曇り時々銃弾、所により爆弾   作:Aベル

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33.謝罪案件

 

 進行方向には風紀委員会を引き連れた銀鏡(しろみ)イオリさん。銀髪ツインテ褐色肌の凸砂であり、2年生ながらゲヘナ有数の実力者と名高い人物だ。ただし落とし穴には落ちる。

 

 

「成る程、誠意を見せろと。分かりました。土下座して足舐めます」

 

「い゛っ!?ちょっと待て!?そんなことしなくていいから!」

 

「そうですか?とある筋からの情報によると、這いつくばらせた相手に足を舐めさせるのが趣味だとお聞きしていましたが……」

 

「どこ情報!?いや、一人しか心当たりないけど!?そんな趣味ないって!?」

 

「スクープ!?シャーレと風紀委員会の爛れた関係!?風紀を乱す規則違反者には、風紀委員直々にお仕置き!?」

 

「その三流ゴシップの見出しみたいな口上を今すぐやめろ!おい、お前らもざわざわするな!」

 

「臆するな!言論弾圧は支配階級の常套手段!民意を封じ込めんとする権力者の圧制に、決して屈してはならない!今こそが反旗を翻す千載一遇の好機!一番槍は引き受けた!私の後に続けぇ!」

 

「バカ!こんな時まで話をややこしくするな!……はあ、相変わらず無駄に口の回る奴……」

 

「いつもより多く回しております」

 

「うるさいわっ!」

 

 

 原因は対応が後手に回ったことだと思われる。なお、話の途中に出てきた『とある筋』は"イオリの脚は甘美で最高の芸術品" など数時間にわたる性癖開示テロを引き起こしていた模様。なんでこの人捕まってないの?

 

 

 

「では本題に入りましょうか」

 

「本題?ああ、大したことでもないんだけど……」

 

「『いつもがんばってくれるヒナちゃんをほめる会!』の詳細についてですね」

 

「何だって?え?何それ?いきなり知らない話が出てきたんだけど……」

 

「今の所、主役であるヒナさんは闇鍋に乗り気なご様子でしたが」

 

「え?待って、本気で言ってるの?」

 

「この話はセナさんに確認して貰うといいk「『いつもがんばってくれるヒナちゃんをほめる会!』ですって!?私は何も聞いていませんよ!?」 うわ出た」

 

 

 ヒナさんの話題になると何処からともなく現れる奇抜な女こと天雨アコ。またの名を風紀委員長のペット。この人はそう言う怪異か何かだと思うようにしている。どこかのタイミングで絶対に出て来るとは思ってはいたが早すぎる登場である。今回はホログラムで現れた。

 

 

「うわって何ですか!?失礼な方ですね!いえ、今はそんなことよりも貴方が企んでいるパーティーについてですね……!」

 

「イオリさん、この通信って切れないのですか?相手するのが面倒臭いです」

 

「アコちゃんも相当ストレス溜まってるんだから、そんなこと言わずに相手してあげてよ」

 

「ちょっと!聞こえているんですからね!?誰が面倒臭い女ですか!?大体トマリはいつも緊張感に欠けていて、ふざけた態度ばかりとって私を馬鹿にしているんですか!?むしろ馬鹿にしていると言うよりも……」

 

 

 キャンキャンとうるさいが、非常に残念な事にこれが平常運転である。散歩中に犬に吠えられた時と同じ気分。毎度長々と尽きる事なくお気持ちを表明できるのは一種の才能とも言えるだろう。羨ましくない才能である。面倒だったので、適当に相槌を打って聞き流した。

 

 

「……そもそも闇鍋なんて野蛮な料理、ヒナ委員長に相応しくありません!そんな提案をしている時点で、トマリにはセンスが足りていない事は明らかなので、やはり私が……」

 

「そうですね。やはりヒナさんと仲が良い貴女に全てお任せしまーす」

 

「はあ?トマリが企画したんですから、私に丸投げなんて無責任な真似は許されませんよ?ご自分の発言にはきっちり責任を持って……」

 

「うわっ、急に電波がー」

 

「アコちゃんも話が長いんだよ……。私も疲れたから早く帰りたいし」

 

「それは本当にそう」

 

 

 当然、電波障害なんて起きていない。さっさと帰還したいと言う意見が一致した結果、三文芝居を打つことにしただけである。俺が要人を抱えている事忘れてないか?

 

 

「あ、多分だけどその内アコちゃんから連絡来ると思うから、無視しないであげて。アコちゃんの機嫌がメチャクチャ悪くなるから」

 

「コールセンター業務は請け負っていませんが?」

 

 

 ミカさんもそうだが、態々俺に電話して来なくて良くない?電話相談窓口でも紹介してあげた方がいいのかもしれない。頭がおかし……精神的に不安定ならその手のプロに任せるべきであるのであって、決して対応するのが面倒という訳ではない、決して。

 

 

「話を振り出しに戻しますけど、何故引き留めたのですか?」

 

「ん?……ああ、建物とかが倒れて進めなくなってるから、迂回した方がいいってアドバイスするためだよ。見える範囲の敵は掃討したけど、まだ残党もいるかもしれないし。まあそっちも色々大変だと思うけどがんばって」

 

「サンキュー。有益な情報助かりまーす。お礼にミントチョコキャンディをどうぞ」

 

「どっかの地方のおばちゃんかよっ。……まあ貰うけど」

 

「それと一雨降るので、早めに戻った方がいいですよ」

 

「げっ、トマリがそう言うってことは絶対降るよな……。わかった、頭に入れておく」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 助言に従ったお陰か、接敵することなく学園に到着できた。無事にナギサ様が救護室に搬送された事も確認した。先生の方はまだ目を覚ましていないとの事。道具も揃っているし丁度よかったので、おざなりになっていた自分の怪我の治療を施しておこう。

 

 特に酷かった背中の傷(剣士の恥)に包帯を巻こうとするが、これが中々上手くいかない。四苦八苦していたところ、白衣の天使(セリナさん)による救いの手が差し伸べられた。

 

 

「私が処置します」

 

「おお、ありがとうございます。お見苦しいものをお見せしました」

 

「お見苦しいだなんてそんなこと……。それよりも、先程の非礼をお詫びさせてください。負傷者に対して、話も聞かずに置き去りにするなんて、医療人としてあるまじき行動でした」

 

「いや、あれは俺の態度が悪いですよ。嘘か本当か分からないような行動ばかりしていましたし。セリナさんは全く悪くないので、本当に気にしないでください」

 

「ですが……」

 

 

 確かに見える範囲では服装がボロボロなだけで、せいぜいが額の軽い切り傷程度。顔に血が付いているインパクトが強すぎるせいで大怪我に見えなくもないが、それが大した傷ではない事は見抜いていたのだろう。

 

 実際は見えない部分が大怪我ではあったが、どう考えても俺の言い方が悪い。むしろこちらが謝るべきだと思う。それでもなお謝罪しようとするのは、余りにも真面目すぎる。

 

 

「あの場面で引き止められていたとしても、素直に従わなかった筈ですし、何なら態と軽い調子で伝えたまでありますよ」

 

「…………それはそれでダメなんですが……」

 

「本当に気にしないでほしいです。むしろ騙すような事をした俺の方が謝罪するべきですので……」

 

「……釈然としないですが、わかりました。でも今日は絶対に安静にしてくださいね?」

 

「…………善処します」

 

「そこは確約してください」

 

「…………」

 

 

 言えない。この後まだ別の予定があるなんて言えない。心の底から身を案じてくれているのが分かるからこそ、非常に伝えにくい。流石に嘘は吐けない。どう返答するか悩んでいると、見兼ねたのか助け船を出してくれた。

 

 

「…………はぁ。ここまで言っても止まってくれないんですよね。あまり危険なことはしないで貰いたいんですが、仕方ありませんね……」

 

「……へへ、面目ない」

 

「全くもう……その代わり、絶対に無事に帰ってきてくださいね?私との約束ですよ?」

 

「それは約束しますよ。命を賭けるような事なんてするつもりはありませんから」

 

「もしも約束を破ったら、トマリさんの前に化けて出ますからね。覚悟してください」

 

「どちらかと言えば、俺が化ける側じゃないですかね、それ」

 

 

 まあ確かにセリナさんの場合、ワープしたかのように突然現れる時があるが。それに関して前に尋ねた際は、黙って微笑んでいるだけだったのは覚えている。あれは普通に怖かった。……タブーには触れないのが賢い生き方である。

 




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