは一瞬だったが、変化ははっきり感じ取れた。眠たげだった目はしっかり開かれていて、普段の様子からは想像し難い険悪な空気を醸し出し始めた。

 

 

「これはどういうこと?何があったの?」

 

「ちょっと色々あってね…?」

 

「ん、先生の誘拐を阻止している」

 

「へえ、そうなんだ」

 

 

 雲行きも怪しいし、ここいらでバレない内に撤収しますかね!また巻き込まれでもしたら洒落にならないし。…なんか薄々勘付かれている様な気もするが、何か言われる前に退散だ退散!

 

 

 

 

 

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