感想・誤字報告ありがとうございます
セイアさんに関するどうでも良い事で駄弁って暫く。ナギサさんはと言えば、これから何やら重要な会議に出席する必要があるらしい。会議内容の詳細?訊ねたら応えてくれるとは思うけど、絶対に巻き込まれるから聞く気はないです。割と頻繁に人手不足をぼやいているので間違いない。神に触らなければ祟られないし、わざわざ仏に参らなければ罰も当たるまい。
引き起こしてしまった一連の不祥事により、ティーパーティーの求心力は大きく低下してしまった。そのため、学内外の政治統制や派閥間の調整などあらゆる場面において、今まで以上に苦労が増える事は避けられない、とは本人の談。実際、これから執り行われる会議も、会議とは名ばかりで実態は査問会みたいなものらしい。これには然しものナギサさんでも、げんなりしている様子を隠し切れていなかった。
「はあ……では、行ってきます」
「行ってらっしゃいませー」
「トマリさんはそちらの書類をお願いしますね」
「……これ全部ですか?」
雑談の途中で手を付けなくなっていたから、仕事を押し付けられることは薄々察していたが、それにしても量が多い。俺1人でこの量を裁くとな?キャパオーバーと言う言葉をご存知でない?
「えぇ、その通りです。……今から出席する会議では各組織から、今回の騒動のティーパーティー側の当事者として、トマリさんに対して強い参加の要請がありました。しかし、怪我などを理由に不参加を勝ち取ることができました。……まあ私としましては、トマリさんもご一緒に出席していただいた方が、大変心強いのですが……」
「本気で言ってます?俺が居ても役に立たないどころか、逆に足を引っ張るだけですよ?」
真面目な空気に耐えかねて逃亡を図るか、余計な発言のせいで不利になる未来しか見えない。うーん、我ながら見事なダメ人間。
「えっと、そのような理由ではなく、その場に居ていただくだけでも良いのですが……まあいいです。とにかく、そちらの書類はお任せしますね。きちんとお礼は用意いたしますので」
「うーん……分かりました。2週間後の天気予報レベルで期待してください」
「明日の天気予報程度には期待しておきます」
「期待が重過ぎるんですよね」
「後は私を労わる用意もお願いします」
「どしたん?話聞こか?」
「それはもう聞いていただきたい事は、山程ありますので」
「えぇ…………あっ」
しまった……ナギサさんがガチお嬢な事をすっかり忘れていた。キヴォトス人の中でも屈指の常識人な上に、愉快な性格をしているからつい。確かにナンパとか、そう言う事全然知らなさそうな身分だったわ。こんな仕様もないネタをそのまま受け取られても、困惑しかないと言うか。逆に面食らってしまって反応が遅れた。
それではよろしくお願いします、と一言掛けてナギサさんは部屋を出て行った。問題は山積みと言うか、目の前に
順調に仕事を処理し続け、お天道様が真上にはまだ来ないぐらいの時刻に。早く終わらせたい一心で集中していたが、部屋に響くノックの音が邪魔をした。かと思えば、返事も待たずに先生が入ってきた。この人は病室を自室か何かと勘違いしているのでは?
「トマリー、お見舞いに来たよ。調子はどう?」
「ノックしながら入室するなら、ノックする意味なくないですか?」
「まあまあ、気にしない気にしない!細かい男は嫌われるよー?」
「真面目に返答すると、逆に細かい男になるトラップですね」
「え?トマリが真面目なときってあった?」
「馬鹿にしないでくださいよ。そんなのあるに決まってます。……あるはず、ありますよね?」
「そこはむしろ、自信をなくさないでいて欲しかったのだけど……」
「ほら、あれですよ。まじめにふまじめみたいな?セイアさんも言ってるじゃないですか」
「セイアは絶対にそんなこと言ってないし、トマリの場合、不真面目が勝ちすぎてない?」
「つまり真面目と言う事ですね」
「えっと……あれ?」
『不真面目にすること』に対して、真面目に取り組んでいると仮定するならば、不真面目にしているならば真面目であろうと言う話である。だからこの場合、俺は不真面目だと評価されているので、それ即ち真面目であることを意味する。
「うーん……それなら真面目でも不真面目でも、両方とも真面目になるよね。そもそもこの話って、仮定から間違っているんじゃないかな」
「知ってましたか?細かい事気にすると嫌われるらしいですよ」
「細かくないからセーフ」
毒にも薬にもならない不毛な言い争いをしながらも手は止めない。会話が適当なのは何時ものことである。キヴォトスに来てからというもの、明らかに経理関係やデータの扱いに詳しくなったものだ。流石に専門職には劣るだろうが。
「先生も暇なら手伝ってくださいよ」
「え〜?私はトリニティの政務については部外者だし〜?ナギサがトマリを信頼して託した仕事を奪うのもどうかと思うし〜?やっぱりここは大人として、生徒の意思を尊重するべきって言うか〜?だから私では力になれないな〜。本当に残念だな〜、ゴメンねっ!」
「くっそ、ここぞとばかりに煽りよる……!俺が何したって言うのですか!?」
「日頃の行いを振り返ってみて?」
「……?ちょっと何言ってるか分からないです」
「なんで何言ってるか分からないの?」
「怪我人に何たる仕打ち…!」
「治ったって聞いたけど…?」
さっき完治したと言ったな。あれは嘘だ。いや、確かに頑張ればすぐに治せなくはないが、ゆっくり治療できるなら絶対そっちの方がいいから。身体的、精神的にも、経済的にも色々な意味で。
先生の悪行を非難している途中、常に持ち歩いているらしいタブレットから通知音が鳴った。先生はと言えば、糾弾されているにも関わらず、普通にタブレットを操作し始めた。皆さんはもう少し、俺に対して自重するべきでは?リスペクトが足りない、リスペクトが。
「補修授業部の子達も、そろそろ着くみたい」
「なるほど?……私にいい考えがある」
「こういうとき、トマリって大体碌な事考えないよね」
「やっぱり先生では、この高尚なアイデアは理解できませんか。天才故の孤独って奴ですね」
「天才の前に『残念な』が付くけどね」
「心外ですね……まあいいです。俺は心が広いので。ひとまず耳を貸してください」
「失礼しますっ!トマリさん、お見舞いにって、きゃあー!?」
「あらあら♡これはこれは」
「えっ、えぇっ!?何なのアレ!?」
「トマリが縦に伸びている…?」
入室して早々、病室で悲鳴が上がった。特にヒフミさんとコハルさんは、素晴らしいリアクションだったし、アズサさんも表情の変化は乏しいものの、中々驚いている様子。いいね、そういうのを求めていた。まあ浦和ハナコだけは、少し反応が怪しいが。
「ふふっ、よく見てください♡あれは先生の足じゃないですか。つまり今、トマリさんと先生は布団の中で、合体している可能性が……」
「が、合体っ!?そういうのはダメ!」
「えっ!?」
「知ってた」
「……ハナコの反応は予想通りだったね」
「あっ、何だそういう事ですか……」
していた事は単純明快。まずは布団から上半身だけ出す。そして布団を膨らませて、中身をそれっぽく詰めた靴下だけを見えるように配置。するとあら不思議、トマリ(巨人のすがた)が完成すると言う、ただそれだけの古典的なネタである。
最初は先生に協力してもらい、布団から先生の足だけ見えるようにする予定だったが、騒ぎそうなのがいたのでこの方法に変更した。まあ浦和さんに関しては、先生が布団の中にいない事も含めて、全部バレていたっぽいが。
「ところでコハルちゃんとヒフミちゃんはナニを想像しましたか?私に教えてください♡」
「あうぅ……」
「べ、別にエッチなことなんて、考えていないんだからね!本当よっ!?」
「やめやめ、ここ病室ですから。個室とは言え、騒がないようにしましょう」
「確かにそうだね」
「騒ぎを起こした本人が言うこと…?」
「そうですよね、アズサちゃん!もうっ、トマリさんのせいですよ!」
「ふへへ、よせやい……ちょ、遠慮とかしていただいても?」
怒ったヒフミさんに肩をバシバシ叩かれる。まあ流石にそこは配慮はしているのか、大して力は入っていないが。でも信じられるか?これがつい先日、腹に大怪我負った奴の扱いなんだぜ…?そのまま俺の座っているベッドの端に居座ってくるのも、色々距離感がバグっていると言うか、シンプルに図太くないか貴様?
※病室では静かにしましょう