曇り時々銃弾、所により爆弾   作:Aベル

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37.お見舞いの品は?

 

「誰か来たみたい。あたしもまた来るからねー! バイバイっ!」

 

「平和だなぁ」

 

 

 今日も病室は変わりなく。予定としては、シスターフッドからお見舞いが来るとの連絡があったぐらいだ。今更だけど、やっぱり面会やお見舞いって、アポ取ってから来るのが常識だよな? 自分がルールに細かいだけとか、そう言う訳じゃないよな? 事前に連絡があったのって、今のところはナギサ様とシスターフッドだけなんだが?

 

 

「お見舞いに来たよー! 補習授業部の子達もいるよー!」

 

「あはは……お邪魔しますね」

 

「遂にノックまでなくなったのですが……」

 

 

 こんなの頭救護以下じゃん。責任がどうとか言っている大人として、恥ずかしくないのか? もしかしてお見舞いのマナーって教養に含まれていないのか? アンタは完璧な時とダメダメな時の差が激しすぎるんだよ。

 

 

「まあまあ、今日は前回と違って色々持ってきたから!」

 

「えっと、トマリさんなら普通にお見舞いするよりも、サプライズで訪ねた方がいいんじゃないかってお話になりまして……」

 

「そっちの方が反応も面白そうですので♡そうですよね、コハルちゃん♡」

 

「わ、私を巻き込まないでくれる!?」

 

「なるほど」

 

 

 アポ無し突撃見舞いは、一応考えた上での行為だったらしい。単純に舐められてるのでは? 目には目を、歯には歯を。私の好きな言葉です。つまり何が言いたいのかと言うと、毎晩月が背中を見守ってくれる訳ではない、そう言う事です。

 

 中々騒がしくなっているが、今回は騒音対策バッチリなのでまあ大丈夫だろう。前回は騒がしくし過ぎたせいで部屋移動になったし。既に病院側から要注意人物として、名前が上がっているのかもしれない。退院したら、菓子折り持って謝罪しに行くべきだなこれ。

 

 

 

 

「まずはこれを渡すね。風紀委員会と救急医学部の生徒達から預かったお見舞いの品だよ」

 

「流石ゲヘナの数少ない良心枠。律儀ですねえ。風紀委員会からは……温泉饅頭ですか。ゲヘナの特産品って感じがしていいですね」

 

「ゲヘナと言えば、火山を利用した温泉で有名ですからね。うふふ、温泉と言えば……」

 

「言わせないからっ!? ど、どうせまたエッチなことでも言おうとしているんでしょっ!?」

 

「あらあら、私はまだ温泉としか言ってませんよ? 温泉旅行でもどうかと提案するところでしたのですから。コハルちゃんは何を想像したのか、是非私に教えてください♡」

 

「う、うるさいうるさい!」

 

「もう一つは何ですかね〜」

 

「マイペース……」

 

 

 いつものやり取りなので、まあ気にするだけ無駄かなと。一々気にしていたらキリがないし、どうせ暫く騒いだら、勝手に落ち着くだろう。火中の栗なんて、わざわざ進んで拾おうとは思わないから。それに俺が何か言った所で、火に油を注ぐだけだろ。

 

 

「だって突っ込むのも面倒ですし……」

 

「ツッコむ!? 一体ナニをツッコむと言うのですか!?」

 

「何言ってんだコイツ……あー、まあヒフミさんが突っ込むんじゃないですか? 優しいですし」

 

「へっ!? わ、私ですか!? あのっ、えっとぉ、あうぅ……」

 

「今の会話でヒフミちゃんは何故照れているんですかっあ痛っ」

 

「そろそろしつこいですから控えましょうねー」

 

「…………あのコインはどこから落ちてきたの……?」

 

「少なくとも中央からではないかなと」

 

「コインに何か書いてある。……1Mt?」

 

「そんなに重いのですか?」

 

「ゲームしない子にメガトンコインは通じないんじゃないかな……」

 

 

 確かに金ダライの様に、視覚的にもインパクトのあるものの方がよいと言う意見もあるかもしれない。それも一理あるが、少し待って欲しい。たとえ気付かれないと分かっていたとしても小ネタを挟むのが、粋な計らいってものではないかね。

 

 

「さて、救急医学部からは……冷凍おにぎり詰め合わせ? 何故?」

 

「わ、私に聞かれましても……」

 

「手紙も預かってるから渡すね」

 

「えー……………………要するに固いおにぎりが好みだろうから、冷凍されたものを送ったと言う事らしいですかね」

 

「へえ、トマリって固いのが好きなんだ」

 

「違いますが?」

 

「えぇ……じゃあどう言うことなのよ……」

 

「あはは……トマリさんの交友関係は複雑怪奇ですね」

 

 

 まあ緊急車両の運転中に食べさせられた激固おにぎりが関係しているのだろう。アレが好きだから食べていた様に見えるとか正気か? それと関係ないけど、手紙の端に描かれているセナさんの手書きイラストが可愛い。

 

 あまり長居するのも良くないから、と言うことで後は手土産だけ渡して帰るとの事。その配慮はできるのに、何故サプライズお見舞いを決行してしまうのか。

 

 

「そう言えば、この病室に入る前に誰かと鉢合わせしましたか?」

 

「いえ、誰とも会っていませんが……」

 

「あー……それならいいです。問題ありません」

 

「誰かと会っていたの?」

 

「まあそんな所です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「失礼します。お見舞いに参りましたが、お身体の方は大丈夫そうですか?……あの、どうかされましたか……?」

 

「事前の連絡と入室前にノックがあった事に感動しています」

 

「えっ? 当然のことをしただけなんですが……?」

 

「あはは……」

 

 

 失礼しますとは言うが全然失礼ではないし、それどころか礼儀正しいぞ。まあ礼儀のよろしくない方々も、然るべき時にはしっかりするだろうから、多分。いや、若干怪しい気がするな……。まあ俺が気にする必要はないな、うん。

 

 

「それで、態々お見舞いに来たと言うことは、また何かお願いでもあるのですか?」

 

「……? いえ、特にそのようなことはないですが……。入院している友人のお見舞いをするのは、普通のことではないでしょうか?」

 

「思っていた以上に善意の塊で吃驚仰天」

 

「ふふ、サクラコ様はそういう方なんです」

 

 

 少し誇らしげにしているシスターマリーや今この場に居ないシスターヒナタも含めて、シスターフッドは親切な方ばかりなのでは? ただ何かこう、全体的に胡散臭いけど。

 

 折角なので、さっき貰った温泉饅頭を開ける。一人で食べ切るには少し量が多いので、遠慮せずに食べて欲しいと伝えて漸く受け取って貰えた。饅頭を口にした時のお二人の反応自体は良かったので、まあ問題ないだろう。

 

 

「お饅頭だー! あたしにもちょうだい!」

 

「そう言えばお二方、銀の銃弾を提供していただきありがとうございました。しっかり役に立ちましたよ」

 

「それはよかったです。あら? マリーは何を驚いているのですか?」

 

「いえ、その……トマリさんって銃も使うんですね」

 

「確かに普段は使わないので、珍しいことではありますが」

 

 

 俺が使ってもあんまり役に立たないし。ただ、今回の様に偶に便利な場面があるから、一応所有はしているが。そもそも積極的に戦わないので、使う機会もまた少ない。だからシスターマリーの疑問はもっともである。

 

 

「ちなみに何に使用したのですか?」

 

「吸血鬼です」

 

「なるほど、吸血鬼ですか。…………吸血鬼?」

 

「えっと、トマリさんがおっしゃっている吸血鬼と言うのは、物語などでよく見るあの吸血鬼で間違いないですか?」

 

「そうですね。若者の生き血を付け狙うボケカスチスイイキリコウモリの認識で正しいです」

 

「トマリさんがここまで直接的に暴言を吐くのは珍しい気がしますね……」

 

 

 暴言と言うより、純然たる事実を忖度ゼロで評価した結果である。胸糞展開製造機を稼働前に打ち壊したとも言える。思い出の中でじっと……いや、やっぱり碌な思い出もないから、適切な表現ではない。二度とその面見せんなよ。

 

 

「トマリさんの言っているその吸血鬼は、蘇ったりはしないのでしょうか? 少しでも可能性があるならば、対策を講じる必要があるかと思いますが」

 

「完全に灰になったので、大丈夫の筈ですが……正直違和感しかないです」

 

「違和感ですか?」

 

「戦闘中に一言も喋らなかったのもそうですけど、そもそも何故あんなのがキヴォトスに存在していたのかがよくわからないんですよね」

 

「それを言ってしまうなら、トマリさんがここに居るのが謎でもありますが……」

 

「自分の場合はまあ…………ミスか事故かは分かりませんが、元々居た世界に帰れる筈が、こんな奇天烈世界に迷い込んだ訳ですが」

 

「キテレツですか!?」

 

 

 ロボや獣人の住民が当たり前に居て、学生が国家運営みたいな事をしていて、オマケに銃撃戦が頻繁に発生する治安の世界なんて、奇天烈としか言いようがない。しかも全員、銃やら爆弾が当たっても痛いで済んでやがる。ズルだろ。

 

 

「マリー? どうしましたか? 先程から何もない場所を見詰めていますが……」

 

「あっ、いえ!……その、先程から何か視線を感じると言いますか……」

 

「まあ何もないなら、気にしなくてもいいんじゃないですか?」

 

「うーん……それもそうですね」

 

「お饅頭おいしー!」

 




何故か定期的にある病室回でした

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