曇り時々銃弾、所により爆弾   作:Aベル

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41.人生割り切りも肝心

 

 アビドス高等学校に向かう道中、人が全然見当たらない道でバイクを走らせていた。

 

 

「ちょちょちょっとトマリさん!? もう結構な距離を走っていますけど、もしかして迷子になっていませんよね!? 本当に大丈夫なんですよね!?」

 

「任せろー。……所で学校方面ってこっちで合ってますよね?」

 

「逆!? 逆ですって!? さっき通り過ぎた標識と逆方向じゃないですか! あっ、ちょっと何で急にスピードを上げ始めているんですか!?」

 

「こっちの道の方が結果的に早く着くだろうからヨシ! Go!」

 

「逆方向なのにですか!? ちょ、早っ止まってくださ、あああぁぁっ!?」

 

 

 後ろに乗っているヒフミさんが何か言っていた気がするが、聞き取れなかったので後で聞こう。聞こえないぐらいの声量で話しているなら、取り立てて重要な話ではないのだろうから。それにバイクは急には止まれないから仕方なし。

 

 こうして爆走した結果、想定より5分程早く目的地に到着した。

 

 

「また世界を縮めてしまった……」

 

「はぁ、はぁ……。私はもうダメかと思いましたよ……。帰りは絶対に私が運転しますからね」

 

「えぇー」

 

「いくら人がいなかったとしても、スピードを出しすぎなんですよっ!?」

 

「速い事は正義ですから。そもそも二人いるのに、バイクを一台しか支給しないのが悪いかと。何で車じゃないのですかね。こんなしょうもない部分でケチケチして何になるのやら」

 

「あはは……。まあバイク一台でも出ただけまだマシだと思いますよ。恐らく公共交通機関を使わせるつもりだったんでしょうし」

 

「駅から学校までって遠くないですか? 道のりも結構複雑ですし」

 

「この辺りって、バスどころかタクシーすらも出ていませんからね……」

 

 

 土地が無駄に広大な上に交通アクセスまで悪いときた。まあ人も居なければ、観光地も今はない様な場所だから、当然の話かもしれないが。昔は『アビドス砂祭り』なる大規模イベントが開催されていたらしいが、その繁栄は今や見る影もない。

 

 態々遠路はるばるアビドスまでやって来た理由は、シャーレの業務の一部を請け負う事になったからである。なお、業務内容の詳細についてはアビドスの生徒達に直接確認してほしいとのこと。現地で聞いた方が早いとか何とか。詳細どころか日時以外は何も聞いていないが、そんなに適当でいいのか連邦捜査部。

 

 ちなみにヒフミさんについては丁度シャーレの当番だったらしいので、アビドスまでは任意同行とさせて頂いた。確認した結果、快く引き受けて頂けたので、そのまま置いていこうとしたら何故かチョークスリーパーを食らった。だって遠いじゃん。交通手段もバイク一台だったし。善意故の行動だったのにどうして……

 

 

「帰りの話ですか。あっ、そう言えば帰りに通る予定の場所が、丁度心霊スポットであると言う噂を聞いた事がありますけど……聞きたいですか?」

 

「トマリさんって意外とそういう噂とか詳しいですよね……。どこから聞いてきているんですか?」

 

「風の噂って奴ですね。勝手に耳に入ってくるんですよねぇ。で、聞きたいですか?」

 

「い、いえっ! 聞きたくありませんっ!」

 

「了解。幽霊が出るようになったのは割と最近? まあここ一、二年の話らしいですが……むぐっ」

 

「ほ、本当にやめてくださいよっ!?」

 

「へーい」

 

「アンタ達、そんなところで喋ってないでさっさと中に入って来なさいよー!」

 

「えー、今からやろうと思っていたのになー。そう言われるとやる気なくなるわー」

 

「トマリさんにやる気なんて立派なものが存在していたんですか……? そんな限りなく可能性の低い世迷言を言ってないで、さっさと行きますよっ」

 

「失礼極まってやがるのだが?」

 

 

 やる気が出ないと言うより、そもそも実在しているのかを疑われる新しいパターンである。しかも世迷言と一蹴されていると来た。いくら何でも言い過ぎじゃないか? まあ俺は寛大な心の持ち主なので、多少の暴言は許して差しあげるが。自分の運の良さに感謝するんだな。

 

 

 

 

 

「へい大将! やってる?」

 

「ここは柴関ラーメンじゃないわよっ! 初っ端から何言ってんのよ!」

 

「あ〜、まだ開店準備中だね〜」

 

「ホシノ先輩の言う通り。トマリたちは出直してくるべき」

 

「営業開始まで、もう少々お待ちくださ〜い☆」

 

「先輩たちも乗らなくていいからっ!」

 

「あはは……皆さん、ご無沙汰してます。お邪魔しますね」

 

「何言ってるのですか。準備中だって言ってるんですから出直しますよ」

 

「えっ、何を言って、ちょっと、何で私までっ」

 

「あはは……トマリさんらしいと言いますか……」

 

 

 開店前なのに居座ろうとするヒフミさんを引っ張って部屋から出た。何でと言われても、常識的に考えてそうするべきだろ。それとセリカさんの姿を見た時に、柴関ラーメンの事を思い出した。俺、この仕事が終わったらラーメン食べるんだ。気を取り直して再突入する。

 

 

「開けろ! 連邦捜査部S.C.H.A.L.Eだ! ふべっ」

 

「うわぁ……ヒフミちゃん、容赦ないねぇ」

 

「重ね重ね、トマリさんがご迷惑をお掛けして申し訳ありません……」

 

「いえいえ! 賑やかなのは大歓迎ですよ〜☆」

 

「賑やかって言うより、もはや騒がしいまできてるレベルでしょ……」

 

 

 何故俺の口を塞ぐ必要があったのか。迷惑なんて掛けていないのだが? まあシャーレに所属している訳ではないので、厳密に言えば経歴詐称に当たらなくもないかもしれないが。迷惑ではなく詐称である。

 

 

「所でシロコさん。何故俺の腕を掴んでいるので?」

 

「ん。今から一緒にバッティングセンターに出発するから」

 

「え、嫌ですけど」

 

「にべもなく断りましたね……」

 

 

 断る時はキッパリ断るべきである。特にシロコさんみたいな手合いは、返事をなあなあにしているとすぐに押し切ろうとして来るから。欲望に忠実すぎるんだな。と言うか、何故バッティングセンターなんだ?

 

 

「いいから早く行こう」

 

「俺以外の人に遊んでもらいなさ……パ、パワーが違いすぎる!?」

 

「おぉっと〜、トマリは拒否の構えを見せるけど、対するシロコちゃんも一歩も引かない! 解説のノノミちゃん、どう見るかな〜?」

 

「シロコちゃんはトマリさんと遊ぶのを楽しみにしていましたからね! 今回は中々の長期戦になる予感がしますよ〜!」

 

「実況してないでシロコ先輩を止めてくださいっ!」

 

 

 キヴォトス人にパワーで挑んではいけない。いや、今回は別に挑んだ訳ではないけど。まあパワーで太刀打ちできないなら、それ以外の技術でどうにかするしかない。

 

 

「よし、出発。……ん? あれ?」

 

「まあ服を掴まれているなら、脱げばいいだけですから」

 

「今の動き、まるでエビの脱皮みたいだったね〜」

 

「そう言えば最近、魚介類食べてないな……」

 

「すんすん……この服、お茶みたいな匂いがする」

 

「あはは……まあトリニティにいた時間が長かったからかもしれませんね」

 

 

 スルーされているが、ナチュラルに人の服の匂いを嗅いでレビューしてるのおかしくない? もしかして狼の本能が出てきてるのか? 狩猟した獲物を検分しているのか?

 

 

「いや、紅茶の匂いというよりも、緑茶の匂いに近いような気がする。それと、何か懐かしいような落ち着く匂いかも」

 

「懐かしい、ですか?」

 

「うん。私は行ったことないけど、おばあちゃんの家みたいな感じ」

 

「へ〜。……もしかして、加齢臭かな?」

 

「つまりおじさんどころかお爺さんって事ですね。ほら、年寄りだぞ。敬え」

 

「普通は加齢臭って言われたことを怒る場面な気がしますが……」

 

「あはは……何も気にしていなさそうですね」

 

「アンタの思考回路って、本当にどうなっているのよ……」

 

 

 老いは大体人類平等にやって来るものであり、何も怒るような事ではないから。いずれ行く道通る道。まあ、男女で捉え方に差が出る部分だとは思うが。

 

 

 

 

 

「それで、今日の仕事内容の方は? 詳細は対策委員会に聞けと言われて放り出されたのですが」

 

「あ〜、仕事内容ねえ。先生もいないし、今日はもうおしまいじゃダメ?」

 

「私は賛成」

 

「ダメです。これからの委員会の活動方針について、せっかくだから意見をもらおうってお話だったんですから。外部から見た感想も参考になるかと思いますし、貴重な機会なんですからね」

 

「あっ、そういう内容だったんですね」

 

「それなら過去に出された案などは残っていますか? 意見するなら、その辺りも参考にさせて貰いたいのですが」

 

「はい。これまでに提出された方針や提案については、全てこちらにまとめてあります。まあ正直なところ、あまり参考になるような内容ではありませんが……」

 

「別に構いませんよ。あくまでも活動方針の雰囲気と言いますか、全体の傾向が掴めればいいだけですので」

 

「トマリがそれっぽいこと言ってる……!?」

 

「あはは……普段の言動からは考えられませんが、トマリさんは仕事自体はしっかりしていますからね。普段がいい加減すぎるので、驚くのも無理はありませんが」

 

「俺程真面目な人間は早々いませんが?」

 

「アンタで真面目なら、世の中の大半の人が真面目になっちゃうわよっ」

 

 

 どうして否定されているのか丸で分からないのだが? それはさておき、渡された資料をヒフミさんと一緒に読み込む。暫くして粗方資料に目を通し終えた後、一つ息を吐く。隣のヒフミさんも顔を上げたので、同じぐらいのタイミングで読み終わったようだ。

 

 結論から言ってしまおう。

 

 

「無理! 諦めましょう!」

 

「なんでそうなるのよ!?」

 

「セリカさん……」

 

「何よ」

 

「無理!」

 

「二回も言わなくていいからっ!?」

 

 

 二回も言いたくなる様な内容だったから仕方ないだろ。見ろよ、あのヒフミさんの顔。笑顔っぽく見えるけど、しっかり口元が引き攣ってるぜ。あのファウストさんが慄いているんだぜ?

 

 

「だって返済計画が宝くじとか埋蔵金とか、終いには石油を掘り当てるって。この計画を立てたのは小学生ですか?」

 

「おじさんのこと、小学生っていうのやめない?」

 

「ご安心ください。多分これが一番現実的です。それに、下には下がいるものですので」

 

 

 期せずして一番それっぽい人物を引き当てた様だ。まあ中身はおじさんだが。ただ、流石に犯罪計画表や旅行のしおり、ゲルマニウムブレスレットよりはいいかなとは思う。やる気あるのか? もしもあると主張するのであれば、そのまま何もしない方がマシだと思うが。

 

 

「あはは……で、でもまあ地道にアルバイトとか、磨けば光りそうな案もありますからっ」

 

「まあ堅実ではありますよね」

 

 

 逆に言えば堅実なだけだが。自分達だけの力で完済を目指す事が前提ならば、おじさんの博打作戦が恐らく最も可能性が高いのが酷い。シロコ案? ん、論外。そもそもの借金の額が額なので、スーパーラッキーかチートぐらいしかなくないか?

 

 いや、待てよ? キヴォトスでは埋蔵金や価値のあるものがまだまだ眠っている可能性があるのかもしれない。多分そう。そう言う事にしておこう。何よりそっちの方がロマンがあるから。

 

 

「言うまでもない事ですが、身売りは考え得る限り最悪の手ですからね。皆さんはよく理解しているかと思いますが」

 

「なんで掘り返すのさ。もうしないってば〜。うへ〜……皆んなの視線が痛い」

 

「当たり前よ!しっかり見張っとくわっ!」

 

「ん。任せて」

 

「え〜っと……そういえば、なんで急に先生の代わりにトマリ達が来ることになったの?」

 

「あ、私もちょっと気になります〜!」

 

「私は先生に急な用事が入ったからとお聞きしていますが……。確かにトマリさんがシャーレの業務を対応しているのは初めてですね」

 

「あー、先生にしかできないことをお願いしたので、その代わりで来ています」

 

 

 具体的に言うと、風紀委員会主催の『いつもがんばってくれるヒナ委員長をほめる会!』のサプライズゲストとして、会場に向かってもらったからである。ついさっきアコちゃんから鬼電が掛かって来ていたので、無事に到着したと思われる。

 

 丁度いい時間になったので、柴関ラーメンに寄ってから解散となった。なお、今回も餃子やチャーシューを強奪された模様。貴様等は遠慮というものを知らんのか?

 





目下、パヴァーヌ編2章を書くか悩み中

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