(投稿遅れたけど皆ガチャに夢中でバレへんやろ……)
本日も晴天なり。空は青く晴れ渡り、時折吹く風が街路樹を揺らす。爽やかな昼中、家族で連れ立って談笑しながら歩く犬系獣人一家が目に付く。リア充爆発しろ。
そして何の前触れもなく商店街に響く衝撃音。本当に爆発しろとは言ってないんだよなあ。限定グッズの販売で長蛇の列ができていたので、恐らくそれ関係だろう。キヴォトスではよく見られる光景である。今回は規模が大きい方だなあ。
先程目に付いた一家は迅速に避難していた。流石に手慣れていらっしゃる。当然のことながら流れ弾に当たる訳にはいかないのでさっさと退避する。そのつもりだったのだが……
「いたた……」
戦場の外れではあるが足を負傷したのか、動けないであろうご老体の姿が。その真上には今にも落下して来そうな大きな看板。
キヴォトスの住民ならば、爆弾の一つや二つ平気な事は周知の事実だろう。だから放置しても別に問題はない筈だろうし、賢い選択である事は間違いない。
「ちょっと動かないでくださいねぇ!?」
「のおっ!?」
だからと言って賢い選択が良い選択とは限らない。まあ自分が少し頑張れば、より良い結果に繋がるのだ。そんな状況で動かないのは気が引けると言いますか……。そもそも見捨てるのも人としてアレだから。まあ結局のところ、自分の為の行動でしかないが。
手早く怪我人を小脇に抱えて急加速する。幸いな事に対象が小柄だったので、手間取らずに済んだ。直後、大きな音を立てて看板が地面に落下。躊躇していれば間に合わなかっただろう。
今回は早目に行動したお陰で、無事に下敷きを免れることができた。一息吐きたい所ではあるが、ひとまず安全圏まで走り続けることにする。
その後、ついでにお爺さんを家まで送り届ける事に。簡単な処置を済ませた頃には、既にある程度は歩けるように回復していた。別にヘイローがなくても、普通に頑丈なんだよなあ、キヴォトスの住人。何とも羨ましい限りである。
「これで大丈夫です」
「すまんのう、なんとお礼をすればよいか……」
「気にしないで下さい」
お節介な気もしたが、特に問題なかったようだ。つい最近許可が下りたので、古聖堂を散策していたが、その帰りに巻き込まれる事になるとは。まあ大事に至らなくてよかったと思おう。
御礼をするしないの押し問答があったが、結局受け取る事になった。俺が押し負けるとはこの爺さん、只者ではないな……
「そこで少しばかり待ってておくれ」
「あ、はい」
言うや否や、さっき怪我したとは思えない早さで家に入って行った。それにしても暑い。農家なのかは知らないが、周辺は緑が豊富であり、さんざめく蝉の声が季節の移ろいを感じさせる。
間も無く戻ってきたお爺さんからお礼を頂き、見送られながら帰路に就いた。
「お、居た居た」
「あっ!こんにちは、トマリさん」
「こんにちは。トマリとはお見舞い以来だね」
丁度探していた二人が一緒に見つかった。まあこの二人はよく一緒にいるらしいので、正直どちらでもよかったが。これはこれで都合がいい。
「試験の合格祝い兼、海で補修授業?って聞いたから、プレゼントフォーユー」
「えっ?あっ、ありがとうございます。結構大きい段ボールですけど、中には何が入っているんでしょうか?」
「待って、ヒフミ。迂闊に開けてはダメだ。爆発物かもしれない」
「いくらトマリさんでもそんなこと……うーん」
「流石に危険物は入れたりしないが……?」
渡した本人の前でその発言は失礼だとは思うが、キヴォトスだからと納得もできてしまう。喧嘩で銃撃戦になるなら、ドッキリで爆発とか普通にあり得そうなのが嫌だ。
おっかなびっくり開封するヒフミさんと警戒するアズサさん。そもそも爆発させるなら、自分が巻き込まれない様に離れるので見当違いである。
「よいしょっと……わあ、大きなスイカですね!これ、どうしたんですか?」
「農家のお爺さんから貰った。西瓜割りにでも」
貰えるのはありがたいが、持ち運ぶのに苦労した。良かれと思って大きな西瓜を選んでくれたんだろうけど、2玉は流石に重かった。断りはしたが、持って帰るまで延々と着いてきたので結局こちらが折れた。
「スイカ……の形をした爆弾?」
「それなら檸檬を選ぶかな。で、盗んだ戦車で走り出したって聞いてるけど、何をどうしてそうなった?」
「ご、誤解です!?ちょっとだけ借りるつもりだったんですっ!」
「誤解ないし碌でもないと。ちなみに海へ行くのに、何故戦車を?」
「だって夏休みの海ですよ!?しかもアズサちゃんにとっては初めての海!シチュエーションとしてはバッチリです!こんなの……戦車に乗って行くしかないじゃないですか!?」
「成る程。分からないことが分かった」
「えぇっ!?アズサちゃんもそう思いますよね!?」
「ごめん、ヒフミ。私にはまだ分からない」
「でっ、ですがマシロさんも海に戦車は付き物と言っていました!ロマンですよ、ロマン!」
「うーん、絶妙に感性がズレてそうな人選」
ロマンと言うよりも、多分好きな物を並べただけな様な気がする。あの人ってミリタリー関連の話題になると、途端に饒舌になるし。
「それで無断で?」
「うっ、その…………は、はい。それは、そうなんですけど……。ちょっと、その呆れた様な顔止めてください!?」
檸檬?と首を傾げるアズサさんの姿は可愛らしいが、騒動の被害は全く可愛らしいものではない。報告書によると、被害は交戦した正義実現委員会のメンバー43名が重軽傷、学園広場の半壊、第12校舎の全壊など。細かい部分まで見るとキリがない程だ。
正義実現委員会は決して弱い訳ではない筈なんだが。戦車に乗っていたとは言え、二人だけで出したとは思えない程の被害規模である。アズサさんは兎も角、君もう普通とか名乗るな。その曖昧な笑顔で誤魔化せると思っていらっしゃる?
何故詳しいのかって?その後始末に関わったから。建設業者の手配に始まり、日程調整から各方面に対する説明、果てには一般生徒への周知に至るまで。ちょっと業務範囲が広過ぎるのでは?それよりも気になるのは、本当に外部の人間に任せていい仕事内容なのか、これ?
何が酷いって、馬鹿みたいに忙しい時期にやってくれた事なんだよなあ。ナギサ様?俺の隣(の椅子)で寝てたよ。連絡係の子が退出した直後に、座ったまま白目剥いて倒れたのがとても怖かったです。あの地獄絵図を間近で見て、どう反応すればよかったんだ……?
「えっと……大変ご迷惑をお掛けしました……」
「ごめん……」
「まあそんなこともよくある……あるのか……?」
割とあるかもしれない。限定スイーツ争奪戦とか、ミルクティー論争とか。先にミルクを入れ、後から紅茶を入れるミルクインファースト派と、その逆のミルクインアフター派の対立で乱闘騒ぎになったし。トリニティ版きのこたけのこ戦争か?
そして実はこの論争、既に学会で結論が出ていて、ミルクインファーストが答えらしい。理由はそっちの方がミルクの熱変性が少なく、味が良くなるからなんだとか。一方で反対派の意見としては、紅茶に合わせるミルクの量を調節するためにもミルクインアフターにするべきだと言う主張である。その辺の話はナギサ様から聞いた。へぇ~ボタンを押すか迷うレベルの知識。
「あっ、そうです!トマリさんも一緒に海、行きませんか?」
「あー、海産物は食べたいけど、今回はパスで」
「えぇー……」
準備が面倒だとか、やるべきことがあるとか理由は色々ある。そもそも飛び入り参加ができるかも分からない。
「そう言えば、アズサさんって海は初めてだった?」
「うん。ヒフミと行くのが今から楽しみ」
「オッケー。それなら一応、これも渡しておこう」
「ありがとう。これは……耳栓?」
「『潮騒が運ぶ海の讃美歌に耳を貸す事勿れ。心奪われれば最期、泡沫の玉の緒とならん』……まあ既にヒフミさんから聞いていると思うけど」
海初心者には身を守るためにも言葉と耳栓を餞として送ると言うのが習わしである。まあ形骸化して久しい風俗ではあるが。
「いや、初めて聞いたけど……?」
「私も初めて聞きましたし、耳栓を渡すなんて聞いたこともありませんよ……」
「あっ…………お呪い的な?まあ深い意味はないな、うん」
「何ですかその怪しい無言の間は!?それ絶対嘘ですよね!?」
「へへへ……精神汚染には気をつけてな!」
「ちょっと!?何ですか精神汚染って!?怖がらせないでくださいよ!?」
「ぐえっ……」
「ヒフミ、落ち着こう」
そんなSAN値で大丈夫か?ただパニックになっているとは言え、思いっきり肩を揺さ振るのはやめてほしい。じゃあそんな話をするな?困った、ちょっと反論できない。
「やっぱり夏だからなー。納涼できた?」
「余計なお世話です……急にそういう話するのやめてくださいよ」
「つまり、今までの話は作り話だったの?」
「いや?こっちの海に行った事がないから分からない」
「えぇ……」
キヴォトスの海がどうなっているかは知らない。まあこっちの場合は、そんな事よりも地雷や乱闘に気をつけるべきかもしれないけど。
ガチャは悪い文明