曇り時々銃弾、所により爆弾   作:Aベル

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22.デパートメント・クライシス

 

 『それ』について、ある女性は戦争だと答え、またある女性は福音だと答えた。なるほど、どちらの主張もまあ言いたい事は分からなくもない。ただ一つだけ、その現場を見た感想を言わせて貰うならば、女性って怖い……そう思いました。

 

 

 

 

 

 かんかん照りの夏の真昼。舞台はトリニティ自治区内のとあるデパート。常日頃人の賑わうこの場所で、今日はより一層の盛況を呈していた。理由は火を見るより明らかである。

 

 

A. 今日がバーゲンセールだから。

 

 

 まさかバーゲンで?というナイーヴな考えは捨てた。自治区内におけるパトロールなどの治安維持活動は、正義実現委員会の管轄な事は言うまでもないだろう。ただ本日は多くの生徒が有給休暇を取っているため人手不足らしい。学校の委員会に有給の概念……?

 

 餌に群がる鯉のような光景を尻目に、大雑把に定められているルートをゆっくり巡回する。学生は基本的に制服を着ている人しか見かけないが、制服に興味が薄いせいでイマイチ所属が分からない。先生なら当たり前のように把握していそうだとは思いました。

 

 

 

「あれ?もしかして、トマリさんですか?」

 

「おお、補習授業部の皆さん。揃い踏みでショッピングに?」

 

「いや、今日はみんなで映画を観にきたんだ」

 

「アンタってどこにでも現れるわよね……」

 

「それは雇用主に言って頂きたいです」

 

 

 欠員だとか急な案件だとか、雑に仕事が割り振られている感が否めない。出会ったのは補習授業部の4人だった。顔見知りもチラホラ見掛けるが、トリニティの生徒が多い。つい先程は、以前アビドスで相対したゲヘナの風紀委員会もパトロールしていたが。

 

 

「と言うかなんでアンタが正義実現委員会みたいな服装してるのよっ」

 

「この腕章が目に入らぬか〜?」

 

「『パトロール実施中』……ですか。確かにその服装なら、一定の効果はありそうですね」

 

「そう言う事です」

 

「あはは……いつもの服装と比べると何だか新鮮で、その……」

 

「似合ってないと。言われ慣れてますので、そんなに濁さなくてもいいですよ。世の中何を着るかではなく、誰が着るかですから」

 

 

 俺もそれなりの間、美男美女と一緒に行動していたから分かる。自分とそれ以外とで明らかに周囲の対応が違ったから。やはり※*1は遠い昔からの真理。枕草子にも書いてある。

 

 今の服装は黒のセーラー服……ではなく、それっぽいデザインの上着と長ズボンである。理由はスペアの在庫が少ないかららしい。足りていたとしても勿論着るつもりはない。美少年が着ていたら似合うかもしれない。ゴリゴリのマッチョが着ていたらネタにでもなるだろう。だが俺が着ても全部中途半端と言うか、微妙な生々しさのせいで苦笑いしかできない。

 

 

「そうですか?トマリさんに似合っていると思いますけど」

 

「あの……私もいいと思いますっ」

 

「そんなに褒めても……割引券しか出ませんよ?」

 

「えっ?あっ、ありがとうございます」

 

 

 今回の仕事のお詫び?かよく分からないが、丁度持て余していた物がある。5枚も貰ったが、特に見たい映画がある訳でもない。まあ自分が持っていても、映画館に来る時には割引券の存在を忘れていそうだから。

 

 

「それでは、アズサさんとコハルさんはどうですか?」

 

「褒めたら私もそれが貰えるのか?分かった。……やはり黒色というのがいいと思う。返り血が付いても目立たないから」

 

「それは褒めていない様な……?まあ構いませんけど。あ、ちなみに制服が黒色なのはアズサさんが今言った理由らしいですよね、コハルさん」

 

「えっ?そうだったっけ……?」

 

「えっ」

 

「とっ、当然知ってたわよ、そんなことなんて!?だって私は、正義実現委員会のエリートなんだからね!?」

 

 

 エリートなのに補習授業部に?……いや、正論パンチはよそう。正論が人を救った例は存在しないとは思わないが、少なくとも相手を不快にさせる事はよくあるから。冷静に考えると、正論と言うよりただの嫌味な気がするし。それに試験も合格したのだから、これからは正義実現委員会の一員として立派に活躍してくれると信じるべきだ。

 

 

 

「まあ何にせよ、問題のある行動はしないで下さいね。仕事が増えるので」

 

「あらあら、それではまるで私達が何か問題を起こしてきたみたいじゃないですか♡」

 

「この4人がどのような集まりだったか、覚えていらっしゃらない?」

 

「あはは……」

 

「いかにも無害そうな顔のリーダーが一番の問題児ですし」

 

「えっ!?私ってトマリさんにそう思われていたんですか!?」

 

「まあそこの公序良俗に中指立てている人とのツートップじゃないですかね」

 

「コハルちゃんのことをそんな風に見てただなんて……」

 

「どう考えてもハナコのことでしょっ!?」

 

 

 その他のメンバーも好戦・徹底抗戦の白洲、エロ本マイスター下江と粒揃いである。広辞苑も吃驚の層の厚さだ。勿論褒めていない。確かにこの前の騒動は災難だったとは思うが、だからと言って問題児軍団でないとは言い切れないんじゃないか?

 

 何時までも油を売っている訳にはいかないので、挨拶を済ませて巡回に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今度は出入り口付近で少し懐かしい様な気がする顔触れを見掛けた。こっちはこっちで要注意な面々なので一応声を掛けておく。

 

 

「こんにちはー、本日のご予定は?」

 

「ん?……あぁっ!?トマリじゃない!?こんなところで何やってんのよ?」

 

「わあ!お久しぶりですね〜☆」

 

「服装が違ったので、全く気づきませんでした……」

 

「ん、その格好って確か……トリニティの正義実現委員会だったよね。え?あそこに入ったの?」

 

「フッ……正義実現委員会の次期エースとは俺のこt痛たた、痛いっすシロコさん肩掴まないで折れる折れる折れる」

 

「シロコちゃん、そろそろストップしましょうね〜」

 

「アンタも適当なこと言うから……」

 

 

 ノノミさんのお陰で助かったが、シロコさんは未だに恨めしそうな顔でこちらを見ている。そんなに恨まれる様な事をした覚えはないのだが?

 

 

「それで〜?『パトロール実施中』ってことは、トマリはここでアルバイトでもしてるの?」

 

「まあそんなところです。皆さんはショッピングにこちらへ?」

 

「はい!これからホシノ先輩と一緒に水着を買いに行くんですよ〜」

 

「別におじさんはいいんだけどな〜」

 

「その間に私達はキャンプ用品を見に行くつもりです」

 

「まあ強盗目的じゃないのであれば何でもいいですが」

 

「ちょっと、その発言は流石に失礼じゃない?」

 

「積み上げた実績の賜物ですね。それに要注意人物の声掛けは警備員の仕事ですから」

 

「相変わらずズケズケ言うね〜」

 

 

 何を言うか、闇銀行から一億もの資金を強奪した極悪集団だぞ?警戒しない選択肢がない。俺はただ職務を全うしているだけである。

 

 

 

「シロコちゃんはどうして拗ねているんですか〜?」

 

「ん、今度一緒にライディングするって約束したのにすっぽかした」

 

「あれ?この前って確か、フルマラソンにするって言ってなかった?」

 

「はい。私も先日、シロコ先輩からトマリさんと一緒に完走したって聞きましたし……」

 

「フルマラソンなら完走しましたよ?しかも往復で」

 

 

 帰るまでがフルマラソンなどと意味不明な供述をしていたが、俺は優しいので態々家まで送り届けてあげたのだ。一連の紳士的な対応に、一体何の不満があると言うのか。

 

 

「あの後何度も誘いに行ったのに家にもいなかったし、それなのにこんな所に居た。トマリはアビドスから離れるつもりなの?」

 

「元々定住する場所も決めてませんでしたし……」

 

「だから私と一緒にスイムをするべき」

 

「支離滅裂な思考・発言」

 

「まあまあ、要するにシロコちゃんは一緒に遊んでほしかったってことですよ♧」

 

「ん」

 

 

 まるで意味がわからんぞ!理解するにはフィーリング力が圧倒的に足りていなかった。そもそも年頃の女子の気持ちを察するなんて土台無理な話だった。そんな離れ業ができていたら、今までに彼女の一人や二人はできていたかもしれない。

 

 何故か徐々にアウェイな雰囲気になり始めている気がする。再三にわたって言っているが、アビドスの皆さんか先生に構って貰った方がいいと思う。もしかしてだが、周りから暇人だと思われているのか?

 

 いいタイミングで報告書の作成指示が出たので、これ幸いと挨拶を済ませて撤退する。冷たい視線が背中に突き刺さっているが気にしない。非難の声や白眼視を浴びるのは慣れている。慣れている事自体が割と駄目、と不都合な反論が頭を過ったが気にしないったら気にしない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どんがらがっしゃん、がたがたばったん、パァーンズガガガ!

 

 今現在室外から聞こえてくる物音をまとめてみた結果である。丁度休憩時間だから、聞こえなかった事にしたいんだけど駄目かなあ……駄目か。

 

 暴走しているらしいロボの鎮圧は誰かに任せて、避難誘導や負傷者の救護活動の支援に回るべきだろう。仕事内容に銃撃戦の制圧なんて存在しないので適切な対応に違いない。警備員としての職務を放棄する訳にはいかないから仕方ない。残念ダナー。

 

 

「慌てず騒がず落ち着いて、こちらに避難をお願いします」

 

 

 押すなよ?絶対に押すなよ?うわっ、我先にと人波が押し寄せてくるんですけど!?罵詈雑言と怒号が飛び交っています!醜い、非常に醜い争いが繰り広げられています!現場からは以上です。

 

 避難者の誘導も粗方終わった頃、見計らったかのようなタイミングで指令が下った。曰く、防犯カメラが壊された現場に急行せよとのこと。破壊されているってことは、何らかの戦闘があったってことだろ?他人に見えている地雷を踏ませるのはどうかと思う。

 

 

 

 

 

 絶賛交戦中のエリアを迂回して指示されたポイントである食品売り場に向かった。何故か一部は水着で撃ち合っている様な気がするが、恐らく寝不足から来る幻覚だろう。ここはトリニティの学園内ではないし。

 

 

「と言ってもなぁ……どうするか」

 

 

 気を失っている子や逃げ遅れた負傷者が数人いたので一箇所に纏まって貰った。早めに避難したいが、如何せん戦場との距離が近すぎる。それに加えて移動手段が必要だが、利用できそうな物は周辺に存在しない。応援要請こそ出したものの、巻き込まれるのは時間の問題だろう。

 

 だからと言って今出来ることは特にないので、持って来ていたカロリーバーを齧る。

 

 

「ちょ、ちょっとこんな状況で何やってるの!?」

 

「腹拵えです。昼食を食べ損なったので」

 

「こんな時に!?」

 

「最近の携行食は味が良くて感動しますよね」

 

「それは分かるけど……いや、貴方本当に何なの!?…………い、いらないってば!?」

 

 

 食べられる時に食べるのは結構大事だと思うんだよな。戦場では次に食事ができるタイミングなんて分からないのだから。まあ今回の騒動は鎮圧までに時間は掛からないと思うけどな!

 

 

「あっ」

 

「……今度は何?」

 

「飲み物が欲しいな、と」

 

「ハァ……*2

 

「それと敵機発見」

 

「えっ?きゃああぁっ!?」

 

 

 事前に用意していた大楯を構えて、敵機の掃射をやり過ごす。中々の衝撃だが、後退する訳にはいかない。このまま押し込まれてしまうのは拙いと判断。強引に距離を詰めてシールドチャージで応戦する。

 

 こちらに狙いを定めようとする敵機を撥ね飛ばす。掃射中は動けないのか、殴り付けるのは簡単だった。敵機は沈黙して動かないが、念の為手榴弾を投げ込んでおく。爆発を後目に戻って来ると、角が生えている少女は呆然と呟いた。

 

 

「意外と戦い慣れてる……」

 

「デカい楯がありますので、一機ぐらいならまあ大丈夫かと。怪我はありませんか?」

 

「大丈夫、ありがとう。……これでシリアルバーを咥えていなければ完璧なのに」

 

「失礼な。食べ物を粗末にしていないので、更にパーフェクトじゃないですか」

 

「その考えには全面的に同意するけどね……」

 

「終わったみたいですね。もうすぐ救援部隊が到着すると連絡がありました」

 

 

 この後は特に何事もなく負傷者は運ばれて行き、後片付けに参加する運びとなった。

 

 

*1
ただしイケメンに限る

*2
눈_눈




主人公の過去に関しては、今のところはあまり詳しく書かない方針で進めるつもりです。
一応関連する小話程度は描写するとは思いますが。
理由はブルアカの話から脱線するからと、何よりも野郎の過去なんか誰も興味ありませんから!

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