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崩壊した通功の古聖堂にて。降り止まない雨の中、調印式が行われた時の様に、再び大勢の者が集まっていた。アリウススクワッドのリーダーであるサオリの全ては虚しいものである、と言う主張と真っ向から対立したヒフミ。彼女は怯まず堂々とした態度を崩さなかった。
「————私たちの描くお話は、私たちが決めるんです!終わりになんてさせません、まだまだ続けていくんです!」
「私たちの物語……私たちの、青春の物語を!!」
その日、古聖堂に居合わせた者は奇跡を見た。宣言と共に、今までの甚雨が嘘だったかの様に、蒼天が広がっていく光景を。天から祝福が与えられたかの様に、陽光が暗雲を割る瞬間を。
「あ、雨雲が……」
「気象の操作?いや、これは……」
「き、奇跡……ですか?」
「奇跡なんてっ……!まさか、戒律が……?」
「ここに宣言する。私たちが新しい
動揺が隠せないアリウススクワッドに対して、続けて先生が宣言する。超法規的機関である『シャーレ』がエデン条約の発起人である連邦生徒会長の代わりとして解釈を捻じ曲げ、
そして、新たに産まれたETOの影響は矢庭に現れた。
「……リーダー、ユスティナの統制がおかしくなってる」
「なっ……!?」
「こ、混乱が起きていますね…………
「知ったことか!!」
「な、何!?」
サオリの叫びに呼応したかの様に、突然けたたましい音と共に背後で大爆発が発生した。思わぬ出来事にその場に居た全ての者が、何事かと爆心地に目を向けた。煙は間もなく晴れたが、そこには爆発の痕跡以外は何もなかった。その代わりに、ヒフミの近くに一つの影が降ってきていた。
「うおぉーー!?ぐえっ」
「トマリさん!?」
「えぇ……」
爆風に吹き飛ばされて空中に投げ出された結果、強かに身体を地面へと打ち付けた。大楯を緩衝材として利用しようとしたが、まるで効果がなかった。シンプルに痛い。空を飛びたいとは願っていたが、昇天したい訳ではないんだぞ。
「痛ってぇ……ユスティナだか何だかどうでもいいが、幽霊は幽霊らしく墓地に籠ってろって……おっと、これはこれは。こんな瓦礫の山しかないような所に、皆さんお揃いでいらして」
「あ、あの……大丈夫ですか? それと一体何があったんですか……?」
「ちょっとそこのカタコンベで、青い集団とリアル鬼ごっこをですね?」
「何やらかしたらそうなるのよ!?」
「 墓 荒 ら し 」
「うわぁ!? な、何て罰当たりなことしてるんですか!?」
早めに処理しておかないと、ネズミ算式に眷属が増えて厄介な事になっていたので止む無し。あんな奴ではあるが対処をミスすれば、下手すると一国が滅びかねないから。まあ本体だけなら、ある程度は対処しやすい。
「鬼ごっこ? 何かの比喩……?」
「いえ、アズサちゃん。恐らくですが、そこまで深い意味はないと思いますが……」
「……リーダー、地下に待機中の予備戦力と通信が繋がらなくなってる」
「またあいつの仕業か……!」
「またオレ何かやっちゃいました?」
「うわ、うっっっざ」
失礼な。流石に撃破にまでは至っていないが、相手の様子を見るにそこそこの損害は与えられたのかもしれない。まあ退却戦でそこまで気にする余裕はなかったが。
「ハァ…疲れたなァ。まさか散歩してたら、お化けに追いかけられちゃうなんてェ…。急いで逃げてきたけどもう疲れちゃって、全然動けなくてェ…」
「多分本当に余裕がないんだろうけど、何だろうね……。そこはかとなくこう……絶妙にムカつく言い方してるよね……」
「もう……ほら。手を貸しますので、今ぐらいはシャキッとしてください」
「もう立ち上がれなくてェ…痛たたっ、起きるので手に力を込めないでください!」
「こんなので仕事はできる方らしいのが、本当に納得いかない……」
改めてヒフミさんの手を借りて起き上がって辺りを見回すと、補修授業部以外にも正義実現委員会やシスターフッド、風紀委員会に加えて何故かアビドスの対策委員会までいた。本当になんで居るの君達? 注目を集めているようなので、ピースサインをしておこう。
「……何しているんですか?」
「ファンサですが? ほら、皆さん笑顔になっているでしょう? これも人気者の務めですね……」
「ファンサ?」
「あれは呆れて苦笑いしてるだけですよぉ……」
「誰もそんなことして欲しいって、一言も言ってないんだけどね……」
「心のトマリが、やれって言いました」
「ドヤ顔で言うことじゃないでしょ!?」
「うふふ♡やはりトマリさんは変わりませんね」
変わらない方がいいこともきっとある。例えば俺の性格とか。続けてそう主張しようとしたが、アリウススクワッドの後ろから手榴弾らしきものを振り被る姿が見えたので、前に出て投擲された手榴弾を大楯で弾き返した。無粋な奴め。手榴弾は景気の良い音を立てて、空中で爆散した。
「きゃあっ!?」
「あいたたた……今ので腰痛めましたわ……」
「すごいことをしている筈なのに、トマリがするとそう見えないのが不思議だ……」
「もはやおじいさんじゃない……」
「永遠の17歳の設定はどこにいったの?」
「若くても腰を痛める事は……けほっ」
足元が覚束なくなり、気付けば視界が歪み、ほとんど地面しか見えなくなっていた。急激に脱力感に襲われ、徐々に五感が鈍くなっていく。世界が逆さになる感覚。大変よろしくない兆候だ。
「あかん、ガス欠や……」
「ちょ、ちょっとトマリさんっ!?」
「大丈夫です。少し休めばすぐに元気になりますので、パインサラダでも用意して……」
「どうしてここぞとばかりに死亡フラグを立てようとするかなぁ!?」
さっきまで騒がしかったのに、今ではあまり音もしなくなっている。まあ正義実現委員会と風紀委員会が組んでいる訳だから、事件はスピード解決したのだろう。思考がまとまらないので、後の事はとりあえず一休みしてから考えよう。
「少し寝るだけ、いや一瞬目を瞑るだけ……」
「あわわわっ!? う、うちの者がお騒がせしましたー!?」
「あっ、セリナ!? 待っ、足はやっ!?」
「と言うか今、どこから現れた……?」
騒ぐだけ騒いで気を失った少年は、突然現れたセリナによって運ばれていった。嵐の様に過ぎ去って行ったが、取り残された者は皆、『結局何だったんだ?』という思いで一致した。
「いやー。いきなり出てきたピンクのあの子、足早いねぇ。もうどこかに行って見えないや」
「それよりトマリのことじゃない?」
「ん、ナイスバッティングだった。スラッガーの素質があるかも」
「あはは……」
「手を振ったらこっちにピースしてくれましたよ☆ サービスがいいですね〜」
「あれってノノミ先輩に反応してたんだ!?」
「本当にびっくりするぐらい、なーんにも変わってなかったねぇ、彼」
「うんうん!そこが良いところですね〜」
「今度バッティングセンターに誘おう」
「誰も心配してませんね……」
件の人物は既に運ばれていったが、特に悲愴感もなくいつも通りな対策委員会。現場の雰囲気については、むしろ緊張感に欠けていた。
「まあ……トマリなら何とかするでしょ」
「彼なら砂漠の真ん中で迷子になっても、平気で帰ってきそうだし〜」
「トマリはしぶといから」
「あはは……」
対策委員会のメンバーの身も蓋もない評価に、アヤネは曖昧に笑うしかなかった。
(主人公視点では)エデン条約3章〜完〜
以下、恐らく本編に出てこないであろうエデン3章にまつわる主な分岐点集
1. 主人公がシャーレに所属
→エデン条約編では補修授業部側で登場
2. ナギサの仕事依頼
→ない場合、主人公はトリニティに来ない
3. セイアとの早期接触
→失敗すると予知夢が聞けないため、吸血鬼発見が大幅に遅れる
4. 銀の弾丸
→シスターフッドと交流がない場合は未所持。トドメを刺すのに時間が掛かり、主人公が体力切れになる可能性がある
※主人公がトリニティにいるかは関係なく、吸血鬼はゲマトリアによって解き放たれます