曇り時々銃弾、所により爆弾   作:Aベル

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ワイルドハント、新メインストーリー更新が来ているミニライブ…?



d.兎と弁当と風呂

 

 先生からの依頼でD.U.地区のとある場所へ。地区内でも中々辺鄙な場所に位置する公園に来て欲しいとの事。D.U.地区とは、あのシャーレのオフィスも存在するエリアである。ちなみに他の地区との明確な違いは、連邦生徒会が治めているかだとか何とか聞いた気がする。その辺りの細かい事情は興味がないから全然分かっていないが。

 

 キャンプ場にも見える様相の公園に足を踏み入れて、四歩目でまさかの落とし穴が。完全に落ち切る前に身体を強引に横に倒す事でギリギリ難を逃れる。これがキヴォトス流の砂遊びかぁ。頭おかしいんじゃねぇの??

 

 今更だけど何気ない日常で唐突に生命の危機って事態、ちょっと多過ぎない?運が悪かったら何回か残機減っていたのだが? こっちはキヴォトス人と違って、1mは一命取るから。

 

 

「これはもう無理でしょ。本日の営業は終了しましたって事で。ヨシ、解散!」

 

「ちょっと待ってー!? あっ、無視しないでくれるかな!?」

 

 

 帰ろうとしたタイミングだったが、丁度後先生がやって来たようだ。面倒だったので無視するか迷ったが、俺は優しいので対応してあげる事にした。慈悲深さに平伏するといい。

 

 

「どうかしましたか? 今から帰る所なので、用があるなら手短にお願いします」

 

「ここまで来て、何もせずに帰ろうとしないでくれるかな!?」

 

「それならまずは、こんな危険地帯を集合場所にした理由を説明しろください」

 

「ああ、それは……っと。後で説明するから、一旦着いてきてほしい」

 

「敢えて言わせて頂こう。答えは否であると」

 

「はいはい。それじゃあこっちね」

 

 

 はいは一回にするべきだぞ。先生なのにそんな事もご存じない?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この唐揚げ弁当で」

 

「一番高いやつじゃんか!!!」

 

 

 公園内では何故かウサ耳を付けている似た様な服装の四人の生徒達が、弁当を巡って言い争っていた。だがしかし、先生はお構いなしに声を掛けに行く。流石はノンデリ教師である。

 

 

「や、色々と大丈夫そう?」

 

「「……」」

 

 

 大丈夫ではないだろ。ほら、四人とも黙っちゃったじゃん。どうするんだよ。帰っていい?

 

 

「よりによってこのタイミングで……」

 

「いえその、これはお弁当で喧嘩していたわけではなく……」

 

「ああ、仲良くお昼ご飯の話をしていただけだ」

 

「仲良く……?」

 

「喧嘩に見えたなら、目でも洗ってきた方が良い。私たちは至って正当な協議をしてただけ」

 

「マジっすか? ついでに手も洗って来ますね。では俺はオムライスで」

 

「この流れで何で当然のように弁当が貰えると思ったの??」

 

 

 弁当の数が人数分より多かったから、てっきり食べながら話をするのかと思って。それよりも弁当にはっきり『廃棄』と書かれているが、本当に食べても大丈夫な奴なのか? 期限ではなく社会のルール的に。

 

 

「じゃあ、焼肉弁当は譲ってもらおっと」

 

「まだ協議中だろ! 良いから一旦置け!!」

 

「……恥ずかしいところをお見せしました。ですが、はい。特に問題があるわけではありません」

 

「食料の面もまあ……例の廃棄弁当で当面の解決はできましたし」

 

「ふふっ、先生はそれで屈辱を与えて心を折ろうとしたのかもしれないけど、そうはいかないよ。私たちはそんなの全然気にしないから」

 

「廃棄弁当が、屈辱……?」

 

「そんなところに本気で疑問を投げかけるのやめてね。……いや、そもそもトマリに恥の概念とかあるの? 恥の多い生涯は送ってそうだけど」

 

「失礼過ぎる質問を投げ掛けるのやめてくださいね」

 

 

 ないに決まっているだろ。清く正しく真っ当に生きてきたのだから。一体何処に恥じる要素があると言うのか。廃棄弁当程度で屈辱を味わっているなんて、遭難中に草木の根っこを齧っていた俺が馬鹿みたいじゃないですか。

 

 

 

 

 

「で? 先生はこのホームレス達と引き合わせて何を、って…………よく見たら最近話題だったテロリストじゃないですか。STR学園でしたっけ。それにしては筋肉が足りていない様な気が」

 

「誰がホームレスだ!? それとSRT特殊学園だ! 大体さっきから何なんだコイツは!?」

 

「何って、名のあるナナシですよ。そこの妖か……先生から土下座されて泣き付かれたので、仕方なく着いて来ただけの」

 

「色々と失礼な上に、息をするように嘘を吐くのやめてもらっていいかな? こっちはトマリ。見ての通りの変人だよ」

 

「訳のわからんヤツがまた訳のわからんヤツを連れて来た……」

 

「流石に先生と一緒にされるのはちょっと……」

 

「何でよ」

 

 

 初対面の怪しい集団に対しては、名を名乗らないのは常識だろ。それと仮に先生と普通の変人を比べたとして、先生の方はもう異次元の変人と言うべきか。頭のネジが外れているか、そもそもネジが存在していないかの違いなのかもしれない。

 

 

「それにしてもトマリも成長したね。前だったらテロリストって思った段階で逃亡してたじゃん」

 

「ああ。それはまあ、キヴォトスでテロリストは別に珍しくありませんし。この人達はすぐに発砲とかはしなさそうですから」

 

「……なんかごめんね」

 

「私たちをテロリストとして扱うのはやめてください。私たちの活動はテロではなく、SRT特殊学園の復活のための抗議活動です」

 

 

 テロリストの常套句じゃん。別に抗議活動でもテロ工作でもどちらでもいいが、それで要求が通るのか、通った所でその状態を維持できるのかは甚だ疑問ではあるが。まあ深く関わるつもりは毛頭ないので、その辺りは一々聞こうとは思わない。率直に言うと興味がないから。ただ、その目標を掲げているなら多分、先生とは仲良くしておくべきじゃないか?

 

 

 

 

 

「さて、トマリを呼んだのは他でもない。みんなにサバイバル技術を教えてあげてほしいんだ。トマリならそういうこと、得意でしょ?」

 

「俺が教えられるのは精々、ブレイクダンスか雨乞いぐらいしか……」

 

「そのラインナップはなんなの……?」

 

「待ってください。そもそも私たちに、そのような情けは必要ありません」

 

「ですって。そう言う訳で俺は帰りますね」

 

「待って待って。すぐに諦めないでって」

 

「いやー、やる気がないなら優勝は無理ですよ」

 

「なんでダンスを教える方向に話を進ませようとしてるの??」

 

 

 とは言え、一口にサバイバル技術と言われても、技術の幅も広いしどの水準まで求めるかでも割と変わってくる気はする。それならば、腐らない知識が一番だろう。

 

 

「貴女に俺の『師匠』を差し上げましょう……」

 

「えっ、あっ、ありがとうございます……? あ、あの、なんでこれを私に……?」

 

「何かこう、『会話に入りたいけど入れないなあ』みたいな顔をしていましたので」

 

「えぇ……どんな顔なんですか、それ……? えっと、『キヴォトス食べられる草図鑑』?」

 

「まあ確かに役には立つ、か……?」

 

 

 当然役に立つに決まっている。疑う余地ないだろ。同じ題材の図鑑を何冊か読んだが、それ(師匠)が一番分かりやすかった。大切に扱ってくれたまえよ。

 

 

「さて、幸薄そうな少女よ」

 

「あの、霞沢ミユです……」

 

「これにて免許皆伝だ……。もう俺から教えられる事は何もない」

 

「そもそも何も教わってないです……」

 

「図鑑渡しただけじゃん」

 

「何だコイツ……」

 

 

 何を言うか。偉大なる先駆者達の知恵をお借りしているんだぞ。巨人の肩の上に立つのが成功への近道だから、これが一番正しいだろ。そもそも何に困っているかも知らないし。

 

 

 

 

 

「みんな顔色が悪いけど、大丈夫? もしかして、具合悪い?」

 

「ま、待て! 近寄るな! それ以上近づいたら本気で殴るぞ!?」

 

「えぇ……?」

 

「それはまあ……。さりげなく近づかないでください。足を狙いますよ」

 

「待てなんて高度な芸当ができる訳ないじゃないですか。そんな高等テクニック、アコちゃんですらギリギリできるかどうか……」

 

「なんでトマリは多方面に喧嘩を売ってるの? うわ、本気でそう思っていそうな顔してるのが、余計に腹立たしい……」

 

 

 まあホームレス、近寄られたくないと来てパッと思い付くのは、シンプルに警戒されているか、もしくは体臭が気になるかだろう。先生はノンデリなので、考えている間にシャワー浴びてない宣言をさせてしまっているが。

 

 

「ご、ごめんね……? シャーレのシャワー室なら、使っても大丈夫だよ?」

 

「……最っ低」

 

「……度し難いです」

 

「わ、私たちが武装を解除した瞬間に何を……!?」

 

「シャワーを浴びさせてその隙に何をしようっての? もしかして実物より残滓の方が好み? ヒュー!」

 

「私は一体何だと思われて……」

 

「信頼できない大人」

 

「変質者」

 

「燃えないゴミみたいな」

 

「別に、何も……」

 

「あ、先生。これ本気で嫌われているパターンっすよ」

 

「そっかぁ……」

 

 

 先生にとっては最後のコメントが、何気にダメージが大きいんじゃないか? 何をやらかしたのかは知らないけど、明らかに嫌われている様子を見たのは初めてかもしれない。

 

 お湯が出なくて良いなら、ある程度の資材さえ揃っていれば簡易シャワーぐらいは自作できるが、そう言う話ではないらしい。何でも、外で水を被ったら風邪を引くからとの事。女子かよ。 女子だった。ならしゃーないか……

 

 

「キャンプでお風呂なら、ドラム缶とか……?」

 

「……ドラム缶? ああ、下から火を焚くのか」

 

「そう言えば、釜茹での刑では水ではなく、油が使われる場合もあるそうですよ。まあ滅多に使う事はないらしいですけど」

 

「しれっと悍ましい情報を混ぜないでくれない?」

 

 

 最終的には、ドラム缶風呂をつくる事に決まった。ドラム缶確保のための作戦を立てている間は暇だったので、簀の子を作った。その後、作戦決行は夜間に決定したが、普通に予定が入っていたので帰った。ちなみに先生は心配だから着いていくとの事。既に依頼は完了しているから、行かなくても問題ないだろう。多分。

 




※『先生がノンデリ』は主人公の勝手な思想です。
今のところは、カルバノグ編についてはあまり触れない予定です。

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