「ごほっ、ごほっ……かひゅっ…………げほっ……」
保険として用意していたシールドまで使わされるとは流石に予想外だった。と言うか切り札まで使ったのに全身大ダメージとか殺る気満々過ぎる。ギア2出来そうなレベルで俺の身体から湯気が出てくるんだが?暑くて干からびそう……*1。
「ゼー……ゼー…………ひゅっ……あ゙ー……」
人で溢れていた会場も今や見る影もなく瓦礫の山と化し、彼方此方で火の手が上がっていた。煙にやられたのか、はたまた温度が原因かは分からないが呼吸する度に喉が酷く痛む。既に応急処置はしてあるが、まだ回復までに時間が掛かるだろう。当分の間は喘息生活かもしれなくて今から吐きそう。出るのは咳だろうけど。
対空防御システムで対応できない技術力のミサイルを連発してくるとか頭イカれてるだろ。間隔空けて二発来るとか寝耳に水なんだが?青天の霹靂ならぬ曇天のミサイルである。
「痛ってぇ……」
何が問題かって、敵側の対応が明らかに俺をメタってきてるんだよなぁ。どうしようもない弱点を的確に突かれている。その証拠に普通に考えれば単発で十分な筈のミサイルを、改めて撃ち込んできているから。
正直に言うと、状況は非常に悪い。ミサイルによる爆破を阻止するのが前提だったから、セイアさんから聞いた預言内容から講じた対策が全部ご破算になったんだな、これが。周囲の建物の倒壊している様子から、少なくとも望み薄な事は間違いない。
「…………」
あの、自分もう帰っていいですか?預言が外れない様にするためにも、一人で隠れて練ってた対策が台無しでもう色々と遣る瀬無いと言うか、何と言うか。睡眠時間を削ってまで準備してきた結果がこの始末☆はてさて、この先どうなりますことやら……。
「きえぇぇぇっ!!」
「こ、ここは通しませんっ!」
正義実現委員会とシスターヒナタが共闘しているのが窺える。相手は以前相見えたアリウス生達と青白い肌にガスマスクのよく分からない集団だ。ウィンプルを被っているので、宗教に関連しているだろう事は直感的に理解できる。
あー……加勢しなきゃ駄目?確かに三人しかいないが、内訳には正実のツートップが入っているし。いやまあ、委員長の方が暴れ回っているが、相手は数十人規模では効かないからなあ。ただ実際問題、自分一人味方が増えた所で何も変わらないだろうとしか言えないが。まあスルーして別行動が賢明な判断だろう。
「あぁぁ……いひひひひっ!まだまだぁ!!」
「くっ……!本当にキリがありませんねっ!」
「いたっ!?うぅ……ま、負けませんよっ」
「……………………」
「なっ!?」
「ぐおっ!?」
突如、アリウス生達が控えていた位置で大爆発が発生した。意識していなかった方向からの爆撃に、然しものアリウス生達でも為す術なく爆発に巻き込まれた。
「爆発!?また新手ですか!?」
「えぇっ!?」
「…………いや、違う。落ち着け」
「一体誰がそんな事を……」
「全くわかりませんね……」
「まるでロケランで撃たれたみたいな爆発ですね……」
「確かにそうかもしれません……」
「……ツルギ、これはツッコミを入れた方がいいのでしょうか?」
「……トマリ、まずは状況を説明しろ」
「あっ、トマリさん!?いつの間にいたんですか!?」
「へへ、来たのは本当についさっきですね」
俺、バカだからよくわかんねぇけどよぉ……バカだからよくわかんねぇわ……。賢明な判断?そんなものはなかった。と言う訳で、アリウスの皆さんが亡霊のような集団を後方から仕向けていたのを確認して、俺からはロケランをプレゼントしておいた。素晴らしいSurpriseに現地の皆さんは泣いて喜んだやろなぁ。
「この鞄ってシスターヒナタの物でしたよね?」
「ありがとうございます!弾薬が残り少なくて困っていたんですよ!」
「後は……拾い物で使えるかは分かりませんが、良ければ差し上げます」
「ありがたい……これでもっと暴れられるぅぅ!!」
「戦場では四の五の言っていられませんからね。弾薬の提供、感謝します」
長期戦なら尚更補給は重要になってくる。勝手に他人の弾薬を盗むな?アンチ乙。キヴォトスでは弾薬なんて、そこら辺に生えてるから。ただし大体の場合、群生地の近くに人が転がっていると言うだけの些細な話である。
「それとシスターヒナタは左足を少し捻っているっぽいですね。応急処置ぐらいならできるので、良かったらこちらにどうぞ」
「あっ、ありがとうございます。……あの、トマリさんもかなり酷い怪我をされてますが、大丈夫ですか?」
「ハハハ、慣れていますので。
痛いに決まってるんだよなぁ。だがそんな泣き言を言ったところでどうにもならないし、士気が下がるだけなので口には出さない。今はそんな事言ってる場合じゃないから。
若干腫れている部位に冷却スプレーを吹き掛ける。患部に湿布を貼り付け、剥がれない様に包帯で固定して、その上からもう一度冷やす。本当に気休めにしかならないが、それでも何もしないよりは良いだろう。
処置を施している間に現状の説明を受けた。トリニティの首脳陣が殆ど壊滅状態である事、先生が無事で現在撤退中という事、その護衛にゲヘナの風紀委員長が付いている事、そして今ここで先生の為に退路を死守している事。
「ゲヘナを蛇蝎の如く嫌うハスミさんが協力を!?」
「……不快だったとしても、先生の安全が最優先です。私情を持ち込む場面ではありません」
「ハスミさんも随分と丸くなられて……」
「なっ!?喧嘩売ってますよね!?」
「うわぁ!?トマリさんはなんでそんな言い方するんですか!?ハスミさんも少し落ち着いてください!?」
「大 怪 獣 バ ト ル 勃 発」
「何ですって!?」
「きゃあー!?」
やべっ、盛大に口が滑った。大迫力だったからつい。ツルギさんも『コイツマジかよ』みたいな表情で俺を見るの止めて欲しい。とりあえずウィンクしておこう。あ、目を逸らされた。
「そろそろ落ち着け」
「そうそう」
「それとトマリは後でハスミ達にスイーツを奢れ」
「えっ」
「……仕方ありませんね。今回はそれで手を打ちましょう」
「えっと、本当によろしいのでしょうか?」
「何も心配する必要ありません。ここは遠慮なくいきましょう」
「勝手に話が進んでやがる……!」
俺が奢るのが規定事項になっていた。まあ失言した俺が悪いから反論できない……!ツルギさんやシスターヒナタはともかく、ハスミさんが遠慮しないと言うのは非常に拙い。奴はケーキをホール単位で食べる女だ。そんな事しているから太……おっと、危ない所だった。俺は賢いので過ちは繰り返さないのだ。
「それにしても砂煙が晴れませんね……?そっちの方が助かりますけど……」
「ちょっとした小細工をしてますから。まあそろそろ限界ですが」
「そんな事ができるんですか!?」
「トマリは奇行さえなければ優秀ですよね。奇行さえしなければ……」
「何言っているんですか。それも持ち味ってものですよ」
「雑味も味の一種、か……」
「へ…ヘイトスピーチ……!」
時々ボソッと言葉のナイフで刺してくる隣のツルギさん。正面からハッキリ言われるよりしみじみ呟かれる方が火力高いからやめて欲しい。シスターヒナタまでちょっと笑ってるじゃねーか!
「相手が完全に態勢を立て直す前に、トマリは先生を追いかけてください。足止めは私たちで何とかしてみせますので」
「……先生達がここから離れてあまり時間は経っていない。お前一人なら十分追い付ける筈だ」
「結構な無茶振りしてきますねぇ。まあ何とかしますけど」
速く移動する為にはやてのブーツに履き替える。直進加速はできるが使い方を誤ると衝突事故間違いなしの代物である。ついでに耐久性に難有り。そのため、普段使っている靴の様に相手を蹴るのには向かないのも見過ごせない欠点だ。
「任せたぞ」
「どうかご武運を!」
シスターさんからそう言われたら、何かの加護がありそうだとは思った。
アイドルイベント、よかった