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トリニティのある教室について。蛍光灯が点かなくなったとの報告を受け、交換作業を急遽実施することになった。交換の手間自体は大した事もないが、如何せん備品倉庫から教室までの距離が遠いのが面倒である。校舎が無駄に広いのが悪い。
来客対応だったり、書類と睨めっこしたりするよりかは、こう言った軽作業をしている方が性に合っている自覚はある。加えて組織内の人間関係や政治だとかはてんで分からないから、人の上に立つ資質なんてものは元々持ち合わせていなかったのだろう。正直どうでもいい話ではあるが。
さて、時刻は正午の少し前であり、昼食に丁度いいタイミングである。本日は海鮮系の気分だったので、アクアリウム方面にいざ出発。校門を出て間もなく、背後から物凄い速さで何かが近づいて来ている事に気付いたので、突撃されないように大きく飛び退いた。
「危なっ!? 何だ何だ?」
間髪入れずに通り去る、訳でもなく少し前方で急停止した。一体誰だよ。こんなのプリウスミサイルが爆走して突っ込んで来た様なものだろ。いや待て、この孤独なsilhouetteは……?
「トマリ! ちょうどいいところに! 救護の時間ですので、一緒に現場へ向かいますよ!」
「いやー、俺は今からランチタイムだから行かな「さあ! 共に救護へと参りましょう!」 正直この流れになるとは分かっていましたとも」
団長の救護センサー反応中に遭遇すると参加確定になる強制イベントである。エンカウント率はそこそこ高い。そんなイベント、そこそこあったらダメだと思うが?
毅然とした態度で断ってしまえばいい? それでも聞き入れなかったら、逃げてしまえばいいと? なるほど、完璧な作戦っスねーっ。不可能だという点に目をつぶればよぉ〜……
「そもそも救護の同志でも何でもないのですが……」
「何か?」
「喜んでお供させていただきやす!」
「トマリならそう言うと思っていました。今は時間が惜しいので、移動しながら状況を説明しましょう」
正直面倒ではあるが、ここは指示に従っておこう。断ったらそのまま無限ループしそうだし。と言うか実際した(2敗)。
団長から聞いた話を簡単にまとめると、不良とチンピラが衝突していてそれなりの規模の乱闘が発生中で、負傷者もまあまあ出るだろうから急行しているらしい。そして他の団員については後から到着するとのこと。第一陣になるの嫌だなぁ……。そもそも団長が出ずとも、正義実現委員会に任せればよくない?
騒動の現場に着くや否や、団長は楯を構えて戦闘地帯のど真ん中にすっ飛んで行った。立派な翼を備えているだけはある素晴らしい跳躍力である。脚力だから羽は関係なかった。制圧は団長一人で可能で、手当ては後詰めの救護騎士団が担当すると。やっぱり俺、いらなくね?
「救護騎士団、参ります!」
「うわあぁっ!?」
「なっ、なんで救護騎士団の気狂い団長がここにっ!?」
「救護の手を戦場に!」
「ぐへっ!?」
「物理的に手が出てるんだよなぁ……」
救いの手(物理)と言う事ですね。分かります。拳と楯で数多の不良を千切っては投げ、千切っては投げ。大勢居合わせた不良達を瞬く間に制圧していく。所で団長は銃火器類を使用しないのですか? 必要ない? あ、そうですか。え? 救護波で十分? 何でも救護って付ければいいもんじゃないんだなぁ。
団長の救護により、不良がこちらに吹っ飛ばされて来たので普通に避けた。受け止めたりしないのかって? 嫌だよ、俺も怪我したくないし。キヴォトス人だったら、この程度の衝撃では死にはしないし平気平気。後で救護しやすいように、取り敢えず意識のない不良達を一箇所に集めておく。
「ヒ、ヒイッ!?」
「そちらのイカしたマスクのお姉さん。よろしければこちらを手伝ってくれません?」
「な、なんでアタイがそんなことをっ……!?」
「救護活動手伝っておけば、もしかすると見逃して貰えるかもしれませんよ?」
「ふ、ふざけんなっ! ここで逃げるなんてできるわけねぇだろうがっ!?」
「いやー、あれは逃げても仕方ないですって。あんなの相手するぐらいなら、一旦出直した方がいいですって」
「くそっ! アタイだってやってやる! やってやる、やってやる……う、うわあぁぁ!?」
「あーあ、説得失敗。俺知ーらない」
救護の狂気に呑まれたかぁ。成功したらついでに労力も手に入って楽できたのに残念。まあ面子の問題だろうけど、集団との殴り合いで無双している団長に挑むその気概は大したものだと思う。俺なら迷う事なく逃げるけど。あ、一撃で沈められた。現実は非情である。
「ちくしょうっ! せめてこっちの弱そうな奴だけでもっ!」
「善良な一般人に銃口を向けるなんて、改めて治安終わってるなぁ……」
「救護っ!」
射線上に入らない様に物陰に身を隠したその直後、こちらに銃を構えた不良の頭に団長の鉄拳制裁が下った。まあ団長から背を向けた時点で然もありなん。その軽率な行動を地面に這い蹲って反省するがいい。
ぼちぼち鎮圧し始めた頃、団長以外の救護騎士団が現場に到着した。そのまま手慣れた様子で目を回している不良達の手当てを開始していく。その手際が非常によろしいのは救護精神の賜物、であるかもしれない。多分そう。
「お疲れ様です。やはりトマリさんもいらしたんですね」
「背後から急に現れるのやめて頂けます?」
「?」
「まあいいや。今に始まったことでもありませんし。それよりセリナさん、あそこでハナエさんがチェーンソーを振り回している訳ですが」
「ハナエちゃんっ!? チェーンソーを今すぐに止めてください!?」
やっぱりあれはセリナさんとしてもアウトな行動だったのか。ハナエさんはボランティア精神も慈愛の心も確かに持っているが、すぐに注射器とかチェーンソーを持ち出すのが欠点。確かに愛嬌もあって優しくて良い子ではあるんだ、うん。まあ治療は受けたくないが。
「救護騎士団の皆さんも到着しましたし、もう帰って良いですか?」
「想定よりも負傷者が多いので、できればご協力いただきたいのですがダメでしょうか?」
「えぇー……まあ、セリナさんからの頼みなら聞きますけど……」
「トマリ! 私は悲しいです! あなたの救護に懸ける想いはその程度のものだったのですか!」
「げっ……団長」
つくづくタイミングが悪い。団長には何故か一方的に同志と見做されているので、やる気のない発言をすると反感を買う始末。まあでも他人の大切にしていることをぞんざいに扱っている様なものだから、こればかりは仕方ないと思う。
その後はと言えば、普通にお説教される事になった。なお、その間ずっと不良の手当ての手は止めていない模様。ちなみに救護完了後にお目当ての店に行ってみると、当たり前の様に営業時間外で閉まっていたとさ。まあ……そんな日もある。
「……と、まあ直近ではこのような出来事がありましたね」
「本当に君はトリニティで退屈しない日々を送っているみたいだね。まあトラブルメーカーの君らしいと言えばそれまでの話ではあるが」
「今の話で俺が何時トラブルをメイクしてました??」
「トラブルが服を着て歩いているのと同義だろう?」
「口は災いの元という言葉の意味がよく分かりました」
「よかったじゃないか。知見を広げる得難い経験になったのだから」
人様を問題児扱いとは何時の間に自分が偉くなったと錯覚しているのか、この勘違いフォックスは? そう言えばティーパーティーとか言う如何にも茶をしばいてそうな所属だった事をすっかり忘れていた。
「ティーパーティーなのに兎ではないのはこれ如何に」
「ふむ? …………ああ、なるほど。そう言う事か。それは私達が別に気違いではないからだろう。むしろ帽子を売買しているわけでもないのに、その気質な君に誂え向きな比喩ではないかね」
「あー、確か水銀が原因でしたっけか」
「へえ……君は思いの外、博学な面も持ち合わせているようだね」
「うーん、相変わらず捻くれた言い回ししかしない三月狐だなあ……」
「無作法さではトマリに完敗しているよ」
病室に居て暇だから退屈凌ぎに何か話せって要望を叶えてこの態度だぞ。本調子っぽくなってきた事を喜ぶべきだが、この調子ならまた襲撃に遭う日も遠くなさそうな気がしてきた。
「お茶のお替わりはどうだい? ティーポットでヤマネは飼っていないが、温かい紅茶ぐらいは用意しよう」
「そろそろ帰りますのでいらないです」
「私としては、率直な物言いにはある種の好感を持てるが、不和の温床になり得るだろう。中々難儀なものだね、人間関係というものは」
「難儀なのはセイアさんの性格では……いえ、何でもないです」
「…………聞かなかった事にしてあげようじゃないか」
「そんなデカい耳があるのに聞こえなかったんですか?」
「『聞こえなかった』ではなく、『聞かなかった』と言っただろう!?」
聞いてて草。紅茶にミルク多めに入れた方がいいんじゃないか?
水着ティーパーティーとか言う幻覚が見えたのは、夏の暑さが原因ですか?
気が向いたらイベントストーリーにも触れたいとは思っています。まあ難しいとは思いますが。