曇り時々銃弾、所により爆弾   作:Aベル

35 / 77

アンチ・ヘイト注意



c.議題適正D

 

 病室での一幕もありつつ、漸く退院の許可が下りた。担当医曰く、外の人にしては異様に傷の治りが早いとのこと。そんな疑問に対して俺は、日頃の行いが成した奇跡であると主張したが、その時の胡散臭いものを見る目線の酷い事。溜め息一つして出された結論は、体調が悪化したらもう一回来ればいいと言うものだった。本当にそれでいいのかいドクター?

 

 退院手続きをしたその日に向かったのは、セイアさん達のいるセーフハウスだった。入院中は流石に通うことはできなかったので、様子見ついでに今回の報告をば。まあ何かしらの連絡手段はあるだろうから、何が起きたかは把握していそうだが。

 

 

「どうも、お久しぶりで」

 

「…………」

 

「うわ、フリーズした。タスクマネージャーのコマンドってどこでしたっけ?」

 

「すぐにこちらへ」

 

「アッハイ」

 

 

 出会い頭に無言で此の方をじっと見詰めていたと思ったら、有無を言わさず手を引っ張られる。割と強引なのはいつもの事だが、今回は普段以上に力が入っている様に感じられる。

 

 毎回来た時に通されていた部屋をスルーして、やって来たのは何時ぞやの仮眠室。思わず首元を触った俺を気にする事なく、突然団長は俺のお腹を直接触り始めた。躊躇なく服の中に手を突っ込むのやめてもらえる?

 

 

「救護が必要なようですので、こちらでお休みください」

 

「……お腹は大丈夫ですよ?」

 

「聞き入れないのでしたら、今からより強度の高い『救護』を受けて頂きます」

 

「お休みさせて頂きまーす!」

 

 

 救護に強度のパラメータを使う事ある?拒否したら救護(物理)の流れが目に見えている。拒否しなくても救護だけど。救護or救護、どうあがいても救護。それはそれとして、何故バレたのか。検査結果でも身体的にも正常にはなる筈なのに。

 

 

「一目見れば、救護が必要な事ぐらいは分かります。救護が必要な方を、誰一人逃さない……当然のことです」

 

「理由になってないんすよね」

 

 

 担当医すら誤魔化し切ったのに?若干訝しんでいたけど。救護アイなら透視力か?実際、団長の言っている事が間違っていないのが恐ろしい。

 

 現状、確かに身体的には治ったと言えるが、未だにダメージ自体は残っている事は間違いない。これはもう、そう言う代償だから仕方ないと割り切っている。基本的には時間経過でしか癒えないし、ある意味では呪いに近い。身体治癒なんて大それた奇跡の代償とするならば、寧ろ破格の安さで済んでいると言えるだろう。気休め程度だが、当分の間は痛み止めでも飲むしかない。

 

 団長の救護に対する直感に戦慄していると、室内に規則正しいノック音が響いた。

 

 

「失礼するよ。来客があった様だが、一体誰が……君達は何をしているんだ?いや、本当に」

 

「トマリが直ぐに逃げ出そうとするので、ほんの少しだけ強引な手を使用させて頂きました」

 

「ほんの少し…?」

 

「何か?」

 

「滅相もございません!私、ミネ団長の慈悲深さに感服しておりました!」

 

「立場があまりにも貧弱すぎる……」

 

 

 貧弱ボディに言われたくない。団長が目を光らせている時点でゲームセットなのに、最初から腕まで掴まれているのだ。手錠の方がまだ脱出できそうなのが酷い。

 

 立ち話も何だからと言う事で、団長が椅子を用意していた。そう、団長はしっかり気の利いた対応ができる人なんだよなあ。只々セイアさんと俺では、扱いに雲泥の差があるだけで。

 

 

 

「そうか、来たのはトマリだったか。……丁度よかった。君に伝えておきたい話があったんだ」

 

「その前に、セイアさんの体調の方は如何ですか?」

 

「ああ、もしかしてそのために来たのか?普段の態度の割には、意外と律儀なんだね」

 

「あ、そうですか。お疲れ様でした」

 

「はっ!」

 

「やっぱり駄目か」

 

「ミネ、ありがとう。当然の権利であるかのように、帰ろうとしないでほしいのだが?やり切った表情をするんじゃない。まだ本題にすら入っていないんだ」

 

 

 呆れたような物言いで引き留めてくるが、俺にとっては既に用などない。予知夢で覗いた未来の話をぼんやりするだけだろ。抽象的過ぎて何の役にも立たなかったが。

 

 

 

「仕方ないだろう?私の見たどの未来でも、トマリは存在すらしていなかったのだから。不確定な情報を渡して、無用な混乱を招くよりも良いと判断したんだ。今回の騒動については、まだ大きな被害が出ない公算が高かったのだから」

 

「ここに被害者がいる訳ですが?」

 

「…………。補習授業部の皆はしっかりと、自分たちの力で合格を勝ち取り、それぞれがより良い未来を掴み取った。ミカは学園の監獄に幽閉され、もしかしたらもう二度と会えないかもしれない。ナギサは予定通り、エデン条約に調印しに行くだろう」

 

「トマリは活躍が認められ、報酬を受け取って悠々自適の生活を送るだろう」

 

「勝手に捏造するんじゃないっ、全く……ここまではよくできた話だ。でも、まだエンドロールには早すぎる。普段の態度はともかく、意外に聡明な君なら察しているだろう?」

 

「一々煽らないと、会話ができないと?そんな態度だから、友達がいないんじゃないですか?」

 

「私の場合はティーパーティーと言う立場もあるから、寧ろ友達は少ない方があるべき姿なんだ!何も考えなくていいトマリには、微塵も分からないだろうけどねっ!?大体そこまで言うなら、まずどこからどこまでが友達なのか定義してもらおうじゃないか!?」

 

「なんかごめん。そこまで気にしているとは思っていませんでした」

 

 

 セイアちゃんお顔真っ赤で草。滅茶苦茶早口じゃん。必死過ぎて俺の方が申し訳なくなってしまった。もうその発言が友達少ない人のテンプレ返答すぎて居た堪れない。友達が少ないとか、俺が言えた義理じゃないけど。

 

 

 

「私だって、私だって…!」

 

「大丈夫です、セイアさん!大事なのは過去じゃなくて現在、これからどうするかです!だから今から対策を一緒に考えましょう!」

 

「そう、だね。うん、確かにトマリの言う通りだね。自身の行動を振り返り、反省して次に活かすべきだ。……事、友達作りにおいて、コミュニケーション能力が必要不可欠な事は自明の理であるが、コミュニケーション能力は生来のもの、天賦の才とも言えるだろう」

 

「そうですね」

 

「ああ、誤解のない様に前置きするけど、今題材としているコミュニケーション能力とは、主としてビジネスの場で扱われるものではなく、一般社会におけるコンテクストを指して用いているよ。前者は異なる所属や背景を持つもの同士だけでなく、同じ組織間でも対立・協調の関係なく全体に対して、認識のズレがないように情報共有、相互発信を行う事であり、所謂営業や会議を代表とする場面で必要な技術だ。私が最初に称したコミュニケーション能力とは、同じ言葉でも少し異なる意味合いになる。そもそも両者では目的も違うのだから」

 

「そうっすね」

 

「ここで一つ根本的な問題がある。人は1人で生きていけるのだろうか?そもそもの話、1人でも問題ないならば、他人と関わらなければ必要ないのだからね。結論から述べると、答えは否だ。生活をする上では関係の深浅の差はあれど、必ず誰かと関わっているのは疑いようのない事実だ。『人が独りでいるのはよくない。彼に合う助ける者を造ろう』と言う古い言葉がある。この助ける者、については解釈が残されているが、一人で過ごすよりも……」

 

「…………」

 

「……だから、支え合う必要があるのだろう。さて、本題に戻ろう。まずは……」

 

「団長、これっていつまで続くのですか?……団長?」

 

「…………」

 

 

 俯いているから分かり難いが、眼を瞑ったまま動かないんすけど。気持ちは非常によく分かるが。試しに肩を揺すってみると、直ぐに眼を開けた。あ、普通に起きていたっぽい。

 

 

「……が必要だと思っているが、どうだろう?」

 

「あー、団長はどうですか?」

 

「これ、何の話ですか?」

 

 

 提案した俺が言うのもどうかとは思うが、議題に対する適性が致命的にない面子では?水着で登山しに行く様なものじゃないか?

 

 





ここのセイアちゃんは予知夢に頭やられたんじゃないですかね。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。