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「つい先日、私は会議中にナギサ様のティーカップの中身をオロナミン◯にすり替えました。そしてナギサ様は中身が変わっていることに気付かずに口を付け、会議の場で吹き出してしまいました。大変面白かっ……誠に反省していますので、この場を借りて懺悔します。あ、ついでに議事録に落書きした事もまとめて懺悔します」
「本当に何やっているんですか、トマリさん……」
緊張していたからなのかは分からないが、ナギサ様は何の疑いもなくティーカップに口を付けた。その結果、会議中に見事な毒霧を披露していた。参加者の皆様は一様に気を張っている様子だったので、いい息抜きになった事だろう。
まあ噴出直前になって、側に控えていた俺の方を向きやがったせいで全部被る羽目になり、俺まで奇異の目で見られたが。因果応報?それなら寝て待っていればいいか?
俺は現在、とある人物の『ちょっとしたお願いごと』を聞くために、シスターフッドの本部である大聖堂方面に案内してもらっていた。一応今回は仕事ではなく、あくまでもプライベートな相談と言う形になるらしい。
実は兼ねてより要望があったらしいが、俺がスルーし続けた結果、痺れを切らした先方が先生を通してコンタクトを図ったと言う経緯がある。そこまでしてする事か?
「懺悔していただくのはいいのですが……。ここですと、他の人にも聞かれてしまいます。よかったら、懺悔室でお聞きしますよ?」
「聞かれてもいい奴なので大丈夫です」
「そ、そうなんですか……?」
方向音痴だと思われているのか、大聖堂への案内役が宛てがわれていた。確かに世界規模で迷子なので、強ち間違っていないのかもしれない。……あっ、監視役かこれ。
兎に角、水先案内人を担当してくれているのは
「シスターマリーの方こそ、何か聞いてほしい話とかあります?愚痴と仲間の居場所は吐いた方が楽になりますし」
「あの、その……『シスター』と呼ばれるのはまだ恥ずかしいと言いますか……。いえ、もちろん嬉しくはありますが……。まだまだ未熟な身ですし、少し照れてしまいますのでマリーと呼んでいただければと」
「分かりました、シスターマリー」
「何もわかっていませんよね!?」
若干照れもあるからか、シスターマリーは顔を赤くして叫んでいた。確かに分かったとは言ったが、呼び方を変えるとは言っていないのだ。別に気になる子に悪戯する様な男子小学生イズムが発現した訳ではない。
「まあまあ、一つ聞いてください。その謙虚さは美徳ですが、照れを克服するのには慣れも大事だと思うんですよ」
「確かにその通りかもしれませんが……」
本来、呼称とその能力が釣り合っている事が望ましいが、現実はそうでない場合もままある。しかしながら、他者から呼ばれ続ける事で自覚する事もあるだろうし、それはアイデンティティの確立にも一役買うかと思う。まあ要するに、シスターになりたいなら、シスターと呼ばれ続ける事で自分を認める、と言うのも一つの手ではなかろうか。
「何事も一回やってみてください。次にやるときは二回目になりますから。それに、急に全員から呼ばれる訳ではないのですから、気楽に考えてみませんか?」
「…………わかりました。まだ少し気恥ずかしいですが、頑張って慣れようと思います」
「その意気です」
自分と接する機会は別に多くはないだろうが、だからこそ適任であるかもしれない。それに本人は未熟者だと謙遜しているが、既にシスターマリーの評判や行動は立派なものである。その呼称が一般化するのも時間の問題であることは間違いない。
「では懺悔します。今日の昼食は何を食べたらいいですか?マリーさん」
「あ、あの……呼び方……」
「……へへ」
「もうっ!意地悪しないでください!」
真面目な話?そんなものはない。全ては壮大な前振りでしかないのだ。それにしても、流石はシスターマリー。多少怒らせても手を出してこないのは、あまりにもできた人間すぎる。すぐに煽りに来たり、ブン殴りに来たりする皆さんは是非とも見習って頂きたい。
「すみませんね、シスターマリー。所で、お昼はやはりあの罪深い食べ物にしましょうかね?」
「罪深い食べ物……ですか?」
「ラーメン」
「…………?」
大聖堂の中を通り抜けて、さらに奥地にあった建物の中に入る。ここは悩める生徒達のカウンセリングを行う場所らしい。
「……遂に裏切り者の正体が判明するのです。糸目な丁寧語口調のアイツか、それとも単独行動が多過ぎるソイツか、はたまた別の人物か。そこに姿を現したのは……」
「現したのは……?」
「お、着きましたね。案内してもらってありがとうございました」
「えっ!?あのっ!?結局犯人は誰だったのですか!?」
「続きはWebで」
「えぇっ!?」
「……は、可哀想なのでここで教えます。耳を貸してください」
「は、はい。ありがとうございます……?」
正直他の奴だったらスルーしていただろうが、こんないい子を悲しませてはいけない。そう言う訳で、真犯人を教えてから俺を呼び出した張本人の待つ部屋に入室した。
「ようこそお越しくださいました。こうしてお会い出来たことを光栄に思います」
そこに居たのは、黒を基調とした頭巾や膝上丈のミニワンピース、ハイソックスに身を包んだ見覚えのある銀髪の女性だった。
「まずは自己紹介から。私はシスターフッド所属の歌住サクラコです。サクラコとお呼びください。本日はお忙しい中、お呼び立てしてしまって、申し訳ありません」
「これはご丁寧に。トマリです。先日はどうもありがとうございました」
打算こそあったのかもしれないが、つい先日の騒動でお世話になった人達だ。たとえ宗教にいいイメージがなかったとしても、感謝の気持ちは伝えておくべきである。
「いえ、先日の件についてはどうかお気になさらずに。ただ、付け入る様で心苦しいのですが、私個人のお願いを聞いていただけませんか?」
「あー、この後パンジャン部に顔を出す予定なので無理です。すみません」
「パ、パンジャン部……ですか?」
「正式名称は、グレート・パンジャンドラム部です。……え?シスターサクラコはパンジャンドラムをご存知ない!?承知致しました!不肖ながら私奴が説明させて頂きましょう!」
「えっと、結構です……」
「パンジャンドラムとは!炸薬の入った円筒の両側に車輪を取り付けて、それを搭載したロケットエンジンでブッ飛ばす自走式陸上爆雷です!敵対戦力の防壁にでも衝突させて、ド派手な花火を咲かせてやりましょう!」
「そ、そうですね?」
「欠点ですか?ちょっと姿勢制御に失敗すると直ぐに横倒しになったり、稼働中にエンジンが外れたり、誘導出来ないので何処に転がるか分からなかったりするだけです。何、些細な事ですよ」
「問題点が多すぎる気が……」
「正しくグレートの名に恥じない性能と言う訳です!」
「変わった人達もいるのですね……?」
「まあ全部嘘なんですけどね」
「ここまで語っておいてですか!?」
一体何を意味の分からないことを宣っているんだ貴女は?ある訳ないだろ、そんな珍妙な部活。大体グレートって何だよ。ただ大きいだけじゃないか。
「ほら、騒いでないで早く本題に入ってください」
「……少し納得いかないところはありますが、聞いていただけるのであれば……」
「あ、お近づきの印にこれを」
「缶ジュースですか。ありがとうご……かに鍋スープ?」
「何ですか?そんなに見詰められても、こちらの水炊きスープはあげませんよ?」
「いえ、いらn「そんなに欲しいなら差し上げましょう!持ってけドロボー!」……えぇっと」
ここに来るまでに立ち寄った自販機で買ったものである。よく読んでいないので詳細は知らないが、オリジナルグッズが当たるキャンペーンがあるらしい。ちなみにだが、同行していたシスターマリーにはココアを渡しておいた。
微妙そうな表情で受け取ったシスターサクラコは、プルタブを開ける事なく話し始めた。
「実は相談したいことと言うのは、私への誤解についてです」
「誤解ですか?」
「はい。まずトマリさんは、私に対してどのようなイメージを持たれていますか?」
「胡散臭い雰囲気の人……ではありますが常識的な変人ですね。忌憚のない意見ってやつっス」
「……率直な意見をありがとうございます。えっと、トマリさんからの評価はともかく、他の皆様からは気難しいだとか、堅苦しいと思われている事は何となく分かっています。しかし私の立場上、ある程度の威厳は必要とも考えていますので、今まではあまり気にしていませんでした。ですが気付いてしまったのです……」
「…………」
だ…駄目だ、まだ笑うな…こらえるんだ…し…しかし…
何でこの人顔芸してるの?その表情のまま動かないのは、もう笑わせに来てるだろ。
「──私が恐れられている可能性を!まだ調査はしていませんので、あくまでも可能性の話ですが、それでもかなり重要な問題です。私は教会を訪れる方々が、安心できる場所にしたいと考えています。だからトマリさんには、そのためのご協力をお願いしたいのです」
「えぇ……人選ミスでは?」
「いえ、そんなことはありません!ここまでのやり取りで確信しました!噂では交友関係も広いとお聞きしていますし、何より今現在も他の方々と比較しても楽しく話せていると思います」
「これで…?」
楽しくと言うより、ふざけ倒しているだけな気が…?目標設定がこんなので本当にいいのか?自分で言うのも難だが、もっと健全な楽しさを求めるべきでは?それに交友関係については立場上、行動範囲が広いから顔見知りが多いだけだから当てにならないぞ?
「どうかお力添えの方をお願いしたいのですが……あっ意外と美味しい……」
「うーん…………あ」
「ん……どうかされましたか」
「交換条件にしませんか?」
トリニティならパンジャン部、あると思います。
最近P1グランプリ開催されたのでお勧めです
ニ◯ニ◯動画で見れないのが悔やまれますが