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一説によると、この主人公の所属先で一番向いてるのは赤冬らしい
トリニティの校舎に無事に辿り着きはしたが、校門前に人が大勢集まっていて進めないでいた。車両を取り囲んでいる生徒達の顔付きからして嫌な予感しかしない。そう思った側から車体が揺れ出した。結構な勢いで蹴らないと揺れない筈なんだが!?
「ウッソだろ!?緊急車両に蹴り入れてんの!?お前等正気か!?」
「私が説明してきます」
言うや否やセナさんが車両から降りていった。校舎に着くまでにすれ違ったトリニティ生達の反応からも歓迎されない事は分かっていたが、余りにも滅茶苦茶な対応すぎるだろ。品性とか気高さとか、人道的に大事なものをお持ちでない?
何をされるか分かったものではないので、窓を開ける訳にはいかない。そのため、セナさんを見守る事しかできないが、説得はあまり上手くいっていないように見える。流石に拙いと思い、運転席から降り掛けたが……杞憂だったかもしれない。
「やめてくださいっ!」
「救護騎士団……?」
「どうして負傷者が乗ってると分かってて、救急車を攻撃しようとするんですか!そんなこと、この救護騎士団が許しません!」
「負傷者を攻撃するなら、その前に私たちがお相手します。本当に、なんてことを……ミネ団長がここにいらっしゃったら、きっとこの状況を悲しんだはずです」
救護騎士団のお二方が駆け付けてくれた。そうそう、本当にその通り。負傷者を助けるための人道支援に敵味方の区別をしてはならない。セリナさんの発言は少し過激だが、キヴォトスの治安を慮れば妥当であるだろう。相応の覚悟を持って救護に携わっているとも捉えられる。
「ミネ団長って……あの『ミネが壊して騎士団が治す』のミネのことでしょ!?筋金入りの問題児じゃん!」
「い、いえ、団長は問題児ではなく、ちょっとだけ時代錯誤と言いますか……」
「どっちでもいいけど、あの人は狂ってる!!」
「先輩、どうして逆効果になってるんでしょう……?」
「し、知ってはいましたが……団長って、ここまで評判悪かったんですね……」
笑う場面ではない事は重々承知だが、それでも思わず吹き出してしまった。団員二人も団長が狂っている事は否定していない所が余計に駄目だった。やはり全員、口に出さないだけでそう思っているのな。あの人も救護さえ絡まなければ良識はある方だと思うんだがなぁ。
「あっ!ト、トマリさんからも何かお願いします!」
「えぇ……ここで俺にバトンを投げつけるのですか……?」
「い、良いから何とかしてくださいっ!」
「何で皆さん、俺を盾にするんですかねぇ……」
揃いも揃って俺の後ろに隠れないで頂きたい。銃弾を受けても平気な君達の方が俺よりも明らかに頑丈だと思うぞ。ところで俺も既にボロボロなんですけど、救護対象と言う扱いにはなりませんか?ならないですか?あ、そう……。
「アンタもどうせミネの手先なんでしょ!?この前、救護騎士団と一緒に活動してるところを見たんだから!」
「え?この人って確か、大聖堂によく出入りしていたような……」
「あっ、思い出しました!ナギサ様の周囲をウロチョロしているいけ好かない男!ナギサ様のご慈悲で学園内を歩くことを許されていると言うのに、まさかゲヘナと手を組むなんて!」
「あー……話がまたややこしい方向に……」
「確かにトマリさんって、色々なところで見かけますからね……」
「そう言えば、この前のボランティアにも来ていただきありがとうございました!」
「正直アレは成り行きみたいなものでしたし……」
「ちょっと!話が脱線しているんだけど!」
怒られてしまったので話を戻そう。実際言っている事が大体合っているのが、余計に話をややこしくしているかもしれない。事情の説明にも時間が掛かりそうなので、もう強行突破した方がいい様な気がしてきたが……。丁度向こうも強硬策に出始めたことだし。
こちらに駆け寄って来ている人物を確認して、咄嗟に近くにいた二人の視界を遮る。
「少し失礼」
「な、何ですか!?」
「すみません、閃光弾投擲します!」
「きゃあああ!め、目がっ!?」
「急に何!?」
突如として閃光弾が投げ込まれ、車両に押し寄せて来ていた衆人は悲鳴を上げた。怪我させると後々面倒事に発展しそうな時には、やっぱり閃光弾は便利だと思う。
「手荒な真似をしてしまい、申し訳ありません。それにこんな状況になってしまい……」
「じ、自警団の……」
「スズミさん!」
「いやー、ナイスタイミングです。本当に助かりますよ」
「ご無沙汰しております。特に救護騎士団の皆さんには以前、何度もお世話になりましたね」
人垣を掻き分けて現れたのは、自警団のスズミさんだった。通称、トリニティの走る閃光弾。撃ち合いするよりかは、余程穏当な制圧手段だから個人的にはいい方法だと思う。
「学園の所属に関わらず、負傷者は負傷者……手荒な真似をさせるわけにはいきません」
「自警団……場合によっては正義実現委員会とも真っ向から対立する、あの……」
「またヤバい奴じゃん……」
「……付き合ってられませんね。行きましょう」
トリニティ自警団は非公認の部活ではあるものの、常日頃から頻発する暴行事件を取り締まっているのは周知の事実だ。当然、一般生徒と比較しても明確に戦闘慣れしており、だからこそ数で優っていても衝突を避けたのだろう。ネームバリュー様様である。
「ふう、何とか落ち着いたみたいですね」
「あ、ありがとうございます、スズミさん。おかげさまで助かりました」
「いえ、私にできることは少ないですが……自警団として、やれることはやらねばですから」
「謙虚ですねぇ……口数少なく冷静に対処する姿は、まさに仕事人ですね!」
「トマリさんも見習うべき姿勢ですね」
「後ろから刺してくるの止めて頂けます?」
誰か俺の味方はいないのか?確かにスズミさんみたいにスマートに対応なんてできないけどさ。まあ仕事自体は問題なくこなしてるので大丈夫の筈、多分。
「あはは……。おっと」
「スズミさんスズミさん!!ようやく私たちの出番ですね!この自警団のエースにしてみんなのアイドル『レイサ』が、今度こそスズミさんと一緒に……」
「うるさっ」
通信機越しでも当然の様に聞こえてくる宇沢ボイス。今日も元気だなぁ。少し前まではトリニティの裁判長?みたいな名乗りだったような気がするが、いつの間にかアイドルに転職していたらしい。まあそっちの方がヘアカラー的に似合っているんじゃないか?
無言で通信をオフにしたスズミさんは、一言断りを入れてそのままパトロールに戻って行った。今は何処も混乱の渦中にあり、更には正義実現委員会も十分に機能できていない。自発的に治安維持に貢献してくれている自警団の存在は、非常にありがたいものである。
「行ってしまいましたね。相変わらず風のような方です」
「……ご協力感謝します。救護騎士団の方々」
「あ、はい!エンブレムを見るにゲヘナの救急医学部の方、ですよね?どうしてトマリさんと一緒にトリニティに……?」
「あっ!トマリさん!って大怪我してるじゃないですか!?大丈夫なんですかっ!?」
「おぉ、阿慈谷ィ…じゃないですか。身体は大丈夫かって?聞いて驚け見て騒げ、こう見えて傷は…………深いっ!」
「ふざけられるなら別に心配はいりませんね。ハナコちゃんが探してたので、今すぐ大聖堂まで着いてきてください。すみません!ちょっとトマリさんを借りてきますっ!」
「へへ、割と致命傷なんですけど……あの、何故腕を組む必要が?」
「だって腕を離したら絶対に逃げるじゃないですか。トマリさんの行動なんて、私にはお見通しなんですよ」
見事に手の内が読まれてやがる……!態々腕を組んでくる辺り、絶対に逃がさないと言う強い意志を感じる。ただ、今の状況で浦和ハナコが俺を探していたって、確実に碌な用件じゃないだろ。俺は俺でやる事があるから行きたくないのだが?
「……ぐう」
「……?いきなりどうしたんですか?」
「ぐうの音も出ない……」
「出てる!ぐうの音、出しちゃってますよ!?もうっ!コントしてる場合じゃないんですから、早く行きますよっ!」
「助けてー!誘拐です!白い大きなリュックを背負った不審者に誘拐されそうです!」
「ちょっと、誰が不審者ですか!?誤解されそうなことを大声で言わないでくださいよっ!?」
支援を求めるためにセリナさん達のいる方を見やると、ちょうど救急車両が出発する所だった。仲間が連れ去られようとしているのにこの仕打ち、薄情すぎるだろ。救護の手を差し伸べるべきではないのですか!?
救急車両は躊躇なく出発し、無情にもヒフミさんに引きずられていく事になった。
連載当初はあまり長く書き続ける予定ではなかったのですが、遅筆も相まって初投稿から遂に一年が経過しました。完結までマイペースに投稿していくつもりですので、当分の間お付き合いいただけますと幸いです。