曇り時々銃弾、所により爆弾   作:Aベル

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43.お悩み相談

 

 予てより約束していたケーキをシスターヒナタに届けるために聖堂へ向かった日のこと。シスターヒナタから倉庫内の簡単な清掃を行うと聞いたので、急いでいる訳でもないからと手伝いを申し出る事にした。

 

 

「すみません、トマリさん。ケーキも頂いちゃっているのに、さらに聖堂の掃除のお手伝いまでしてもらって」

 

「お気になさらず。この辺りで徳を積んでおこうと思いましてね。丁度いい機会でしたから」

 

「そ、そうなんですね」

 

「ついでに俺に何かあった時に、できる範囲で助けて貰えれば万々歳ですが」

 

「わ、私でお役に立てるのかはわかりませんが……それでもよろしければ」

 

「え? マジっすか? 言ってみるものですね」

 

 

 流石に了承されるとは思っていなかったので吃驚。シスターヒナタの力を借りられるなら百人力じゃん。今の所は手を貸して貰う予定もないが。そんな凄い能力持っているのに、何故この人は自信なさげなんだろうか?

 

 一般人では持ち上げることも不可能な箱を軽々と運び出していくシスターヒナタを横目に、まずは高所の埃取りを開始する。まあ俺がやっている事は、手の届かない範囲の埃を落とすために風を発生させているだけだが。決して他人を使って楽をしているのではなく、適材適所なのでセーフ。

 

 

「フゥ……これで全部ですね」

 

「お疲れ様です。ここからはバトンタッチですね」

 

「あ、はい。お願いします」

 

「仕込みは既に終わっていますので。ヨシ、後は野となれ山となれ!」

 

「えっと、それはちょっと違うような……」

 

「今日は……風が騒がしいな…」

 

「トマリさんが騒がしくしているんですよね……?」

 

 

 部屋から外へ押し出す方向に強風を起こす。この技術を以てすれば、ブロアーなど要らぬもの。ゴミはゴミ箱に、塵は建物の外にである。ほら、塵も積もれば山になるって言うから。

 

 

「わぁ、やっぱり器用ですね!私もトマリさんみたいに、誰かのお役に立てたらなぁ……」

 

「適材適所ですよ。と言うか、シスターヒナタは周囲から頼りにされていると思いますが」

 

「あっ、その……私は他のシスターのみなさんのように、お話を聞くお仕事はあまり得意ではないので……。こういった力仕事くらいしかできませんから」

 

「シスターヒナタがどう考えているかは分かりませんが、俺は貴女の様な方がその怪力の持ち主でよかったと思っていますよ? まあシスターヒナタにとっては、少し不本意かもしれませんが」

 

「えっ? そう、ですか?」

 

 

 倫理観ゆるキャラ勢がそんな特技を持っていた場合を考えてみろよ。間違いなく大惨事になる事請け合いだぞ。その点シスターヒナタであれば、無闇に暴力を振るう事もないから。牛は水を飲んで乳とし、蛇は水を飲んで毒とすだったっけか。キヴォトスの倫理観で暴れられたら、毒どころか最早猛毒と言った方が正しくないか?

 

 

「もしかしてシスターヒナタは、周りより力持ち()()()とお考えですか?」

 

「うっ、えぇっと……」

 

「何考えてんだこのボンクラシスター」

 

「ひ、酷いっ!?」

 

「いいですか? 例えば掃除に使っていたこの風を起こすだけの能力ですが、強度を調整すればこうなります」

 

「あっ、涼しい風……」

 

 

 ブロアーから送風機に早替わりである。日常的な使い方をしているが、その他にも向かい風で行動を妨害したり、砂を飛ばして目潰ししたりもできる。どれも使い方こそ変えてはいるものの、本質的には同じ事しかしていない。結局、能力はどのように使うかが重要なのではないだろうか。

 

 

「競うな! 持ち味をイカせッッ!」

 

「はっ、はいっ!!」

 

「あぁ、訂正を。シスターヒナタは既に活かせていましたね。やっぱりシスターに説教じみた事を言うものじゃありませんねぇ」

 

「いえいえそんな! 決してそのようなことはありませんよ?」

 

「正しく釈迦に説法と言いますか。まあトリニティで使う例えとしては、適切ではないかもしれませんが」

 

「あはは。それは確かにそうかもしれませんね」

 

「ではミスターボンクラはこの辺りで引き上げますかね。お疲れ様でしたー」

 

「あ、はい! 掃除まで手伝っていただいてありがとうございました。…………あっ、待ってください! サクラコ様にお会いするってお話だったんですよね!?」

 

「へへへ。……さよなら!」

 

「トマリさん!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……だからヒナタさんがここまで連れてきたんですね」

 

「へへ。また勝てなかった」

 

「なぜそんなに誇らしげなんですか? と言うか、そもそも勝ち負けを競うような場面ではありませんよね?」

 

 

 だって早速能力を有効活用していたんだぜ? 誇らしげにもなろうものよ。感無量で涙がちょちょ切れてくるなぁ! 余計な事言ったわ。

 

 シスターヒナタはパワーだけでなく、反射神経にも優れていた。意表を突けたと思ったのに、まさかあっさり捕まるとは。やっぱりセンスあるんじゃない?

 

 

「それ以前に逃げるって失礼ではないですか……?」

 

「シエスタの時間でしたので」

 

「もう夕方に近いのですが……」

 

「知らないのですか? 夕方前に休むのが最近のトレンドですよ?」

 

「あ、あの……私の勉強不足で申し訳ないのですが、『とれんど』とは何のことでしょうか……? あ、そのっ! 文脈から何となく意味は推察できるのですが本来の意味とは違う使われ方をする言葉もありますし間違ったまま覚えたくないのでどうかご教示頂けないでしょうかっ!」

 

「世間でよく話題に挙がるもの。要するに流行です」

 

「あっ。そ、そうだったんですね……。ありがとうございます。では、お昼ではなくもう少し後で休憩するのが現在のトレンド、と言うことなんですね!」

 

「はい。(俺の中では)そうなってます」

 

 

 シスターサクラコの必死な様子を見ていると、誤解させたままなのも悪い気がしてきたな……。うーん、流石に誤解を解いておくべきか? そのままでもあまり困らなさそうでらあるが……。

 

 悩んだ結果、シエスタの真実を教える事にした。シスターサクラコは静かにキレた。そして何かお願いを聞く事になった。正直者が馬鹿を見る世の中なんておかしいと思うんだ。

 

 

 

 

 

「あ、今回の(賄賂)です。お納めください」

 

「……今の発言、何か不穏な響きがあったような気がするのは考え過ぎでしょうか……?」

 

「気のせいですね。缶ジュースを渡しているだけですから」

 

「……それもそうですね。ありが……カステラサイダー??」

 

「もしかしてこちらの緑茶コーラの方がよかったですか?」

 

「あの、「分かってます! 緑茶コーラも欲しいのですよね! 仕方ありませんねぇ、特別ですよ?」……やはりこうなるんですね……」

 

 

 どこか諦めた様な苦悶の表情をしているがどうしたのだろうか? また顔芸の練習か? その芸に掛けるストイックさ、嫌いじゃない。なお、シスターヒナタにはミルクセーキを渡しておいた。

 

 

「えっと、本日お越しいただいた理由は、既にお伝えしていたとは思いますが……」

 

「ちょっと覚えていませんね。でも確か、蓬莱の玉の枝を持ってくるのと似たようなレベルのお題だった様な……」

 

「言い過ぎでは!? いえ、今回はその件とは別で友人としてお願いをしたくてですね……」

 

「つまり、次は火鼠の皮衣ですか?」

 

「トマリさんは私のことを一体どう思っているんですか……?」

 

「何かこう……大聖堂の奥によくいる修道服みたいなものを着ている人。所でご職業は何をされている方なんですか?」

 

「この短期間で何か拾い食いでもして記憶を無くしたのですか?」

 

 

 酷い言われようである。拾い食いなんて最近はしていないのに。何処に出しても恥ずかしくない好青年に向かって言っていい暴言じゃないだろ。そこまで食い意地が張っている様に見えるのか?

 

 

「コホン。……お願いというのはですね。私と一緒にお出掛けして、最近の流行をご教示いただきたいのです。友人とお出掛けと言うものをしてみたいのと、今の流行を知ることで親しみやすさを得られると思いますから」

 

「あー、そのコマンドは選択できませんねぇ」

 

「えっ? よく分かっていないのですが、理由をお聞きしてもよろしいですか?」

 

「まずはイベントで適切な選択肢を選ぶ事を心掛けます」

 

「は、はぁ……」

 

「贈り物を利用して好感度を高めることと、後はパラメーターの割り振りも大事です。慎重に決めましょう」

 

「あの、先程からお話の内容が理解できていません……」

 

「これがゲームから学んだ友人のつくり方ですよ?」

 

「えぇ……」

 

 

 つい先日プレイした百合ゲーではバッドエンドにしか至らなかった俺が、この攻略法でノーマルエンドまで漕ぎ着けたんだぞ。隣で見ていたミカさんに笑われながらも、どうにかクリアしたこの方法が間違っている訳ないだろ。

 

 

「えっと、まずはなぜ友人をつくるお話になったんですか?」

 

「えっ? シスターサクラコって誰か友人がいたのですか? 今は服屋に着ていく服がない状態だと認識していますが」

 

「いえ、あの……もしかして私って、トマリさんから友人と思われていないのですか……?」

 

「友人と言うより珍獣ですし」

 

「珍獣!?」

 

「それに流行にも詳しくありませんから。まずはシスターフッドの誰かと一緒に出掛けてみればいいんじゃないですかね」

 

「……それも考えたのですが、私の立場上、どうしても遠慮してしまうと思うのです。その点トマリさんなら、そう言った心配も要りませんから」

 

「俺が遠慮していないとどうして言い切れるのですか?」

 

「逆にご自身が遠慮していると思っているのですか?」

 

「いえ、全く」

 

「…………」

 

 

 決め付けられるのも癪だな、ぐらいの気持ちで言ってみただけである。立場まで考えるならナギサ様とか団長あたりか? 絶対にダメな方向への相乗効果が出る組み合わせなのは理解した。

 

 

「難儀な性格ですね」

 

「トマリさんにだけは言われたくないです……」

 

「ぬかしおる」

 

 





主人公:ゲームはジャンル問わずプレイするタイプ。
ヒナタ:気は優しくて力持ち。よく見なくても服装がヤバい。
サクラコ:誤解されやすいが、原因は本人にもある人。少しだけ流行に疎い。

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