曇り時々銃弾、所により爆弾   作:Aベル

33 / 77

感想・誤字報告ありがとうございます



a.病室

 

 

 セイアさんに関するどうでも良い事で駄弁って暫く。ナギサさんはと言えば、これから何やら重要な会議に出席する必要があるらしい。会議内容の詳細?訊ねたら応えてくれるとは思うけど、絶対に巻き込まれるから聞く気はないです。割と頻繁に人手不足をぼやいているので間違いない。神に触らなければ祟られないし、わざわざ仏に参らなければ罰も当たるまい。

 

 

 引き起こしてしまった一連の不祥事により、ティーパーティーの求心力は大きく低下してしまった。そのため、学内外の政治統制や派閥間の調整などあらゆる場面において、今まで以上に苦労が増える事は避けられない、とは本人の談。実際、これから執り行われる会議も、会議とは名ばかりで実態は査問会みたいなものらしい。これには然しものナギサさんでも、げんなりしている様子を隠し切れていなかった。

 

 

 

「はあ……では、行ってきます」

 

「行ってらっしゃいませー」

 

「トマリさんはそちらの書類をお願いしますね」

 

「……これ全部ですか?」

 

 

 雑談の途中で手を付けなくなっていたから、仕事を押し付けられることは薄々察していたが、それにしても量が多い。俺1人でこの量を裁くとな?キャパオーバーと言う言葉をご存知でない?

 

 

「えぇ、その通りです。……今から出席する会議では各組織から、今回の騒動のティーパーティー側の当事者として、トマリさんに対して強い参加の要請がありました。しかし、怪我などを理由に不参加を勝ち取ることができました。……まあ私としましては、トマリさんもご一緒に出席していただいた方が、大変心強いのですが……」

 

「本気で言ってます?俺が居ても役に立たないどころか、逆に足を引っ張るだけですよ?」

 

 

 真面目な空気に耐えかねて逃亡を図るか、余計な発言のせいで不利になる未来しか見えない。うーん、我ながら見事なダメ人間。

 

 

「えっと、そのような理由ではなく、その場に居ていただくだけでも良いのですが……まあいいです。とにかく、そちらの書類はお任せしますね。きちんとお礼は用意いたしますので」

 

「うーん……分かりました。2週間後の天気予報レベルで期待してください」

 

「明日の天気予報程度には期待しておきます」

 

「期待が重過ぎるんですよね」

 

「後は私を労わる用意もお願いします」

 

「どしたん?話聞こか?」

 

「それはもう聞いていただきたい事は、山程ありますので」

 

「えぇ…………あっ」

 

 

 しまった……ナギサさんがガチお嬢な事をすっかり忘れていた。キヴォトス人の中でも屈指の常識人な上に、愉快な性格をしているからつい。確かにナンパとか、そう言う事全然知らなさそうな身分だったわ。こんな仕様もないネタをそのまま受け取られても、困惑しかないと言うか。逆に面食らってしまって反応が遅れた。

 

 

 それではよろしくお願いします、と一言掛けてナギサさんは部屋を出て行った。問題は山積みと言うか、目の前に問題(書類)が山積みなので、まずは数を減らす必要があるだろう。持ち込んだ椅子やらティーセットを、そのままにしておかないでいただきたいのだが?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 順調に仕事を処理し続け、お天道様が真上にはまだ来ないぐらいの時刻に。早く終わらせたい一心で集中していたが、部屋に響くノックの音が邪魔をした。かと思えば、返事も待たずに先生が入ってきた。この人は病室を自室か何かと勘違いしているのでは?

 

 

「トマリー、お見舞いに来たよ。調子はどう?」

 

「ノックしながら入室するなら、ノックする意味なくないですか?」

 

「まあまあ、気にしない気にしない!細かい男は嫌われるよー?」

 

「真面目に返答すると、逆に細かい男になるトラップですね」

 

「え?トマリが真面目なときってあった?」

 

「馬鹿にしないでくださいよ。そんなのあるに決まってます。……あるはず、ありますよね?」

 

「そこはむしろ、自信をなくさないでいて欲しかったのだけど……」

 

「ほら、あれですよ。まじめにふまじめみたいな?セイアさんも言ってるじゃないですか」

 

「セイアは絶対にそんなこと言ってないし、トマリの場合、不真面目が勝ちすぎてない?」

 

「つまり真面目と言う事ですね」

 

「えっと……あれ?」

 

 

 『不真面目にすること』に対して、真面目に取り組んでいると仮定するならば、不真面目にしているならば真面目であろうと言う話である。だからこの場合、俺は不真面目だと評価されているので、それ即ち真面目であることを意味する。

 

 

「うーん……それなら真面目でも不真面目でも、両方とも真面目になるよね。そもそもこの話って、仮定から間違っているんじゃないかな」

 

「知ってましたか?細かい事気にすると嫌われるらしいですよ」

 

「細かくないからセーフ」

 

 

 

 毒にも薬にもならない不毛な言い争いをしながらも手は止めない。会話が適当なのは何時ものことである。キヴォトスに来てからというもの、明らかに経理関係やデータの扱いに詳しくなったものだ。流石に専門職には劣るだろうが。

 

 

 

「先生も暇なら手伝ってくださいよ」

 

「え〜?私はトリニティの政務については部外者だし〜?ナギサがトマリを信頼して託した仕事を奪うのもどうかと思うし〜?やっぱりここは大人として、生徒の意思を尊重するべきって言うか〜?だから私では力になれないな〜。本当に残念だな〜、ゴメンねっ!」

 

「くっそ、ここぞとばかりに煽りよる……!俺が何したって言うのですか!?」

 

「日頃の行いを振り返ってみて?」

 

「……?ちょっと何言ってるか分からないです」

 

「なんで何言ってるか分からないの?」

 

「怪我人に何たる仕打ち…!」

 

「治ったって聞いたけど…?」

 

 

 さっき完治したと言ったな。あれは嘘だ。いや、確かに頑張ればすぐに治せなくはないが、ゆっくり治療できるなら絶対そっちの方がいいから。身体的、精神的にも、経済的にも色々な意味で。

 

 先生の悪行を非難している途中、常に持ち歩いているらしいタブレットから通知音が鳴った。先生はと言えば、糾弾されているにも関わらず、普通にタブレットを操作し始めた。皆さんはもう少し、俺に対して自重するべきでは?リスペクトが足りない、リスペクトが。

 

 

 

「補修授業部の子達も、そろそろ着くみたい」

 

「なるほど?……私にいい考えがある」

 

「こういうとき、トマリって大体碌な事考えないよね」

 

「やっぱり先生では、この高尚なアイデアは理解できませんか。天才故の孤独って奴ですね」

 

「天才の前に『残念な』が付くけどね」

 

「心外ですね……まあいいです。俺は心が広いので。ひとまず耳を貸してください」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失礼しますっ!トマリさん、お見舞いにって、きゃあー!?」

 

「あらあら♡これはこれは」

 

「えっ、えぇっ!?何なのアレ!?」

 

「トマリが縦に伸びている…?」

 

 

 入室して早々、病室で悲鳴が上がった。特にヒフミさんとコハルさんは、素晴らしいリアクションだったし、アズサさんも表情の変化は乏しいものの、中々驚いている様子。いいね、そういうのを求めていた。まあ浦和ハナコだけは、少し反応が怪しいが。

 

 

「ふふっ、よく見てください♡あれは先生の足じゃないですか。つまり今、トマリさんと先生は布団の中で、合体している可能性が……」

 

「が、合体っ!?そういうのはダメ!」

 

「えっ!?」

 

「知ってた」

 

「……ハナコの反応は予想通りだったね」

 

「あっ、何だそういう事ですか……」

 

 

 していた事は単純明快。まずは布団から上半身だけ出す。そして布団を膨らませて、中身をそれっぽく詰めた靴下だけを見えるように配置。するとあら不思議、トマリ(巨人のすがた)が完成すると言う、ただそれだけの古典的なネタである。

 

 最初は先生に協力してもらい、布団から先生の足だけ見えるようにする予定だったが、騒ぎそうなのがいたのでこの方法に変更した。まあ浦和さんに関しては、先生が布団の中にいない事も含めて、全部バレていたっぽいが。

 

 

 

「ところでコハルちゃんとヒフミちゃんはナニを想像しましたか?私に教えてください♡」

 

「あうぅ……」

 

「べ、別にエッチなことなんて、考えていないんだからね!本当よっ!?」

 

「やめやめ、ここ病室ですから。個室とは言え、騒がないようにしましょう」

 

「確かにそうだね」

 

「騒ぎを起こした本人が言うこと…?」

 

「そうですよね、アズサちゃん!もうっ、トマリさんのせいですよ!」

 

「ふへへ、よせやい……ちょ、遠慮とかしていただいても?」

 

 

 怒ったヒフミさんに肩をバシバシ叩かれる。まあ流石にそこは配慮はしているのか、大して力は入っていないが。でも信じられるか?これがつい先日、腹に大怪我負った奴の扱いなんだぜ…?そのまま俺の座っているベッドの端に居座ってくるのも、色々距離感がバグっていると言うか、シンプルに図太くないか貴様?

 

 

 





※病室では静かにしましょう

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。