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この惑星の住人は、随分と荒っぽい気質らしい。
「テメェ、今アタシの足踏みやがっただろ。靴汚れたじゃねーか、どうしてくれんだ?クリーニング代ベンショーしろよ?ベンショー」
「あ?野蛮人風情がチョーシに乗んなよ」
「あぁ?」
些細な諍いでも銃火器を手に取り、直様一触即発の危機となる。小さな火種が産まれたかと思えば、それが破竹の勢いで燃え広がって行く事も珍しくない。
「はい、そこまでっすよ。二人とも、頭を冷やしてほしいっす」
「正義実現委員会!?」
「チッ……めんどくせー」
殺伐とした雰囲気の中、仲裁に入る者もいる。今回は小火の内に対処することで被害を抑えられた。彼女達の努力は、この地域の安全に大きく貢献していると言えるだろう。
「あっさり引いてくれて助かったっす。はぁ……」
ただ、この惑星の正義も中々侮れない。
「おバカなモノローグ入れてないでこっちに来るっすよ〜」
「そんなに分かりやすいですか?」
「普通に声に出てましたよ?つーか、その缶コーヒーどっから取り出したんすか?さっきまで持っていなかったような……。またお得意の手品っすか?」
「いえ、そこの自販機で買いましたよ?」
「えぇ……。いつの間に……まあいいっす。おっ、何を飲んでいるのかと思えば、ブラックコーヒーじゃないっすか。やっぱり男の子っすね〜」
「あー……最近甘いものを食らわせられる機会が多いので……」
「ハハッ!食らわせられるって!それって絶対自業自得なヤツじゃないっすか!」
「普通に死活問題だから笑うの止めい」
「死因は糖尿病って……ふふっ、その情けない顔しないでほしいっす……!」
「これは真顔なんだが?」
余りにも酷え言い草過ぎる。他人の顔見て、腹抱えて笑ってんじゃねーよ。後、擽ったいから翼で顔をバシバシするのも止めて貰える?何?新手の嫌がらせか?
「はぁー……ここまで笑ったのも久々な気がしますね。……それで、なんでこんなところで見世物なんてしてたんすか?」
「……?」
「いや、何言ってるんだコイツ?みたいな目をされても……」
「何言ってるんですか貴女?」
「うわぁ、本当に言っちゃったっすね、この人。むしろそれは私の方が言いたいっすよ」
「……実は俺、この日が来るのを本当に楽しみにしていたんですよ」
「あぁ、まあそれはそうでしょうけど……」
「屋台で買い食いするのを……!」
「何でそうなるんすか?」
「信じられますか!?この規模の祭りで屋台が何一つ出ていないなんて!?フードデリバリーの注文後に
「私は屋台が出店すると信じてたことにビックリっすよ。あと業務用のスマホで何してるのかとか、もう色々とツッコミどころしかないっすけど、とりあえずミカ様に謝った方がいいっすよ」
「ですが、この程度の事で諦める訳にはいきません。どこかの偉い人は言いました。なければ自分で作ればいいじゃない」
「何でそうなるんすか??」
「もしかして知らないのですか?楽しいは作れると」
「作り物は壊れるのでは?まあ確かにナイフを使ったジャグリングとか、結構ウケは良かったみたいっすけど。やっぱり当日に考えて、そのまま実行するのは狂気の沙汰っすよね」
本当は食べ物が良かったが、流石に材料も設備も用意できないので断念した。非常に悔しい。また次の機会に活かしたい所存。だがしかし、即興にしては中々盛り上がったので、今回の催し自体は成功したと言ってもいいだろう。
「はは……まあ非公式とは言え、警備任務についていることになっているんすよね?なんかその辺の話って、メチャクチャ曖昧になっていてよくわからないんすけど……」
「あー……はい、その認識で正しいですよ」
調印式という重大な行事において、外部の人間に重要な警備を任せられないと言う意見が多数挙がった。まあ当然の意見である。どう考えてもティーパーティー護衛部隊の出番だし。いやまあ契約通りの仕事はするつもりだけどさ。必要ないんじゃねえかなぁ。
「要は私服警備員みたいな?恐らくですけど」
「ってことは、なおさら注目を浴びちゃダメっすよね!?」
「そうかな…そうかも…。まあ別にいいんじゃないですかね。知らないですけど。そんな事より、さっき買ったコーヒーでも一服しましょうか」
「私が言うのもアレっすけど、適当すぎないっすか……?あ、コーヒーはいらないっす」
「何だって!?俺のコーヒーが飲めないって言うのか!?」
「うわ、めんどくさっ」
巡り巡って通功の古聖堂に到着。調印式が見える一般観覧席……は人が集まり過ぎているので別の場所へ。人がほとんどいない関係者以外立ち入り禁止のエリアに向かった。え?今のお前の立場は一般人と変わらないだろって?半分以上は関係者みたいなものだからセーフ。あ、ちなみに缶コーヒーはしっかり渡しておきました。
レポーターもさらっと言及していたが、今から不可侵条約を結ぶとは思えない現場の空気感である。もう少し敵愾心を隠した方がいいとは思うが、俺には無関係なので気にしない事にした。下手に突いても槍玉に挙げられるのは目に見えている。
今日の天気は雲自体はあるものの、そこそこ晴れた悪くない天気。特別暑い訳でもなく、かと言えば肌寒い訳でもない、昼寝するにはこれぐらいが丁度いいかもしれない。静かに青空を眺めていたら、平和な感じがして……あー……。
「曇り時々ミサイル……」
タイミングを見計らって準備していた術を起動する。すると古聖堂の上空を覆うように透明な膜が出現し、そこを通過したミサイルは最初から何もなかったかのように姿が消失した。消しゴムマジックで消してやるのさ。
何が起きたのかを一言で纏めるなら、ミサイルは亜空間送りになりました。原理?知らね。こまけぇことはいいんだよ!!基本的には結果しか観測できないし。虚数空間とか四次元空間とかの概念的な話は難解過ぎるから。
今回は非常に大規模だったので、用意するのには莫大な時間を要した。まあその辺りはシスターサクラコに頼んで、古聖堂に入る許可を得ていたので割とスムーズだった。やはり持つべきものはコネである。
当然、急に現れて急に消えたミサイルに会場は蜂の巣をつついた様な騒動になった。気持ちは分かるけど今ちょっと頭が痛いから、真面目に騒ぐのは止めて欲しい。
まあ何はともあれ。
「勝ったッ!第3部完!」
そしてこの日、もう一度ミサイルが落ちた。
至る所に瓦礫の散乱する、荒廃した聖堂にて。白いドレスを見に纏い、血のように真っ赤な肌を持つ異形の存在は独り呟いた。
「確かに『予知夢の大天使』と『御伽噺の錬金術師』は共に厄介な存在でしょう。条件さえ揃えてしまえばあらゆるものを無効化する奇術と予知夢の組み合わせは、私の計画の大きな障害となるのは分かっていました」
「全て見ていましたから。あなた方が共謀して動いていたこと、かなり以前から古聖堂に何やら細工を施していたことも、あるいはその他の細かな悪足掻きをも。ですが……」
「全て無意味なのです。無価値で、全て虚しい。あなたの奇術はあまりにも脆いのです。だから私はその弱点を少し突いた。ただただそれだけです。あなたには利用価値があるのかもしれませんが、私の邪魔をするなら排除するまでの話です」
扇子で覆い隠した口元は、嘲るように弧を描いていた。
裏話:『亜空間』を『猿空間』にするかで10分ぐらい悩みました