曇り時々銃弾、所により爆弾   作:Aベル

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エデン前半終了。これが一応エピローグです



16.夢から醒めて

 

 

 

 俺が気を失って、それからの話。怪我の影響で随分長い間寝続けていたので、既に学園は日常を取り戻しつつあるようだ。自分の怪我についても傷跡は残るだろうが、目覚めた時には日常生活に支障のないレベルに落ち着いていたし。まあ一度も起きなかったせいで、一悶着あったらしいが詳しくは知らない。滅茶苦茶怒られたのは、少し理不尽に思う。普段通りオサレな言動をしていたら、集まった全員から総口撃を頂いたのはいい思い出……でもないです。普通に辛い。

 

 

 先生の指揮とシスターフッドの奮闘により、アリウス部隊を撃退。抵抗を続けていた敵の大将の聖園ミカも、浦和ハナコから百合園セイアが生きていることを聞くと、降参を申し出たらしい。その時の表情は、敗北を認めたと言うのに、憑き物が落ちたように見えたとか。大人しく連行され、今は学園にある檻の中とのこと。

 

 

 戦闘に協力してくれたシスターフッドは、実は先生が引き連れてきた訳ではなく、浦和ハナコが事前に交渉していたのだとか。大体コイツが暗躍してるのな。なお、両者の交渉の内容については不明。個人的にそれはどうでもいいが、シスターフッドの長が俺に対して面会を要請している方が気になるのだが?何故?

 

 

 騒動が収まるや否や、補修授業部の面々はそのまま会場まで走って、第三次特別学力試験だったらしい。結果も大惨事、なんて事はなく全員文句なしの合格を自身の手で勝ち取ったようだ。何なら浦和ハナコは満点だったとか。また貴様か。お前は一体何故、補修授業部にいるんだ?いや、どう考えても素行不良に違いない。

 

 

 以上により、全て無事解決、ハッピーエンドである。……先生や補修授業部視点ではな!ナギサさんはこの後、関係各所への謝罪をはじめとした、諸々の事後処理に東奔西走していたらしい。本人も散々やらかした自覚はあるらしく、現状を受け入れている様子だ。それはそれとして、紅茶と愚痴は止まらないようだが。今現在も、時折紅茶を嗜みつつも、積み上がった書類を裁いていた。一応ここ、病室なんですが?

 

 

 

「……トマリさんは、お腹の怪我は完全に治りましたか?」

 

「それはもうバッチリ。いつも通りですよ」

 

「そうですか。でしたら一緒に仕事も……」

 

「イヤー、マダオナカイタイナー!」

 

「お見舞いにクッキーを焼いてきたのですが、お腹が痛いなら仕方ありませんね」

 

「それをすてるなんてとんでもない!早く食べましょうよ!」

 

「別に捨てませんが…?ではそうですね、クッキーに合う紅茶も用意しましょうか」

 

「流石ナギサ様!Ms.ティーパーティー!」

 

 

 

 これでも健康体なのに、まだ病院食しか食べていなかったのだから。色々考え事をした後は、やはり甘いものに限る。特にナギサさんの用意してくれたお菓子が外れだったことはないので、是が非でも頂きたい。

 

 

 

「これは伝え忘れていたようですが、トマリさんが気絶する直前に、アリウス生達が大きく吹っ飛んでいたそうです。それについて、先生が感謝していましたよ?お陰で想定よりスムーズに撃退できたのだとか」

 

「あれは元々、逃げる時に使う予定だったんですけど、丁度良かったので使った奴ですね」

 

 

 折角準備したのに、使わないのは勿体無い!と言う事で発動した俺からのプレゼントである。自分が使用する術は、基本的に無差別に効果を発揮するものが多数なので、今回の様な対大人数でしか使い難いものも珍しくない。とも有れ、役立ったなら問題ない。

 

 

 

「ハナコさんからお聞きしました。セイアさんの治療をして頂いたこと、トリニティの代表として、また彼女の友人として感謝しています。ありがとうございます」

 

 

 

 出たよ、浦和ハナコの意味不明なレベルの情報収集力。『百合園セイアの生存に俺が関与した事』もそうだが、そもそも『俺が百合園セイアと接触している事』自体が眉唾物の話の筈なんだが?考えられるのはセーフハウスに居る2人が、先んじて浦和ハナコに話を通してあると言った線か?

 

 

 

「それはいいんですけど、何故奴はそんな事まで把握しているんですかね…?」

 

「ハナコさんは、セイアさんと仲が良かったから……かもしれませんね」

 

「あの2人が仲良し?……あー、まあ確かに小難しい話でもしてそうですね」

 

 

 

 両者とも、頭が切れるのも関係しているのだろうか。下ネタ大好き腹黒ウーマンと生意気煽り小狐だからな。ミレニアムのハッカーおばあちゃんと言い、天才達は余りにも癖が強過ぎる。

 

 

 

「よろしければ、セイアさんとお会いしたいのですが」

 

「それに関しては、セイアさん側が拒否していますね。俺も詳細は知らされてませんが、何でも予知夢関連の事らしいですよ?」

 

「なるほど。セイアさんがそう言うなら、その通りにしましょうか。……興味本位で聞くのですが、セイアさんとの初対面はどうでしたか?彼女はその、言っては何ですが、少しばかり人を選ぶような性格ですので」

 

「確かに、頭のいい奴特有のわかり難い例え話が、会話中にオンパレードしますからね。耐性がなければ、キツいタイプには違いないと思います。特に面白い話でもありませんが、それでもよろしければお話しします」

 

 

 

 

 

 それはキヴォトスが大寒波に見舞われ、身も凍るほど寒い冬の日の事でした。炬燵とみかんが定番のその頃、セイアさんはすっかり冬毛に換毛していてモコモコしていました。

 

 

「ふふ、想像してみるととても可愛らしい姿ですね」

 

「否定はしません。まあシマエナガ君の方が、真ん丸で可愛い訳なんですが」

 

「確かにその気持ちはわかりますが。では、法螺話もそれぐらいにして、そろそろ真面目に話してください」

 

「へへへ、サーセン」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 セーフハウスに毎晩通い、処置をし続けること幾許か。その日も同じ様にできる事をして帰ろうと団長の元に訪れた。すると団長から、セイアさんが目を覚ました事、2人での面会を希望している旨を伝えられ、詳細を知らないままにいざセイアさんの居る部屋へ。

 

 

 

「一応初めましてだね、異界から来た魔法使い。私の名前は百合園セイア。セイアと呼んで欲しい」

 

「あ、はい。よろしくお願いします」

 

 

 よく言われるが、俺の肩書きって厳密には魔法使いではないのだが…。まあ訂正するのも面倒だから、このまま話を進めてしまおう。別にそこは重要なポイントではない。

 

 

「まずは私を助けてくれたことに感謝する。君のその奇怪な魔法がなければ、今の段階で私が目覚めている事はなかっただろう。最悪の場合、一度も起きる事がなかったかもしれない。この物語に本来なら登場しないトマリなら、特異点である君になら……」

 

「あの……大変申し上げにくいのですが、一つよろしいですか?」

 

「うん、何でも言ってくれ」

 

「肌着、着るの忘れてますよ?」

 

「は?」

 

「病人が身体を冷やすのは良くないですよ?ほら、お兄さんの上着貸してあげるから。サイズは合わないかもしれませんが、着ておきな?」

 

「…………」

 

「もちろん、しっかり洗濯してありますので、衛生面は心配しなくても大丈夫だと思います」

 

「…………ありがとう」

 

 

 室内とは言え、矢鱈と薄着なセイアさんを見兼ねて、自分の上着を貸してあげる事にした。我ながら完璧な気遣いの出来る男ムーブ。俯いていて表情こそ見えないものの、肩を震わせるほど嬉しかったに違いない。やはり良い事をした後は、気分がいいものだ。

 

 

 

「……私が時折、予知夢を見ることは君も既に聞いていることだろう。これから話すことは、私が見た物語の話。あらゆるものを疑い、それでいてただただ後味だけが苦いような、しかし同時に紛れもない真実の話だ。そして何もかもが虚しく、遍く全てが破局へと向かうエンディングを辿る未来について。その中でも……」

 

「おっ、白い小鳥が指先に止まった。人懐っこいな……かわよ」

 

「…………そのような未来を夢で見たが、ここで1人予知夢にいない存在が現実に居たんだ。そのことに気付いたのは、私が襲われる直前だった。物語が動き出す前に接触したかったのだが、間に合わなかったんだ。だけどどうやら、ミネは上手く執り成してくれたみたいだね。だから……」

 

「何かあったっけ?角砂糖……3個か?甘いの3個ほしいのか?イヤしんぼめ!……あっ、鳥に砂糖ってダメでしたっけ?」

 

「シマエナガ君にそんなもの食べさせようとするな!?全く……噂通りだね、君は。油断も隙もあったものではない」

 

「どうも、ご紹介にあずかりました。隙のない男ことトマリでございます」

 

「誇るな!今はしたり顔をする場面じゃないだろう!?嫌味も通じないのか、君はっ!?」

 

「嫌味のない性格って事ですね」

 

「君は些か、物事をポジティブに捉えすぎている……」

 

 

 

 澄ました顔と厭世的な態度をしていた割には、中々良い反応をするじゃないか。疲れた様な顔をしているが、そんな調子で大丈夫か?糖分が足りないなら、チョコレート食べる?貰い物だけど。

 

 この後と言えば、セイアさんの叫びに反応した団長が部屋に突入して来て、対談形式は終了した。結局3人でテーブルを囲む事になった。一応、俺に伝えたい事は、既に終わっていたらしい。なお、団長からは『セイア様に無理させるな。汝、救護が必要なりや?』(意訳)との説教を受ける羽目になったが、それはまた別のお話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まあ、こんな所ですかね」

 

「予想はしていましたが……これは酷い……」

 

 

 





セイアちゃん、話が長い

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